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ミステリの祭典

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まさむねさんの登録情報
平均点:5.89点 書評数:1283件

プロフィール| 書評

No.1203 7点 半席
青山文平
(2025/01/03 21:48登録)
 江戸を舞台とした連作短編。ホワイダニットとして秀逸だと思うのですが、主人公・片岡直人の成長譚として、その絡ませ方も巧い。直人の上司・内藤雅之の人間味もいいですねぇ。どの短編も良作なのですが、特に「六代目中村庄蔵」のホワイとその結末は結構沁みました。良き短編集だと思います。


No.1202 7点 田沢湖殺人事件
中町信
(2024/12/23 20:05登録)
 トリック盛り沢山のうえ、鮮やかな反転。素晴らしいです。時刻表の件は、あまりに恣意的な「待ち合わせ場所」であったため、結構分かり易いとは思うのですが、それはトリックのごくごく一部。伏線は十分にあるのだけれど、想定できなかったなぁ…。隠れた?名作だと思います。


No.1201 6点 幸せな家族 そしてその頃はやった唄
鈴木悦夫
(2024/12/20 23:16登録)
 「孤高のジュヴナイル・ミステリ、復活」との帯に惹かれ、中公文庫版を購入。
 大まかなポイントは多くの方が序盤から見通すのだと推測しますが、その一つ一つに工夫が施されているので、それはそれで興味を切らさず読み進められたと思います。どんどんページをめくらされます。ラストも、最終的な結論としては想定内としても、その経過はなかなかに衝撃的。
 でもこの作品、読者のターゲットが本当に少年少女だとしたら、ちょっとアレだなぁ。いびつさの度合いがね。まあ、それが作者として描きたかった芯なのだろうし、それが無ければ小説としても成り立たないのでしょうがね。


No.1200 5点 東北新幹線(スーパー・エクスプレス)殺人事件
西村京太郎
(2024/12/15 21:24登録)
 東北新幹線が大宮~盛岡間で開業したのは1982年6月だそうで。「やまびこ」と「あおば」か。懐かしい。
 それが南は東京駅まで延び、北は海を越えて函館北斗駅まで延びているのですから、時の流れを感じますねぇ。東京駅で乗り換えて、東海道・山陽・九州新幹線と繋げれば鹿児島までか。北陸にも新幹線で行けるし。新幹線のおかげで、国内の時間的な距離はすごく縮まりましたよね。
 で、この作品の初出は1983年1月。さすがは西村京太郎先生。素早くサスペンスの舞台に取り入れています。サクサクと読ませる点や、在来線と接続していない白石蔵王駅を取り上げる点は作者らしい(岐阜羽島駅とか好きですしね)。
 ちなみに、突っ込みたい点も。指定席確保の順番って、そうなの?最初の被害者が可哀そうすぎないか?それと、十津川さんと亀井さん、今回ミス多すぎ。特に最初の「やまびこ」での段取りがダメすぎましたね。


No.1199 7点 ごんぎつねの夢
本岡類
(2024/12/11 21:48登録)
 中学卒業後15年を経て開催されたクラス会の会場に、キツネの面を被り、散弾銃を持った男が立て籠もった。その男はかつてのクラス担任だった…。
 序盤から興味津々。なぜそのような事件を起こしたのか、犯人である恩師から託された「ごんぎつねの夢を広めてくれ」とのメモの真意は何なのか…。教え子であるノンフィクションライターがこれらの謎を追い掛けます。展開もスピーディーで、グイグイ読まされました。
 ストーリーの基軸となるのは新見南吉の「ごんぎつね」。小学校時代に教科書で読んだ方も多いと思います。私は、細かいストーリーはうろ覚えだったものの、ラストの情景は強く印象に残っておりました。本書を通じ、新見南吉に関する蘊蓄も含めて、あらためて「ごんぎつね」を振り返れたこと自体が意義深い。
 全体的にはヒューマン・文芸ミステリーとでも評すればよいのでしょうか。犯人や関係人物の種々の行動には理解しがたい面があるし、ミステリーとしては平板なのかもしれませんが、個人的には良質な読書でありました。


No.1198 6点 難問の多い料理店
結城真一郎
(2024/12/07 20:11登録)
 レストランのオーナーシェフが探偵役を務める連作短編集。
 1話目を読んだ時点では、あれれ?といった印象もあったのですが、徐々に盛り返してくれた感じ。相棒?となるフードデリバリー配達員が各話ごとに異なっているのも、背景に変化が出て良かったと思います。
 一方で、自分がフードデリバリーを利用しないからなのか、多少入り込みにくかった面も。総合的にこの採点で。


No.1197 7点 法廷占拠 爆弾2
呉勝浩
(2024/12/01 18:09登録)
 評価も高かった「爆弾」の続編。
 前作の爆弾魔・スズキタゴサクの公判も5回目。その日も東京地裁104号法廷で開廷されたが、突然傍聴席から「異議あり」と発言する者が現われて法廷を占拠!
 スピード感のある展開でグイグイ読まされました。何をしたいのか、目的は何なのか…。前作とはまた一味違う読み口なのもイイですね。エンタメ小説として良質です。さてさて、この後も続くのかな?


No.1196 8点 ぼくは化け物きみは怪物
白井智之
(2024/11/27 22:05登録)
 高水準の短編集。読んで損なし。
 収録作の中では、多重解決ものの「天使と怪物」がベストだと思いますが、「奈々子の中で死んだ男」の捻り、「大きな手の悪魔」のぶっ飛び展開、「モーティリアンの手首」の驚きのラストも素晴らしい。唸らされる作品揃いです。


No.1195 6点 君が手にするはずだった黄金について
小川哲
(2024/11/23 16:18登録)
 本屋大賞ノミネート作品という情報のみで手にしたのですが、ちょっと思っていたのと違ったなぁというのが、率直な感想。エッセイ風小説とでも言ったらいいのかな。少なくともミステリーとは言い難い。
 でもそれはそれとして、楽しく読ませていただきました。考えさせられた部分も多々ございます。文章、語り口、好きですね。


No.1194 5点 変な家2〜11の間取り図〜
雨穴
(2024/11/19 22:01登録)
 前作よりもパワーアップしたことは間違いないでしょう。中盤までに示される11のストーリーの繋がりは、まぁ想定の範囲内というか、よくあるパターンであると思うのですが、それらを示したうえでのギアチェンジは、確かにパワーアップを感じます。
 一方で、ラストの違和感が気になってしょうがない。何かが隠されている気がするし、もしかしてこういうことなのかな、と何となく予想はするのだけれども、どうなんだろう。すごくモヤモヤしてます。文庫版とかで示す思惑なのかな?個人的にはスパッと締めてほしかったのだけれど。(何も隠されていないのであれば、余計な記述をするなと言いたくなりますな。)


No.1193 6点 家族解散まで千キロメートル
浅倉秋成
(2024/11/16 19:45登録)
 家族がバラバラに暮らすことになり、実家を解体することに。引っ越しの整理もあって、元旦に家族(いつもいない父を除く)が揃ったものの、倉庫の中から見慣れぬ仏像を発見。青森の神社から仏像が盗難されたとのニュースも飛び込んできた…。
 前半は、コメディ・タッチだけれどタイムリミット・サスペンス的な展開で、グイグイと読まされました。しかしポイントは青森到着後。家族のあり方を問う部分は正直評価が分かれると思うし、とある登場人物の心理や行動には疑問を持つのだけれども、終盤の急展開や畳みかけ具合は嫌いではないです。


No.1192 6点 シートン(探偵)動物記
柳広司
(2024/11/09 18:01登録)
 作者といえばジョーカー・ゲームに代表されるD機関シリーズが有名。一方で歴史上の著名人や著名作品を扱った作品も多いですよね。本作は、子どもの頃ワクワクした方も多いであろう動物記でお馴染みのシートンを主人公にした短編集。
 全体的にミステリとしては小粒ですが、子ども時代の懐かしさもあって好印象。ベストは、狼王ロボ(懐かしい!)が登場する「カランポーの悪魔」か。終盤の一捻りが心憎い。


No.1191 6点 雷龍楼の殺人
新名智
(2024/11/03 16:28登録)
 富山県の沖合の島に建つ「雷龍楼」。ここでは2年前、密室で4人が亡くなる事件が起きていた。そして2年後、再び「雷龍楼」で密室事件が…。その裏では誘拐事件も起きていた…。
 むむむ…。「完全なる密室」ですか。確実に賛否両論あるでしょうねぇ。違和感満載な流れだっただけに、様々想定はしていたし、そういった着地も決して否定はしないのだけれども、「肩透かし」だけでは言い表せない何かを感じたのも事実。
 まぁ、そういった点も含めて個人的には楽しめたとは言えるのかな。でも、読んで怒りたくなる人もいるかもしれないので、あしからず。


No.1190 7点 冬期限定ボンボンショコラ事件
米澤穂信
(2024/10/29 21:34登録)
 小山内さんとの下校途中に轢き逃げされた小鳩君。意識を取り戻したのは病院のベッドの上…。導入部から衝撃的な展開であります。
 入院中の小鳩君と、犯人を特定せんと動く小山内さん。でもこの二人はなかなか会えない。携帯電話も壊れて直接の会話もできない中、小山内さんが病室に置いていくプレゼントとメッセージカード。小鳩君は3年前の同様の轢き逃げ事件に思いを馳せ…。
 過去と現在の事件が交互に語られ、グイグイ読まされます。過去の事件の背景の一部は予測しやすいような気もしますが、あくまでも一部であって、全体を見通すことはできませんでした。過去の「密室」の謎解明も含め、終盤の怒涛の展開は魅力的。
 小鳩君と小山内さんの中学時代の出会いも描かれていて、二人の高校時代を巡る春夏秋冬の完結版として、非常に綺麗に締めてくれました。大学時代の二人も見てみたいのですが…米澤さん是非お願いします。


No.1189 5点 からくり富
泡坂妻夫
(2024/10/20 21:03登録)
 江戸を舞台とした夢裡庵先生捕物帳シリーズ。作者らしい捻りが無いわけではないけれど、そういった側面よりも江戸情緒や庶民の心情を感じるべき短編集と言えるのではないかな。


No.1188 6点 成瀬は天下を取りにいく
宮島未奈
(2024/09/29 23:31登録)
 このサイトで書評するのもアレだけど、主人公・成瀬の性格がミステリーなのだと自分に言い聞かせて、書いちゃおう。何卒大目に見てください。
 一話目の「ありがとう西武大津店」を読んで、なぜか泣きそうになりました。成瀬への尊敬と羨ましさと、もうその世代には戻れない悔しさと、内容の清々しさとが綯い交ぜになった感じ。最終話の「ときめき江州音頭」を読んだ後も、なぜか泣きそうに。
 おじさん世代にもグイグイ刺さる小説でありました。こりゃあ、売れるわけだな。


No.1187 7点 ビブリア古書堂の事件手帖IV ~扉子たちと継がれる道~
三上延
(2024/09/23 20:34登録)
 テーマは、戦中に川端康成はじめ鎌倉の文士らが経営した貸本屋「鎌倉文庫」。そこには夏目家から提供された初版本も並んでいたとのこと。
 このシリーズも長くなりましたが、今回は智恵子(昭和)、栞子(平成)、扉子(令和)と篠川家の3代(3時代)にわたる「鎌倉文庫」所蔵本とのかかわりがポイント。前述の史実(らしい)や漱石に係る蘊蓄も含めて楽しめました。色々な家族のつながりを感じさせる点も良かったかな。6.5点の気持ちで、切り上げてこの採点。


No.1186 6点 六色の蛹
櫻田智也
(2024/09/16 17:14登録)
 シリーズ第三弾の連作短編集。前作まで各短編のタイトルは虫に関係する語句が入っていましたが、今回のタイトルは色で統一。虫との関係性も、前2作より薄くなっているような気がします。
 マイベスト短編は「赤の追憶」で、シンプルだからこその鮮やかさが印象的。短編らしい短編です。他の作品の出来栄えには、ちょっと波があったかも。連作短編集としての「まとまり」はシリーズで一番だと思うのですが、この点は好き嫌いが分かれるかもしれません。


No.1185 6点 室蘭地球岬のフィナーレ
平石貴樹
(2024/09/08 23:10登録)
 函館物語シリーズ第4弾にして、おそらくはタイトルどおりフィナーレ。今回の岬は、函館近辺じゃなくて室蘭の地球岬です。
 繋がりそうで繋がりが判明しない3つの事件。特に2つ目の地球岬の事件が浮いています。捜査が難航する中、フランスからジャン・ピエールが来日し、神のような謎解き。すげー。ある一つの推理が大きな転換点となりますが、気づけなかったなぁ。
 書きぶりは丁寧で、伏線の回収ぶりも読みどころの一つ。ある意味古いタイプのプロットなのだけれど、むしろ新鮮に感じましたね。


No.1184 6点 にわか名探偵 ワトソン力
大山誠一郎
(2024/09/02 21:48登録)
 シリーズ続編の短編集。
 警視庁捜査一課の刑事・和戸宋志には、秘めたる特殊能力がある。それは、謎に直面すると無意識に発動し、一定範囲(現時点では半径約20mらしい)内にいる人間の推理力を飛躍的に向上させる能力で、その名も「ワトソン力」。自分の推理力が上がるわけではないところも含めて可愛らしい。
 この設定は、短編構成上も便利で合理的。事件が勃発したらほどなく「どうやらワトソン力が作用し始めたようだ」のヒトコトで、周辺の登場人物たちの推理合戦に持っていけるわけです。非常にコンパクトに、一定のロジックを楽しめるのは好みです。ただ、流れが同じになりがちなので、中だるみ感を抱かれるリスクも併せ持つことにはなりますね。
 個人的に楽しかった短編は「ニッポンカチコミの謎」。ヤ〇ザの方々が推理合戦する姿がシュールなのだけれど、何といっても組長がエラリー・クイーン信奉者であり、全作品(「聖典」と呼んでいました)を神棚に備えているところが素敵。「暴力じゃねえ、ロジックだ」のご発言もいい味出しています。一方で、最終話はちょっと蛇足だったかも。

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