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ミステリの祭典

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まさむねさんの登録情報
平均点:5.86点 書評数:1195件

プロフィール| 書評

No.795 6点 ドッペルゲンガーの銃
倉知淳
(2018/12/14 22:31登録)
 女子高生ミステリ作家の妹とキャリア官僚(捜査一課在籍)の兄というコンビ、そして彼らのご先祖が…という設定については、個人的にはちょっとアレだったのだけれども、内容自体は本格度が高く、良質であると思います。
 第三話の「翼の生えた悪意」はストレートな密室モノで、途中で気付く方も多いような気がしますが、第一話の「文豪の蔵」は同じ密室モノながら捻りがあり、また、第二話(表題作)の謎も興味深かった。第二話までの評価であれば、7点を付けたかも。


No.794 5点 二年半待て
新津きよみ
(2018/12/11 22:19登録)
 徳間文庫大賞受賞作品で、「大人のどんでん返しミステリー」と銘打たれております。その評について、個人的には半分は認める一方で、肩透かし感も半分くらい残るかな。
 どの短編も、就活とか最近はやりの「○活」をテーマにしていて、その一貫性には好感を抱くのですが、各短編の構成までもが似通っているような気がします。途中で察しがつく短編もあるし、察しがつかなくとも、ミステリーとしての「驚き」とはちょっと違う印象。
 とはいえ、全体的な印象は悪くなく、気軽に読みたい気分の大人向けの短編集といったところ。マイベストは、やはりミステリーとしての要素を備えている、最終話の「お片づけ」かな。


No.793 7点 マツリカ・マトリョシカ
相沢沙呼
(2018/12/03 22:11登録)
 このシリーズの第一作目「マツリカ・マジョルカ」を読んだ際には、それほど良いイメージは残らなかったのですが(キャラ設定のみ記憶に残っている)、第三作目にあたる本書の巷での一定の評価から、ずっと気になってはおりました。ようやく、手にする機会を得た次第です。
 で、内容としては、現在と過去の2つの密室を主眼に据えた堂々たる本格路線で、ちょっと驚かされました。コレって、個人的には、完全に好みの範疇に入るぞ。なかなかの収穫で、何か得した気分です。
 柴犬のネガティブ思考には相当イライラさせられつつも、健全な高校男子の思考回路もあって、その辺りには好感。今回のマツリカ様の名探偵ぶりも良かった。続編も読んじゃうような気がします。


No.792 4点 時が見下ろす町
長岡弘樹
(2018/11/29 19:47登録)
 そもそもミステリーの大概は「作り物」なのでしょうが、それにしても、この連作短編の「作り物感」は強すぎます。反転を経て人間の心情を描こうという意図は分らないでもないものの、どの短編でも「いやいや、そんなことはやらないでしょ、普通は」といった面が否定できません。さすがに狙い過ぎでしょう。それに、連作短編の形態を採った意義も感じられません。読みやすいことは評価するのですが…。


No.791 5点 豆腐の角に頭ぶつけて死んでしまえ事件
倉知淳
(2018/11/25 22:03登録)
 短編集で、うち1編に猫丸先輩が登場。
 全般的に読みやすく、いかにも作者らしい短編集と言えるのですが、脱力感はやや強めで、どの短編も真相自体は想定の範囲内。でも、それぞれの作品でちょっとした”良さ”を感じることができる、その按配は悪くないと思います。個人的には表題作のバカバカしさが好きかな。


No.790 5点 屋上の名探偵
市川哲也
(2018/11/18 22:16登録)
 「名探偵の証明」に登場した探偵「蜜柑花子」の高校時代を取り上げた連作短編。
 うーん、「名探偵の証明」シリーズを読んだことがあるかどうかにも左右されそうだけれども、好き嫌いがはっきりと分かれそうな作品ですねぇ。
 主人公「蜜柑花子」のキャラについて、個人的にはそのイタさも含めて嫌いではないし、学園ミステリとしての工夫も分かるのだけれども、トリック自体に特筆すべき点はなく、冗長に感じる部分も否定できなかったので、この採点にしておきます。


No.789 6点 モノレールねこ
加納朋子
(2018/11/14 23:12登録)
 いかにも作者らしい短編集。ミステリ的な側面だけでみれば極めて弱いと言わざるを得ないのですが、全編から醸し出される優しさがそれを上回っている感じでしょうかね。そして、こういう読書もいいものです。
 ベストは、ザリガニ目線だからこその味わい「バルタン最期の日」。こういう再会っていいよねな表題作「モノレールねこ」、映画みたいな「セイムタイム・ネクストイヤー」、実際に自分の親だったら迷うかもな「ポトスの樹」も印象に残りそうかな。


No.788 7点 たけまる文庫 謎の巻
我孫子武丸
(2018/11/04 21:21登録)
 冒頭作の「裏庭の死体」。まさか速水三兄弟に会えるとは思わなかった。これはファンとしては嬉しい。
 次作の「バベルの塔の犯罪」。内容も悪くはないのだけれど、何といってもラスト1行のサプライズが心憎い。いやはや、そう来たか。
 その他の短編もバラエティに富んでいて、楽しめます。特に「Everybody kills Somebody」が好きかな。
 総合的に、なかなか読み得な短編集と言えるのではないでしょうか。(ファン限定な面も一部あるけれどね。)


No.787 5点 名探偵の証明
市川哲也
(2018/10/31 23:37登録)
 鮎川哲也賞受賞作。
 「名探偵」の「老い」とか「弱さ」に焦点を当てたメタ的視点は結構面白かったですし、印象に残りそうでもあります。
 一方で、それらの要素が「読み進めたい欲」を増幅させたのかと問われれば、消極的な回答をしてしまうような気もします。中だるみ感も否定できないし、トリック自体も小粒(既視感満載)と言わざるを得ません。若き名探偵「蜜柑花子」の位置づけも、少なくとも本作時点では中途半端な印象(あくまでも本作だけでの印象だけれども)。
 とは言え、続編or短編集もそのうち読んでみようかなぁ…と思ったのも事実なので、まずはこの採点にしておこうかな。


No.786 7点 オーブランの少女
深緑野分
(2018/10/21 22:46登録)
 「少女」という共通テーマはありつつも、各々異なる舞台や時代を設定し、巧みに活かしています。ミステリ要素云々は措きつつ、どの短編も次々にページをめくらされました。デビュー短編集としては、出色の出来と言えるのではないでしょうか。
 ベストは、やはり表題作の「オーブランの少女」。「仮面」の深さ、「大雨とトマト」の奇妙な味わい、「片想い」の女学生心理、「氷の皇国」の切なさと雰囲気も捨てがたく、いずれも高水準でしたね。


No.785 7点 マレー鉄道の謎
有栖川有栖
(2018/10/14 18:21登録)
 作者の本格愛と確たる技量を感じる作品ですね。密室の真相自体はアレだけれども、謎は決してそれだけではなく重層的だし、最後まで捻られています。伏線の配置もお見事。序盤は冗長に感じた面も正直あったのですが、事件発生後はあっさりと引き込まれましたねぇ。登場人物一人ひとりに役割を与え、決して「無駄にしない」姿勢も素晴らしいです。


No.784 6点 人間じゃない
綾辻行人
(2018/10/07 21:04登録)
 単独名義の著書には未収録であった短編・中編をまとめた作品集。最も古い作品と最も新しい作品の間には20年以上の開きがあり、かつ、「内容の出来不出来や方向性などは無視して発表の順番どおりに」配置したとのことなので、何となく寄せ集め的な先入観を持って読み始めたのですが、結構いい塩梅の配置のような気もするし、各々の作品の順番自体が興味深かったりもします。「洗礼」も印象に残りそうですが、最終話の「人間じゃない―B〇四号室の患者-」がベストかな。


No.783 6点 アリバイ崩し承ります
大山誠一郎
(2018/10/06 09:29登録)
 タイトルどおり、アリバイ崩しに特化した短編集。「時計修理承ります」のほか「アリバイ崩し承ります」という貼り紙がある時計店店主の美谷時乃が、新米刑事の持ち込む謎を解き明かす…という設定。
 結構人によって評価が大きく異なるような気がしますねぇ。アリバイ特化といってもバラエティに富んでいるし、純粋にパズラーとして面白いという意見もあろうし、トリックのためのトリックといった感じで現実感がないとか、クイズ短編集みたいとか、アリバイ崩しだけ読まされるのも辛いといった意見もありましょう。この作者さんの短編集って、総じてそういった両方向からの評価傾向がありますよね。
 ちなみに、私は肯定的に捉えていて、「いや、無理だろ」といった突っ込み自体も含めて楽しめました。最も印象に残ったのが「時計屋探偵とお祖父さんのアリバイ」かな。


No.782 6点 謎の館へようこそ 黒
アンソロジー(出版社編)
(2018/10/01 20:49登録)
 新本格30周年記念アンソロジー。 姉妹編「白」も合わせ、合計12名の作者さんの作品が揃っています。
 テーマはそのものズバリ「館」であるとはいえ、この「黒」の収録作品に純粋な館モノは見当たりません(そもそも「純粋な館モノ」の定義って何だよ…と突っ込まれそうですが…)。そういう意味で肩透かし感を抱く方もいるとは思いますが、広い視点でなかなか興味深い作品もございました。マイベストは、終盤の転換が見事だった井上真偽の「囚人館の惨劇」で、白黒全体を通してもベストの印象。恩田陸「麦の海に浮かぶ檻」と綾崎隼「時の館のエトワール」も嫌いじゃない。
 個人的には、作者の顔ぶれから、まずは「白」に興味をそそられて先読した訳ですが、「館モノ」の魔力に捉われなければ、「黒」の方が読み得という印象もあります。白黒両方を読んでみるのも面白いかもしれません。


No.781 6点 ゲームの名は誘拐
東野圭吾
(2018/09/26 23:19登録)
 「はい、ここ伏線ですよ~」と言わんばかりのネタが多数あり、結末には一定の予測がつきます(作者が敢えてそうしている可能性も高いのですが)。さらに、犯人は極めて頭が回る設定であるはずなのに、何故にこんな分かりやすい罠(?)をスルーしてしまうのだろう…といったチグハグ感も、確かにございます。
 とは言え、リーダビリティの高さは流石でして、グイグイ読まされたことも事実です。「一定の予測がつく」と書いてしまいましたが、正直に言えば、その想定の上をいく真相でもありました。完全に身を委ねて読む場合でも、「こういう真相なんでしょ?違うの?早く教えてよ」と予測しながら読む場合でも、それなりに楽しめるのではないかと思います。


No.780 7点 ささらさや
加納朋子
(2018/09/22 23:35登録)
 「ああ、良いな」と単純に思わせられる連作短編集。ミステリー要素は決して濃くはないのだけれども、その使いどころも巧いですね。主人公「サヤ」を取り巻くキャラクターも魅力的で、作者の優しさを感じることができます。
 一方で、「サヤ」の気弱さや頑固さ(?)を心配してしまう(というか、多少イライラしてしまう)面もございました。そう感じるのは、私が単に身勝手だからなのか、それとも中途半端に年をとってしまったからなのか。うーん、そういう意味でも考えさせられたかな。


No.779 6点 謎の館へようこそ 白
アンソロジー(出版社編)
(2018/09/17 21:35登録)
 新本格30周年記念アンソロジー第二弾。
 テーマはそのものズバリ「館」で、第一弾「7人の名探偵」よりもテーマ自体のハードルは高いと思います。こちらもハードルを上げて読んでしまった面もあるのですが、作者ごとの個性は十分に出ていて、その点では楽しめたと言えるのかな。個人的なベストは、思考の落とし穴をスッキリと見させてくれた、青崎有吾氏の「噤ヶ森の硝子屋敷」でしょうか。


No.778 6点 5分で驚く!どんでん返しの物語
アンソロジー(出版社編)
(2018/09/13 21:36登録)
 宝島社文庫の「ひと駅ストーリー」シリーズと「10分間ミステリー」シリーズから、選ばれた25の掌編で構成されています。「どんでん返し」と銘打っているだけに、オチが分かりやすい作品も確かにあるのですが、なかなか味わいのある作品も複数ございました。次の掌編はアタリかハズレか…というような楽しみ(?)もあって、スキマ読書としては悪くなかったですね。


No.777 7点 黒い白鳥
鮎川哲也
(2018/09/10 21:37登録)
 いかにも「鮎哲」という作品。後半はアリバイ崩しがメインとなり、個々のアリバイトリック自体は分かりやすいのだけれども、決してそれだけで解決するものではなく、複数のトリックを非常に巧く組み合わせています。鬼貫警部の調査の過程も面白く、途中の複数の転換点の驚きもあって、ほぼ一気読み状態。
 個人的に大好きな名作「黒いトランク」は、一般的には複雑さを敬遠される向きもあると思うのですが、この作品は、脳内で十分に完結できる作品なので、鮎哲初心者向きと言えるような気がします。
 ちなみに、優等列車「白鳥」が登場するのだろうと、勝手に思い込んでいたのですが、全然関係なかったのですねぇ。


No.776 5点 探偵Xからの挑戦状!Season2
アンソロジー(出版社編)
(2018/09/08 21:02登録)
 2009年にNHKで放映された番組のために辻真先、近藤史恵、井上夢人、我孫子武丸の4名が執筆した作品を文庫化したもの。それぞれ、問題編と解決編に分かれています。
 丁寧に考えていけば解けるであろう作品もあれば、いやいや、これは分らんだろう…って作品まで、幅は様々。クイズ好きの方は読んでみてもいいかも。

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