ロジャー・マーガトロイドのしわざ トラブショウ元警部 |
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作家 | ギルバート・アデア |
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出版日 | 2008年01月 |
平均点 | 6.00点 |
書評数 | 6人 |
No.6 | 6点 | 人並由真 | |
(2019/10/13 16:40登録) 1935年の英国ダートムア。屋敷の主人であるロジャー・フォークス大佐とその妻メアリーは、女流推理作家のイヴァドニ(イーヴィ)・マウントや飛び入りの青年レイモンド(レイ)・ジェントリーをふくめて8人の客を迎えていた。だが吹雪でフォークス家の使用人や夫妻の娘セリーナを含む一同は屋敷の中に閉じ込められるが、その夜、屋根裏部屋で一人の人物が殺害される。しかもその現場は密室だった。近所に住む、元スコットランド・ヤードの警部トラブショウは、愛犬トバモリーとともに現場に馳せ参じるが。 2006年の英国作品。英国パズラー本家の地で新世代作家が著した、クラシック仕様の向こうの新本格という感じの一冊。 いかにもそれっぽい題名や面白そうな趣向の割に、10年以上経った現在の日本ではあまり口頭に登らない感じなので(実際にこのサイトでも5年以上、レビューがない)、内容は微妙なのかな、ソコソコなのかな、と予見したが、実際に、それなりに面白いものの、突出した出来ではなかった。 たぶん作者が本書最大のギミックのつもりで仕掛けたのであろうアレは、だから何ですか? の世界だし。密室トリックも、その馬鹿馬鹿しさを愛らしいと思うか、切って捨てるか、の二択(伏線が張りにくいのはわかるが、その点ももうちょっと何とかしてほしかった)。 ただまあ犯罪の構造そのものは、個人的にはちょっとツボ。犯人の内面を考えればこういう着想が生じるのもなかなかリアルだし。そのためのお膳立てもしつこいほどによく書き込んである。 トータルで見ればまあまあの佳作でしょう。2007年にも同じシリーズ探偵で新作が書かれたみたいなので、今からでも翻訳してほしい。 |
No.5 | 4点 | 蟷螂の斧 | |
(2013/07/08 12:31登録) オマージュ作品なので期待したのですが・・・。第1事件については、登場人物の独白が長すぎて、前へ進まない状況にイライラしてしまいました(笑)。第2事件および真相については、既視感があり、特にトリックについては、既読分すべて低評価なので、この評価です。 |
No.4 | 6点 | こう | |
(2012/03/25 22:45登録) 確かに日本の新本格を思わせるようなプロットで既読感がある作品ですが古き良き黄金時代の本格作品のようなストーリーで個人的には良かったです。密室トリックはちょっと失笑ものではありますがまあまあ満足です。 |
No.3 | 5点 | kanamori | |
(2010/08/29 12:09登録) 最近の海外ミステリで叙述トリックものといえば本書でしょうか。 トリックは「アクロイド殺し」とは似て非なるもので面白いが、この種のアイデアは国内ミステリの方が先行している感じで、既読感ありまくりでした。 パスティーシュまたはパロデイの趣向があまり感じられなかったのも残念。 |
No.2 | 7点 | nukkam | |
(2010/01/14 20:43登録) (ネタバレなしです) 英国のギルバート・アデア(1944年生まれ)は「作者の死」(1992年)や「閉じた本」(1999年)などのサスペンス小説の作家であり、また批評家としても知られる存在ですが2006年発表の本書はアガサ・クリスティーへのオマージュとして書かれた本格派推理小説三部作の第1作です。「アクロイド殺害事件」(1926年)のオマージュとして書かれた作品と評価されていますが、物語の締めくくりこそ「アクロイド」を彷彿させるもののそれほどの共通点はなく、容疑者たちが一堂に集まった状態で1人ずつ自分の過去を供述していく中盤までの展開はむしろ「そして誰もいなくなった」(1939年)の方を連想しました。カーター・ディクスンの某作品を思わせる「ひねり」がなかなか印象的です(好き嫌いはちょっと分かれるかも)。14章で密室トリック(ややリスキーかな?)が解明され、次章で犯人の名前が明かされることを予告する「読者への挑戦状」的な演出は謎解き好き読者の心をくすぐるでしょう。「アクロイド」を読んでいなくても十分に楽しめます。 |
No.1 | 8点 | ロビン | |
(2008/12/20 01:46登録) まいったね。やられました。 クリスティの名作『アクロイド殺人事件』へのオマージュとして書かれた作品。最近の作品だが、舞台となる吹雪の山荘でのクローズド・サークルもの。そのあまりにも古典的すぎるスタイルからか、冒頭から中盤にかけては物語的興奮は一切なく、全く面白みを感じなかった。『アクロイド』を髣髴とさせる要素もさっぱり。 それが解決編に入り、ようやく気持ちをそそられてきた。こういった発想の転換的トリックは個人的にかなり好き。一方、密室トリックはバカミスで、正直あまり気に入らない。 っていうか、何よりも驚かされたのが、本書に隠されていた仕掛け。(以降、完全なネタばれです) 三人称が一人称に化けた瞬間は驚愕。しかし日本の読者には『ロートレック荘』があるので、そちらを既読の方にはややインパクトが弱いかもしれません。 |