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ミステリの祭典

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まさむねさんの登録情報
平均点:5.86点 書評数:1195件

プロフィール| 書評

No.375 5点 白ゆき姫殺人事件
湊かなえ
(2013/03/31 12:46登録)
 週刊誌記者に対する関係者の「証言」と巻末の「関連資料」で構成されている作品。
 ちなみに,「関連資料」には,事件に関するブログや週刊誌・新聞の記事が掲載されており,なんと全体ページ数の約3分の1を占めています。まぁ,資料全部を読まなくても一応小説として読み切れるのでしょうが,結局は読んでしまうのですねぇ。小説と資料を交互に読みたくなったりして,確かに読みにくい!とはいえ,なかなか面白い趣向ではありますね。
 内容としては,いかにも湊サンといったところ。ミステリ的にはちょっと肩透かし…かな?


No.374 6点
道尾秀介
(2013/03/26 23:13登録)
 少年達の冒険物語として見れば,なかなかの良作と思います。一方,ミステリ的な味付けは決して濃くなく,その部分を期待している方にとっては肩透かし感を抱くかもしれません。
 章建てになっていますが,前半は各章ごとに一応の謎と解決が用意されており,連作短編の体裁。後半はサスペンス的要素も加わって勢いを増していきます。
 主人公は,これまでの作者の作品に登場してきた少年の中で最も「少年らしい少年」で,その仲間たちを含めて,感情移入しやすかったですね。リーダビリティも高く,何とも言えない懐かしい心情・雰囲気を満喫しました。装丁も良いです。


No.373 6点 淋しい狩人
宮部みゆき
(2013/03/20 21:11登録)
 東京の下町にある古本屋の店主,イワさんと“たった一人の不出来の孫”の稔が主役を務める連作短編。結構シビアな事件を噛ましつつも,人間的な温かな読後感を残す力量はさすがです。
 ちなみに,タイトルが地味すぎますねぇ。「古書店モノ」が売れている昨今,タイトルを変えて新装版を出せば売れるような気がしますが,新潮社さん,どうでしょう?


No.372 5点 笑うハーレキン
道尾秀介
(2013/03/19 00:05登録)
 読売新聞に連載されていた新聞小説です。
 経営していた会社も家族も失い,今は「ホームレス家具職人」とでも言うべき生活を送る主人公。そこに謎の女・奈々恵が弟子入り志願してきて,さてさて…という展開です。
 人と人との絆だとか,人間への温かいまなざしだとか,その想いは伝わってきます。また,作者らしい伏線や反転も(期待ほどではなかったにせよ)忍ばせてあります。
 一方で,冗長に感じてしまった面も。また,後半の「棚修理」の流れは,唐突過ぎるし,個人的には「とって付けた感」が否めませんでした。
 道尾作品としては,正直「中の下」といった印象です。サービスしてこの点数でしょうか。


No.371 4点 PK
伊坂幸太郎
(2013/03/10 18:44登録)
 3編からなる短編集。3話とも微妙(?)に繋がっているわけです。
 で,率直な感想としては,モヤモヤするし,なんだか小難しくし過ぎている感もあって,あまり面白くなかった…。
 いや,作者が敢えてやっている意図は分からないでもないのです。最終話「密使」自体も嫌いではないし…。でも何と言うのかなぁ…展開が迂遠で遅いからなのか「読み進めたい!」ってあんまり思わなかったなぁ…と。それと,作者の想いは分かるんだけれど,ちょっと「押し付けがましい」印象も。


No.370 7点 法月綸太郎の新冒険
法月綸太郎
(2013/03/03 23:27登録)
 法月綸太郎シリーズの短編集です。ズバリ,高水準で面白い!特に下記の1と3が好み。
1「背信の交点」
 「法月さんがトラベル系?」と思わせておいての終盤の切れ味。作者本人も「会心作」と述べておられます。
2「世界の神秘を解く男」
 雰囲気は嫌いではないのですが,この作品集の中での印象は薄いかな?
3「身投げ女のブルース」
 いやはや,やられました。そう来ましたか…。
4「現場から生中継」
 さすがの反転ですが,この作品集の中での印象は薄いかな?
5「リターン・ザ・ギフト」
 正直フーは分かり易いものの,ラストのホワイが印象深かったなぁ。


No.369 6点 殺人鬼フジコの衝動
真梨幸子
(2013/03/03 22:30登録)
 構成自体は,評価したいのです。最後の最後まで,練られています。一気読みさせてしまう魅力もあります。
 でも,相当な不快感。イヤな方々があまりにも多く登場しすぎて…。うーん,「イヤミス」ってのは,こういうことなのか?


No.368 5点 しあわせなミステリー
アンソロジー(出版社編)
(2013/02/28 23:54登録)
 タイトルからも想定しやすいと思いますが,「人の死なない」ミステリー集だそうです。ミステリー度は決して高くありません。作品ごとに感想を。
1 「BEE」伊坂幸太郎
 彼らしい「殺し屋」が登場する物語ですが,人は死にません。代わりにスズメバチが死にます(笑)。これってミステリーなのか?…という印象はありますが,軽快なタッチは健在。
2 「二百十日の風」中山七里
 読後感も良く,嫌いではないです。ただ,伏線を含めて全体的に分かりやす過ぎるかなぁ。
3 「心を掬う」柚月裕子
 個人的には初読の作家さん。登場人物が「いい人」揃いで読み心地は良かったですが,もうワンパンチ欲しい印象も。
4 「18番テーブルの幽霊」吉川英梨
 これも個人的に初読の作家さんの作品。展開もスピーディーだし,ミステリー的にもこのアンソロジーの中ではベストの印象。


No.367 4点 謎解きはディナーのあとで 3
東川篤哉
(2013/02/24 22:27登録)
 人気シリーズの第三弾。
 軽快な本格ミステリとしてのいつもの持ち味は出ているのですが,ちょっと小粒でしたねぇ。また,犯人の行動として理に適っていないと思われる点(「殺人には自転車を~」でのカムフラージュ等)もあったりして,積極的にはオススメできません。
 ネタ切れ感についてはkanamoriさんと同意見です。この辺りが潮時のような気がしますね。


No.366 5点 味なしクッキー
岸田るり子
(2013/02/18 23:05登録)
 6編から成る短編集。濃淡ありますが,ブラックな読後感を味わえます。
 読み応えという点では,プロットの妙が光る「味なしクッキー」と,連続反転の「パリの壁」がトップ2でしょうか。「愚かな決断」の一捻りと「生命の電話」の着目点もなかなか面白いです。
 一方,「決して忘れられない夜」と「父親はだれ?」の両作品は,ブラック度は別にして,ネタとしては分かりやす過ぎるかな?「ああ,やっぱり」っていう感想に集約されましたね。特に後者は,冒頭シーン(マウスの実験)がなかなかだっただけに,ちょっとだけ残念。


No.365 6点 覆面作家の夢の家
北村薫
(2013/02/16 21:20登録)
 覆面作家シリーズ完結編。
 岡部兄の結婚という展開の早さに,冒頭から驚かされました(笑)。前作同様,会話シーンが実に楽しく,ラストも美しい。
 読み心地の良いシリーズだったし,3冊で完結してしまうのは惜しいなぁ。もうちょっと二人を見ていたかったのだけれど…。


No.364 6点 覆面作家の愛の歌
北村薫
(2013/02/16 21:09登録)
 覆面作家シリーズ第2弾。
 登場人物の会話シーンが実に楽しい。全体的にサクサク読み進められるのも良いですね。ちなみに,表題作はこのシリーズ随一の本格色を醸し出しています。


No.363 5点 おれは非情勤
東野圭吾
(2013/02/10 23:41登録)
 小学校を舞台にした,物凄くシンプルな短編集。それもそのはず。学研の「5年の学習」「6年の学習」(懐かしい!)に掲載された作品に加筆修正したものだそうです。
 ジュブナイルの評価というのはいつも迷うのですよねぇ。何を求めてこの作品を手にしたかで評価は大きく分かれますでしょうねぇ。私は頭の一部で楽しみながら,一部で肩透かし感を…って意味不明ですか?
 ちなみに,作者の作品の幅広さには感服いたします。裾野が広すぎます。


No.362 6点 陰の季節
横山秀夫
(2013/02/09 21:29登録)
 D県警シリーズ第一作品…というよりも,作者にとっての第一作品集ですね。「警察小説」には違いないですが,刑事は登場せず,人事や監察,議会担当などの管理部門の人間が各短編の主役を務めます。
 「組織」を描かせるとホントに強いですよねぇ。各短編とも,謎の提示や終盤の転換が秀逸ですし,心理サスペンスという面でも楽しめます。その後の作者の活躍を十二分に予感させる作品集と言えましょう。
 ちなみに,登場人物の行動の中には「いくらなんでもそこまではしないだろう!」と突っ込みたくなるものもありますね。


No.361 5点 モロッコ水晶の謎
有栖川有栖
(2013/02/04 22:02登録)
 中編と呼んでもよい長さの短編3本+掌編1本で構成。
 表題作の真相は,ある意味で衝撃的。確かに心理としてはあり得るのだけれども…うーん。でもまぁ,個人的に火村シリーズの短編は「色々あって,それで良い」と捉えているので,良しとしておきましょうか。
 ちなみに,この作品集で一番印象に残ったのは「推理合戦」と題する掌編。こういうのは好きなんだなぁ。


No.360 6点 空耳の森
七河迦南
(2013/01/30 23:14登録)
 前作「アルバトロスは羽ばたかない」において,私に極めて鮮烈な印象を与えてくれた作家。さてさて,最新作は?との気持ちで何の事前情報もなく読み進めた訳ですが…実に書評が難しい!何を書いても(私が思うところの)面白味を削ぐような気がしまして…。

(以下の記述は,重大なネタバレは避けてますが,真にこの作品を楽しみたい方にはオススメしません。)
 中盤くらいまでは,ノンシリーズの短編集といった趣です(特に「アイランド」などは単独でも一定の評価をしたくなる出来栄えだけに)。しかし,中盤以降はやや趣が変化し,終盤に至って連作短編としての姿が見えてきます。この「繋がってる!」という発見感が爽快で,幾度か読み戻りました。各短編を時系列に並べ直したりする楽しみも。
 また,この作品のみでも一応は楽しめると思うのですが,七海学園シリーズ,少なくとも前作「アルバトロスは~」は既読であることが望ましいです。(ちなみに,私は前作は既読でしたが,デビュー作「七つの海を~」は未読。そのため一部分かりにくい点も…)つまり,「繋がってる!」のはこの短編集内のみならず,前作を含めたシリーズ全体というわけです。感慨深いラストなのですが,これも前作あってのもの。連作短編が巧みな作者だなぁ。


No.359 7点 珈琲店タレーランの事件簿
岡崎琢磨
(2013/01/27 21:59登録)
 『このミステリーがすごい! 』大賞最終選考作品の中から推薦された「隠し玉」作品。個人的には大賞を与えてもよい位の出来栄えと感じたのですが,出版に当たって全面的に改稿され,ミステリ要素の改善が図られたとのコト…なるほど。
 舞台は京都。女性バリスタを始めとする登場人物も魅力的ですし,会話も軽妙で楽しめます。しかし,一筋縄ではいかない作品。なかなかに巧妙です。「過ぎたるは及ばざるが如し」的なご批判もありましょうが,私としては好みのタイプの作品。デビュー作でこれだけ売れたわけですし,経歴からも,個人的な今後の期待は高いです。


No.358 7点 密室蒐集家
大山誠一郎
(2013/01/24 22:49登録)
 直球の密室短編5本。
 余分な要素を極力削ぎ落としており,本格の純度は相当に高いです。一方で,その副作用といって差し支えないと思いますが,各短編とも偶然性に頼りすぎている印象は拭えません。ご都合主義と感じる方もいらっしゃるでしょう。また,記号的ともいえる人物描写(「密室蒐集家」たる探偵役も例外ではない)が合わない方もいらっしゃると思います。
 でも,私は,むしろこのストイックさに好感を持ちました。“本格好き”の欲求を十二分に満たす作品であることは間違いないですし,割り切りも重要です(笑)。
 ちなみに,マイベストは「少年と少女の密室」かな?


No.357 7点 葬式組曲
天祢涼
(2013/01/19 15:18登録)
 「葬式は無駄」との世論から高額の葬式税が導入され,事実上葬式が禁止されている日本。今日では,何ら儀式もせず速やかに火葬する「直葬」が一般的となっている。しかし,S県だけは,葬式助成条例の施行により,唯一葬式が行われる地域に。そのS県での葬儀社,その社員,葬儀に係わる人々を取り巻く連作短編です。
 この設定自体が興味深いのですが,私は第一話「父の葬式」で完全に引き込まれました。年を経るにつれ,自分の身内を含めて葬式というものがある意味身近になってきますからねぇ。
 各短編とも,ミステリとしても良いのですが,死と遺族というものを考えさせられる内容,しかし決して重くはない軽快な語り口に好感。その流れで最終話に突入するわけですが…。なかなか凝ったプロットでしたね。私はかなり楽しめました。


No.356 5点 母性
湊かなえ
(2013/01/15 23:05登録)
 タイトルどおりの内容なのですが,うーん,作者の意図は分かるようで,やっぱりイマイチ分からない。感情移入できる人物も少ないしなぁ。ちなみに,書き込んでおきながらアレですが,ミステリの範疇には入らないような気がします。

(以下,未読の方は注意)
 ラスト直前まで,いかにもこの作者らしい展開(嫌ミス的展開)なのですが,ラストの多方面ハッピーエンド感はどうなのだろう。個人的には,何ら救いようのない話よりは良いような気もしますが,だからといって爽快な読後感も受けなかったし,何か釈然としなかったのですよねぇ。むしろ,ソコに何か作者が述べたかった真実があるのかなぁ…などと考えてみたのですが,私の読み方が浅いのか,よく分かりません。

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