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ミステリの祭典

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まさむねさんの登録情報
平均点:5.86点 書評数:1195件

プロフィール| 書評

No.835 6点 螺旋の底
深木章子
(2019/06/20 21:45登録)
 舞台は北フランスの小村。そして中世の城のような石造りの館。謎めいた登場人物…ということで、まずは作品を包みこむ薫りがイイですね。
 そして、高いリーダビリティ―に裏打ちされた伏線の細やかさが見事(読了後に気付いたのですがね)。目新しさという観点では多少消極的な評価になりますが、非常に楽しませていただいたことも事実。作者の裾野の広さも感じることができました。


No.834 5点 幻獣遁走曲 猫丸先輩のアルバイト探偵ノート
倉知淳
(2019/06/16 16:38登録)
 アルバイト中の猫丸先輩が遭遇した5つの事件を扱った短編集で、脱力系ネタが多めの仕上がりです。一方、猫丸先輩のコミカルさは相変わらずで、このバランスを楽しめるか否かがポイント。好き嫌いは分かれそうだけれども、全体的に作者の優しさが現われた短編集とは言えそうです。
 マイベストは、これも脱力系だけれども、何気に爽やかな「たたかえ、よりきり仮面」でしょうか。


No.833 5点 グランドマンション
折原一
(2019/06/13 21:34登録)
 良くも悪くも「折原作品」だったなぁ…という印象。
 書下ろしの短編「リセット」を最終話に配置し、連作短編として纏めようとする工夫等は理解するのですが、いずれにしても新鮮味は薄かったですね。


No.832 5点 科警研のホームズ
喜多喜久
(2019/06/09 15:27登録)
 それぞれの県警から科学警察研究所(科警研)に派遣された3人の研修生。しかし勤務場所は「本郷分室」。室長の土屋はかつて「科警研のホームズ」と称された切れ者だが、とある出来事をきっかけに科警研を離れ、大学で環境科学の研究に没頭している。科警研の所長・出雲は、分室を設置することで、土屋に犯罪捜査に関わる機会を与え、最終的には科警研に戻したがっている…という設定の短編集ですね。
 全体として青臭く感じてしまう面もありましたが、科学的な側面はなかなか興味深かったですし、各短編の構成自体は堅実と言ってよいのではないでしょうか。続編を意識した終わり方でしたが、確かに設定としては使い勝手がいいかもしれませんね。


No.831 6点 てるてるあした
加納朋子
(2019/06/02 21:40登録)
 「恋しさと せつなさと 心強さと」
 照代の成長が嬉しいし、何といっても久代ばあちゃんが泣かせてくれます。先の展開は想像しやすいのですが、もっともっと読んでいたい気分にさせてくれた作品。


No.830 5点 殺人鬼がもう一人
若竹七海
(2019/06/01 15:50登録)
 総じて苦みの残る、というかブラック感満載の連作短編集。
 舞台は、都心から離れた寂れたベッドタウン「辛夷ヶ丘」。辛夷ヶ丘署は、ダメ警官の吹き溜まり。住民のクセは強く、遵法意識は弱い。こんな街は嫌だ…コレが第一印象。
 疲れ気味の時に読んだ私が悪いのかもしれないのですが、がっかりな登場人物も多数登場して、何か疲れました。実はユーモアも効いているので、違う体調・気分の時に読んでいれば、印象はガラリと変わったような気もします。
 ちなみに、警察官・砂井三琴とその相棒の描き方はちょっと中途半端だと思いますね。特に相棒の方が。


No.829 5点 作家の人たち
倉知淳
(2019/05/25 22:23登録)
 出版社や編集者、そしてミステリ作家の内幕を描いた短編集。「内幕を描いた」なんて書いたけれど、シリアスなものではなくスラスラ読めます。倉知さんらしいとも言えるし、物足りないとも言える、そんな印象。
 正直、積極的におススメしたい短編集とは言えないのですが、出版社が幻冬舎という点は、ポイントになるかも。最近話題の出版社ですしねぇ。勿論、今回の案件を踏まえて各短編が書かれた訳ではないのでしょうが、ソレを念頭に置いて読む分には面白い短編もありましたね。この採点は、読んだ時期が今だったからこそのものですので、お含みおきください。


No.828 6点 我が家のヒミツ
奥田英朗
(2019/05/19 21:26登録)
 「家日和」、「我が家の問題」から続くシリーズの第三弾(なのだと思う)。
 驚きの反転があるという訳ではなく、むしろ「分かるなぁ…」と頷いてしまう作品が多いのがミソ。ミステリ要素はさて置き、安心して読める短編集って個人的には貴重だったりするのです。(特に疲れ気味の時とか…)
 前半の4作品「虫歯とピアニスト」「正雄の秋」「アンナの十二月」「手紙に乗せて」が、考えさせられもして、良かったですね。「正雄の秋」のパターンって、結構他人事ではないし、「分かるなぁ…」って感じでしたね。


No.827 6点 ビブリア古書堂の事件手帖~扉子と不思議な客人たち~
三上延
(2019/05/12 21:44登録)
 人気シリーズの後日譚。栞子さんと大輔クンは既に結婚していて、6歳の娘・扉子ちゃんと3人家族という設定です。7冊刊行された本家シリーズが2010年~2011年までのエピソードだったということらしいので、本作が刊行された2018年を基準とすると…なるほど計算は合う(笑)。
 本家シリーズ後半を半ば意地で読み進めた感のある身としては、正直それほど期待せずに本書を手にしたのですが、登場人物の近況を含めて時間軸が多少動いた効果なのか、無理にコトを大きくしない短編構成のせいもあるのか、個人的には好印象でしたね。読後感もいい。物語はもう暫く続きそうですが、続編も読んでみようかな…という気にはさせられましたね。それぞれの登場人物の前日譚もありそうだし。


No.826 6点 グラスバードは還らない
市川憂人
(2019/05/06 21:52登録)
 「ジェリーフィッシュは凍らない」、「ブルーローズは眠らない」に続く、マリア&漣シリーズ第三弾。はっすーさんのおっしゃるとおり、評価が分かれそうな作品ですね。
 謎は魅力的ですし、緊張感もある引き締まった展開なのですが、トリックの一つは如何なものかという印象は拭えません。「ソレを許容しちゃったら、何でもアリになってしまうのでは?」といった感じ。
 時間軸を過去に設定しつつ、現在でもあり得ない架空の科学技術を持ち込むスタイルは作者の十八番だし、このシリーズの特長でもあります。そして、伏線も張られてはいるのです。しかし、ソレを舞台設定というよりも直接的なトリックに使ってしまうのはどうなのだろう。
 とはいえ、楽しめたことも事実だし、三作連続で独創的で上質な作品を発表し続ける作者の実力と意気込みは素直に評価させていただきたく、この採点で。


No.825 8点 魔眼の匣の殺人
今村昌弘
(2019/05/01 22:10登録)
 デビュー作「屍人荘の殺人」が大評判になっただけに結構なプレッシャーだったと思うのですが、心配ご無用とばかりに、引き続き質の高い作品を発表してくれました。
 犯人は比較的判り易いような気がしますが、本質がソコだけに置かれているものではないので、ご安心(?)ください。前作ほどの重量感はないものの「未来視(予言)」という特殊設定を巧く活かしたロジックも魅力。終盤の反転も綺麗に嵌っています。重層的に楽しめると思いますね。
 作者の本格愛と、次作に繋げる意気込みも評価して、1点加点したこの採点とします。次作も楽しみだなぁ。


No.824 4点 タカイ×タカイ
森博嗣
(2019/04/28 14:38登録)
 Xシリーズ第三弾。
 うーん、「実はこういう仕掛けがあったんです」って後出しで言われてなぁ。意味なく奇想天外感を出さないでほしいなぁ。また、それが謎の全てではないにしても、他の真相もちょっと平板過ぎるのですよねぇ。積極的な評価はしにくいなぁ。
 それと、個人的には、萌絵譲が何か邪魔。


No.823 5点 放課後の名探偵
市川哲也
(2019/04/24 23:51登録)
 「名探偵の証明」に登場した探偵「蜜柑花子」の高校時代を取り上げた外伝的連作短編「屋上の名探偵」の続編という位置づけですね。「名探偵の証明」は未読で構わないと思うのですが、前作の「屋上の名探偵」は読んでいた方がより楽しめるような気がします。
 正直、評価しない方も多いだろうな…と感じましたね。端的に言えば「薄っぺらい」ということになりましょうか。確かに、否定できない。
 しかし、個人的には、流血を隠すために「佐清」の白マスク(犬神家の一族のアレ)を被って校舎を疾走するバカさ加減が結構好きだったり、「誰がGを入れたのか」のネタが連作短編全体として見た場合に嫌いじゃなかったりしたので、まぁ、楽しめたと言えるのかな…という印象。(一方で、これらが「薄っぺらさ」を増幅しているという側面も否定できないのですがね。)


No.822 7点 緋色の囁き
綾辻行人
(2019/04/21 11:05登録)
 作者が27歳の頃に発表した「囁き」シリーズの第一作品。
 全寮制の名門女学校が舞台で、「いかにも」的な雰囲気が漂っています。ある種の「しつこさ」を感じる面もありますし、万人向けする内容とも思えないのですが、終盤で判明する真相は印象に残りそうです(論理的に真相に辿り着ける構成ではないですけどね)。「館」シリーズとは一味違う面白味も感じて、コレはコレで、個人的には好きだな。


No.821 5点 化学探偵Mrキュリー2
喜多喜久
(2019/04/14 23:53登録)
 化学の知識に疎いため、その筋の真相にも、単に「へー」と言うしかないワタクシでございます。
 化学系トリックが効果的に機能していると言えるのかは別として、小難しすぎるものでもなく、軽快なテンポで進むので、軽い気分で読むにはいいと思いますね。


No.820 6点 家日和
奥田英朗
(2019/04/07 18:26登録)
 とっても読みやすい短編集。登場人物達とは当然に立場が違うのだけれども、何か分かるような気がしますし、最終的には「ほっこりとした」気分にさせてくれます。
 続編的位置づけの「我が家の問題」の方が、タイトルどおりトラブル感が強めで、その分、ほっこり感も強めに出て好きでしたが、この短編集もイイ。ミステリーとは言い難いのでこの採点にしますが、安定的に楽しませていただきましたよ。


No.819 7点 生還者
下村敦史
(2019/04/06 22:12登録)
 「二人の生還者のうち、どちらが真実を語っているのか分からない。エベレストよりも遭難死率が高いというカンチェンジュンガで何があったのか?」というプロットの山岳ミステリー。
 筆致の重厚さは好き嫌いが分かれそうだし、幾分しつこく感じる部分があったことも事実なのですが、総合的には読み応えがあって好印象。終盤の伏線回収も綺麗だし、(複数の?)真相にも「なるほど」と思わされました。丁寧な取材を経た力作だと思いますね。


No.818 5点 キラレ×キラレ
森博嗣
(2019/03/28 23:17登録)
 Xシリーズ第二弾。
 私立探偵の調査の過程は、軽快な進行具合もあってそれなりに楽しかったのですが、真相としては平板で、多少の肩透かし感を抱いたことも事実。
 あれ?前作「イナイ×イナイ」でも似たような感想を抱いたような…。まぁ、次作も読んでしまうような気もするので、結論としては嫌いではない、ということになるのでしょうが。


No.817 6点 望郷
湊かなえ
(2019/03/23 19:12登録)
 ある意味で「裏・湊かなえ」といった印象の短編集。収録6作品のうち、前半3作品がよかった印象。
 マイベストは日本推理作家協会賞受賞作の「海の星」。味のある反転、そして何より、「画になる」作品でした。ミステリとしては「みかんの花」も佳作。色々と考えさせられた「夢の国」がその後に続くかな。


No.816 6点 早朝始発の殺風景
青崎有吾
(2019/03/21 19:03登録)
 「ワンシチュエーション(場面転換なし)&リアルタイム進行」を謳った短編集。
 舞台は、始発の電車内、放課後のファミレスの席、観覧車のゴンドラの中、公園レストハウス、そして同級生の自宅の部屋の5つ。原則2名(時に3名)の高校生の会話で進行していきます。なるほど「青春密室劇」を観ているような感じ。
 個々の短編の出来栄え自体はマチマチといった印象ですが、全体としては飽きることなく読み進められたし、さりげない伏線の配置と回収や、高校生らしい瑞々しさの表現などは良かったですね。

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