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ミステリの祭典

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鏡の花

作家 道尾秀介
出版日2013年09月
平均点5.25点
書評数4人

No.4 5点 E-BANKER
(2021/09/15 20:35登録)
~「大切なものが喪われた、もう一つの世界」を生きる人々。それぞれの世界がやがて繋がり合い、強く美しい光で彼らと読者を包み込む。生きることの真実を鮮やかに描き出すことに成功した、今までにない物語の形。「光媒の花」に連なり作者の新しい挑戦が輝く連作小説~
小説「すばる」誌に連載され、単行本の発表は2013年の作品。

①「やさしい風の道」=章也と翔子の姉弟が本編の主役。読み進めると、「翔子」は死んでいるようなのだが、二人は普通に会話している・・・
②「つめたい夏の針」=これも章也・翔子姉弟の物語。なのだが、今度は章也が死んでいる世界のお話が展開され・・・
③「きえない花の声」=一転して、今度は栄恵と夫(瀬下)の物語。で、夫は事故で死んでいるという設定。栄恵は夫の不貞を疑った過去があり、それを今でも引きずっているのだが・・・
④「たゆたう海の月」=③同様、栄恵・瀬下夫妻のお話。なのだが、今度は息子の俊樹が謎の死を遂げ、憔悴した夫妻の姿が描かれる。なぜ息子は死んでしまったのか?
⑤「かそけき星の影」=本編では俊樹は生きており、瀬下の親友の娘・葎と結婚し、長男が誕生している。あるとき、葎は①②に登場した姉弟と同じバスに同乗することに・・・
⑥「鏡の花」=これまで登場した3組の夫婦と2組の姉弟が同じ民宿に集まることになる。そして、その民宿を経営する一家もある重要な役割が・・・

以上6編。
緩やかに世界観を共有しながら進んでいく物語。各編とも誰かが亡くなっており、その「亡くなった」ことを軸に物語は展開される。なのだが、次編へ進むと亡くなったはずの人物は生きており、代わりに別の人物が亡くなっている。
そういう「仕掛け」が施された連作短編集ということ。

まぁ旨いことは旨いのだが、ちょっと狙いすぎの感もある。夫婦であれ、姉弟であれ、親子であれ、身近な人物が突然いなくなるという事実は、人の心に大きな傷或いは空虚をもたらす。そんな感情を抱えながらも、人は前を向き生きていく・・・というのがテーマかな?(違うかもしれんが)
いずれにしても、ミステリー要素は予想に反してほぼ皆無ですので、そんな作品はいやだという方は是非スルーしてください。

No.3 6点 take5
(2019/08/09 23:31登録)
小学校で習う『情景描写』の極致ですね。
登場人物の背面に描かれる木石草花に、
そう見える世界とそこにいる人物を反映させるという。
曼珠沙華の辺りは連城?いやそうでもないか。
道尾氏はやはり叙述で読ませるカラスやラットが好きです。

No.2 6点 まさむね
(2014/04/13 23:34登録)
 不思議な世界観の連作短編集です。
 第2章に入って驚きました。なぜなら,第1章で亡くなっていた設定の人間が生きていて,生きている設定の人間が亡くなっているから。
 つまりは,限られた登場人物の中で「この人が亡くなっている」という様々な設定で各短編が描かれているわけでして,何とも不思議な余韻を残します。
 ミステリ的な側面は極めて弱いのですが,着目点や作者の表現手法(コレは好き嫌いがあると思いますが…)には一目置きます。

No.1 4点 白い風
(2014/02/08 17:47登録)
3組の夫婦と2組の姉弟が絡まる6編の連作短編集。
姉が亡くなった弟と妻が亡くなった夫。
妻が亡くなった夫、息子を失くした夫婦。
弟が亡くなった姉、そして両親が居ない姉弟・・・。
同じような設定でパターンが違う話が連なっていきます。
それ故、不思議な世界観でしたね。
ちょっと私には合わなかったけど・・・。

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