kanamoriさんの登録情報 | |
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平均点:5.89点 | 書評数:2426件 |
No.1106 | 5点 | 毒殺は公開録画で サイモン・ブレット |
(2010/08/30 18:22登録) 売れない俳優チャールズ・パリスを探偵役に据えたシリーズもの。角川文庫の絶版本4冊のうちの1冊で、他は初期の作品ですが、本書のみ中期のものです。 テレビの”職業当て”クイズ番組のパリスへの出演依頼理由が、「顔を知られていない俳優だから職業当てに最適」という自虐ネタで笑わせます。 毒殺犯人を罠にかけるという解決方法はいまいちですが、のほほんとしたパリスの造形はくせになる魅力があります。 |
No.1105 | 5点 | 生れながらの犠牲者 ヒラリー・ウォー |
(2010/08/30 18:01登録) フェローズ署長シリーズの第5作。 13歳の少女の失踪事件を追う捜査小説で、当初の構図は「失踪当時の服装は」と似た様相です。 例によって仮説を組みたてながらの地味で緻密な聞き込み捜査の果て、見出した真相は痛ましすぎる内容でした。被害者の母子家庭という環境などのシリアスさは重すぎるので、読後感はちょっと複雑なものがありました。 |
No.1104 | 6点 | ジミー・ザ・キッド ドナルド・E・ウェストレイク |
(2010/08/30 17:37登録) 世界一不運な泥棒ドートマンダーシリーズの第3弾。 相棒で疫病神のケルプが持ってきた仕事は、リチャード・スタークという作家の犯罪小説を元ネタに誘拐を企てるというもので、いきなりのセルフ・パロディで笑わせます。元々ドートマンダーシリーズは悪党パーカーの没ネタをドタバタ・コメディに転用したようなものだから、楽屋落ち的なユーモアが洒落ていて楽しい。 |
No.1103 | 8点 | 学寮祭の夜 ドロシー・L・セイヤーズ |
(2010/08/29 17:10登録) これはセイヤーズ畢生の傑作でしょう。 女流探偵作家ハリエットとピーター卿のロマンス模様が縦糸にあり、ハリエットの母校を騒がす悪意の手紙事件を描いただけの物語ですが、それでこれだけリーダビリティの高い小説に仕上げる手腕は脱帽ものです。 シリーズ物はだいたい順番に読むようにしていますが、セイヤーズはアト・ランダムで、肝心の「毒を食らわば」も未読ながら本書は充分楽しめた。浅羽莢子さんの翻訳も素晴らしい。 |
No.1102 | 6点 | 死のバースデイ ラング・ルイス |
(2010/08/29 16:39登録) 女性脚本家の自宅で映画プロデューサーの夫が毒死した事件を描いたミステリで、多重解決風のプロットがなかなか面白かった。 小説場面はほぼ主人公である女性脚本家の自宅のみ、登場人物も数人に限られる。入れ替り立ち替わり登場する人物が実に活き活きと描かれていて、まるで舞台劇をみるようだ。 小品ながら良質の、まさに”推理小説”という逸品。 |
No.1101 | 6点 | トレント乗り出す E・C・ベントリー |
(2010/08/29 16:16登録) 「トレント最後の事件」で有名な作者の、素人探偵トレントもの12編を収めた連作短編集。 収録作数編の作品はアンソロジーなどで既読でしたが、こうしてまとめて読むと、人間味のある探偵役の造形がはっきり浮き彫りになり意義がある作品集だと思いました。 時代を感じさせる点は否めないですが、トリック、伏線、ミスディレクションなど、「最後の事件」よりもミステリ趣向は上等だと感じました。 |
No.1100 | 5点 | 青列車は13回停る ボアロー&ナルスジャック |
(2010/08/29 15:43登録) 知る限りボア&ナル唯一の邦訳短編集だと思います。 タイトルの青列車は特に内容とは関連なく、停車駅がある13の町を背景にしたミステリ短編集で、各話は独立しています。 ミステリ趣向の強いトリッキーな「奇術」「十一号船室」のような作品もありますが、軽妙なオチが読ませどころでしょう。 ただ、訳文がいまいちなので、本来の良さが充分伝わってこないような感じを受けました。 |
No.1099 | 6点 | ドン・イシドロ・パロディ 六つの難事件 ホルへ・ルイス・ボルヘス |
(2010/08/29 15:27登録) 珍しいアルゼンチン産のミステリ連作短編集。 チェスタトン風の探偵小説だとか、独房の囚人による安楽椅子探偵ものという事前情報で手を出しましたが、難解で修辞の多い文章と不条理な解決は相当読む者を選ぶ作風です。ブラウン神父というよりポジオリ教授シリーズに似たテイストだと思います。最終話の「タイ・アンの長期にわたる探索」の鮮やかなラストが印象的でした。 殊能将之のシリーズ探偵・石動戯作のネーミングはイシドロ・パロディのもじりのようですね。 |
No.1098 | 6点 | 殺人交叉点 フレッド・カサック |
(2010/08/29 12:31登録) この種の叙述トリックは今では珍しくもないが、50年前の作品ということで貴重な逸品といえるのではないでしょうか。これを読んだ頃は、まだ”叙述トリック”という言葉自体なかったですからね。 再読時には、フランス語の文法上、原書ではあの叙述はどう処理されているのかとか、物語と別のところに興味がいきました。 併録の「連鎖反応」も、いかにもフランス・ミステリという趣で、最近復刊されたシニアックの某作を彷彿させる皮肉が効いた作品でした。 |
No.1097 | 5点 | ロジャー・マーガトロイドのしわざ ギルバート・アデア |
(2010/08/29 12:09登録) 最近の海外ミステリで叙述トリックものといえば本書でしょうか。 トリックは「アクロイド殺し」とは似て非なるもので面白いが、この種のアイデアは国内ミステリの方が先行している感じで、既読感ありまくりでした。 パスティーシュまたはパロデイの趣向があまり感じられなかったのも残念。 |
No.1096 | 3点 | 誘拐犯の不思議 二階堂黎人 |
(2010/08/28 15:17登録) 水乃サトル・大学生編シリーズ。 叙述トリックの二大潮流は、人物(の特性)の誤認と視点の誤認だと思いますが、本書は誘拐事件に絡むアリバイ・トリックものということで、××の誤認を狙っています。残念ながら、トリックには新味がなく、策を弄しすぎたトリックのためのトリックという感じで面白味に欠けました。 ホームレスの死体を利用している所は、前作「智天使」に続いて、まだアノ作品を意識しているのかな。 |
No.1095 | 7点 | 厭魅の如き憑くもの 三津田信三 |
(2010/08/28 14:33登録) 民俗ホラーに本格ミステリを融合させた怪奇作家・刀城言耶シリーズの第1作。 横溝正史というより藤本泉風の古い因習が支配する閉鎖集団という雰囲気は嗜好のテイストですが、読みずらい文章(徒に凝った固有名詞を含め)と解りずらい作品舞台の地理状況で、途中まではリーダビリティが高くなかったが、終盤以降は急転しました。 多重解決の果てに出現した真相は、叙述トリックがあざやかに「神の視点」を変転させ、読者にホラーと本格ミステリ両面で驚きを与えるという離れ業をやっています。 |
No.1094 | 6点 | どんどん橋、落ちた 綾辻行人 |
(2010/08/28 14:00登録) 叙述トリック満載のフーダニット短編集ということで、必然的に全編メタ・ミステリになっています。そういう類いの作品集だと割り切って読めば、そこそこ楽しめる。 「どんどん橋」と「ぼうぼう森」は2編で1セット、誤認の手法が同じなだけに却って騙される。 「フェラーリは見ていた」の叙述トリックも基本は前2作に同じですが、一番つまらないと思った。 「伊園家の崩壊」のブラックなパロデイは編中唯一小説として楽しめた。 「意外な犯人」は海外作品や後発の三津田、米澤作品など多くの類似作があるので、読んだ順番によって感想が変わるのでは? |
No.1093 | 6点 | 消失! 中西智明 |
(2010/08/28 12:10登録) あるものを誤認させるバカミス系の超絶的な叙述トリックのみ取り上げられることが多い作品ですが、そのワン・アイデアだけでなく、ミッシングリンクものの様相から「×匹×役」トリックに繋がったり、意外な犯人像などが設定されていて、結構読みどころの多いミステリでした。 |
No.1092 | 6点 | ある閉ざされた雪の山荘で 東野圭吾 |
(2010/08/28 12:00登録) 疑似”雪の山荘”もので劇団員による殺人劇というプロットは、作者の別作品から派生したような内容ですが、本書は著者には珍しい××を誤認させる叙述ミステリでした。 ある隠蔽が、作品中の登場人物に対すると同様に、そのトリックにより読者に対しても同じ効果をあげているというユニークな構図になっていて面白いと思いました。 |
No.1091 | 5点 | ロートレック荘事件 筒井康隆 |
(2010/08/28 11:44登録) 叙述の技巧で××を誤認させて、結果的に「×人×役」トリックになっています。このタイプの誤認トリックとしては、わりと先駆的なものだと思います。 トリックを隠蔽するために叙述がぎこちなくなっていて読みずらいし、何かあるなと思いましたが、真相には至りませんでした。 解決部の種明かしは、自慢げで少々鼻につく感じがします。 |
No.1090 | 6点 | イニシエーションラブ 乾くるみ |
(2010/08/27 18:05登録) 若者のありふれた恋愛小説が2部構成で綴られ、最後まで読むと巧妙な仕掛けが飛び出すという小説でした。 1つ目の欺瞞は、B面途中でなんとなく分かりましたが、もう1種類の叙述トリックの方は気が付きませんでした。たくさんの伏線というかヒントは、アラフォー世代ぐらいの方はより身近に感じられることでしょう。 |
No.1089 | 7点 | 殺戮にいたる病 我孫子武丸 |
(2010/08/27 17:55登録) 猟奇的連続殺人鬼・蒲生稔を主人公にしたサイコサスペンス、と思わせて、本書も叙述に仕掛けを凝らした騙し絵ミステリでした。 犯人の名前が最初から明らかにされており、最終的にも蒲生稔が真犯人として物語が閉じるわけですが、それでも意外な犯人を設定したミステリになっている構図はなかなかユニークですごいと思いました。 |
No.1088 | 7点 | ハサミ男 殊能将之 |
(2010/08/27 17:42登録) この作品も、叙述の工夫によって読者を誤誘導させるタイプのミステリでした。非常に典型的な叙述ミステリですが、前知識なく読んでいたので、まんまと騙されました。 再読すると作者の巧妙な書きぶりがよく分かります。文章も手慣れた感じで、スラスラと読める点が好印象でした。 |
No.1087 | 6点 | 星降り山荘の殺人 倉知淳 |
(2010/08/27 17:42登録) なかなか巧妙な欺瞞が施された”雪の山荘”ものの本格ミステリでした。 都筑道夫の「七十七羽の烏」に倣った各章冒頭の説明文自体がミスディレクションになって、探偵役登場の章でまんまと騙されました。しかし、ほぼメインのアイデア一本のミステリでしたので、終盤までのベタでストレートな展開は少々だれる感じもありました。 |