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ミステリの祭典

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kanamoriさんの登録情報
平均点:5.88点 書評数:2430件

プロフィール| 書評

No.1110 6点 月が昇るとき
グラディス・ミッチェル
(2010/08/31 18:28登録)
サーカスがやって来た町で発生する連続切裂き魔の事件を、13歳の少年の視点で描いています。
異常な事件にもかかわらず、ノスタルジーを誘うファンタジー風の物語になっていて、仁木悦子の子供を主人公としたミステリを髣髴とさせました。
シリーズ探偵の心理学者ミセス・ブラッドリーが登場しますが、あくまでも脇役に徹していて、本書に関しては作者がパズラーを志向していないことが分かります。


No.1109 6点 四人の女
パット・マガー
(2010/08/31 18:09登録)
パット・マガーの第5作は、「被害者を捜せ!」「七人のおば」同様に”被害者当て”のミステリではありますが、明確な探偵役は置かずサスペンス風の物語になっています。
プロローグでクライマックスのバルコニーからの墜落死のシーンを見せておき、カットバック手法で、殺人を企てる人気コラムニストと”被害者候補”の4人の女性の関係が描かれていきます。
ミスディレクションが充分な効果をあげていないように思いますが、主人公ラリーの上昇志向で自己中心的な性格と心情の描写は卓越したものがあり、その点は満足できる内容でした。


No.1108 7点 ある詩人への挽歌
マイケル・イネス
(2010/08/30 18:57登録)
雪深いスコットランドの片田舎に立つ古城を舞台に、城主の墜落死の謎をメインに据えた本格ミステリ。
複数の人物の手記によって事件が語られていき、語り手が変わるごとに事件の様相が次々と変転していくという、重層的で多重解決もどきのプロットが面白い。
作者の他の作品と比べても、ゴシック・ミステリ的な雰囲気は異色で、好みのテイストですが、序盤の読みずらい文章は読者を選ぶかもしれません。


No.1107 5点 死体置場は花ざかり
カーター・ブラウン
(2010/08/30 18:42登録)
アル・ウィラー警部シリーズの軽ハードボイルド。
適度なお色気と軽快なテンポのプロットで、60年代には日本でも人気を博したと聞くシリーズで、結城昌治や都筑道夫などが影響を受けた作品を書いています。
本書が一応の代表作でしょうか。モルグからの死体消失、男女死体の入れ替りの謎などのパズラー趣向もあり、会話も洒落ていてそれなりに楽しめました。


No.1106 5点 毒殺は公開録画で
サイモン・ブレット
(2010/08/30 18:22登録)
売れない俳優チャールズ・パリスを探偵役に据えたシリーズもの。角川文庫の絶版本4冊のうちの1冊で、他は初期の作品ですが、本書のみ中期のものです。
テレビの”職業当て”クイズ番組のパリスへの出演依頼理由が、「顔を知られていない俳優だから職業当てに最適」という自虐ネタで笑わせます。
毒殺犯人を罠にかけるという解決方法はいまいちですが、のほほんとしたパリスの造形はくせになる魅力があります。


No.1105 5点 生れながらの犠牲者
ヒラリー・ウォー
(2010/08/30 18:01登録)
フェローズ署長シリーズの第5作。
13歳の少女の失踪事件を追う捜査小説で、当初の構図は「失踪当時の服装は」と似た様相です。
例によって仮説を組みたてながらの地味で緻密な聞き込み捜査の果て、見出した真相は痛ましすぎる内容でした。被害者の母子家庭という環境などのシリアスさは重すぎるので、読後感はちょっと複雑なものがありました。


No.1104 6点 ジミー・ザ・キッド
ドナルド・E・ウェストレイク
(2010/08/30 17:37登録)
世界一不運な泥棒ドートマンダーシリーズの第3弾。
相棒で疫病神のケルプが持ってきた仕事は、リチャード・スタークという作家の犯罪小説を元ネタに誘拐を企てるというもので、いきなりのセルフ・パロディで笑わせます。元々ドートマンダーシリーズは悪党パーカーの没ネタをドタバタ・コメディに転用したようなものだから、楽屋落ち的なユーモアが洒落ていて楽しい。


No.1103 8点 学寮祭の夜
ドロシー・L・セイヤーズ
(2010/08/29 17:10登録)
これはセイヤーズ畢生の傑作でしょう。
女流探偵作家ハリエットとピーター卿のロマンス模様が縦糸にあり、ハリエットの母校を騒がす悪意の手紙事件を描いただけの物語ですが、それでこれだけリーダビリティの高い小説に仕上げる手腕は脱帽ものです。
シリーズ物はだいたい順番に読むようにしていますが、セイヤーズはアト・ランダムで、肝心の「毒を食らわば」も未読ながら本書は充分楽しめた。浅羽莢子さんの翻訳も素晴らしい。


No.1102 6点 死のバースデイ
ラング・ルイス
(2010/08/29 16:39登録)
女性脚本家の自宅で映画プロデューサーの夫が毒死した事件を描いたミステリで、多重解決風のプロットがなかなか面白かった。
小説場面はほぼ主人公である女性脚本家の自宅のみ、登場人物も数人に限られる。入れ替り立ち替わり登場する人物が実に活き活きと描かれていて、まるで舞台劇をみるようだ。
小品ながら良質の、まさに”推理小説”という逸品。


No.1101 6点 トレント乗り出す
E・C・ベントリー
(2010/08/29 16:16登録)
「トレント最後の事件」で有名な作者の、素人探偵トレントもの12編を収めた連作短編集。
収録作数編の作品はアンソロジーなどで既読でしたが、こうしてまとめて読むと、人間味のある探偵役の造形がはっきり浮き彫りになり意義がある作品集だと思いました。
時代を感じさせる点は否めないですが、トリック、伏線、ミスディレクションなど、「最後の事件」よりもミステリ趣向は上等だと感じました。


No.1100 5点 青列車は13回停る
ボアロー&ナルスジャック
(2010/08/29 15:43登録)
知る限りボア&ナル唯一の邦訳短編集だと思います。
タイトルの青列車は特に内容とは関連なく、停車駅がある13の町を背景にしたミステリ短編集で、各話は独立しています。
ミステリ趣向の強いトリッキーな「奇術」「十一号船室」のような作品もありますが、軽妙なオチが読ませどころでしょう。
ただ、訳文がいまいちなので、本来の良さが充分伝わってこないような感じを受けました。


No.1099 6点 ドン・イシドロ・パロディ 六つの難事件
ホルへ・ルイス・ボルヘス
(2010/08/29 15:27登録)
珍しいアルゼンチン産のミステリ連作短編集。
チェスタトン風の探偵小説だとか、独房の囚人による安楽椅子探偵ものという事前情報で手を出しましたが、難解で修辞の多い文章と不条理な解決は相当読む者を選ぶ作風です。ブラウン神父というよりポジオリ教授シリーズに似たテイストだと思います。最終話の「タイ・アンの長期にわたる探索」の鮮やかなラストが印象的でした。
殊能将之のシリーズ探偵・石動戯作のネーミングはイシドロ・パロディのもじりのようですね。


No.1098 6点 殺人交叉点
フレッド・カサック
(2010/08/29 12:31登録)
この種の叙述トリックは今では珍しくもないが、50年前の作品ということで貴重な逸品といえるのではないでしょうか。これを読んだ頃は、まだ”叙述トリック”という言葉自体なかったですからね。
再読時には、フランス語の文法上、原書ではあの叙述はどう処理されているのかとか、物語と別のところに興味がいきました。
併録の「連鎖反応」も、いかにもフランス・ミステリという趣で、最近復刊されたシニアックの某作を彷彿させる皮肉が効いた作品でした。


No.1097 5点 ロジャー・マーガトロイドのしわざ
ギルバート・アデア
(2010/08/29 12:09登録)
最近の海外ミステリで叙述トリックものといえば本書でしょうか。
トリックは「アクロイド殺し」とは似て非なるもので面白いが、この種のアイデアは国内ミステリの方が先行している感じで、既読感ありまくりでした。
パスティーシュまたはパロデイの趣向があまり感じられなかったのも残念。


No.1096 3点 誘拐犯の不思議
二階堂黎人
(2010/08/28 15:17登録)
水乃サトル・大学生編シリーズ。
叙述トリックの二大潮流は、人物(の特性)の誤認と視点の誤認だと思いますが、本書は誘拐事件に絡むアリバイ・トリックものということで、××の誤認を狙っています。残念ながら、トリックには新味がなく、策を弄しすぎたトリックのためのトリックという感じで面白味に欠けました。
ホームレスの死体を利用している所は、前作「智天使」に続いて、まだアノ作品を意識しているのかな。


No.1095 7点 厭魅の如き憑くもの
三津田信三
(2010/08/28 14:33登録)
民俗ホラーに本格ミステリを融合させた怪奇作家・刀城言耶シリーズの第1作。
横溝正史というより藤本泉風の古い因習が支配する閉鎖集団という雰囲気は嗜好のテイストですが、読みずらい文章(徒に凝った固有名詞を含め)と解りずらい作品舞台の地理状況で、途中まではリーダビリティが高くなかったが、終盤以降は急転しました。
多重解決の果てに出現した真相は、叙述トリックがあざやかに「神の視点」を変転させ、読者にホラーと本格ミステリ両面で驚きを与えるという離れ業をやっています。


No.1094 6点 どんどん橋、落ちた
綾辻行人
(2010/08/28 14:00登録)
叙述トリック満載のフーダニット短編集ということで、必然的に全編メタ・ミステリになっています。そういう類いの作品集だと割り切って読めば、そこそこ楽しめる。
「どんどん橋」と「ぼうぼう森」は2編で1セット、誤認の手法が同じなだけに却って騙される。
「フェラーリは見ていた」の叙述トリックも基本は前2作に同じですが、一番つまらないと思った。
「伊園家の崩壊」のブラックなパロデイは編中唯一小説として楽しめた。
「意外な犯人」は海外作品や後発の三津田、米澤作品など多くの類似作があるので、読んだ順番によって感想が変わるのでは?


No.1093 6点 消失!
中西智明
(2010/08/28 12:10登録)
あるものを誤認させるバカミス系の超絶的な叙述トリックのみ取り上げられることが多い作品ですが、そのワン・アイデアだけでなく、ミッシングリンクものの様相から「×匹×役」トリックに繋がったり、意外な犯人像などが設定されていて、結構読みどころの多いミステリでした。


No.1092 6点 ある閉ざされた雪の山荘で
東野圭吾
(2010/08/28 12:00登録)
疑似”雪の山荘”もので劇団員による殺人劇というプロットは、作者の別作品から派生したような内容ですが、本書は著者には珍しい××を誤認させる叙述ミステリでした。
ある隠蔽が、作品中の登場人物に対すると同様に、そのトリックにより読者に対しても同じ効果をあげているというユニークな構図になっていて面白いと思いました。


No.1091 5点 ロートレック荘事件
筒井康隆
(2010/08/28 11:44登録)
叙述の技巧で××を誤認させて、結果的に「×人×役」トリックになっています。このタイプの誤認トリックとしては、わりと先駆的なものだと思います。
トリックを隠蔽するために叙述がぎこちなくなっていて読みずらいし、何かあるなと思いましたが、真相には至りませんでした。
解決部の種明かしは、自慢げで少々鼻につく感じがします。

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