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ミステリの祭典

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四季
「春」「夏」「秋」「冬」まとめて

作家 森博嗣
出版日2004年03月
平均点7.30点
書評数20人

No.20 6点 初老人
(2020/01/03 19:44登録)
なるほど、分からん。

No.19 7点 Tetchy
(2019/08/07 23:40登録)
真賀田四季という不世出の天才が登場したのは本書刊行までではS&Mシリーズの『すべてがFになる』と『有限と微小のパン』のみ。後はVシリーズの『赤緑黒白』にカメオ出演した程度だが、それは四季としてではなかった。
正直たったこれだけの作品の出演では真賀田四季の天才性については断片的にしか描かれず、私の中ではさも天才であるかのように描かれているという認識でしかなかった。

しかしこの4部作で森氏が彼女の本当の天才性を描くことをテーマにしたことで彼女が真の天才であることが徐々に解ってきた。

そうはいっても3歳で辞書を読み、数カ月で英語とドイツ語を完全にマスタし、5歳で大学の学術書を読み耽り、6歳で物を作り出すといったエピソードで彼女が天才であると思ったわけではない。
そんなものは言葉であるからどうとでも書けるのだ。例えば仏陀なんかは生まれてすぐに7歩歩いて右手で天を差し、左手で地を差して「天上天下唯我独尊」と叫んだと云われているから、こちらの方がよほど天才だ。つまりこれもまた仏陀が天才であったと誇張するエピソードに過ぎなく、これもまた想像力を働かせばどうとでも強調できるのだ。

では真賀田四季が天才であると感じるのはやはり彼女の思考のミステリアスな部分とそれから想起させられる頭の回転の速さを見事に森氏が描いているからだ。
常に感情を乱さず、もう1人の人格を他者に会話させながら、書物を読み、そして相手もしたりするところやそれらの台詞が示す洞察力の深さなどが彼女を天才であると認識させる。最も驚いたのは最後の方で実の兄真賀田其志雄が自殺しているのを見て、兄の代わりになる才能を明日中にリストアップしましょうと各務亜樹良に提案する冷静さだ。事態を把握した時には既にその数時間先、いや数日も数週間も、数年先も思考は及んでいるのだ。こういったことを書ける森氏の発想が凄いのである。

天才を書けるのは天才を真に知る者とすれば、森氏の周りにそのような天才がいるのか、もしくは森氏自身が天才なのか。
これまでの森作品と今に至ってなお新作で森ファンを驚喜させるの壮大な構想力を考えるとやはり後者であると思わざるにはいられない。

春は出逢いと別れの季節である。真賀田四季は2人の其志雄と別れ、そして瀬在丸紅子と西之園萌絵と出逢った。いやそれ以外の人物ともまた。

続く夏は情熱の恋の季節と云う。
例えば先に書いた各務亜樹良は本書で退場するが、その理由は南米へ飛んだ保呂草潤平の後を追うためだ。彼女はもう自分に正直であろうと決意し、保呂草の許へと飛ぶのだ。この謎めいた女が実は心の奥底に斯くも情熱的な想いを抱いていたことを知るだけでも読む価値はある。

そして類稀なる天才少女真賀田四季もまた例外なく思春期を迎え、そして恋に落ちる。それは冷静でありながらもどこか破滅的、そして天才らしく冷ややかに情熱的な恋だった。

幼き頃からその天才性ゆえに全てにおいて誰よりも早い彼女は恋に落ちた途端にすぐに愛を交わし、そして妊娠を経験する。彼女の相手は叔父の新藤清二。彼女は大学教授の両親の遺伝子を持っていながら医師である叔父の遺伝子を持っていないことで、その全てを備えた子供を作るために彼と寝たのだ。しかしそれはそんな打算だけではない。彼女は新藤に恋をし、彼を欲しいと思ったのだ。

また四季が子供を欲しいと思ったきっかけが瀬在丸紅子であった。
彼女が認めた天才の一人、瀬在丸紅子は子供を産んだことで全ての精神をリセットしたと四季は理解した。彼女は今まで出逢った人の中で瀬在丸紅子こそが自分によく似ていると感じていた。しかし彼女は紅子のように自分はリセット出来ないだろうと考えてはいたが、何かを忘れるという行為に憧れていた。そして紅子と同じように好きな人の子供を作れば何かが変わると思ったのだ。

四季が新藤と愛を交わしている時、エクスタシーに達する瞬間、彼女の中の全ての意識が、思考が全て停止するのを体験した。

しかし彼女はやはり情よりも理で生きる女性だった。妊娠をする、子供を産むという行為は本来であれば祝福されるべきなのにそれにショックを受ける両親が理解できない。ひたすら憤り、そして堕胎を促す両親に対して、四季は自らの手で彼らに引導を渡す。第1作『すべてがFになる』で語られていた少女時代の殺人が夏に描かれる。

春では兄が伯母を殺害し、夏では四季自身がとうとう両親に手を下す。そして彼女は近親者の子供を宿す。考えるだにおぞましい人生だ。
しかしその理路整然とした思考と態度ゆえに、森氏の渇いた、無駄を省いた理性的な文体も相まってその存在は血の色よりも純白に近い白、いや何ものにも染まらない透明さを思わせ、澄み切っている。

そして両親を殺害した四季は自分もまた新藤清二と共に自分の子供によって殺されることを認識する。そうすることで真賀田四季と云う存在をアップデートするかのように。
我が子という新しい生と両親の死という誕生と消滅の両方を経験した真賀田四季。
彼女は平気で死について語る。それはまさにコンピュータで使われる二進法、0と1しかない世界のように実に淡白だ。生と死の間に介在する人の情に対して彼女は全く頓着しない。必要であるか否かのみ、彼女の中で選択され、そして判断が下される。

次の秋は森作品ファンへの出血大サービスの1作。
それまでと異なり、なかなか真賀田四季本人が登場せず、寧ろ犀川創平と西之園萌絵とのやり取りと保呂草潤平と各務亜樹良の再会とそれ以降が中心に語られ、S&Mシリーズの延長戦もしくはVシリーズのスピンオフといった趣向で、主人公である真賀田四季は全283ページ中たった10ページしか登場しない。

さて秋はやはり実りの秋と呼ばれる収穫の季節だ。まさにその季節が示す通り、収穫の多い作品となった。
前作で保呂草の許に飛んだと思われた各務は逆に保呂草に捕まり、その秘めたる恋を始まらせる。
西之園萌絵の収穫はやはり犀川との婚約だろう。そして彼の母親瀬在丸紅子との会談で得られた人生訓もまた大きな収穫だ。
犀川創平は妃真賀島の事件に隠された真賀田四季の動機がようやく明かされた。
まさに収穫の1冊である。

最後の冬は遥かな未来に向けての物語か。
冬では一旦『秋』でそれまでのシリーズとの結び付きを語ったことでリセットされ、これからの物語のための序章というべき作品として位置づけられるようだ。
従って今まで本書までに刊行されてきた森作品を読んだ私でさえ、本書に描かれている内容は曖昧模糊としか理解できていない。本書が刊行されて15年経った今だからこそ上に書いたシリーズへと繋がっていくことが解るのだが、刊行当初は読者は全く何を書いているのか戸惑いを覚えたことだろう、今の私のように。

冬は眠りの季節。ほとんどの動物が冬眠に入り、春の訪れを待つ。本書もまた新たなシリーズの幕開けを待つ前の休憩といったことか。英題「Black Winter」は眠るための消灯を意味しているように私は思えた。

そして真賀田四季。『四季 春』で生を受けたこの天才はしかし以前のような無機質な天才ではなくなっている。いっぱいやらなくてはならないことがあるために人への関与・興味をほとんど持たなかった天才少女は娘を生み、外の世界に飛び出して自分で生活をしたことで感受性、母性が備わり、慈愛に満ちた表情を見せるようになっている。
頭の中の演算処理が上手く行っている時にしか笑わなかった彼女が人の死に可哀想と思い、花を見て綺麗と感じ、空を見て色が美しいと思うようになっている。

物語の最後、犀川は四季に問う。「人間がお好きですか」と。そして四季は「ええ……」と答える。綺麗な矛盾を備えているからと。論理的であることを常に好む彼女が行き着いたのは愛すべき矛盾の存在。それこそが人だったのだ。

真賀田四季はまだその生命を、いや存在を残してまだまだ色々とやることがあるようだ。但しその彼女は今までの彼女ではなく、人への興味を持ち、そして自らにその人格を取り込んで生きている。もはや時間を、空間をも超越し、終わりなき思弁を重ねる1人の類稀なる天才が神へとなるプロセスを描いたのがこのシリーズなのだ。そしてそれはまだ途上に過ぎない。

但し解るのはそこまでだ。それは仕様がない。なぜなら私のような凡人には天才の考えることは解らないのだから。

今後のシリーズで『四季』で生れた数々の疑問が解かれていくのだろう。その時またこの作品に戻り、意味を理解する。ある意味『冬』が全森作品の行き着く先なのかもしれない。

No.18 7点 まさむね
(2017/08/27 18:58登録)
【夏~冬の書評】
 「春」のみを読んで投稿してから約1年。「春」読了の時点では、幼少期の真賀田四季押しに、多少引き気味になり、すぐに続編「夏」を手にする気にならなかったワタクシでございました。それがなぜか、約1年を経て読んでみたくなった次第。間もなく夏が終わるからでしょうか。
 で、「夏」は、真賀田四季が13~14歳の設定。ミステリ要素云々は措きつつ、「すべてがFになる」の作品世界の懐かしさもあって、多少テンションは上がりました。
 このテンションのまま「秋」へ。真に楽しむためには、S&MシリーズとVシリーズを読破しておくことが必須です。なお、数年前にネタバレサイトで図らずも真相を知ってしまっていたワタクシとしては、読中に絶妙な悔しさを体験しました。嗚呼、勿論自分が悪いのだけれども、純粋な気持ちで読みたかった。
 最後の「冬」。これはもう、半分は哲学書ではないのか。ちょっとついて行けない感じも受けたかな。
 全編を通じて、ミステリと称していいものか、やや迷うところではあるのですが、20作品以上を費やした壮大なミステリと捉えられないこともないし(いや、無理があるか?)、いやはや、作者はどの時点でどこまで構想していたのかと気にせざるを得ないスケール感に敬意を評してこの採点としましょう。(完全に森ファン限定の作品であって、普遍性は無いけれどもね。)

No.17 7点 虫暮部
(2016/12/09 16:01登録)
 厳密を期すなら、原理的に作家は自らより賢い登場人物を創造することは出来ないはずである。しかしだからといって天才キャラは不可、としてしまってはつまらないわけで、真賀田四季の天才っぷりもそういう“設定”ということでまぁ良い。
 ただあまりに突き抜けた設定にし過ぎたせいで、四季を記述する言葉が的確である担保が失われてしまった感がある。例えばイエスと言った場合にそれが同時にノーも意味しておりしかもそれがどちらであっても特に変わりはない、みたいな(作中にも“天才の思考に存在する一般化されていない概念には対応する言葉がないかもしれない”といった台詞がある)。小説を読んでいてこういう感覚になることはなかなか無いことで、それは確かにこのトゥー・マッチなキャラクターの価値として充分なものだと思う。

No.16 10点 ∠渉
(2015/06/11 20:52登録)
「春」10点、「夏」10点、「秋」10点、「冬」10点。でもって4作の平均をとって10点で。なんとかならんか、この森贔屓ww。

今までの作品を補完する役割と、新たなベクトルへの示唆。たぶんこれ一作だけじゃ作品としてはなんか欠けてるのかなという感じだけど、それすら受け入れて書き上げちゃう力がスゴイと思う。
完全無欠という状態は何かが欠けている状態でも成り立つのではと思ってしまう。
とまぁ矛盾したことをいいたくなる初夏の夜。天才との距離の果てしなさに泣きたくなる笑。

No.15 3点 itokin
(2013/01/31 12:37登録)
これはチョットついてけないなー。4次、5次元の世界、透明人間私には理解不能でした(春を最後まで読めませんでした。御免なさい。)

No.14 8点 ムラ
(2011/08/01 17:44登録)
森博嗣のシリーズ物補正+四季補正こみでの点数。
個人的に「春」はオマケ程度に出てきた密室物が楽しめず(というかトリックがお粗末すぎる)、四季も普通な感じでガックリ感があった。
ただ「夏」の後半からブーストがかかり、「秋」ではS&Mの主人公達やVシリーズの主人公達の保管があってこれは楽しめた。
「冬」はもうミステリじゃないですね。四季というキャラの保管小説。でも楽しめた。天才というキャラが凄いしっくりくる。
個人的には有限と微小のパンで納得出来なかった点が保管されていて嬉しかった。
ちなみに、S&M、V、G、百年密室すべてのネタバレがあるので読む場合は注意が必要。
Vシリーズを読み終わった後で再読したら、前読んだとき微妙だった春も楽しめた。しっかりつながってたのか。

No.13 2点 阿多緑
(2010/07/23 14:12登録)
これなに?って感じです。
シリーズ読んでないと解らないのかなあ

No.12 7点 yoneppi
(2010/01/27 16:53登録)
ついて行こうとするがやっぱり取り残される。 天才、真賀田四季。 最初から、勝負になっていない。

No.11 9点 元FLUGELSファン
(2009/12/31 22:48登録)
満足!の一言でしょう。
S&Mシリーズ、Vシリーズを読んで、これから百年シリーズを読む私にとっては本当に純粋にこの四季シリーズを楽しめました。
真賀田四季という天才をどこまで理解できるものか、何割理解できるかは人によるでしょうが、それぞれの人なりに楽しめるシリーズでしょう。なんというか、S&MとVの合計20巻はこの四季を読むためにあったといえる作品です。

No.10 9点 ちぃ
(2009/03/06 22:46登録)
純粋に楽しめました(^^)
自分はS&Mシリーズ、Vシリーズと読んで四季を読んだのでたのしかったですね☆

No.9 9点 catty
(2008/09/03 21:24登録)
これぞ森博嗣
やっぱり真賀田四季が出ると話が引き締まりますね

No.8 8点 vivi
(2008/04/22 01:41登録)
「春」「夏」「秋」「冬」と一気に読んで、
S&Mシリーズ、Vシリーズ、百年シリーズの伏線が、
一気に解説されていく様を、陶然と見ていました。

もちろん、各シリーズを読むうちに気づいていた面がほとんどですが、
やはり、キチンと解き明かされるのと想像とでは違いますもんね。

厳密にはこれだけでミステリというのは弱いので、
まずは、各シリーズを読んでから読むのがいいと思います☆

No.7 10点 jj
(2004/09/17 00:50登録)
何も言うことはありません。
Vrava!四季!

No.6 4点 ばやし
(2004/09/14 19:59登録)
今「冬」を読み終えましたがちょっと話しについていけなかったです。つまらないってゆうより分らないって感じでした。理解が出来なかったです、私には真賀田四季が。

No.5 10点 yamato
(2004/07/30 17:53登録)
両シリーズ、百年シリーズ?と森世界の集大成ですね。
「冬」はちょっときついですが・・・。
シリーズファンならそれだけで8点はかたいとおもいますが、森氏がどの段階でどこまで構想してたのかと思うと震えがこみあげてきます。
時空を超えた作品ですね。

No.4 8点 モトキング
(2004/03/25 18:20登録)
S&MとVシリーズの大同窓会。ファン以外は楽しめません。
というのも、この小説の面白みは、今までところどころに匂わせてきた両シリーズの関連性を、隅から隅まで明かしちゃうことにあるからです。
多分、まだ明かされていない謎もあると思いますが、それでもメインの人間関係が繋がっていく描写はファンには最高。
読み進むに連れ、「まさか」が「本当」になる感じが楽しいです。
ただ巻毎にメリハリがありすぎで、「春、夏」までは真賀田四季の生い立ちを追うような感じだけど、「秋」では他人の記憶若しくはフォログラフ以外では真賀田四季が一切登場せず、一転して「冬」では真賀田四季の天才的思考がそのまま文章の羅列となってランダムに綴られています。はっきりって「冬」は深い、が、つまらん。
一言で例えるなら、両シリーズまとめてのエピローグという感じ。つまり、前シリーズ読まなきゃ意味不明です。
で、点数は…単独ミステリの価値はゼロだけど、ファンチックにこれ↑

No.3 3点 ユニバ
(2004/02/28 22:11登録)
春、夏、秋 読後。
これってミステリーですか?
ま、懐かしのキャラ登場とかでそれなりに楽しめたけど。
『冬』次第でどう転ぶか分からないところ。
そして二人だけ〜チックの春
四季ファンには楽しめる夏
犀川の能書きばかりが気になる秋でした。

No.2 10点 なりね
(2004/01/20 18:50登録)
四季「夏」「秋」
そろそろ両シリーズのグランドフィナーレですね。
夏は「すべF」で自分が不思議に思っていたことが解決♪。
秋は両キャラの競演が見物。でも真賀田博士の出番は少なし。(それでも強烈な存在感ですけど)

No.1 9点 ばやし
(2004/01/10 17:12登録)
四季シリーズの「春」「夏」「秋」を読みました^^犀川先生大好きの私としては「秋」は最高におもしろかったです!!紅子シリーズでお馴染みの人が出てきたりもして盛り沢山で満足でした♪

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