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ミステリの祭典

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まさむねさんの登録情報
平均点:5.87点 書評数:1230件

プロフィール| 書評

No.670 5点 バイバイ、ブラックバード
伊坂幸太郎
(2017/06/29 23:51登録)
 五股をかけている男「星野一彦」は、のっぴきならない事情で「あのバス」で連れていかれてしまうことになった。その前に、監視役のブッチャー的大女「繭美」と一緒に、五人の恋人一人ひとりに別れを告げに行く…という設定の連作短編集。
 個人的には、別れを切り出される女性たちに情が傾いてしまって、正直、楽しみにくかった面もありましたね。星野も繭美も、どうしようもない奴なのか、いい奴なのか微妙っていう点も、何かくすぐったい感じもする。何よりも、「あのバス」って…。結構登場人物同士の会話とかは面白いのだけれども。
 まぁ、様々な面で伊坂さんらしい作品ではあります。


No.669 6点 明日の空
貫井徳郎
(2017/06/23 22:49登録)
 3章で構成されているのですが、第1章の時点で「匂い」がプンプン。ガラッと場面が変わる第2章でどういう関連なのかと疑念を深めつつ、最終章へ。スラスラと読みやすいだけに、次々とページをめくらされました。
 結構な伏線がありつつも、最終的な真相までは正直分からなかったですねぇ。でも、全体構成としては十分に想定の範囲内。また、ちょっと都合が良過ぎる設定で、かつ、綺麗にまとめ過ぎていないかなぁ…と。サクッと読む分には、十分に楽しめましたので、決して否定的な訳ではないのですが。


No.668 7点 秋の花
北村薫
(2017/06/18 22:04登録)
 シリーズ三作目で、初の長編作品であります。ミステリという側面よりもむしろ、物語全体の「深み」に脱帽です。
 特に、円紫師匠の最終盤のセリフ「許すことは出来そうにありません。ただ~」、そして、津田さんの母親が円紫師匠に語った最後のセリフが印象深いですね。


No.667 7点 マリオネットの罠
赤川次郎
(2017/06/11 17:29登録)
 作者がデビュー後に書き下ろした初めての長編ミステリだそうです。(刊行順では別の作品の方が早いらしいのですが。)
 スッと作品に引き込まれ、次々にページをめくらされました。終盤まで加速度を落とすことなく引っ張るストーリー展開は見事で、良質のサスペンス小説と言えるのではないでしょうか。タイトルの意味が最終盤で浮き上がってくるスタイルも好きです。
 赤川作品と言えば軽快なシリーズものの印象が強く、確かにそれも作者の力量があってこそだと思うのですが、個人的には、作者の力量はこの第一長編にこそ、如実に表れていると思いますね。


No.666 8点 不連続殺人事件
坂口安吾
(2017/06/10 22:35登録)
 登場人物が異様に多く、しかも物語のスタートから次々に登場するものだから、人間関係も含めて、人物把握が結構しんどかったですね。登場人物一覧が欲しい…と何度思ったことか。そういった観点では、あまり読みやすいとは言えないでしょうね。また、現在では決して書かれないであろう差別的用語も満載でございました(個人的にはその時代の社会的認識に触れられるという意味で、否定的には捉えないけれども)。
 とは言え、フーダニット作品として実に面白い。解決篇で探偵役が語る「心理の足跡」にも納得。確かに、ソノ場面を読んでいる際には何となく違和感を抱いたのですよねぇ。「木は森の中に隠せ」。まさしくそのとおりで、私は隠された木を見つけることができませんでした。
 何より、坂口先生は明らかに楽しみながら書いたのであろうなぁ…という感じが伝わってきて、好感を持ちましたね。


No.665 6点 家庭用事件
似鳥鶏
(2017/05/28 23:34登録)
 市立高校シリーズ第6弾(だと思う)の短編集です。
 第1話「不正指令電磁的なんとか」から第4話「お届け先には不思議を添えて」まで、いずれも提示される謎が不可解で魅力的。個人的には、一発勝負の感はあるけれども、第1話のトリックが印象に残りそうかな。
 ちなみに、第4話「お届け先には不思議を添えて」ってどこかで読んだような…と思っていたら、学園ミステリ・アンソロジー「放課後探偵団」に収録されていたのですね。本格度と言う観点では本作中のベストでしょうか。
 最終話の「優しくないし健気でもない」は、雰囲気も内容も一変。ネタバレを避けるために多くは書きませんが、フェア、アンフェアを含めて様々な捉え方があり得そう。驚かされ、また、考えさせられたことは間違いないのですが。


No.664 6点 ぼくのミステリな日常
若竹七海
(2017/05/21 11:57登録)
 12の短編に組み込まれた伏線が終盤で回収されて全体の形を見せるという、連作短編としての面白さは十分にあります。(作中作を駆使した1本の長編という見方もできるのでしょうが。)
 一方で、個々の短編(若しくは個々の作中作)自体の面白味はマチマチで、次々にページを捲りたくなったかと問われると、ちょっと辛い部分もあったかな。おいしい終盤まで読まずに放棄する方もいるかも。
 「ちょっと長めの編集後記」における全体像垣間見え感も勿論いいのだけけども、個人的には最終盤の「配達された最後の手紙」におけるゾクゾク感の方が記憶に残りそうかな。


No.663 5点 マカロンはマカロン
近藤史恵
(2017/05/14 22:50登録)
 下町の小さなフレンチ・レストラン「ビストロ・パ・マル」を舞台にした短編集の第3弾。
 相変わらずの読み心地の良さ。その中に多少ビターな短編も用意している辺りも好きかな。かなり食べてみたくなった料理も登場して興味深いのだけれども、ミステリとしてはちょっと弱いのでこの採点としましょう。


No.662 4点 パレードの明暗 座間味くんの推理
石持浅海
(2017/05/09 21:16登録)
 作者の代表作のひとつ「月の扉」の探偵役・座間味クンが登場する短編集の第3弾。
 「月の扉」から登場している大迫さんは毎回偉くなっていて、何と今回は警視長だそうです。今回のゲストは、女性特別機動隊所属で羽田空港保安検査場に勤務する警察官で、毎回、大迫さん、座間味クンと3人でお食事します。その席で、大迫さんが過去の事件や出来事について話すと、座間味クンが新たな解釈を出して…という典型的な展開。
 この展開自体は過去の2短編集と同じなのですが、スケールがどんどん小さくなっています。全話とも転換が用意されてはいるのですが、如何せんこれも小さいのですよねぇ。ゲスト役の女性警察官の魅力も小さいし、女性警察官の成長譚っぽくしようとしているのも、はっきり言って片腹痛い。また、恒例の食事シーンも薄く、そんなにおいしそうに感じられない。何よりも、全話ともパターンが同じだけに、途中から飽きてしまいました。


No.661 7点 群青のタンデム
長岡弘樹
(2017/05/05 22:56登録)
 男女2名の同期警察官を描いた連作短編集です。
 まず、この作者さんに関する個人的な印象の推移を述べますと、ヒット作「傍聞き」→「陽だまりの偽り」と読み、これは新たな短編の名手誕生では?という期待を抱いたものです。一方で、このミス的評価は高かった「教場」に関しては、巧いのだけれど何となく物足りない(現実味もない)という印象を受け、その後「波形の声」→「赤い刻印」→「白衣の嘘」と読むにつれ、その消極的印象が次第に深まっていき(こじつけ感が強いという印象まで加わり)、嗚呼、私の初期の期待が高すぎたのだろうか…などとちょっと悲しくなっていたところでございました。
 前置きが長くなりました。で、この作品ですが、私の作者に対する評価グラフが相当に回復する結果となりました。「警察小説連作短編」という前知識だけで読んだ自分としては、プチ驚き所にも綺麗にハマり、読ませるテクニックも相まって、ほぼ一気読み状態。多くは述べませんが、なるほど、こういうタッチの警察小説、向いているかもしれません。


No.660 6点 聖女の毒杯
井上真偽
(2017/05/05 21:34登録)
 話題作となった「その可能性はすでに考えた」の続編。
 今回の事件は「毒殺」ということで、前作に比して事件のスケールは相当にダウンしています。(まぁ、前作の謎が集団自殺や首なし状態で歩いた少年とかでしたからねぇ。)
 とはいえ、「飛び石毒殺」という設定、その中での推理合戦(かなり強引すぎる嫌いはあるが)、中盤以降の急展開、終盤での連続捻り技等々、全体のプロットとしては前作に引けを取らないように思います。むしろ前作より引き締まっているようにも感じます。
 正直7点とも思ったのですが、前述のように推理合戦にあまりにも強引な点が散見された点、それとラノベ・テイストが何とも肌がゆく感じた点(完全に個人的な好みの話で恐縮ですが)、この2点がちょっと興覚めだったことは事実なので、1点減点とします。


No.659 7点 猫には推理がよく似合う
深木章子
(2017/04/30 19:52登録)
 私も敢えて多くは書きませんが、非常に凝ったプロットです。「仕掛け花火が次々に炸裂するような本格ミステリ」との有栖川有栖氏のコメントも素直に頷けます。
 しかし、この作者さんは引き出しが多いですねぇ。流石です。


No.658 7点 十字屋敷のピエロ
東野圭吾
(2017/04/29 21:01登録)
 東野先生の初期ド本格作品。私は好きです。結構「てんこ盛り」な内容を非常に巧くまとめていると思います。ピエロ視点も効果を発揮したのではないでしょうか。
 今の東野先生であれば、更に巧みにストーリーを運べそうな気もするのですが、逆に現時点では決して書かないであろう分野でもあります。そういう意味では貴重かな。


No.657 5点 眠り姫とバンパイア
我孫子武丸
(2017/04/22 23:08登録)
 ミステリーランド作品。
 真相に多少強引な点が無いわけではないのですが、結構引き込まれる展開であったし、何よりも「ミステリーランド」として「正しい」作品だなと感じましたので、この点数に。


No.656 7点 家守
歌野晶午
(2017/04/16 23:36登録)
 捻りの効いた作品が揃った、高水準の短編集だと思います。
①人形師の家で:ギリシャ神話から始まる、多層的な構成が一本の線で結ばれる様が美しい。
②家守:バカミス+構成の妙。
③埴生の家:裏の裏は…的な発想が実に面白く、秀逸。
④鄙:様々な意味での“密室モノ”。横溝を想起させる雰囲気で余韻も印象的。
⑤転居先不明:正直、この作品だけは消極的な評価。


No.655 6点 ヒポクラテスの誓い
中山七里
(2017/04/08 21:25登録)
 連作短編として綺麗にまとまっていますし、読ませる筆力もあります。さすがに巧いなぁ、と認めつつも、何となく化学調味料を使った味付けと言うか、どこかで食べたような味付けと言うか、そんな印象も受けました。勿論、巧いからこそ受ける印象なのであって、小説自体は楽しく読ませてもらったのですが。(E-BANKERさんの書評に同意です。)ちなみに、私も海堂尊氏のバチスタシリーズを想い起しましたねぇ。Aiも出てくるし。


No.654 6点 人魚の眠る家
東野圭吾
(2017/03/20 23:39登録)
 脳死と臓器移植という、非常に重く、難しい問題と真正面から対峙した作品です。
 読者によって読後の感想に相当の幅があるであろうな、というのが率直な印象。個人的には、両親の行動に相当の違和感を抱きつつも、これを自分らに置き換えて考えてみると、実際にどう判断するのか全く判らないという、何とも情けない状態にあります。かなり考えさせられましたね。
 ちなみに、ミステリの手法を使っている部分も一部ございますが、全体とすればミステリとは言い難いでしょう。無論、この作品は「ミステリか否か」などとは無関係に読まれるべき作品であると思うので、この段落は蛇足以外の何物でもないのですが。


No.653 5点 暗闇の殺意
中町信
(2017/03/15 22:16登録)
 「これは!」と膝を打つ作品は見当たらなかったものの、「これは…」と首をかしげる作品も見当たらないなぁ…といった印象の短編集。でも、こういう、決して派手ではない(地味と言ってもいい)けれども安定感のある短編集って、結構好きです。
 内容としては「裸の密室」がベストで、次点が「動く密室」か。ダイイングメッセージとしてはかなり判りやすいし、現実的にそんな残し方はしないだろ…と突っ込みつつ、真相に意外性のあった「濁った殺意」も印象には残りそうかな。


No.652 2点 おやすみ人面瘡
白井智之
(2017/03/05 18:25登録)
 理論的な面にだけ着目すれば、純粋な本格ミステリでありましょう。ミステリランキングで高評価であることも頷けます。
 でも、私はこの採点。作者の特異的な環境設定は、三作目で幾分慣れたと思っていたのですが、本作品はかなり不快でありました。嫌悪感と言ってもいい。いや、内容じゃなくて、個人的な感覚としてなのですがね。
 というのも、本作の舞台の一つ「海晴市」って、宮城県の海岸部の設定なのですよね。作品世界とは直接関係ないけれど、6年前の大災害を思い浮かべたのは私だけ?いくら架空の都市名としても、宮城県の海岸部って設定に敢えてしているのはなぜ?そして、その扱い方が、かなり酷いよね。無意識なの?わざとなの?
 多分、作者にとっては震災とか過去の話になっているのだろうね。仙台の大学を卒業したらしいのにね。想像力が豊かなのか、貧困なのか、紙一重だよね。この作家さん、大丈夫か。
 …といった、嫌悪感を持ってしまったら、本格度も何もないですよね。よって、この点数になりますな。


No.651 5点 遠い唇
北村薫
(2017/03/02 22:38登録)
 7篇で構成される、ノンシリーズの短編集。
 パンチ力という点では消極的な評価となりますが、作者もソコは狙っていないでしょうし、全体としてはいかにもこの作者らしい、しみじみとした短編集に仕上がっていると思います。
 一方、完全に私個人の嗜好の問題なのですが、ダイイングメッセージや暗号モノにはあまり興味がありません。このタイプの短編も複数ありまして、これらの個々の短編自体の雰囲気は決して嫌いではなかったのですが、採点としてはこの辺りといたします。

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