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ミステリの祭典

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ディレクターズ・カット
改題『明日なき暴走』

作家 歌野晶午
出版日2017年09月
平均点6.00点
書評数4人

No.4 5点 HORNET
(2021/11/23 20:00登録)
 最近ミステリでよく見られるようになった、SNSを題材とした作品(といっても評者の書評が2021年、本作品の発表年次はその4年前なので、これはあくまで評者の感覚)。
 1章では、当時かなり問題になったYouTubeで問題動画を挙げる若者の話としか見えなかったのだが、2章でそれが急展開し、意外な方向へ物語が進んでいく。最新の話題を取り上げながらもその仕掛け方はさすがだな、と思いながら、非常に面白く読み進められた。
 ただ、最後まで読み通すと「今風でそれなりに面白かった」という思いと、「新本格の旗手の一人だった作者も、こういう作風になってきたか…」という思いとがないまぜになる感じがした。「密室殺人ゲーム…」シリーズも、当時の最新ネット事情を踏まえた作品だったが、そのうえで本格ミステリの面白さを絶妙に発露していたと感じたが、本作は昨今の流行に同調した感じがした。
 普通にこの作品から歌野晶午を読む読者にとってはこんなこと思わず楽しめると思う。

No.3 5点 パメル
(2018/01/06 01:20登録)
殺人鬼をテレビのやらせディレクターが追跡する物語。
物語に大きな仕掛けがあり、終盤で驚くことになるのだが、それ以上に面白いのはテレビとネットの関係でしょう。すでに終了しているコンテンツとしてテレビを見ているネット信奉者に対し、巨大なテレビがあるからこそネットが光っているのであり、テレビがなかったらネットの影響など大したことがないことを訴える。
犯人との対話や駆け引きをリアルタイムで中継しようとするテレビマンの独善的苦闘の一部始終が、単にトリッキーな小説としてではなく、社会派ミステリとしての広がりをもつ。テレビに対する大衆の肥大化した欲望と、それにこたえるべくいたずらに刺激を追求するテレビマンの姿が強烈な印象を残す。

No.2 7点 蟷螂の斧
(2017/12/30 20:09登録)
シリアル・キラーが、TVの「やらせ番組」で無軌道な行動をとる若者を襲った。TVディレクターは、若者を囮にし殺人鬼の逮捕劇を生中継することを計画するのだが・・・。題名から予想されるどんでん返しを期待していたら、まったく別方向からの一撃が待っていました(笑)。ラストで、「ディレクターズ・カット」の真意が明らかにされるあたりはうまい。

No.1 7点 虫暮部
(2017/12/12 13:02登録)
 私もひとを刺したくなって来ちゃったなぁ。困ったなぁ。図書館で騒ぐ大人がいると結構本気の殺意が湧くんだ。とりあえず鋏は持ち歩かないようにしよう。

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