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ミステリの祭典

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虫暮部さんの登録情報
平均点:6.20点 書評数:2334件

プロフィール| 書評

No.2334 8点 死者のための音楽
山白朝子
(2026/09/29 12:32登録)
 端正な文章が却って怖い。奇妙な基本設定。その延長で明らかに変なのに澄まし顔の展開部。伏線回収しているようで腑に落ち切らない結びが余韻を残す。かと思えば捻りの無い作品もしっかり面白いところが偉い。
 心をざわつかせ、世界の見え方を少し変えてしまう作品集。


No.2333 7点 倫敦スコーンの謎
米澤穂信
(2026/09/29 12:32登録)
 謎は良く出来ているし、リーダビリティが高くて見事。語りの小ネタが一々楽しい。
 ただ、ミステリの枠を超えたところでガツンと来る感じはあまり無い。作者の作風を鑑みると、微妙に及び腰で爆走をセーヴしている印象を受けた。
 ところで、作品紹介で “第二作品集” と謳ってるよ。つまり、地名タイトルは公式に春夏秋冬とは別シリーズ扱い、と言うこと?


No.2332 6点 本格的 死人と狂人たち
鳥飼否宇
(2026/09/29 12:31登録)
 はっぴいえんどのあやか市に、何処かのフォーク・シンガーみたいな刑事達が居る。
 ネタバレするけれど、「変態」はおかしい。第一の殺人であんなトリックを弄したのはアリバイ工作の為なのに、アリバイそのものについては口を濁している。それはまだ良いとして、第二の殺人でそのアリバイの証人を殺している。場当たり的にも程がある。
 続く「擬態」は実にアクロバティックな飛躍で、頭が真っ白になってしまったよ。笑って良いのか何なのか。しかしスジは通っている。これは凄い。


No.2331 5点 ビブリア古書堂の事件手帖V ~扉子と謎めく夏~
三上延
(2026/09/29 12:31登録)
 第二話。挟まっていた “スリップ” は、通常なら売れた時に書店が回収するものだよね?
 それが残っていると言うことは、バッタ屋のような特殊なルートで流通したか、万引きされたか、等の事情があり、それが伏線である。
 と思ったんだけど全くその点は言及されず。昔はスリップの扱い方が違ってた?


No.2330 5点 退職刑事1
都筑道夫
(2026/09/29 12:30登録)
 論理が強引で、許容範囲内なのは「狂い小町」「昨日の敵」「理想的犯人像」、多少言葉が足りないけど「妻妾同居」もまぁアリか。約半分だから、都筑道夫としては割と高い打率なのである。
 「写真うつりのよい女」は、その状況でパンツは、お誂え向きに新品があったとして、穿くかも知れないが、穿かなくても不自然ではない。それを “事件最大の特徴” みたいにしたのは上手くない。下敷になった現実の事件の方が説得力を感じた。


No.2329 8点 射手座の香る夏
松樹凛
(2026/09/22 13:38登録)
 収録された四編中三編は、SFとしての思い切った設定を持ちつつ、新本格マインド溢れるミステリ的反転を取り込んだ意欲作。片方を引き立てるギミックとして他ジャンルの手法をちょいと拝借、と言うのではなく両方とも “本物” なのが嬉しい。
 最後の一編だけ少々毛色の異なるジュヴナイル風味ファンタジー。しなやかで潔癖な少女のキャラクターと、あまりにも鮮やかな映像喚起力。今でも目を閉じると洗濯ロープの脱出行場面がまざまざと蘇る(見たわけじゃないけど)。


No.2328 6点 未来世界から来た男
フレドリック・ブラウン
(2026/09/22 13:37登録)
 『フレドリック・ブラウンSF短編全集1』と銘打たれた2026年の新版は、旧版にショート・ショート4編を追加した(厳密に言えば、原書から割愛されたものを復帰させた)もの。
 その4編を見ると、なるほど訳者の知識や理解が無いと的確な翻訳にはならないものだなと納得。オチをちゃんと解釈出来ないと困る一方、オチなしの雰囲気もの的ホラーも含まれるから、見分けるのは大変だ。

 「最後の恐竜」。ブラッドベリのような詩情(言い過ぎ?)。
 「存在の檻」。確かに捻りには欠けるが、ジョニーを復元する過程が良い(それとて現在の視点で言えば、特に珍しいアイデアではないが)。思うに私は、“人間は物質であり、物質自体には生命も意識も宿ってはいない” みたいな考え方が好みなのだろう。
 「悪ふざけ」。何処で捻るか、と言う点では最も意表を突かれた。
 3分で読める掌編にも気の利いたものがあって侮れない。


No.2327 6点 失失失楽園殺し
森晶麿
(2026/09/22 13:36登録)
 漫画のような性格破綻者の天才達。にしては会話の内容が薄いけど、本気でアカデミックな議論をされても付いて行けないからまぁ宜しい。“人の感情は本物か、模倣か?” のテーマには合致したキャラクター設定かも。
 と言う、森博嗣の萌え系パロディみたいなムードは悪くないが、スケールの大きな部分と戯画的な部分が変な混ざり方をしている。
 真相はもっと驚けた筈なのに、妙に薄味に感じた。解説役向きのキャラクターがいないしね。動機に繫がる気持の動きが判りにくいのは、テーマからして妥当か。


No.2326 5点 鬼面の研究
栗本薫
(2026/09/22 13:35登録)
 “ガジェット自体が作り物” と言う人を食った真相は、良く考えると “そこまでやるか” との意味で怖い。
 一方で、TVスタッフも住民もあまり書き分けが出来ていないので、これ誰だっけと何度も首を捻った。重要人物だけ書き込んでモブはモブのまま流しているよう。ガジェットも並べただけで深みに欠ける(わざと?)。
 “読者への挑戦” は無い方が良かった。そこまでロジックがしっかり立った推理だとは思えない。いや、“勘で当てろ!” と言う批評かな?


No.2325 5点 蜘蛛男
江戸川乱歩
(2026/09/22 13:35登録)
 “江戸川乱歩が良く使うネタの寄せ集め” みたいな印象。連載途中で “49人” なんてブチ上げてしまって、収拾が付かなくなったか。一人一人書く余裕は無いとばかりに、結局まとめて処理する臆面の無さは流石、辻褄合わせの巨匠。

 一度は捕縛された青髭が、関係者の気の迷いから再び解放されてしまう。読んだ時は何じゃそりゃと思ったが、落ち着いて顧みるに、この不条理な展開こそ本作随一のオリジナリティかも。
 出番は限られているが、腹心の部下になった不良青年が、金や色目当てではなく青髭に本気で心酔しているみたいなのも印象に残った。つまり、なかなか魅力的なシリアル・キラーなのかも。


No.2324 7点 終着駅で待ち合わせ
真門浩平
(2026/09/15 15:10登録)
 「悲運の死」は、せっかく母と妹の推理まではぶっとんでたのに、変にまともなところに収斂してしまった。まぁそりゃそうか。
 ミステリは悪意を含む方が好ましい。本書はちょっといい話過ぎる。
 と思ったら「夢落ち」で貯めておいたものがドロッと出て来た感じ。殺人事件の部分も良いが、そこに至るまでの “明晰夢に嵌まって行く過程” に引き込まれた。


No.2323 6点 呪詛遊戯
市川憂人
(2026/09/15 15:09登録)
 ホラーの皮を被ったSFミステリ。
 いやぁ細かい。ややこしい。メモを取りながら読んでもきつい。呪詛の種類だけでなく時間軸のチェックも必要だったか。うにゃー、やっとれんわ!
 と疲れた心の隙間に忍び込む大ネタ! 内側に向かって進んでいたのに外側にもう一つ大きな殻があって、そのおかげで世界の色が変わってしまった。見事な反転だ。これにはやられた。

 この両者のアンバランスさ、リズムのズレ、によって最終的に或る種の効果があった気はする。
 でもやはり(事件の展開・内容を考慮するとチマチマしちゃうのは判るが)もう少し楽しく読める方策は無いものか。“状況確認の為に一々メモを参照する必要があった” と言うだけで、実のところ呪詛云々と事件の関わり方が物凄く面白いわけじゃないんだよねぇ。


No.2322 6点 虎の牙
江戸川乱歩
(2026/09/15 15:08登録)
 黄色と黒のだんだらぞめの髪に、ピンとはねた口ひげ、まっかな唇。このヴィジュアルはなかなか強烈なのである。
 しかし、ではこの博士が何をしたかと言うと、子供を誘拐はしているものの、基本的には “怪人対名探偵の角逐に警察が巻き込まれた” と言う側面が強い。
 資金はかかっていそう(洋館を買ったり)なのに、何も盗んでいないから、今回は赤字確定? 実は手品師として稼いでいたのかも?
 “フーン、じつに、手数のかかるいたずらをやったものですね。”、それを言っちゃあオシマイよ警部補。


No.2321 5点 ネタバレあり 双紋島の殺人
下村敦史
(2026/09/15 15:08登録)
 作中のテキストをいじくる構造は好きなんだけど、本作はあまりそれが生きていないと思う。論じる部分がダラダラしていて面倒。事件そのものの成り行きは悪くないので(断絶しちゃうところとか、驚いた)、それプラスちょっとした叙述トリック、と言った程度で済ませた方が面白くなったのでは。
 しかし、“○○は存在しない” はアンフェアだと思う。

 最大の名場面は “地底湖でアレと遭遇”。ダイビングの臨場感そして脱出劇のスリル。
 ミステリ要素そのものとは大して関係無いが、これまでに冒険物なども物している作者だけに流石の表現力である。


No.2320 4点 犯人は現場に首だけ戻る
倉知淳
(2026/09/15 15:07登録)
 真相のアイデア、切断のホワイ、等はまぁ良いかも知れないが、動きに欠ける坦々とした書き方が面白さを損なっている。
 書き下ろしの最終話に至っては、関係者との面談すら端折ってしまった。
 “何だか日下部刑事が面倒くさいから、これ以上の段取りを組んでいないようにも思えたけれど” って、面倒がっているのは作者では? 登場人物のせいにするなっちゅーの。


No.2319 6点 青銅の魔人
江戸川乱歩
(2026/09/08 13:27登録)
 さしもの二十面相も戦時下では活動出来なかったか。明智小五郎が暴いた真相にも戦争が影を落とす。
 “青銅の魔人” は『オズの魔法使い』の “ブリキのきこり” を思わせる。心が無いんだよね。PTSDに苦しむ帰還兵を投影したのかも知れない。冒頭の時計泥棒は二十面相らしくない乱暴な手口だし(あれじゃ昨今のトクリュウ案件だよ……)。
 世間を騒がすのは前半だけで、後半は私怨による個人狙いの事件なのが残念。このキャラクターでもっと暴れ回って欲しかった。諸々のトリックにはノー・コメント(笑)。でもラスト、二十面相の手に汗握る脱出劇は圧巻で御座います。

 現在冷静に読むと、明智さえも “良い家の子” と “チンピラ少年” を別扱いしていて、それは荒事に慣れているチンピラの適材適所と言う側面はあるかも知れないが、先生ちょっと待ってと言いたくなった。


No.2318 5点 片翼のイカロス
野島夕照
(2026/09/08 13:27登録)
 ヘリコプターに衝突! の件は凄いアイデアだ。
 でもなぁ。普通あんな “三階の窓から飛び立った” 偽装工作を施しても、真に受ける人はいないだろう。
 てっきり “犯行現場に残ってしまった何かを誤魔化すには、無理を承知でそうするしかなかった” と言う、“結果的に” 不可解な状況になったパターンだと思っていた。
 しかしどうもそうではない。“意図的に” 不可解にしている。警察はともかく、一族に対しては “被害者が空を飛んだ” 話が通用すると期待していたようだ。彼等のああいう発言は本気なのだろうか。怖いよ。まぁ世の中には突拍子の無いことを信じている人が結構いるけども。
 逆に、彼に合わせて信じるフリをしているうちに、牽制し合って引っ込みが付かなくなったのかも知れない。全員が “信じているわけないでしょ” と語り手にこっそり打ち明ける、なんて展開もちょっと予想していた。

 エピローグのアレは要らないと思う。


No.2317 5点 鬼葛島の殺人
三日市零
(2026/09/08 13:26登録)
 まぁ普通の孤島連続殺人事件。パターンを上手くこなしてはいる。ロジックは細かいが、ページを行きつ戻りつしてどうにか付いて行けたぞ、と思う。
 犯人が或るものを “念のため写真に撮った” と言う説明が納得出来ない。自分の目で見たんだからいいじゃん。探偵および読者に手掛かりを提供する為に不自然な行動をさせた、としか思えん。

 ところで、このツアーって配信企画として面白いのだろうか。遺物探しにせよ、謎解きゲームにせよ、余計なことに余力を割かず一つに集中した方が充実した内容になるのでは。


No.2316 5点 陀吉尼の紡ぐ糸
藤木稟
(2026/09/08 13:26登録)
 或る種の美意識に則ったキャラクター造形、博覧強記のオカルティズムや時代風俗描写で、次々にページを繰らせる筆力はあると思う。
 しかし、物語が非常に錯綜しており、一体何が起きているのか、そんな事件だったっけ、と真相から逆方向に出来事を読み直すはめになった。
 “怪奇小説としての材料は揃っているが……支離滅裂で話がまとまらんなぁ……”、
 作中人物の口を借りて言い訳するなっちゅーの。


No.2315 5点 一角獣殺人事件
カーター・ディクスン
(2026/09/08 13:25登録)
 誰が誰やら。何が何やら。
 そういう書き方をしがちな作家だと踏まえた上で歩み寄ったものの、その混沌が “作者の狙い” だと解説されては手も足も出ない。単に整理が下手だっただけじゃないの?
 でも一番受け入れがたかったのは、名探偵との対決が話題になるような “怪盗” が盗みの為に平気で人を殺すと言うこと。線引きの基準がバグっているようで、あまりにも浪漫に欠けるなぁ。

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