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ミステリの祭典

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take5さんの登録情報
平均点:6.63点 書評数:492件

プロフィール| 書評

No.472 7点 蛇行する川のほとり
恩田陸
(2026/07/12 18:00登録)
大人一歩手前の少女時代を
いつか終わる夏休みと重ね、
明らかになっていく真実を
恩田陸の繊細な筆力が描く。

暑さ、ペンキの匂い、また
ハルジオンの感触が鮮明に
浮かぶ。母親の死の真実が
一見遠い存在の毬子にこそ
共有される事が謎だったが、
殺人に偶然携わった側の人
だからと理解。逆に香澄は
能動的に関わった事で、罰
がくだるという理解。罰も
作中劇にあるような現実と
劇の合間をいく合理非合理
を超え不思議な魅力のある
本作でございました。


No.471 7点 呼人は旅をする
長谷川まりる
(2026/07/11 17:34登録)
「呼人」当事者だけでなく周りの
いろいろな角度から描かれる事が
とてもよかったです。特異体質の
「呼人よびと」を物語に置く事で
世の中の普通や偏見、差別、また
当事者やその周囲の人たちの見方
在り方を描き、認知バイアスは?
と優しく教えてくれる。特に所有
に執着する社会へのアンチテーゼ
として旅のような生活を、呼人が
求められてしまう事を「渡り鳥」
から感じて、興味深かったです。


No.470 8点 決壊
平野啓一郎
(2026/07/08 18:14登録)
以下新潮社の合本紹介文
地方都市で妻子と平凡な暮らしを送る
サラリーマン沢野良介は、東京に住む
エリート公務員の兄・崇と、自分の人
生への違和感をネットの匿名日記に残
していた。一方、いじめに苦しむ中学
生・北崎友哉は、殺人の夢想を孤独に
膨らませていた。ある日、良介は忽然
と姿を消した。無関係だった二つの人
生に、何かが起こっている。許されぬ
罪を巡り息づまる物語が幕を開く。衝
撃の長編小説。

作者の分人主義が色濃い作品でした。
重い事は悪くなく必要な場合が多い
ですが、これは救いがないし血肉に
なりにくいです。しかし読ませますが。
上下巻合計800ページを1日近くかけて
一気に読ませます。しかし登場人物の
ラストがあれは、あれしかなかったの
ですかね、、、辛いですね。


No.469 8点 本心
平野啓一郎
(2026/07/04 19:05登録)
ミステリー的手法で描く近未来小説
いくつかテーマがあります。

①「理解したつもり」の危険性。
主人公が、「自由死(安楽死)」を
選んだ最愛の母の本心を知りたい
と願い、母親のAIを再生します。
しかし、AIと会話を重ねるうち、
自分が見ていた母親は、実は、
「自分に見せてくれていた母親」
の一面に過ぎず、自分が知らない
交友関係や考えを持っていた事を
知ります。

②人を愛するということの本質
平野啓一郎は、「相手のすべてを
完全に理解すること」は不可能だ
としています。むしろ、「分かり
合えない部分(他者性)」がある
からこそ、相手を単なる自分の
所有物としてではなく、一人の
独立した人間として尊重して、
深く愛することができるのだと
説いています。

③「分人主義」と他者性の関係
平野啓一郎が提唱する分人主義
という考え方は、「人間は誰しも、
相手(家族・友人・仕事)との
関係性ごとに異なる複数の人格
(=分人)を持っているのだ」
いうものです。主人公の母親も
母親としての一面だけでなく、
主人公の知らない場所で別の顔
(分人)を持っており、それが
「他者性」の正体だという事です。

いずれのテーマも、読者の自分を
えぐるような重さです。しかし、
最後まで目を背けない主人公に、
こちらも最後まで向き合う読書と
なりました。


No.468 9点 永遠の仔
天童荒太
(2026/06/21 17:44登録)
十数年ぶりに再読、初評価。
本書を、親として受け止め、
考えて血肉とする事が必要で
大切と思う年齢なのを実感。

原稿用紙2400枚、総ページ数
約1000に流れる主人公3人の
子供時代と、17年後の大人と
して再会した後とが、交互に
書かれて、進むんでいきます。

本書のテーマは、幸せや不幸が
連鎖し、またそれを断ち切る力
その力が関わりにはあるという
処だと個人的に感じました。

ただその力は他者からもらえる
のではなく最後は自己の認知が
辛くも乗り越える契機となる、
そのためにはやはり、適切な時
適切な場での出会いきっかけが
必要なんだと、矛盾する二項を
どう信じて生きるか⋯、また、
当事者として向き合う時が必ず
来るから、誠実に逃さない事が
大切かと思いました。
結論が簡単に出ない事に、読書
または人生の豊かさがあるのか
とも感じました。





No.467 6点 悪魔には悪魔 を
大沢在昌
(2026/06/14 10:11登録)
麻薬取締官(マトリ)として密売組織に
潜入捜査していた双子の兄・良(りょう)
が突然消息を絶った。兄の身を案じた
元傭兵の弟・将(しょう)は、
兄になりすまして危険な組織に潜入する
ことを決意する。裏社会の猛者たちを
相手取り、過酷なミッションと命懸けの
騙し合いに挑む迫力満点のアクション長編。
(以上AIによるあらすじまとめ。)

500頁以上あるけれども、リーダビリティが
高いのでエンタメとしてスイスイ読めます。
しかし新宿鮫を薄めた感じで、本書をわざわざ
狙って読む必要性までは感じないという処です。


No.466 8点 探偵小石は恋しない
森バジル
(2026/06/07 19:12登録)
久しぶりにミステリを読んだという満足感。
『方舟』『GOTH』『六人の嘘つきな大学生』
『名探偵のいけにえ』『十角館の殺人』等
文中で触れる名作を読み手も思い出しつつ、
この後の反転を想像しながら、頁をめくる。

最後の方はいけにえの反転攻勢に近いです。
小説の持つ、叙述の力を再認識致しました。

タイトルが好き。個人的に改題でよかった。
文体はラノベ風を装った緻密ぶりも好ましく
唯一、ラストが題名と矛盾、次回作にも難。

あと私、作中紹介される他作品の中では唯一
あの鈍器本だけ未読なので、いつか挑戦を!


No.465 8点 人生劇場
桜木紫乃
(2026/05/24 17:34登録)
ある男の小さい頃から80代までの人生劇場
綺麗事を一切排除した物語。
読んでいて辛くなります。
読み手の自分を問われ、
突きつけられていくからです。
人は弱く悲しい。
こう書いている私自身が許されたい
分かってほしいと、
主人公のタケちゃんにシンクロしてしまう。
ホテルローヤルが話題となりましたが、
後半で出てきます。
その存在もまた切ないのです。


No.464 8点 コンパートメントNo.6
ロサ・リクソム
(2026/05/17 17:59登録)
シベリア鉄道が舞台のロードノベル。
フィンランド人の少女とロシアの男。
客室コンパートメントに乗り合わせ、
モスクワからウランバートルへ向けて
接点のない二人を乗せて列車は進む。
饒舌な男と寡黙な少女、男は、人生を
受け入れるのにかかった時間を語り、
少女は心の内にモスクワの親しい人を
考える。物語終盤に、男が少女に対し
自らのナイフを差し出す場面が印象的。

大きなものに翻弄される人生そのもの
これがミステリーなのだ、一筋縄では
いかないのだと、世界の広さを知る本。

その年のフィンランド最高の本に対し
贈られる賞受賞。後に知りましたが、
カンヌのグランプリも取ったそうで、
いつか映画も見たいなと思いました。


No.463 5点 へんな怪獣
星新一
(2026/05/16 15:57登録)
星新一の生誕100年の今年に
ショートショートの名士ぶりを
久しぶりに味わおうと思いたち
児童書のチョイスに興味をもち
読みましたがイマイチでした。
やはりボッコちゃん等は年代を
超越して刺さるので、星新一も
色々混ざっているのだと再認識
別のものを読もうと思います。


No.462 6点 幸福な生活
百田尚樹
(2026/05/10 19:04登録)
氏の現在の有り様とは切離して
短編集としては読みやすく、又
最後の一行をあえてめくらせて
落とすという分かりやすい構成。

いくつかはなるほどと思い、又
いくつかは安直だなと思うが、
構成作家としての力は感じます。

豹変とかそっくりさんが好み。


No.461 7点 おれたちの歌をうたえ
呉勝浩
(2026/05/10 10:54登録)
呉作品の中でも色々と盛り沢山で
ある種贅沢だが、はまれない方も
いそうだなと思います。前後する
時代の中で謎解きが成される為に
その時点の真実と後から明らかに
なるものが混雑していて難解です。
しかも永井荷風や堀口大學の言葉
による謎解きが、実は文字が〇〇
という背景や在日朝鮮人問題等と
リンクしている為に尚更難解です。
しかし読み応えはたっぷりなので
改めて呉作品の重厚さを感じます。


No.460 6点 審議官 隠蔽捜査9.5
今野敏
(2026/05/06 12:10登録)
300ページを2時間弱で読めるタイパ本
男性の男性による男性のためのヒーロー本
竜崎にスカッとしたい人が警察機構の悪癖
やら家族の理想形やらを楽しむ本書が一定
の評価を得て続くのは令和も変わらんなと。


No.459 7点 ぼくがぼくであること
山中恒
(2026/05/04 13:33登録)
1976年に初版発行の名作。
小学生の成長物語であり、
家族の再生物語でもある。

夏代はなぜ祖父といるのか
ミステリー色は薄いですが、
殺人事件も入っているし、
ゴールデンウィークに角川
つばさ文庫もありでしょう。


No.458 6点 さよならの儀式
宮部みゆき
(2026/05/03 14:49登録)
近未来小説、SF小説、しかし
宮部みゆき作品なので現実を
的確に捉えて書かれています。
前半4作が私には良作でした。
後半はイマイチ刺さらなかった
ですが、400ページで8作は、
ちょうど読みやすかったです。
五指には入らないかなとの評。


No.457 6点 ナイト&シャドウ
柳広司
(2026/05/02 16:21登録)
首藤がクール過ぎて些か食傷気味。
ラスト怒涛の伏線回収も言われたら
そうかなとは思うが人間臭さゼロ。
その事をメタで見ていると、もしや
コメディかなと思えて来ましたよ。

馬鹿にしていません。それくらいの
完全無欠のヒーローもの。太鼓判!


No.456 8点 ロング・アフタヌーン
葉真中顕
(2026/04/25 14:38登録)
「自分で望んで選びたい。」
「愛になんか負けないで。」

葉真中顕の筆力が爆発する。
300ページに満たない中で、
作中作と現実がシンクロして
性差の社会的抑圧が解放される。

レオ・ベルサーニが、人間の
根本にマゾヒズムがあるつまり
辛い環境に癒着する面があると。
この癒着を解体するには自己の
癒着への認知と言語の力ですね。
千葉雅也さんの本に詳しいです。
そういう自己の乗り越え物語。

東野圭吾や幾人もの作品にも
文壇・編集の様子が見られますが
そのへんも興味深く読みました。


No.455 6点 弁護側の証人
小泉喜美子
(2026/04/19 12:12登録)
ハードカバーには表題作に加えて
『深い水』を同時収録しています。

220ページと20ページという量で
これだけの内容なら費用対効果高。

クリスティのオマージュの表題作
今となっては目新しくないですが
1960年代の叙述トリック作品は
歴史的意義とリーダビリティから
評価できると思います。何しろ、
1時間とちょっとで読めましたので。


No.454 5点 アトミック・ブレイバー
呉勝浩
(2026/04/12 16:37登録)
主人公の名前がイマイチシリーズ第二弾?
近未来小説、格闘ゲームで世界を救うって、、、
1フレームを削り合うAIとの格闘描写が密。
しかし最後まで荒唐無稽の極致で終了して、
私には他の呉作品の方がずっと推せるなと。


No.453 9点 センスの哲学
千葉雅也
(2026/04/12 16:36登録)
ミステリをはじめとする
全ての文学作品を捉える
新たな視点を持つために
必読の書となりました。
意味を捉えるのもよいが、
その形式に見るもの有り。
目からウロコの哲学入門。

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