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ミステリの祭典

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熱帯夜
旧題『あげくの果て』 中編集

作家 曽根圭介
出版日2008年10月
平均点6.50点
書評数2人

No.2 6点 E-BANKER
(2014/02/24 22:26登録)
2008年に単行本として発表された「あげくの果て」に、短篇二本を加えて出版されたのが本作。
特に表題作「熱帯夜」は日本推理作家協会賞短篇部門を受賞した作品。

①「熱帯夜」=これは一言でいうと「プロットの妙」ということになるだろう。二つの場面が交互に展開され、それぞれの背景も徐々に明らかにされていく。そして終章ではそれまでの世界が見事にひっくり返される快感・・・。さすがに冠のついた作品は違うなと思わされる。ラスト一行の捻りも気が効いてる。
②「あげくの果て」=近未来の世界。日本は戦争に巻き込まれ、かつての経済大国の面影は全くなし。そして超高齢化社会がやって来ている。老人たちと若者たちの対立はエスカレートしていってついに・・・っていう展開。ここまでは大げさにしても、何となくそれに近いことは起こりそうな気がするから怖い、というか切ない。
③「最後の言い訳」=徳永英明の曲じゃないよ(って古いな・・・)。本編はズバリ「ゾンビもの」(らしい)。人が人に食われると、「蘇生者」という存在になり、現世から隔離される・・・そんな舞台設定。主人公の冴えない男の回想シーンと現在の事件がクロスするとき、実に皮肉な結末を迎える。

以上3編。
ホラー文庫から出されてるけど、あまりホラー的な怖さはなく、特に①はレベルの高いミステリーとしての出来。
どれも皮肉が効いてて、作者がニヤニヤしながら書いてたんじゃないかなと思わされた。
②③は特殊な舞台設定がテーマだけど、作者の考え方が投影されているようで興味深い。
まぁ旨い作家だなという印象は強く残った。

でも個人的にはそれほどストライクではないかな。
評価は若干辛めかもしれない。
(やはり①がダントツによい。②③は好きな人は好きかもっていう作品)

No.1 7点 メルカトル
(2011/04/01 23:55登録)
第62回日本推理作家協会賞短編賞受賞の表題作を含む、3篇からなる短編集。
『熱帯夜』はなかなかサスペンスフルで小気味良いが、少々駆け足気味なのが残念な点ではある。
しかし、登場人物全てに役割がしっかり与えられていて、一風変わったホラー色も加わって独特の世界観を紡ぎ出している。
『あげくの果て』はやや散文的な文体で、まとまりに欠ける感があり、印象が薄い。
『最後の言い訳』は意表を突く展開で楽しめる。
いわゆるゾンビものではあるが、ドラマ性も十分で、ラストでかなり強烈な余韻を残す力作だ。

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