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ミステリの祭典

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シーソーモンスター

作家 伊坂幸太郎
出版日2019年04月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 6点 猫サーカス
(2019/10/04 19:19登録)
バブル期の日本を舞台にした表題作と2050年を舞台にした「スピンモンスター」の2編を収録している。前者は嫁が姑の過去に疑惑を抱き、義父の事故死の真相を探る話で、後者は、天才科学者の遺した手紙を配達する男が陰謀劇に巻き込まれる物語。前者は400字詰め原稿用紙だと350枚で、後者は460枚とボリュームがあり(それぞれ長編1作に相当する分量)、前者の人物が後者の物語に出てきて関係するので、一冊の長編としても読める。相変わらず設定が新鮮。嫁姑の話かと思うとこれがスパイ戦の話になる(ありえない展開とキャラクターの出現に目が点になり、笑いが絶えないでしょう)。後者では、悪との対立という伊坂幸太郎的テーマが人工知能対人間という構図に置き換えられて、緊張と活劇に満ちたロードノベル的サスペンスへと昇華される。語りのうまさは述べるまでもないが、家族小説をシニカルなブラックユーモア劇(でも後味はいい)に仕立てる手腕は抜群。ひねりを加えながら近未来社会の細部を繰り上げ、ディストピア風の社会観と、永遠に繰り返される戦争の原因を感得させるのも見事。

No.1 5点 まさむね
(2019/09/21 11:50登録)
 中央公論新社130周年を記念した小説誌「小説BOC」の発刊にあたって企画された「螺旋プロジェクト」の一作。これは、8人の作家が原始時代から未来までの日本を舞台とした物語を描くという競作企画で、伊坂サンは「昭和バブル期」と「近未来」の2作を担当したようですね。この2作をまとめたのが本書で、つまりは中編2本(シーソーモンスター+スピンモンスター)により構成されています。各中編には一定の繋がりがあるので、連作中編集といったところでしょうか。
 作者らしい軽快でスリリングな展開は楽しめたのですが、表題作の転換は想定内であったし、スピンモンスターもモヤモヤした読後感というか、ちょっと食い足りない印象も受けましたね。

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