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ミステリの祭典

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鼓動

作家 葉真中顕
出版日2024年03月
平均点7.00点
書評数2人

No.2 7点 take5
(2024/11/10 13:13登録)
「違う。だってその絶望は、あなたのものではないんだから。」

葉真中顕の社会派ミステリー。
今回は引きこもりを主として、
周辺の問題を複数えがきます。

300ページ強を一気読みの、
筆力は新作も相変わらずです。

カットバックの手法は、叙述の
トリックには使われませんが、
人称や時間を越えて収束する様
リーダビリティの元となります。

No.1 7点 HORNET
(2024/04/15 21:08登録)
 ホームレスの老女が殺され燃やされた。犯人草鹿秀郎はもう18年も引きこもった生活を送っていた。彼は父親も刺し殺したと自供する。長年引きこもった果てに残酷な方法で二人を殺した男の人生にいったい何があったのか。事件を追う刑事、奥貫綾乃は、殺された老女に自分の未来を重ねる。私もこんなふうに死ぬのかもしれない――。刑事と犯人、二つの孤独な魂が交錯する。困難な時代に生の意味を問う、感動の社会派ミステリー。(出版社より)

<ネタバレあり>
 犯人・草鹿秀郎の小学校時代からの回想と、奥貫綾乃が主人公の現在の捜査を描く物語が、交互に描かれ、ラストにそれらが重なって真相に―という構成。著者の代表作「Blue」のように、草鹿の回想部分では昭和から平成にかけての時代状況や風俗がリアルに描かれていてそれ自体面白い。草鹿がいわゆる「就職氷河期世代」で、そこからつながる「8050問題(中年の引きこもりと、それを抱える親の問題)」を描いているのも、本作の一つのテーマなのだろう。
 序盤から「犯人」草鹿秀郎が自白しており、それを裏付けるような回想が並行して描かれていることから、メインの謎は犯人の「動機」であるような展開だったが、ラストにフーダニットへと転ずる仕掛けが施されていて、予想以上に面白かった。
 前半に小出しされているその伏線は弱いので、ミステリ単体としてはそこそこだが、社会派小説としての魅力が強く、全体的に面白い作品だった。

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