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ミステリの祭典

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クイーン警視自身の事件
エラリイ・クイーンシリーズ番外編、別題『クイーン警部自身の事件』

作家 エラリイ・クイーン
出版日1957年01月
平均点5.80点
書評数5人

No.5 4点 レッドキング
(2020/12/21 19:42登録)
新生児の闇売買がテーマの本格ミステリていうよりハードボイルド風の話。売られた赤子、新生児ブローカー悪徳弁護士、出産実母が相次いで殺され、赤子の雇われ看護婦と退職警視(INSPECTORて警視とも警部とも訳すのか)がコンビを組み、事件の真相を追う。登場人物一覧からして容疑者顔ぶれチト乏しく、「犯人これしかないだろが、これじゃあなあ・・」てのがやはり犯人だった。
※「真鍮の家」先に読んでなきゃ「このヒロインが犯人だと面白いなあ」とか楽しめたんだろが、その代わり犯人当て外れて、あの二人の「老いらくの恋」のハッピーエンドを素直に喜べなかったかな。

No.4 6点 虫暮部
(2020/09/19 11:31登録)
 枕カバーについて。
 ホニトン・レースの枕カバーに手の跡がついていた、それがいつの間にかきれいなアイルランド・クローセ編みのものに取り換えられている、とジェシイは証言した。
 その証言が間違いなら、手の跡の無いホニトン・レースの枕カバーも邸の中にあると考えるのが妥当、ある筈の枕カバーが無いなら証言の信憑性は増す。しかし警察はそういう捜し方をしていないようだ。
 ホニトン・レースの枕カバーが複数枚あって正確な枚数を誰も把握していないなら仕方ない。そんな記述は無いけど。

 退職した警官が“金の楯(記章)”を未だ持っているのはまずいでしょう。

No.3 5点 nukkam
(2018/03/11 06:52登録)
(ネタバレなしです) 息子のエラリー・クイーンの名推理の影で無実の人間を犯人と疑ったり全く犯人の見当がつかなかったりといいところのほとんどなかった父親のリチャード・クイーンに活躍の場を与えた1956年発表のシリーズ番外編で、エラリー・クイーンは全く活躍しません。内容的にもかなりの異色作で、殺される被害者が赤ん坊というのは私がこれまで読んだミステリーの中でもちょっと記憶にありません。タイトルに警視を使っていますがリチャードは警察を引退した身です。経験はあってもアマチュア探偵の立場のリチャードは赤ん坊の世話をしていた看護婦のジェシイ・シャーウッドとコンビを組んでの捜査になります。探偵役がエラリーなら自然とホームズ&ワトソンスタイルに落ち着くのですが、本書での2人はそれぞれ持ち味を発揮してほぼ対等の立場です。推理や情報を互いに隠すことなく共有していて非常にわかりやすいプロットですが、そのためか真相を最後まで隠すために決め手の証拠を最後の瞬間まで隠すという手段をとったため本格派推理小説としては読者に対してフェアと言い難いのがちょっと残念です。

No.2 7点 クリスティ再読
(2017/11/24 22:48登録)
本作、ミステリというよりも、変形のゴシック・ロマンスだと思って読んだ方がいいように感じる。
というのも、本作で一番説得力がある部分は、定年退職したクイーン警視と、ヒロインのナース、ジェシイとの恋愛描写だったりするからね。というか、ハンフリー氏って、ガチのゴシックロマンスの敵役キャラだと思うよ...としてみると、本作は第二期の上滑りした駄作群(ハートの4とか悪魔の報復とかね)に対する、成熟したクイーンの回答、というような気がするのだよ。ロマンスと冒険を、リアルで地に足の着いたかたちで実現できた...まあそれが男女の年齢を足して100歳を超える、熟年の恋だったとしてもね。
まあだから、本作の謎解きはおまけ。ヒロインが犯人に襲われて危機一髪ヒーローに救出される。それで十分。

だがどうしても警察には言いたくない。言ったが最後、この事件はわたしの手から離れてしまう。ジェシイ、これはあんたとわたしと二人の事件だ。

くぅう、こりゃ殺し文句だ。いいじゃないか、ハーレクインだって。
(本作エラリイが登場しないせいか、バリバリの真作なのに本サイトでも書評が異様にすくないなぁ。中期じゃ面白い方だと思うけどね。)

No.1 7点 Tetchy
(2011/07/29 20:49登録)
シリーズの主人公エラリイは全く登場せず、純粋にその父親リチャード警視―本作では既に定年退職しているので正確には元警視―が事件解決に当たる物語。これは現在世間ではエラリイ・クイーンシリーズの1つとして扱われているが、現代ならばスピンオフ作品とするのが妥当だろう。
したがって物語の趣向は従来のパズラーから警察小説、いや私立探偵小説に変わってきているのが興味深い。

そして警察小説ではなく、プライヴェート・アイ小説と訂正したのは既に警察を退職したリチャードがなかなか口を割らない容疑者を落とすため、警察が踏むべき手順を逸脱した捜査方法を取るからだ。
警察辞めるとクイーン警視がこんなにぶっとんだ方法を取るとは思わなかった。

今回の真相は先に解ってしまった。逆にもどかしくてなぜその考えに至らないのかじれったいくらいだった。
これは恐らく当時としてはショッキングな真相かつ驚愕の真相だったかもしれないが、現在となっては別段目新しさを感じないし、恐らく読者の半分くらいは真相を見破ることが出来るのではないだろうか。もしかしたらそれ故に本書が長らく絶版の憂き目に遭っているのかもしれない。

しかし本書でもっとも面白いのは物語のサイドストーリーのしてリチャード・クイーンとハンフリイ家の保母ジェッシイ・シャーウッドの恋物語。いやあ、次作からどうなるんだろ?

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