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ミステリの祭典

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kanamoriさんの登録情報
平均点:5.88点 書評数:2501件

プロフィール| 書評

No.401 5点 初陣
今野敏
(2010/05/30 21:45登録)
隠蔽捜査シリーズ初の短編集。
「隠蔽捜査3.5」というサブタイトルからして苦笑ものですが、主人公の大森署長・竜崎という特異なキャラクターを友人の刑事部長伊丹の視点で軽妙に掘り下げていて、お笑い警察小説として充分に楽しめました。
前作「疑心」の裏話である「試練」ほか、各編とも軽めの語り口のためスラスラ読めます。


No.400 8点 あした天気にしておくれ
岡嶋二人
(2010/05/30 19:07登録)
倒叙形式で描く競走馬の狂言誘拐から、謎の介入者による身代金略取計画に変わる物語のツイストが非常に巧妙です。このような面白いプロットを書かせたら、この時代では著者が抜群のナンバーワンでしょう。
身代金略取のトリックに関して、夏樹静子の某短編との類似性とか現実的に実現不可能とかイチャモンがはいったようですが、本書の肝は倒叙ミステリとフーダニットを両立させたプロットの妙にあると思います。


No.399 5点 51番目の密室
アンソロジー(出版社編)
(2010/05/30 18:17登録)
”世界ミステリ全集・37の短編”からのセレクト第2弾。
第1弾の「天外消失」が好評だったのか、続けて出版されましたが、今回は他のアンソロジーなどで読める作品がほとんどでした。この企画が20年ほど早ければもう少し高評価でしたが。
マクロイ「燕京綺譚」やヴィカーズ「百万に一つの偶然」をはじめ、カー、ブランド、ライス、ホックなどをいまさら選定する編集方針は大いに疑問です。


No.398 6点 天外消失
アンソロジー(出版社編)
(2010/05/30 18:00登録)
伝説の選集”世界ミステリ全集第18巻・37の短編”からセレクトした傑作選。
元本の中から他のアンソロジーでも読めない作品を中心に選定したと解説にありますが、リドル・ストーリーの代名詞「女か虎か」とかF・ブラウン「後ろを見るな」なんかは、いまさら感があります。
ロースン「天外消失」は不可能トリックものが多い作者の代表作で、マジックのネタを見るよう。
エリック・アンブラー唯一の本格ミステリ「エメラルド色の空」とかバロウズ「ジャングル探偵ターザン」なんかの珍品が読めたのは収穫でした。


No.397 7点 開幕ベルは華やかに
有吉佐和子
(2010/05/29 22:47登録)
帝劇を舞台に大物女優の殺害脅迫事件を描いた劇場ミステリ。
こういったミステリは役者同士の人間関係のアヤが読みどころのひとつですが、この小説の場合は脅迫対象の女優の存在感に尽きると思います。共演男優との陰湿な駆け引きとか、2億円の要求額が少なすぎると怒りだすシーンなどで引き込まれます。
犯人の設定は、女優の人物造形からある意味分かりやすくなっていますが、サスペンスに溢れたなかなか面白いミステリに仕上がっていると思います。


No.396 3点 狐の密室
高木彬光
(2010/05/29 22:13登録)
ともにシリーズ探偵である神津恭介と大前田英策の共演作。
新興宗教の教祖の雪の密室殺人を描いていますが、密室トリックが情けないほどしょぼい上に、物語自体に斬新さがなく、まったく面白くありませんでした。
如実に筆力の衰えが表れている作品です。


No.395 5点 禁じられた手綱
佐野洋
(2010/05/29 22:02登録)
競馬騎手の義姉の誘拐事件に複数の殺人が絡む本格ミステリ。
登場人物が多く人間関係が複雑な上に、義父の事故死や心中事件など次々と物語が展開していくのは、週刊誌連載小説ゆえの弊害だと思います。
小額の身代金の理由など誘拐事件の謎に焦点を絞ったプロットにしていれば、スッキリしたミステリになっていたと思いますが。


No.394 6点 白夜街道
今野敏
(2010/05/29 17:35登録)
公安部・倉島警部補を主人公にしたハード・アクション小説、シリーズ第2弾。
著者の主要ジャンルである警察小説と格闘小説を合体させたようなシリーズで、倉島の公安部職員としての成長物語であるとともに壮絶な活劇・銃撃シーンに溢れています。
裏の主人公・元KGBの殺し屋ヴィクトルの人物造形に非凡なものがあり、むしろ彼のシリーズともいえますが、第3作に登場しないのは残念です。


No.393 5点 踊り子殺人事件
嵯峨島昭
(2010/05/29 17:15登録)
女性二人組の旅芸人が全国各地を巡行する中で遭遇する殺人事件を、ひょうんなことから同行者となった普通の会社員の視点で描いています。
後の作品でシリーズ探偵役となる酒島章(さかしましょう)警部は人妻とゴルフばかりして、なぜか最後にちゃかり解決する。
ミステリの趣向として面白いのは、”人物に関するトリック”が4種類も入っているところで、通俗小説として読んでいるとまんまと騙されます。


No.392 4点 天皇賞レース殺人事件
草野唯雄
(2010/05/29 16:54登録)
天皇賞レースの不正騎乗と査問委員の殺人容疑を受けた騎手を主人公にしたサスペンス風ミステリ。
ディック・フランシスの競馬シリーズを暗くしたムードが漂う前半は読ませますが、意外な犯人は心情的にムリ筋で、物語の雰囲気を壊しているように思います。


No.391 6点 バルーン・タウンの殺人
松尾由美
(2010/05/29 16:34登録)
妊婦だけが住む街を舞台にしたSFミステリの連作短編集第1弾。
いくつかの作品で、有名古典ミステリの趣向をパロっているのが面白い。「なぜ、助産婦に頼まなかったのか?」はクリステイで、創元推理文庫版のみ収録の「バルーン・タウンの裏窓」はアイリッシュの名作のパロデイ。
「亀腹同盟」はホームズづくしで、赤髪連盟、六つのナポレオン像、踊る人形の趣向をうまく取り入れていて、結末に意外性もあり、これが私的ベスト。


No.390 5点 謀略の大地
海渡英祐
(2010/05/29 14:41登録)
日中戦争を時代背景にした謀略ものの連作短編集。
特務機関の憲兵・殿村を主人公にした、各話とも満州国建国、盧溝橋事件、二二六事件、南京事件など歴史的事件が絡むミステリになっていて、歴史の勉強をしながらスパイ戦を楽しめます。
乱歩賞受賞以前に書いていたスパイ謀略ものの系統で、意外な結末に重点をおかない「ジョーカー・ゲーム」という感じで、ミステリとしては薄味でした。


No.389 6点 花塵
連城三紀彦
(2010/05/28 20:50登録)
いわゆる<平成悪女もの三部作>の一作ですが、目を見張るほどのドンデン返しが仕掛けられているわけではないので、そういうミステリ趣向を期待をして読むと満足を得られない作品かもしれません。
大正時代の画壇を舞台に一人の奔放な女性を主人公とした恋愛小説風のミステリで、主人公が男性遍歴を繰り返す理由が謎でミステリとしての肝ですが、伝記風に綴られる女性主人公と画家たちの駆け引きが楽しめるかどうかで評価が別れると思います。


No.388 6点 心では重すぎる
大沢在昌
(2010/05/28 20:24登録)
舞台が新宿なら警察ハードサスペンス、六本木なら軽ハードボイルドという一応の棲み分けが出来ている著者の小説。ということで正統派ハードボイルド佐久間公シリーズ第6作の舞台は渋谷です。
単行本で750ページの大作で、出版時はおそらく「読むには重すぎる」なんて言われたことでしょうね。
漫画界を中心に若者サブカルチャーの話題が満載されていて、ちょっといままでと勝手が違いますが、読み進めればいつもの大沢節が味わえます。主人公は作者の分身のようで、その主張はオジサン臭い感じも受ける。佐久間公もそれだけ年齢を重ねたということでしょうか。


No.387 6点 島崎警部のアリバイ事件簿
天城一
(2010/05/28 18:58登録)
ミステリ傑作選集の第2巻。
作品集のタイトルからは著者のもう一人の探偵役である島崎警部もののアリバイ崩しが中心のように思えますが、不可能犯罪ものも多く収録されています。
第1巻と比べて読みやすい文体になっていますが、トリック的にはやや劣る内容だと思います。
なかでは、不可能トリックものの名作「朽木教授の幽霊」がダントツの私的ベスト作品。


No.386 5点 ダビデの星の暗号
井沢元彦
(2010/05/28 18:44登録)
芥川龍之介を探偵役にした歴史謀略系ミステリ。
伊達騒動の裏の真相に繋がる掛け軸の暗号や、日本人ユダヤ同祖説などの奇説を絡ませた密室殺人を描いていて、さらに脇役で江戸川乱歩を登場させるなどサービス精神旺盛なところは買いですが、大風呂敷を広げた割に真相がアレではちょっと腰砕けの感じです。


No.385 4点 神と野獣の日
松本清張
(2010/05/28 18:31登録)
某国の核搭載ミサイル2発が東京に向け発射された、という近未来IFパニック小説。
数多い清張作品の中でも一番の異色作で、滅亡型パニック小説としては「日本沈没」の先駆といえますが、文庫で200ページ余りの分量のせいもあり、政府幹部の無能ぶりや国民の混乱状況の描写など通り一遍で非常に物足りない内容です。主人公を設定した人間ドラマでないため、いつもの重厚な物語性を味わえない不満が残りました。


No.384 6点 薫大将と匂の宮
岡田鯱彦
(2010/05/27 18:44登録)
平安王朝ミステリ。
紫式部を探偵役にして、執筆中の源氏物語の続編のモデルとなった二人の男性が絡む殺人事件を描いています。紫式部と清少納言の推理合戦という設定だけで楽しいですし、匂いを小道具に使ったトリックも面白い。
ただ、国文学者という作者の本職を活かした平安朝の雰囲気描写があまり見られないことと、中編並みの分量なので意外とあっけなく終わってしまう点が惜しいと思いました。


No.383 7点 離れた家―山沢晴雄傑作集
山沢晴雄
(2010/05/27 18:22登録)
鮎川哲也のアンソロジーなどに頻繁に収録されている著者の初めての単行本です。既読の作品が多いですが、このようにまとめて読めるのは嬉しい。
シリーズ探偵・砧順之介もの4編は、アマチュア作家の側面が出ていて読みずらいのが難点ですがトリックは面白い。
編中の白眉は中編の「離れた家」で、瞬間死体移動の謎と複雑なアリバイトリックのロジックが素晴らしい。あまりに複雑すぎて一度読んだだけでは理解しにくいほどで、さすが本格の鬼といわれるのが分かります。これを読めただけでも満足でした。


No.382 5点 暁英
北森鴻
(2010/05/26 23:05登録)
明治初期の東京を舞台に日本政府に招聘された英国人建築家を主人公にした謀略時代小説。
鹿鳴館の設計図に関わる謎を巡って、政府側要人と英国某商社の陰謀が渦巻く物語ですが、そういう面白そうなプロットの割に、作者はエンタテイメントを追求する小説創りをしていないので、手放しで楽しめる小説ではありませんでした。
作者急逝のため未完のまま物語終盤で小説は終了していますが、完結されていたとしてもこの感想は変わらないと思います。

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