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ミステリの祭典

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メルカトルさんの登録情報
平均点:6.04点 書評数:1924件

プロフィール| 書評

No.144 4点
荻原浩
(2011/03/29 23:36登録)
正直、採点通りイマイチの出来かなという印象。
面白かったのは、今時の(もう一昔前だが)女子高生達の実態と、刑事とのやり取りくらい。
あと、個人的な好みで食事のシーンが多めだったのは、良かったが。
しかし、テンポもあまり良くないし、若干無駄と思える描写もあり、間延びした感は拭えない。
また、被害者の足を切り取る理由があれでは、ちょっと納得できないかと。
ラスト一行で+1点。


No.143 4点 幼虫旅館
赤星香一郎
(2011/03/23 23:37登録)
前二作が面白かっただけに、非常に残念である。
今回は、いわゆる陸の孤島或いは嵐の山荘ものに、ちょっぴりホラー・テイストを加味して、水で薄めたような仕上がりになっている。
かなり濃密に感じられた前ニ作と比較すると、とても同じ作家によるものと思えないような希薄さが感じられ、正直読むべきではなかったと後悔している。また肝心の巨大幼虫の正体には唖然とさせられた、勿論悪い意味で。
せっかく期待していたのに、トリックらしいトリックもなく、なんの捻りもない凡作に終わっているのは、返す返すも残念で仕方ない。
でも、新作が出たらまた買ってしまうんだろうな・・・。


No.142 8点 連続殺人鬼 カエル男
中山七里
(2011/03/19 23:44登録)
本作は、『このミス大賞』に同作家の『さよならドビュッシー』とともにダブルエントリーされた作品で、こちらのほうを読みたいとの読者の声が多く、刊行されたいわくつきの作品である。
マスコミによって「カエル男」と名付けられた連続殺人鬼を追う刑事達を描いた、サイコ・サスペンスといえるであろう。
いささかエグい描写があるので、特に女性読者は要注意だが、意外と骨格はしっかりしている印象だ。
果たして「カエル男」の目的は何なのか、単なる無差別殺人なのか、それとも殺人快楽症なのか、その辺りが本作の一つの眼目といってよいと思う。
主人公の刑事、古手川がボンクラであることや、少なからず疑問を抱かざるを得ない箇所があること、やや冗長なシーンなど、細かい欠点はいくつもある。
しかし、それらを補って余りある面白さであり、後半の畳み掛けるようなどんでん返しの連続は見事といってよいと思う。


No.141 5点 探偵Xからの挑戦状!Season2
アンソロジー(出版社編)
(2011/02/27 23:44登録)
4人によるアンソロジーだが、それぞれ一長一短あってどの作品が秀でている訳でもなく、押しなべて平均点をクリアしている感じである。
自分の好みから言うと、近藤史恵女史の『メゾン・カサブランカ』がややお気に入りかな。
問題編と解決編が完全に分離されているわけだが、面倒なので全く推理しないで解決編を読んでしまった。
これはある意味正解かもしれない。
というのは、真相を看破するのには多分に想像力を要する作品が多かったため。
そんな中井上夢人氏の『殺人トーナメント』だけは、純粋なパズル問題であり、理系が得意な人には意外に簡単に解けるかもしれない。
あなたも挑戦してみては?


No.140 7点 空中ブランコ
奥田英朗
(2011/02/25 23:47登録)
奥田英朗氏の作品を初めて読ませてもらった。
一読後の感想は、なんと言っても精神科医の伊良部一郎の強烈なキャラと看護婦のマユミの魅力に見事に嵌った感じ。
笑える小説もたまにはいいもんだねえ、気分が楽になるようだ。
伊良部の元を訪れる患者達は、その無茶苦茶な治療法に驚かされるが、さすがに医師だけあって実は計算どおりの経過を辿っているような気もする。
いずれにしても、ほとんどの患者が快方に向かっているし、後味もすっきり清涼感があって良いと思う。
また、最終話『女流作家』のラストシーンには、思わずホロリとさせられた、これまでの作風からは考えられない場面に少し驚かされた。


No.139 5点 赫眼
三津田信三
(2011/02/21 23:33登録)
良くも悪くも三津田氏らしさは十分出ているが、全体的に低調な感は否めない。
短編の間に挟まれた形の、実際の怪談風のショートショートも正直取るに足らない印象を受けた。
面白いと思ったのは、ミステリテイストが加味された『灰蛾男の恐怖』と、無限に続く合わせ鏡の中の自分を手前から順番に数えていると、ある日その中に見てはいけないものを見てしまう男の物語『合わせ鏡の地獄』である。
他の作品は、あまり印象に残らない、すぐに忘れてしまいそうなものばかりであった。


No.138 6点 再生の箱
牧野修
(2011/02/17 23:41登録)
前作『破滅の箱』と比較して、スピード感に欠け、若干まったりした印象は否めない。
そして活躍するのが、ほぼトクソウの室長の三樹子と破天荒なキアラだけなので、前作のようにキャラ小説としては物足りない気もする。
金敷市で起こる事件は相変わらずシンプルでありながら、なんとなく不可解で、全編を通じて不気味な雰囲気を醸し出している。
そして、最後の最後で意外な人物が、いきなり重要な役目を果たす辺りはなかなかのサプライズではあった。
全体としてはまずまずの出来だが、本格的な警察小説として読むのならば、合格点とは言い難い。


No.137 6点 彼女が死んだ夜
西澤保彦
(2011/02/10 23:23登録)
途中やや無駄と思える描写が散見されたが、全体としては各キャラの魅力で楽しめた。
ミステリとしては、警察の捜査に全く触れることなく解決にまで無理やりもっていった感じはあるが、最後の捻りが効いていてちょっとした驚愕は味わえた。問題のエピローグだが、私はこれがあればこその作品だと評価したい。
たとえ後味が悪くても、このエピローグ抜きにして本作は語れないと思うのだが。


No.136 5点 最後の一球
島田荘司
(2011/02/04 23:44登録)
島田氏にこの点数は、正直気が引けるが仕方あるまい。
御手洗シリーズといっても、御手洗がさして活躍するわけでもないし、ミステリとして弱いので、評価が低くなるのもやむを得ないと思う。
ほとんどがプロ野球を目指した若者の独白で占めているため、文体が重厚さに欠けるのも気になる点。
しかし、島田氏独自の社会派的一面も垣間見えるので、その辺りは評価したい。


No.135 7点 破滅の箱
牧野修
(2011/01/28 23:58登録)
金敷署のはぐれ者達が集まる、生活保安課防犯係特殊相談対策室、通称「駄目な方のトクソウ」。
ここを訪れるのは、自称霊能力者や呪われた箱に恐怖する者、宇宙人を警戒する男など、厄介な一般人ばかりである。
不思議な雰囲気をかもし出す連作短編集だが、それぞれの事件が少しずつリンクしており、感覚的には長編を読んでいるような感触。
「トクソウ」のメンバー達がこれまた個性的で、いずれの人物にも感情移入可能。
誰に移入するかは個人の好みであろう。
ミステリとして、事件の不可思議性やトリックなどを楽しむというより、警察小説として、或いはキャラクター小説として、とても楽しめる一作。
全編を通じて、裏に巨大な悪意の存在を暗示しており、それにより本作を味のある作品に仕上げている。
ミステリを主に読まれる読者には、馴染みの薄い作家かもしれないが、本書は一読の価値ありと言わせてもらおう。


No.134 4点 新・新本格もどき
霧舎巧
(2011/01/25 00:18登録)
第一話の『人狼病の恐怖』はそこそこ面白かったので、期待したが残念な結果に終わってしまった。
霧舎氏の初期の作品は結構好きで読んでいたが、それ以降は方向性が本格から離れてしまったようで、ミステリ界はまた一人本格の担い手を失った気がする。
本作に関しては、文体が合わなかったせいか、それとも私の読解力のなさのせいか、短編にもかかわらずストーリーが、すんなり頭に入ってこなかった。
登場人物にも魅力が感じられず、感情移入の余地もなく、所詮「もどき」だと思ってしまったのは、作者の目論見が外れてしまったとも言えるのではないだろうか。


No.133 5点 黒い森
折原一
(2011/01/21 23:52登録)
ミステリ・ツアーと称しての、樹海を彷徨う独特の雰囲気はなかなか楽しめた。
全体を覆う陰鬱なムードは、まさに折原氏の独壇場で、サスペンスとしての出来は悪くないと思う。
しかし、袋とじの必然性がまったくないと感じるのは、決して私だけではあるまい。
あまり意味のない、凝った構成はほとんどその効力を発揮していない。
全体的に内容が薄いし、ミステリとしてはかなり弱いと感じられるのは残念な限りだが、個人的にはそこそこ楽しめた。


No.132 4点 僕を殺した女
北川歩実
(2011/01/17 23:34登録)
これはいわゆる記憶喪失物の延長線上に位置する作品である。
しかしデビュー作ということを差し引いても、あれもこれもと詰め込みすぎて、方向性が判然としないのはいかがなものかと思う。
どうも読後感がスッキリしない。
様々な人間を登場させて、サイドストーリーを膨らませるのはよいが、煩雑な印象を拭えないまま読了してしまった。
ミステリとして期待している読者は、読むに値しないであろう。


No.131 5点 人格転移の殺人
西澤保彦
(2011/01/02 22:36登録)
正直なところ、事前に危惧していた嫌な予感が当たってしまった。
それは、「人格転移」による混乱と煩雑さである。
余程注意深く読まないと、個々の人格と身体の識別が難しい。
その辺りは出来る限り平板に分かりやすく描いているつもりだろうが、個人的にはやや難解な部分があったことは否定できない。
また、真犯人は予想通りだったし、オチも思っていた通りで逆に驚いた。
残念ながら、驚愕を味わう事はできなかった。


No.130 5点 明智小五郎対金田一耕助
芦辺拓
(2010/12/29 23:26登録)
はっきり言って表題作以外は、いまひとつ楽しめなかった。
フレンチ警部、フェル博士、H.M卿、ブラウン神父など著名な名探偵たちが登場するのはファンとしては嬉しいだろうが、事件そのものもそれ程興味をそそられる謎もなく、トリックも前例のあるものばかりで、正直感心しない。
結局一番美味しいところを持っていったのは、明智小五郎だろう。
やはり金田一も先輩に敬意を表して、ということなのか?


No.129 7点 風が吹いたら桶屋がもうかる
井上夢人
(2010/12/25 00:07登録)
登場人物が事件の依頼者以外、物語の語り手のシュンペイ、心優しき超能力者ヨーノスケ、理屈屋で的外れな推理を展開するイッカクのみといった、一風変わった連作短編集。
それぞれの役割がはっきりしていて、個性もそれなりに感じさせてくれるし、何よりも読みやすいのが美点である。
事件も結構興味を惹かれるものがあり、軽めで楽しめるミステリを求める読者にとっては一読の価値はあると思う。
ワンパターンも、ここまで来ると逆に清々しい。


No.128 6点 武家屋敷の殺人
小島正樹
(2010/12/17 23:24登録)
まず何よりも冒頭の現実離れした日記には、いかにも島田荘司氏の好みそうな滑り出しでニヤリとさせられた。
この時点ではかなりの期待感を抱かせるが、長い第二章であっさり謎が明かされるのは、構成的に如何なものかと思ってしまった。
しかし、そこにもまた作者のミスリードも含まれているわけで、まさに詰め込みすぎ、の謳い文句の本領発揮と言ったところか。
全体としては、プロットが個人的にはイマイチと感じた。
トリックもよく考えられているし、謎の解明も緻密なだけに、もう少し上手く料理すれば、もっと傑作になっただろう、そう考えると惜しい作品ではないかと思う。


No.127 4点 UFOの捕まえ方
柄刀一
(2010/12/09 23:33登録)
表題作が長編で、他の三作品が短編という風変わりな連作短編集である。
しかしながら、表題作以外はどうという事もない凡作が並んでいる。
肝心の『UFOの捕まえ方』は、秋田県のある町でUFOの目撃騒ぎの中、内臓の一部を抜き取られた犬の死体と共に、シャンデリアの上にうつ伏せに状態で男の死体が発見されるという、一見不可能犯罪物。
いかにも宇宙人の仕業に見せかけた殺人事件かと思いきや、真相はかなりありきたりなもので、驚くには値しない。
それよりも、この人の文体は私には合わない事を改めて思い知った作品であった。


No.126 7点 神のロジック 人間のマジック
西澤保彦
(2010/12/02 23:21登録)
序盤から中盤にかけては、ヌルいという印象しかなかった、タイトル負けしているなと。
しかし、このSF的設定と子供たちの何気ないやり取りの中に、いくつもの伏線が張られているので、油断は禁物である。
後半に入って、唐突に殺人が起こるが、それでもまだ今ひとつ退屈な感じは拭いきれない。
しかし、最後の最後で驚愕の真相が明かされる、これで私の本作に対する評価は一変した。
それまでの平板さや退屈さを見事に覆すだけの、強烈な真実に瞠目すべき作品であろうと思う。


No.125 6点 ガラスの麒麟
加納朋子
(2010/11/27 23:39登録)
女性の作家らしい視点で描かれた佳作。
少女の心の微妙な揺れや、女性の心の奥底に潜む襞のようなものを、淡いタッチで上手に表現している。
連作短編集なのだが、どの作品も読者の心に訴えかけてくるような作風で、加納朋子女史独特の世界観で読ませる作品だと思う。

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