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ミステリの祭典

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傷ついた野獣
新聞記者(ブンヤ)稼業シリーズ

作家 伴野朗
出版日1983年01月
平均点5.00点
書評数2人

No.2 5点
(2019/07/20 21:24登録)
 『野獣の罠』に引き続き、日本海に面した東北ブロック紙の地方記者「俺」の泥臭い活躍を追う〈新聞記者(ブンヤ)稼業シリーズ〉第二弾。 外郭団体事業団への県知事直々のキナ臭い土地建物払い下げに絡んで、田舎ならではのドロドロとした政争を描いた「予定稿解除」から、夏の甲子園県大会に彗星のように現れた、超高校級の強打者を巡る殺人事件の謎を解く「場外ホームラン」まで全六編収録。1984年度の第38回日本推理作家協会短編賞受賞。
 輝かしい短編集ではありますが、第一作目の「野獣の罠」と比較してもさらに密度は低下。「交通遺児のために」との名目で、県警本部に少なからぬ金を三か月連続で送り続ける謎の篤志家の動機を探る「美談の裏側」と、地方銀行本店から支店に送られた現金郵袋を盗んで失踪した国鉄少年作業員の心に迫る「少年の証言」が、一応ミステリとして整ってるくらいでしょうか。
 前々回の36回から協会賞に〈連作短編集部門〉が設置されるも、翌37回は胡桃沢耕史の『天山を越えて』が長編部門を受賞したのみ。本書が初の連作賞に選ばれたのも、競合作品自体が少なかったのではと勘繰ってしまいます(この作品以後も短編賞は、第42回の小池真理子『妻の女友達』まで、4度に渡って〈受賞作なし〉が続く)。書き手の狭間の時期に当たっていたのでしょうか。
 とはいえ女っ気の無い三十男の「俺」にも県警本部秘書課に勤める恋人・泰江が出来、シンパの辺見武四郎刑事や「山金」こと山田金一警部補、情報源の地方文化人にして俳人・吉野文次など、準レギュラー陣もそこそこ揃ってきました。地方色を求めて読む分には、案外良いシリーズかもしれません。

No.1 5点 kanamori
(2010/05/16 22:42登録)
東北のある地方都市を舞台に新聞記者を主人公にしたミステリ連作短編集、「野獣の罠」に続く第2弾。
主人公は一匹狼的なはみ出し記者という設定ですが、ハードボイルドというほど尖がっているわけではなく、ちょっと個性に乏しい感じを受けます。
収録作では、「予定稿解除」が結末に意外性がありまずまずですが、いずれの作品もミステリ度は薄めでした。

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