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ミステリの祭典

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まさむねさんの登録情報
平均点:5.88点 書評数:1269件

プロフィール| 書評

No.449 6点 地球儀のスライス
森博嗣
(2014/02/15 21:49登録)
 森氏の第2短編集です。
 詩的な作品から馴染みのシリーズキャラが登場する作品まで,それなりにバラエティに富んだ作品集と言えましょう。どうもしっくりこなかった短編も無い訳ではないのですが,全体的には十分に楽しめました。前短編集よりも好印象。
 特に良かったのは, 「小鳥の恩返し」,「片方のピアス」,S&Mシリーズの2作品(「石塔の屋根飾り」,「マン島の蒸気鉄道」)あたりか。
 それと,「僕に似た人」は,読後“そのこと”に全く気付かず,次の「石塔の屋根飾り」の読中に「もしや?」となりました(最終的にはネタバレサイトで確認…)。こういう作品も悪くないですね。


No.448 5点 上石神井さよならレボリューション
長沢樹
(2014/02/08 21:25登録)
 都立高校写真部の設楽洋輔は,天才かつ変態の岡江和馬の学習指導と引き換えに,生物部・川野愛香の盗撮(しかもフェティシズムな写真)を請け負う…という設定で始まる連作短編(全5編)。
 すべて「消失」がテーマになっているのですが,トリック自体はさもない感じで,正直脱力レベルのモノもあります。
 中盤までは,単にキャラクターに頼ったミステリなのかな…という印象でしたが,後半の4作品目と5作品目(表題作)でやや盛り返してくれました。
 高校1年生の後半から高校2年生の終業時までを描いているので,続編も作者の念頭にあるのかもしれませんね。強烈な妄想癖のある「国府田彩夏」のキャラが結構楽しかったので,続編があるのなら,読んでみようかな。


No.447 7点 十二人の手紙
井上ひさし
(2014/02/01 22:36登録)
 手紙のみ(公文書もあったりしますが)で構成される短編集。
 短編自体の仕掛けは勿論ですが,人間に対する哀しさと愛おしさが,決して説教臭くなく,じんわりと伝わってきました。この微妙なさじ加減は難しいと思う。さすがは井上ひさし先生だと感じ入った次第です。


No.446 7点 スノーバウンド@札幌連続殺人
平石貴樹
(2014/01/29 20:00登録)
 決して派手な展開ではないものの,本格欲求は十二分に満たしてくれた作品。
 真犯人は勿論のこと,ネタも複数散りばめられており,千鶴弁護士の人生も含めて多角的に楽しめました。「ご都合主義」というコトバが思い浮かばないでもないですが,全体の満足度からすれば,特段言いますまい。かなり好きなタイプの作品です。


No.445 5点 ライオンの棲む街
東川篤哉
(2014/01/26 21:16登録)
 平塚市に探偵事務所を構える名探偵・生野エルザと助手・川島美伽のコンビが活躍する,新シリーズの短編集。二人は高校時代の友人同士で,10年ぶりに再会を果たした27歳アラサー女子。東川サン,結構思い切った設定にしたなぁ…と思いながら読んでいたのですが,キャラ自体はなかなか魅力的。
 ワントリックに特化した短編揃いで,捻りという点では物足りなさを感じますが,サクサク楽しみたい気分だったので,個人的にはむしろ心地よかったですね。
 ところで,作者の「探偵モノ」といえば,烏賊川市シリーズでお馴染みの探偵・鵜飼&助手・戸村コンビが王道(現在ドラマ放映中ですし,先輩格なのは間違いない)。さて,作者が今後この両コンビをどう使い分けていくのか,密かに楽しみにしています。


No.444 6点 松谷警部と目黒の雨
平石貴樹
(2014/01/26 18:51登録)
 古典的とも言えるフーダニット作品。登場人物たちの雰囲気に違和感が…という気がしないでもないですが,伏線の提示,現在の事件と過去の事件との連携,さらに後半での推理の反転など,非常に良く練られています。一般的には地味な展開かもしれませんが,個人的には好印象。
 ちなみに,作者は東京大学を退官なさったとのことで,今後執筆のピッチが上がることを期待します。松谷警部と白石巡査のコンビにも好感が持てますし,是非このコンビでの続編を読みたいものです。


No.443 5点 スラム・ダンク・マーダー その他
平石貴樹
(2014/01/24 21:21登録)
 読者への挑戦状つきの短編(短めの中編とも言えるかな)3本+エピローグで構成。
 まず,探偵役「更科ニッキ」を含めて登場人物がどうにも「立っていない」印象を受けました。
 同じくニッキが登場した「だれもがポオを~」は,アメリカが舞台であり,敢えて翻訳風に書かれていたこともあって,あまり気にならなかったのですが…この作品は…。
 トリック自体は,1話目がちょっと期待はずれだったものの,2話目と3話目はまずまずといったところ。ちなみに,真相を言い当てることは,当初から諦めてました。
 実は個人的に最も印象に残りそうなのがエピローグでして,これが良いことなのか悪いことなのか,何とも微妙です。


No.442 5点 死神の浮力
伊坂幸太郎
(2014/01/18 23:44登録)
 「死神の精度」の続編で,死神・千葉が引き続き登場。死神の基本設定は変わらないものの,勧善懲悪の長編モノなので,趣としては前作よりも「マリアビートル」に近い印象(どうしようもない悪人のイメージも含めて)。
 なお,「車の下に爆弾」,「監視カメラによる監視」っていうシチュエーションは「ゴールデンスランバー」を想い起こさせたりも。
 千葉のキャラは好みなのですが,終盤はもう一捻りというか,更なる爽快感が欲しかったような気もします。


No.441 8点 夢幻花
東野圭吾
(2014/01/15 22:28登録)
 犯人を含めた事件の構図について,読者が合理的に推理できるような構成ではありません。
 しかし,どんどん深まる数々の謎の行方が気になって,ページをめくる手が止まりませんでした。久方ぶりの一気読み。伏線が綺麗に収束していくラストも見事です。
 この作品は,約10年前のとある月刊誌の連載をもとに書き下ろしたもの。とはいえ,「黄色いアサガオ」というキーワードだけを残し,全面的に書き直したそうです。作者自身が「書き直したことで,十年前ではなく,今の時代に出す意味が生じたのではないか」と述べていますが,まさにその通り。ラストに深みが出ています。(こじつけ感が強いというご批判もあり得ますでしょうが…)
 作者のストーリーテラーぶりを満喫させていただきました。素直に面白かったですね。


No.440 9点 だれもがポオを愛していた
平石貴樹
(2014/01/12 09:25登録)
 創元推理文庫版で読了。
 本編の読書中には,多少の混乱というか戸惑いもあったのですが,解決編では何とも言えない爽快感を頂戴できました。
 加えて,コクのあるエピローグも素晴らしい。
 有栖川氏も解説のタイトルにしている「新本格前夜の傑作」との評価も頷けます。


No.439 5点 シュークリーム・パニック  生チョコレート
倉知淳
(2014/01/05 23:22登録)
 3作品で構成される中短編集。
 作品ごとに雰囲気が異なるので,人それぞれ一定楽しめるとは思うのですが,いずれももうワンパンチ欲しかったような気がします。
 特に「夏の終わりと僕らの影と」は,青春ミステリとして綺麗な流れだけに,もう一捻りあれば更に良かったかなぁ…と。


No.438 5点 恋恋蓮歩の演習
森博嗣
(2014/01/05 23:04登録)
 Vシリーズに「慣れている」読者にとって,真相の一部は結構分かりやすい(少なくとも,その可能性には行き当たる)ような気がします。
 その一方で,このシリーズは順番に読まないと面白味が半減する可能性もある訳で…何とも難儀なシリーズですなぁ。
 まぁ,楽しめなかった訳ではないのでこの採点としますが,正直「豪華客船」感はあまり感じなかったなぁ。何かもったいないような気もします。


No.437 3点 卯月の雪のレター・レター
相沢沙呼
(2013/12/28 22:15登録)
 「揺れ動く少女達の心理を巧みに描いた,鮎川賞作家・相沢沙呼の最新短編集」と紹介されれば,まぁ,そのとおりですし,作者お得意の分野であることも間違いないです。
 しかし,厳しい言い方をすれば,個人的には「その分野しか書いていない作家」という印象しかないのです。力はあるはず。是非他分野の作品を読んでみたい。
 なお,この短編集自体の評価ですが,正直水準以下かな。単に私に合わないだけかもしれませんが。


No.436 6点 魔剣天翔
森博嗣
(2013/12/23 23:43登録)
 「アクロバット飛行中における銃殺」という謎が魅力的ですし,サスペンス的な側面もイイ感じで,当初の想定以上に楽しめました。
 トリックは,よくよく考えれば分かり易いのかもしれませんが…,あまり考えずにサクサク読み進めてしまったなぁ…。ちょっと悔しい。


No.435 6点 町長選挙
奥田英朗
(2013/12/17 20:43登録)
 伊良部シリーズ第3弾。
 今回は,社会風刺的な側面を強く打ち出していますね。ちなみに伊良部センセのハチャメチな言動は控え目で,その分マユミ看護婦の存在感が増しています。
 収録4作品のうち3作品は,実在のモデルが分かり易すぎて面白い。今となっては「ああ,当時はそういう騒動があったよね」的な楽しみ方も。
 表題作は,民主主義の本質を突く(?),なかなかに奥深い作品と言えないこともないような気がします。(ちょっと言い過ぎかなぁ?)


No.434 5点 探偵部への挑戦状 放課後はミステリーとともに2
東川篤哉
(2013/12/12 22:47登録)
 鯉ヶ窪学園探偵部副部長・霧ヶ峰涼シリーズの続編。冒頭から,前作「放課後はミステリーとともに」の一部ネタバレが有るので,両作品とも読むつもりなのであれば,読む順番に気をつけるべし。
 ミステリ的には小粒揃いで,前作から相当にダウンしていると言わざるを得ません。
 でも,霧ケ峰涼のライバル「大金うるる」との掛け合いは結構楽しめたかな。個人的ベストもうるる初登場の「霧ヶ峰涼への挑戦」。フェアではないのだけれども,ネタとしては面白い。
 鯉ヶ窪学園探偵部の3馬鹿トリオ(実はこちらが本家)に久しぶりに出会えたことも良かったかな。


No.433 5点 モザイク事件帳
小林泰三
(2013/12/04 21:53登録)
 「大きな森の小さな密室」と改題された文庫版で読了。
 元のタイトルが「モザイク事件帳」だっただけに,様々な探偵役が登場し,様々なネタを見せてくれます。
 その点は確かに楽しめたのですが,一方で,均一感が中途半端すぎてイマイチ入り込みにくい…という印象も。
 個人的なベストは「更新世の殺人」。登場人物たちのバカすぎる理論構成が笑えます。日本の考古学を揺るがした例の事件を思い出しながら読みましょう。(ちなみに,東野氏の裏作風に似てますね)


No.432 5点 空白の殺意
中町信
(2013/11/30 22:59登録)
 犯人も何となく想像できますし,展開も地味なのですが,本筋のラインは良く練られていると思います。
 しかし,よくよく考えてみると,様々な登場人物にとって何とも可哀相な話ですなぁ。


No.431 6点 水族館の殺人
青崎有吾
(2013/11/25 22:57登録)
 「体育館の殺人」に続く,裏染シリーズ第2弾。
 体育館の次は図書館かと勝手に想像してましたが,水族館でしたか~(笑)。
 しかし,学校外の設定ながらも,違和感を抱かせずに前作の登場人物たちを絡ませています。
 前半で,アリバイトリックを潔く開陳する構成は支持します。これが後半の怒涛の展開に繋がるわけですしね。
 後半のロジック・フルモードは実にお見事。容疑者は当初から絞られているし,急転直下の驚きがあるわけでもないので,「地味」という評価もあり得るとは思いますが,ロジック好きの方には一読の価値があると思いますね。
 ホワイについては評価が分かれるところでしょう。個人的には微妙な印象を抱きましたが,確かにコレがないと,(ミステリ読みとしては禁句的な側面もありますが)何故ソコまでやったのかという根源的な疑問のみが残ってしまう可能性もあるので,突き詰めて考えないことにします。
 次回作こそ「図書館」なのか。はたまた「公民館」あたりなのか。これも楽しみになってきました。是非,短編も読んでみたいですし,今後の活躍を注視すべき作家のひとりです。


No.430 5点 貴族探偵対女探偵
麻耶雄嵩
(2013/11/19 21:32登録)
 タイトルから貴族探偵にライバル登場かと思いきや,女探偵は貴族探偵(の使用人たち)の完全な当て馬。ちょっと可哀相だけど,今後も使えそうなキャラではありますね。
 女探偵の推理の穴を突く辺りも楽しめるし,ロジックもしっかりしているのですが,全体として小粒な印象は否めないかな。

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