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ミステリの祭典

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kanamoriさんの登録情報
平均点:5.89点 書評数:2432件

プロフィール| 書評

No.192 6点 地下洞
アンドリュウ・ガーヴ
(2010/04/22 18:01登録)
自然界を舞台に巻き込まれ型サスペンスを量産したガーヴは、ディック・フランシスと並んで英国式冒険スリラー作家の典型と言えるかもしれません。
本書も、財宝探しのための地下洞での冒険で幕を開け、ある秘密を抱えた主人公と妻との心理的サスペンスへとつながる所まではいつものプロットなんですが、終盤とてつもない展開が待っています。
ガーヴの小説は、ある程度結末が予想できるものが多く、ミステリとして甘い点が不満でしたが、この作品はいい意味で予想を裏切っています。


No.191 7点 悪党どものお楽しみ
パーシヴァル・ワイルド
(2010/04/21 21:06登録)
元いかさまカード賭博の達人を主人公にしたコンゲーム風の連作ミステリ。
ほとんどの作品が、いかさま賭博のトリックを暴く本格ミステリの味わいがあり、またプロ対プロの戦いという点で賭博小説の趣もあります。なかでは、逆転の発想でラストが秀逸な「良心の問題」が気に入りましたが、逸品ぞろいの短編集だと思います。


No.190 7点 スイート・ホーム殺人事件
クレイグ・ライス
(2010/04/21 20:43登録)
隣家で起きた殺人事件をミステリ作家のママのために解決しようとする3人の子供たち。ノンシリーズの傑作ユーモアミステリ。
マローン弁護士&ジャスタス夫婦シリーズはどちらかというとスプラスティックな味わいの面白さで読ませるのに対して、こちらはホンワカしたユーモアがあります。小さな子供たちが、捜査する警部とママを結びつけようと画策する場面など笑えます。
意外性も追求されていて本格ミステリとしても一級品だと思います。


No.189 6点 シーザーの埋葬
レックス・スタウト
(2010/04/21 20:17登録)
蘭と美食を愛する安楽椅子探偵ネロ・ウルフ、シリーズ第6作。
前作は美食を求め珍しくウルフが外出したが、今回は蘭の品評会のため遠出する。探偵事務所に居座った状態だと、どうしてもプロットがパターン化するので、マンネリを避けたのでしょうか。
途中立ち寄った牧場で、全米チャンピオン牛シーザーの殺人容疑を晴らすべく奮闘する助手アーチーの減らず口も快調です。
二人の掛け合いを楽しむシリーズですが、今作は本格ミステリとしてもよく出来ていると思いました。


No.188 7点 西海道談綺
松本清張
(2010/04/21 18:32登録)
伝奇時代小説の巨編。
九州山中の隠し銅山の秘密を巡って延々と続く、謀略、冒険、恋愛、謎解きの壮大な物語世界を堪能できる。
清張の作家的体力には感嘆するしかありませんが、あまりにも長い。文庫500ページ超が4分冊、主人公の日田山中彷徨の場面は何度も同じシーンを読まされている気になりました。
それと、作者の作品にはよくあることながら、途中で本筋からズレてしまい、主人公が最後の方では主人公と言えるか疑問に思えてしまいました。
しかし、物語のリーダビリティが高く、かなり楽しめたのには間違いありません。


No.187 4点 古墳殺人事件
島田一男
(2010/04/21 18:02登録)
多摩古墳盗掘口での撲殺殺人を扱った古典的本格ミステリで著者の長編デビュー作。
古墳近郊に建つ「船を模した館」が出てきた段階で、ちょっと前に読んだバカミスを想起し、いやな予感に襲われましたが、案の定、力技のトリックが炸裂。これは捨てトリックでしたが、真相にはそれ以上に脱力しました。
結局、「犯人」は何もしない方が目的達成できたのではと思いますが。
併録のパスティーシュ短編「ルパン就縛」がまだ、しゃれた出来な分だけ読めます。


No.186 7点 蛇の形
ミネット・ウォルターズ
(2010/04/20 21:29登録)
普通の主婦が過去の黒人女性の不審死の真相を追求していくだけのお話。
被害者は周りから疎外された変人だったため、主人公の行動に対して、近隣住民のいやがらせや家族からの非難を受ける。
作者の小説の中では、比較的地味なテーマで筆致も重厚。
何故20年経過して彼女はこの事件の真相究明にこだわるのか?事件の真相もさることながら、この「探偵の動機」が肝で、最後の1ページで明かされるその真相は実に鮮やかです。


No.185 7点 大魚の一撃
カール・ハイアセン
(2010/04/20 20:39登録)
マイアミの自然を舞台に、元フロリダ州知事スキンクなど個性的な面々が毎回珍騒動を起こす、奇才の看板シリーズ。
今作は釣り大会の不正を絡めた殺人事件が本筋かもしれませんが、事件より登場人物の奇想天外な行動や独特のユーモアが読みどころだと思います。この頃のハイアセンは本当に弾けていました。


No.184 7点 これよりさき怪物領域
マーガレット・ミラー
(2010/04/20 20:15登録)
メキシコ国境近郊の若い農場主の失踪で幕を開ける心理サスペンス。マーガレット・ミラー後期の傑作です。
まず、タイトルがすばらしい。まるでミラーのサスペンス小説全てを象徴するようなタイトルだと思います。
残された農場主の妻と母親の心理的葛藤が緩慢な筆致で語られていきますが、息子の生存を確信する母親の造形が出色です。そして、息子の部屋のドアへの貼紙・・・結末は途中である程度予測がつきますが、やはり最後の衝撃は強烈で、心理サスペンスの女王の名に恥じない出来だと思います。


No.183 6点 殺しのデュエット
エリオット・ウェスト
(2010/04/20 18:52登録)
ある翻訳ミステリサイトでハードボイルド小説の私的ベストテンに選ばれていた作品で、興味をひかれて読みました。
たまたま街中のギャングの銃撃戦に遭遇し英雄になってしまった私立探偵の皮肉な末路を描いている。
スピーディでアクション満載のミステリでしたが、人物造形に厚みが不足していて、どちらかと言うとB級ハードボイルドに近い内容。ただ、ラストシーンは祭りの後の寂しさに似た情景で印象に残りました。


No.182 7点 ゴールデン・フリース
ロバート・J・ソウヤー
(2010/04/20 18:30登録)
倒叙形式のSFミステリで、しかも犯人は人工知能搭載のコンピュータという異色作です。
探査宇宙船の制御を司るコンピュータ「彼」の視点で、女性乗組員の殺害が描かれる。非合理性を排するコンピュータが何故殺人を犯したのか、ミステリとしての趣向は動機の謎に尽きますが、なかなかよく出来ていると思いました。
一般的に倒叙ミステリの読み所は犯人発覚の契機だと思いますが、最新コンピュータが企てた犯罪の暴かれる糸口が、ある古い骨董品装置だったのは皮肉に満ちていました。


No.181 5点 明日に別れの接吻を
笹沢左保
(2010/04/19 21:02登録)
過去の事件で執行猶予中の主人公が、旧友からアリバイ工作を頼まれる話。
情感あふれるタイトルとは裏腹な、バカミス系のアリバイトリックが規格外でした。
A地点からB地点に移動するための予想外の移動手段・・・そのシーンを想像するだけで爆笑ものです。


No.180 6点 脱サラリーマン殺人事件
藤村正太
(2010/04/19 20:52登録)
サラリーマンの出世競争の屈折をテーマにした社会派推理小説ですが、そんなテーマはどうでもよくて、奇抜なアリバイトリックを楽しむミステリです。
2番目のアリバイトリックが面白かった。こんな設定です。
北米大陸の氷河地帯での殺害事件で、被害者が持っていた写真に写った服装や景色から、被害者が冬頃まで生存していたことが確認できるが、容疑者は夏過ぎに一度渡米したきりで被害者と接蝕する機会がなかった。
冷凍死体ということで死亡時期が特定できないのがミソ。移動手段や写真の工作ではない予想外の仕掛けでした。
のちに、島荘と綾辻が同じネタを使っていますが、2冊とも同じ年に出版されて唖然としたことを覚えています。


No.179 6点 パーフェクト・マッチ
ジル・マゴーン
(2010/04/19 19:06登録)
ロイド警部&ジュディ・ヒル部長刑事シリーズ第1作。
真正面から本格ミステリに取り組む姿勢が明白で、非常に好感が持てるシリーズです。このところ邦訳がストップしているのはちょっと解せないです。
現代ミステリですから、探偵役二人のある関係のエピソードなどを挿入しなければならないのは許します。
本書は、事件は地味でトリックも使い古されたものかもしれませんが、騙されている人物の視点を多用することで、読者もミスリードする手法が巧いと思います。


No.178 7点 猿来たりなば
エリザベス・フェラーズ
(2010/04/19 18:37登録)
犯罪ジャーナリストのトビー&ジョージ・シリーズ第4作。
ホームズ&ワトソン風の探偵コンビのシステムに軽い遊びを入れていて、本書がシリーズの邦訳1作目ということで、それが効果を上げているかもしれません。
今回はトビーの一人称記述になっていて、読者は彼の思考を辿りながら猿の誘拐殺害事件を推理していく訳で、ミスディレクションの方策としてはどうかなあと思いながらも、巧妙なことは否定できません。
ユーモア風味ではありながら、殺猿事件の動機など意表を突くものがあり、本格ミステリとして充分合格点の出来だと思います。


No.177 6点 道化の死
ナイオ・マーシュ
(2010/04/19 18:01登録)
アラン警視シリーズ第19作。
作者は32作のミステリを書いていて、全てにこのシリーズ探偵が登場するようです。初登場時は警部でしたが、本書では警視となっています。一応、代表作のようです。
村の伝統ある豊穣祈念ダンス行事の真っただ中の、衆人環視状況の不可能殺人を描いていて、まずまず楽しめました。
探偵役の個性がやや乏しいのと、クリステイの様なハッタリに欠けるきらいはありますが、端正な本格ミステリと言っていいと思います。「ランプリイ家の殺人」で失望した人も、この作品にはある程度満足いく出来じゃないでしょうか。


No.176 7点 プラムアイランド
ネルソン・デミル
(2010/04/18 22:09登録)
ネルソン・デミルにエンタテイメントを求めるのなら、この作品から入るのがいいと思います。間違っても「誓約」や「将軍の娘」から入ってはいけません。これらは、シリアス系で題材もあまり日本人読者向きではないと思うから。
前半の細菌兵器がらみの話から、後半一転して財宝探しの冒険小説になって、個人的にはなかなか好みの物語でした。
主人公の造形も面白い。ウイット溢れる皮肉屋ぽいセリフがポンポン飛び出して、それだけでも楽しめました。


No.175 7点 ウォッチメイカー
ジェフリー・ディーヴァー
(2010/04/18 21:26登録)
このシリーズは、アルセーヌ・ルパンの時代から続く「怪人対名探偵」図式の古いタイプの通俗スリラーなんですが、科学捜査などの新しい装飾と過剰なほどのどんでん返しの連続が一般受けする理由だと思います。
読者が推理して楽しむような創りではないので、ロジックを重視する本格パズラー好きにとっては、あまり評価されないのではないでしょうか。
シリーズ第7作ともなるとマンネリ感は否めません。目先を変えるためライム・ファミリーに新しいキャラクターを次々と加えるため、無駄に物語が長大になっていく感じもします。「次作につづく」方式のエンディングも通俗スリラーそのものでしょう。
まあ、そうはいっても面白かったし、一級品のエンタテイメントには違いないですけど。


No.174 7点 不屈
ディック・フランシス
(2010/04/18 19:20登録)
近年の競馬シリーズでは一番好きな作品です。
伯爵家の血を継ぐ孤独感のある若い画家が主人公で、義父の会社の横領事件と財宝探しに巻き込まれる話。
競馬シリーズとする必要がないほど、殺人や派手な陰謀は出てこないし、競馬は全然本筋と関係がない。
初期作に比べるとどちらかと言うと地味な作風ですが、登場人物はいつも以上に魅力的ですし、主人公が徐々に不屈の精神を発揮してくる所は、いつものフランシス節です。
特に、おしゃれで余韻が残るエンディングがよく出来ていると思いました。


No.173 6点 風が吹く時
シリル・ヘアー
(2010/04/18 18:45登録)
ペティグルー弁護士シリーズ第3作。
前作では「法の悲劇」のマレット警部と共演していますが、今回は単独で、地元の管弦楽団コンサート中の殺人事件に関わります。事件の解決そのものより、登場人物とのユーモラスな掛け合いを楽しむ典型的な英国新本格ミステリですが、その言動の中に伏線が張られていたり、動機が法律がらみである点など、いかにもヘアーらしい佳作でした。

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