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ミステリの祭典

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虫暮部さんの登録情報
平均点:6.20点 書評数:2139件

プロフィール| 書評

No.2139 8点 蜘蛛の牢より落つるもの
原浩
(2025/12/28 16:29登録)
 うわぁ吃驚した。完全に引っ掛かった。でも言われてみればその可能性の方が高い。単なる茶番にもなりかねないところを、“掘り出した女が埋めろと言って生き埋め” と言うイメージのあまりの怖さで全てを凌駕した。私は本作、予備知識ゼロで読めて良かったと思う。グッジョブ!


No.2138 7点 白魔の檻
山口未桜
(2025/12/28 16:29登録)
 現代日本の医療制度に関する内部告発小説にしてパニック小説。犯人特定のロジックは細かくてちょっときつかった。と言うか、スリリングなパニックの展開に気を取られて、人の動きのアレコレまでは頭に残らない。作者の言いたいことは全部書きますと言った感じで、盛り沢山に過ぎる。
 ああいう論理展開が可能なら、殺人事件だけに絞ってもっと純粋なパズラーにしても良いのに。と私などは思ってしまうが……。

 あと、ミステリである以上、町長の件を曖昧なまま残してしまうのは如何なものか。あのエピソード、どうしても必要だろうか?


No.2137 7点 人魚姫
北山猛邦
(2025/12/28 16:28登録)
 ジュヴナイル風な境界領域を背景に、勇気とか信頼とかを上手く描いていると思う。みんなキャラが立っていて良い。感動した自分に驚いた。
 ところで、あんな物理トリックが成立する構造は、そもそもセキュリティ上で問題があるよね(笑)。


No.2136 7点 シュロック・ホームズの迷推理
ロバート・L・フィッシュ
(2025/12/28 16:28登録)
 “駄洒落を考えるのがだんだん難しくなり、発表される頻度が減った” と解説にあるが、逆に言えば作者はきちんとネタが溜まるまで堪えていたわけで、濃度は落ちていない。決して出涸らしなんかじゃないよ。

 ボーナス・トラック的な他シリーズ及びノンシリーズの作品も面白い。問題は、前半三分の二でシュロック・ホームズの世界に浸っていたので、他作品の世界観の調整をどうすべきか迷ってしまうこと。
 「ラッキー・ナンバー」はシュロックと似た世界だが、「クランシーと飛びこみ自殺者」は正統的な警察小説だし、「月下の庭師」「よそ者」もやや戯画的だがこちらの世界がベースになっている(筈)。それをついシュロックの気分で読んでしまったので、本来とは違ったイメージになってそう。

 そして一つ突っ込みたいのが表題。当該シリーズに於いて、笑いは物語の中ではなく読者のメタ視点に属している。真面目な顔で変なことをするのを読者が “真面目な顔で変なことをしているな~” と認識するから生まれる笑いであって、作中の人々はそれが変だと認識してはおらずシュロックをあくまで “名探偵” として遇しているのだ。
 であるなら、『迷推理』=“コレはギャグですよ~” な邦題はコンセプトから外れていると思う。格調高く、とは言わないが、『冒険』『回想』と来たのだから原典に倣って『シュロック・ホームズ最後の挨拶』とでもすべきではないだろうか。


No.2135 6点 なんで死体がスタジオに!?
森バジル
(2025/12/28 16:27登録)
 小粒ながら良品。ミステリ的な捻りとしてはさして珍しくもないけれど、上手に組み立ててあって成程ね~と思った。着地は意外におとなしくて、妥当とも無難とも言える。実在のタレント名を幾つも挙げているがTVは観ないので全然ピンと来ない。


No.2134 7点 紗央里ちゃんの家
矢部嵩
(2025/12/23 14:43登録)
 叔母さんの家の異常につい目を引かれるけれど、ふと気付くと語り手の壊れ方が徐々に明かされる過程が更に怖い。乙一『夏と花火と私の死体』に通じる気持悪さ。

 しかし、明らかな曲解ながら、私には語り手が世界を壊しているようにも見えた。語り手が、他者を狂わせたり現実を改変したりする邪眼の持ち主で、叔母さん達は彼に見られたせいでおかしくなった。だから実家にいる姉は電話口で比較的まともだし、会っている時間が短い紗央里ちゃんも影響は少なかった……って、小林泰三じゃないっちゅーの。


No.2133 8点 罪の棲家
矢樹純
(2025/12/23 14:43登録)
 地に足の着いた描写と、オチの鋭い切れ味。“痛い” 話もあるけど。どれが良いとかじゃなくて皆とても良い。
 “各世代の女性を取り巻くミステリ短編集” なる謳い文句に読了後気付いたが、そういう括り方はしない方がいいと思うな~。まぁ女性に関するイメージを上手く利用している部分も、この作者の場合は特に嫌な感じはしない。
 他の本を読む合間に一編ずつ読んだので、各々の味わいがより深まったのかも知れない。


No.2132 6点 吸血の家
二階堂黎人
(2025/12/23 14:42登録)
 ストーリーのあちこちに既視感が散見される。伝統芸能の古典作品を新人が演じて、それを結末まで知った上で観ているような気分。それこそ作中でちょっと言及された能とかね。まぁ演芸ならともかく、小説でそれを意義あるものとして成立させるのは大変だ。
 ただ、密室トリックはどれも良いので、それなりにその “意義” を支えているとは思う。


No.2131 6点 迷い家
山吹静吽
(2025/12/23 14:42登録)
 怪異周辺をこまごまと記した解像度の高さが、一方で読み進む推力に若干のブレーキをかけてしまった嫌いがある。
 私としては、妖しい世界に浸るよりも、ストーリー展開をもっと追いたかった。
 迷い家に囚われた心造少年がああいう風になるのは納得だね。


No.2130 6点 変な家
雨穴
(2025/12/23 14:41登録)
 私は、字の本なら文芸作品以外殆ど読まないけれど、ごくたまにハウツー本などを開くと文章レヴェルの差に啞然としてしまう。もうはっきりと濃度が低く、裏側が透けて見えそう。スラスラ読めるのはまぁ良いが、書籍一冊分のページを稼ぐ為の水増しが目に余り、無味のウェーハスを齧っているような気分になる。本書もそんな感じだ。
 つまらないちゃんとした小説よりも面白かったことは認めざるを得ない。でも売れたからってこういうのが幅を利かせるようになったら嫌だなぁ。


No.2129 8点 六人の嘘つきな大学生
浅倉秋成
(2025/12/19 16:09登録)
 独創的なプロットに、隅々まで行き届いた騙し。本格の精髄を堪能出来る。その上、世の中の欺瞞に鋭く斬り込んで、もはや社会派。
 ただ後半、人物像の反転の繰り返しに、皮肉な意味で “優しいなぁ” と鼻に付く部分が無きにしも非ず。
 美人キャラを出したついでにルッキズムにも突っ込んで欲しかった。“半端じゃなくお綺麗ですよね” なんて不快な台詞、意識的に言わせたなら作者はなかなか挑発的じゃないか。


No.2128 7点 『ギロチン城』殺人事件
北山猛邦
(2025/12/19 16:08登録)
 ギロチンて好きだな。見た目の派手な残虐さに反して、確実性が高く苦痛が少ない慈悲深い手法であると言うギャップが良い。

 人形のような登場人物達のせいで、クローズド・サークル御約束のやりとりが大胆に排されて、なまじの “人間を描いた” 小説より独創的なムードが生まれている。
 それは良いが、ここまで隔絶された環境で、皆殺しもアリなら、他者の目を意識したあんなややこしい物理トリックを使う必然性は薄いのでは、と思ってしまった。設定同士が喧嘩しているよう。
 トリック自体はまぁ評価したい。あのシステムで制御し切れないのは寧ろ “風” と “影の動き” じゃないかな。


No.2127 6点 ネズミとキリンの金字塔
門前典之
(2025/12/19 16:08登録)
 また見事に馬鹿みたいなアイデア(褒め言葉)。
 それは良いけれど話が未整理で、そういう演出だと言うことを差し引いても判りづらい。“精神病院の闇” は何処かで読んだような内容も多く目新しさは無いが、まぁしょうがない。
 また、不老不死研究について深く掘り下げずに、ただその結果だけ取り込んでいる点が、ブラック・ボックスを手探りしても空っぽだったような読後感で物足りなかった。


No.2126 6点 最後のあいさつ
阿津川辰海
(2025/12/19 16:07登録)
 非常に独創的なプロットではないだろうか。先の見えない展開に急かされてグイグイ読み進んだ。
 ただ、最後で躓いた。
 犯罪事件の真相ではなくて、かの俳優の心の深層について。あと最終回の完パケに関する感想。それらが、ミステリとしての謎解きと同じ調子でロジカルに説明されてしまったのが、私にはどうも納得出来ない。
 そこは “説明” ではなくて、もっとはっきり “実感” させて欲しかった。ここの表現が足りなかったせいで、犯罪事件解明のカタルシスが物語の最後のページまで持続出来なかったのである。


No.2125 4点 トランプ殺人事件
竹本健治
(2025/12/19 16:06登録)
 “アナグラム、数字も一致” は凄いな。“肩の上の猿” も面白い。でもミステリとしては全然ピンと来なかった。


No.2124 7点 仮面よ、さらば
高木彬光
(2025/12/12 11:40登録)
 シリーズを読み始めた時点で余計な予備知識は無かったので、順当に行けばもっとドカーンと来た筈だったのに……巻末解説で不用意なことを書くのは本当に止めて欲しい(それも一巻目で)。

 この人が犯人? と思ってもイヤそれはないだろうと皆が打ち消す、と言うことは見事に読者の裏をかいたと言って良いのだろうか。アンフェアだとは断じ切れない範囲で結構正しく隠蔽出来ていると思う。


No.2123 5点 現代夜討曽我
高木彬光
(2025/12/12 11:40登録)
 このシリーズ、立ち上げ当初は執筆・発表と作中年代がほぼ一致していたが、執筆がズルズルと先送りになった結果、本作の段階では二十年弱のズレが生じて若干レトロスペクティヴな(筈の)設定になっている。
 正直、描写そのものからそれを感じさせるような上手な作家だとは思わないが、それでも隙あらば時代性アピールを滑り込ませるのが微笑ましい。
 “日本で、女子プロレスがはやるなんてこと、考えられない” とかね。
 “西ドイツ” もそうかと思ったら発表は統一前。天然のレトロだった。


No.2122 8点 大東京四谷怪談
高木彬光
(2025/12/12 11:40登録)
 人間関係が判りづらいな~と思ってチャート図を作りながら読んだ。読み進むにつれてアレッ? と疑念が首をもたげる。
 事件の起きるポイントがバラバラだ。いみじくもウィドウさんが記したように “思いがけない飛び火” が幾つも発生している。殺された人形師と彫師、に取材した劇作家、の遠縁の二宮家、の墓に謎の卒塔婆がある、って遠過ぎない?
 またぞろ作者の弱点が出て場当たり的に繫いだんだな、どう纏める心算だ~? と意地悪な気持でいたら、主犯と共犯が絶妙に組み合わさって平仄が合ってしまった。これは吃驚、御見逸れしました!

 更にもう一つの真相で、ウィドウさんは自分も操られたのではないかとの不安を吐露しているが、そもそも彼女が事件に関わったのは、劇作家・清水と偶然再会したからである。彼女を通じて墨野、そして用心棒の津島が巻き込まれ、その結果もう一つの再会劇が発生した。
 と考えると、“偶然ではなかった” と見ても充分妥当。操り手が慈悲深いか残酷か、どちらとも言えそうだが、その不安、当たってるよ。


No.2121 4点 一、二、三-死
高木彬光
(2025/12/12 11:39登録)
 あんな動機をぶち上げておいて、被害者は大したことないなぁ。“まぁ普通の駄目人間” 程度。悪の帝王に戦いを挑むわけでもなく、“自分が殺し易そうな相手” を選んでいる。第二の殺人なんてどう位置付ければ良いのやら。
 そのくせ標的に相応しい悪人(→脅迫者)には手を出していない。実は自分の “殺したい欲” を満たしているだけの、弱い者狙いのサイコ・キラーだ。
 と言う感じのホワイは読んだことがある。ACである。ほら、数え歌の見立てだし。これは『そして誰もいなくなった』を下敷きにして書いたんじゃないだろうか。

 ところが “見立て” と言っても、
 ①“これは見立てである” と言うメッセージ(予告状や死体装飾など)があるわけではなく、死因や現場が合致していただけである。
 ②二人殺した時点で誰も見立てに気付いていないが、それに対し犯人がアピールした形跡が無い。
 ③カムフラージュなり雰囲気作りなりの役目を果たしておらず、目的が不明。犯人の自縄自縛ですらない。何故なら、
 ④第四の殺人は歌の四番と合致しない(そもそも時代的に日本で “鉄砲” は難しいだろう)。
 ⑤犯人の告白で言及されていない。
 ――と言った点を鑑みると、犯人が本当に見立てを意図したのか疑わしい。墨野隴人の独り合点なんじゃないの?


No.2120 6点 黄金の鍵
高木彬光
(2025/12/12 11:39登録)
 殺人事件そっちのけで埋蔵金がどうしたこうした。そんな話している場合か、と思いつつも、火の粉がかからない限り他人事なのも或る種のリアリティだったりして意外に面白く読み進めた。語りが殺人事件に集中していないおかげで、設定が雑になりがちな作者の弱点が(図らずも?)カヴァーされた、と言えるかもしれない。

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