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ミステリの祭典

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虫暮部さんの登録情報
平均点:6.20点 書評数:2254件

プロフィール| 書評

No.794 6点 クイーン警視自身の事件
エラリイ・クイーン
(2020/09/19 11:31登録)
 枕カバーについて。
 ホニトン・レースの枕カバーに手の跡がついていた、それがいつの間にかきれいなアイルランド・クローセ編みのものに取り換えられている、とジェシイは証言した。
 その証言が間違いなら、手の跡の無いホニトン・レースの枕カバーも邸の中にあると考えるのが妥当、ある筈の枕カバーが無いなら証言の信憑性は増す。しかし警察はそういう捜し方をしていないようだ。
 ホニトン・レースの枕カバーが複数枚あって正確な枚数を誰も把握していないなら仕方ない。そんな記述は無いけど。

 退職した警官が“金の楯(記章)”を未だ持っているのはまずいでしょう。


No.793 6点 海のある奈良に死す
有栖川有栖
(2020/09/19 11:29登録)
 第2の犯行について。
 犯人と毒入り酒をつなぐ直接の証拠は無い(よね?)。更に、酒を呑んだこととアレの因果関係は立証出来ない(そもそもアレを見た証拠も無い)。仮に立証出来たとしても、それが毒物の存在を踏まえた殺意に基づく行為だとは立証出来ない。つまり“アレの実験をしたところ、偶然、酒の中に毒が入れられていた”と言い張ることも出来なくはない。
 思い返せば、第1の犯行でもポカは失言くらい。“裁判で有罪判決を食らわない”との観点に立てばなかなか健闘したのでは。

 旅行案内としては面白かった。きちんと辻褄を合わせ切れなかった“海のある奈良”と言うネタを未完の作中作として投げ出してしまうのは、工夫と言えば工夫だが、やはりずるい。


No.792 5点 死の内幕
天藤真
(2020/09/19 11:28登録)
 作り物めいた設定に絡め取られて、不自由な動きを強いられている印象。下手な役者ばかりの芝居を観ているよう。死者の人間性の悪い部分が伝聞ばかりで取って付けたよう。
 台詞回しなんかは嫌いじゃない。ユーモアのセンス等を含めて都筑道夫っぽい感じも。


No.791 5点 誰の死体?
ドロシー・L・セイヤーズ
(2020/09/10 12:09登録)
 貴族探偵と言ってもこの人は自分で推理をするのである。

 ピーター卿「誰の死体?」
 サグ警部「さぁ~?」
 バンター「御前はロードでございますよ」


No.790 6点 白い家の殺人
歌野晶午
(2020/09/10 12:06登録)
 エレベーター無し4階建て別荘の最上階の部屋を最年長85歳にあてがうとは。おばあちゃんいじめられてない? 登場人物表&別荘見取り図を見た時から気になって気になって。一応理由はあるが、つまりは神たる作者が都合のいい状況設定をしたトバッチリである。
 犯人特定の理屈、“○○が出来そうなのは誰それだけ”は根拠薄弱。爪を隠せる鷹だっているだろ。


No.789 5点 異次元の館の殺人
芦辺拓
(2020/09/10 12:04登録)
 ――本を閉じたままの状態では、面白い話とつまらない話が同時に重なり合っていると考えざるを得ないわけです。本を開いて観察することによって全てが決定するのです。
 ――その刹那、両方の可能性がともに実現されるとは考えられませんか。この話が面白い世界と、つまらない世界に分岐することによってね。
 ――つまり量子力学的に考えれば、本書が傑作である世界も何処かに存在するのではないでしょうか。


No.788 6点 黄色い夜
宮内悠介
(2020/09/10 12:02登録)
 小国をカジノで乗っ取ろうと言う話。かと言ってアクション系ではなく、ギャンブル場面でエンタテインしつつも総体的には文芸寄りの穏やかな筆致で、その静と動の入り混じった、否、混ぜずに重ね合わせたような空気感は(どっちつかずなニュアンスも含めて)なかなか悪くない。案の定、初出誌は「すばる」だ。


No.787 6点 ダリの繭
有栖川有栖
(2020/09/10 12:01登録)
 ネタバレしつつ揚げ足取り。
 凶器に某氏の指紋が付いていたのは偶然なのか、それともそれを承知の上で濡れ衣を着せる意図があったのか、曖昧である。凶器にその商品を選んだ理由は別にあるので、意図の有無にかかわらず計画者の行動は変わらない。この件については“犯人の告白”が無いので宙に浮いたままだ。
 そして、どっちにせよ、凶器を投棄する前に“もちろん拭いておいた”との証言があるので、某氏の指紋が残っているのはおかしい。


No.786 5点 ケンネル殺人事件
S・S・ヴァン・ダイン
(2020/09/03 12:56登録)
 偶然が重なったこの驚くべき真相を、鋭過ぎる推理力で看破し見てきたように語るには、ハッタリの利くファイロ・ヴァンスが適任ではある。この手掛かりでそこまで判るかと言う疑問は置いといて、事件の表層も真相もなかなか面白い。ただそれを“面白い小説”に仕立てられなかった。
 犯人にとっても不可解な展開。これ、倒叙スタイルで書いたら良くない?


No.785 8点 緋色の研究
アーサー・コナン・ドイル
(2020/09/03 12:56登録)
 ホームズのキャラクター、警部二人の鍔迫り合い、第二部で語られる来歴。知名度のせいでつい逆差別していたが、こんなに面白い作品だったとは。長過ぎないおかげで飽きる前に読み終わる点も有利に働いているし、ミステリとしての面白さとは違う気もするが、面白ければ何でもいい。

 2章、“(ホームズが気ままに一人で弾くときは)ヴァイオリンを膝にのせて無造作に弾奏した”――そりゃ不可能ではないけれど……???
 思うにこれは演奏経験の無い人が抱きがちなイメージで、弦を押さえる左手が楽器の保持も兼ねていると言う誤解だ。実際には別の場所で楽器を固定しないと左手は弦の上を自在に動けない。本来は楽器の端を左の下顎と鎖骨で挟み固定する(左手を離しても楽器は落ちない)。それを踏まえてイメージすれば “膝の上” が困難な芸当だと判るだろう。


No.784 5点 暗号のレーニン
藤本泉
(2020/09/03 12:55登録)
 普段あまり読まない舞台設定ゆえ、'80年代ソビエト連邦と言う排外的社会の有り様は興味深い。過去を背負う諸々の登場人物にも味がある。ミステリ及びサスペンス作品としての冴えはいまひとつ。暗号はヒントを判り易く示し過ぎだが、それ自体がテーマではないのでまぁいいか。


No.783 5点 帰りは怖い
青柳友子
(2020/09/03 12:52登録)
 作者の資質は心理描写向きだが、物理的要素の大きい事件に挑んでしまい、どちらも中途半端。殺人事件そのものの説明をなおざりにして、探偵役の家庭事情を長々と語られても困る。被害者一族に関わる縁起が伝聞ばかりなのも勿体無い。秘められた鬱屈や思慕の類は得意分野だろうに。一応“雪の密室”付き。


No.782 5点 ななつのこ
加納朋子
(2020/09/03 12:51登録)
 全体的にわざとらしさが目立つ。日常の描写の中に伏線をちりばめるのはこのジャンルの基本マナーだが、本書は伏線の隙間を文章力で埋めていると言った趣でしばしば感興を殺がれた。
 その中で「白いタンポポ」のみ何故か出色の出来。“違和感を抱える心”をこんなに自然に描いた作品は、なかなか無いように思う。


No.781 7点 分解された男
アルフレッド・ベスター
(2020/08/27 14:04登録)
 完成度とか整合性とかに固執しなければ、大味ながらSFとミステリがそれなりに上手く融合しているのでは。テレパシーで情報を送る場面は、今読むとそのままデジタル技術みたい。弾丸のトリックは苦笑しつつも好み。ラスト前に垣間見る孤独な世界は本気で怖い。


No.780 8点 オクトローグ 酉島伝法作品集成
酉島伝法
(2020/08/27 14:03登録)
 キー・ワードは“粘”? 収められた短編8作、あまりにも個性が強烈なせいで、却ってどれも同じように感じられてしまうジレンマがある。ハードカヴァーの単行本が、ぬめぬめしたぐにゃりとした不定形の息物に見えて来た。(実は、例外的な作品も混ざっているんだけど……。)

 ところで、いわゆるトリビュート企画も収録されており、解説によると、それを承知で読むなら原典とのつながりはすぐに見当が付くらしい。私はそういう予備知識無しで読んだ為、結末でアレとアレが重なってオオッ~、と驚きを味わえた。作品との出会いも一期一会であって、今回のコレは私にとって偶然にも幸せな形になったと思う。


No.779 5点 ガラスの村
エラリイ・クイーン
(2020/08/27 13:55登録)
 赤狩りを主導したマッカーシー上院議員のファースト・ネームは、ジョゼフ。EQは本作で散々な目に遭う余所者にその名を与えている。露骨だ。まぁここで描かれた危うさはマッカーシズムに限らずいつでもどこでも有り得るものだし、読者が作者の意図云々に縛られる必要はないわけで、そんな知識は蛇足だけどね。


No.778 5点 誰でもない男の裁判
A・H・Z・カー
(2020/08/27 13:55登録)
 それなりに面白くはあるが、そこまで際立った特異性は感じられず。ものによっては、もう一歩踏み込んでも良いところをえぐくなる手前で引いちゃった、みたいな物足りなさ。過大評価は避けたい。

 表題作は1950年EQMMコンテスト第二席。“彼は無罪に決まっている!”と言う“圧”の中での裁判の話。(読むタイミングが偶然重なって過剰に意識しちゃったけど)エラリー・クイーン『ガラスの村』(1954年)の逆パターンだ。


No.777 7点 メルカトルと美袋のための殺人
麻耶雄嵩
(2020/08/27 13:54登録)
 ミステリのスタイルやルールを“どのように”扱うか、と言うメタ的興味が麻耶雄嵩作品のキモであるが、核になる事件自体は割と正統的な(≒今読むとややしょぼい)フーダニットに思える。そのせいで“地味な短編に奇妙な味のエンディングが付いている”だけのように見えてしまうところがあって損だな~。やっていることを考えるともうちょっと感じるものがあってもいいところ。
 「遠くで瑠璃鳥の啼く声が聞こえる」は非常にエクセレント。
 「ノスタルジア」の “A≠A´ (を呼び方と絡めるトリック)”は他の短編で再利用していて、使い方としてはそちらの方が思い切りが良い。その点がちょっと微妙。


No.776 7点 オレだけが名探偵を知っている
林泰広
(2020/08/20 17:55登録)
 真相はちょっとずるい。“ルールを優先して、やれることをやらないのは怠慢”と言う登場人物の哲学を実践しているのか。でもそれを小説として成立させる為の肉付けが、いつの間にか暴走し肥大化し、ロジカルなのに歪な異物を生んだのだ。思考実験やらマネジメント論やらをあちこちの本から集めてツギハギしたのではと邪推も可能だが、編集が巧みなので私は楽しく読んだ。パターン通りではない物を書こうと言うその意気や良し。


No.775 8点 双頭の悪魔
有栖川有栖
(2020/08/20 17:53登録)
 気になった点。
 Xが殺したかったのは片方だけなのか両方なのか。
 “手紙の工作”は少々わざとらしい手掛かりだ。インクが違えばばれる。また、密会の理由が警察に伝わってしまう。再利用ではなく新たに(脅迫状とか懸想文とか)でっちあげた方が捜査の攪乱に有効では。
 マリアがモデルを務めたのは裸婦像かと思ったが、読み返すと幾つか否定的な記述が。ちっ。

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