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ミステリの祭典

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明日に別れの接吻を

作家 笹沢左保
出版日1967年01月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 6点 人並由真
(2019/06/22 04:41登録)
(ネタバレなし)
 元・運輸省航空局の官吏・須賀原純は今から6年前、複数の仲間と組んで愛妻の麗子をレイプした不良大学生・西脇を、激昂の果てに殺してしまった事実があった。夫の殺人の2日後に麗子は自殺。状況を斟酌された須賀原は実刑3年、執行猶予5年の判決を受けた。麗子の実妹で、今は恋人関係になった美由紀の支援を受けながら、あと2週間ほどで執行猶予の期間が完了する須賀原。そんな彼を訪ねてきたのは、旧友の浦松周作だった。浦松は何者かを殺してしまったと告白し、須賀原にアリバイの偽証を願う。しかし今は警察沙汰を何よりも避けたい須賀原がその願いを拒否すると、浦松は須賀原の住むアパートの部屋~地上7階から身を投げて死んだ。浦松の死に引け目を感じた須賀原は、旧友が片言で語った殺人の事実を調べ、事件の真相を追おうと考える。だがそれは、場合によっては彼の執行猶予取り消しにも繋がるかもしれない、危険な行為でもあった。

 作者の初期作品で、設定はサスペンス寄りだが、事件の概要が見えていくなかで次第にアリバイ崩しの謎解きものに接近していく。
 それで肝心のアリバイトリックは、日本の国産ミステリ史上最高級に敷居の低いアイデアではないか!? と半ば呆れて半ば感心した。作者は60年代後半の狂乱の多作期のさなか、先にこのワンアイデアを思いついたのち、あとからミステリとしての結構を固めたんだろうと思うけれど、とにかく一度読んだら忘れることはあるまい。
 あと、タイムサスペンス的な筋立てだからあんまり物語に停滞があると困るのはわかるけれど、捜査(調査)を続ける主人公の前であまりにもホイホイと都合良く物事に動きがあり、関係者が現れてくれる。これも気になった。

 ただラストは泣ける。これまで読んだ笹沢長編作品では『裸の家族』と並ぶ泣かせの効いたクロージングで、あんまり悪い点はつけたくない。
 ということでこの評点。

No.1 5点 kanamori
(2010/04/19 21:02登録)
過去の事件で執行猶予中の主人公が、旧友からアリバイ工作を頼まれる話。
情感あふれるタイトルとは裏腹な、バカミス系のアリバイトリックが規格外でした。
A地点からB地点に移動するための予想外の移動手段・・・そのシーンを想像するだけで爆笑ものです。

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