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ミステリの祭典

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マドンナ

作家 奥田英朗
出版日2002年10月
平均点7.11点
書評数9人

No.9 7点 いいちこ
(2017/08/19 16:24登録)
企業の中間管理職を主人公に配し、会社や家庭におけるドタバタをコメディタッチに描いた短編集であり、いずれの作品も純粋に読物として面白いのだが、それだけに止まらない。
「ダンス」では「個の尊重」と「協調性」の両立、「総務は女房」では主人公の硬直した価値観・倫理観に起因する葛藤、「ボス」では女性の上司を持った男性管理職の悲哀・憤慨等、各短編の主題に著者の高い先見性と今日的な問題意識が活かされていて、実に見事。
人間観察眼の確かさと人物造形の巧みさもあいまって、誰もが共感できる、実に読ませる作品に仕上がっている。
会社人間・仕事人間と、その家族にとって必読の作品と言えよう

No.8 6点 haruka
(2014/01/20 23:52登録)
「普通の人」を描かせたら著者の右に出る作家はなかなかいないだろうと思わせる作品。サラリーマンなら誰しも経験するであろう、ありふれたストーリーを面白おかしく綴った短編集。「マドンナ」と「ボス」が特に面白かった。

No.7 6点 E-BANKER
(2014/01/05 15:11登録)
直木賞作家である作者が贈る中間管理職サラリーマンへの応援歌(書?)的作品。
上司のこと、父親のこと、夫のことを知りたいあなたにもお勧めの一冊。

①「マドンナ」=妄想癖のある大手企業の課長が主役(もちろん妻子持ち)。ある日、人事異動でやって来た可愛いくて上品な女性部下に恋してしまう。年甲斐もなく、部下の若手社員と張り合ってまで女性の気を引こうとするのだが・・・。その気持ちはたいへんよーく分かるよ!!
②「ダンス」=一人息子が大学にも行かず、進路として選んだのが“ダンサー”(!) 当然父親としては反対するのだが・・・。そして、職場では組織に与しない同期の課長の扱いに困って・・・。その気持ちはよーく分かるよ!!
③「総務は女房」=エリートとして営業の第一線で活躍してきた男。組織を知るために、二年間という期限付きで配属されたのは総務部。そして、そこでは今までの価値観を壊されるような出来事が相次ぎ起こる・・・。
④「ボス」=自分が昇進すると思っていた部長職へ抜擢されたのは、中途採用の才媛として名高い女性上司(ボス)だった! そして、そのボスは従来の体育会系的慣習を次々破るような社内ルールを打ち出していく・・・。主人公の中年男性課長の立場は如何に!? っていう粗筋なんだけど、これも何か分かるなぁ・・・。こういう人が上司になるととりあえず困ってしまうよなぁ・・・
⑤「パティオ」=湾岸沿いの再開発地区。開発時の思惑は外れ、なかなか人が集まってこない。主人公の課長を始めとするプロジェクトチームは、集客を目指すべく様々なプランを出していくが・・・。男性が出会うひとりの老人がかなりいい味出してるし、実父との関係は身につまされる。

以上5編。
まず、本作は100%ミステリーではありません。
よって評点はこんなもんですが、とにかく「中年サラリーマン」、特に『中間管理職』にとっては、実によく分かる、実に身につまされる内容の連続。
「そうだよなぁー」とか、「分かるわー」と読みながら何度思ったことか!!
さすがのストーリーテラー振りとしか言いようがない。
上司には責められ、部下には突き上げられ、家に帰れば妻に虐げられる・・・。もう少し「中間管理職を大事にしてくれ!」と思わず声に出して言いたくなってしまった・・・
(①~④ももちろん面白いのだが、個人的ベストは⑤だな。割と静かな作品だけどそれがいい)

No.6 7点 Q-1
(2013/04/19 20:29登録)
個人的に短篇集は表題作以外は合わなかったり
少なくともひとつは面白く無いなと感じるものがあるのですが
今作品は全ての作品が楽しく読めました。

特にボスは完璧超人の世俗的な一面を垣間見るラストが印象的でした。

No.5 6点 メルカトル
(2011/04/14 21:48登録)
中間管理職の悲哀を描いた、主人公達の心情が手に取るように分かる、ユーモラスな短編集。
やはり表題作の『マドンナ』が最も共感できる。
40代の男が淡い恋心に大いに戸惑い、心揺らす様は読んでいて身に詰まされるし、凄く理解できる。
これほどまでに主人公の心の中に入り込んだ描写を出来る作家はそうはいないと思う。
それだけに貴重な存在であろう。
『ボス』もなかなか良い出来だ、ラストシーンは少しだけ癒されるかも。

No.4 6点 シーマスター
(2011/02/16 19:45登録)
割といい企業で出世コースに乗り、都内に一戸建てと妻一人と子供二人を所有している40代の課長5人の5つの小さな物語。

仕事、人間関係、家庭、恋・・・・不惑の男たちが大いに戸惑うさまがユーモラスに描かれています。

何と言っても、この人の作品は決して薄っぺらな内容ではないのに殆どマンガを読むエネルギーで読めるのが嬉しい。

No.3 7点 E
(2009/10/04 10:42登録)
社会を描いた、コミカルでリアル(?)な短編集。
マドンナは「おい、おじさん」と突っ込んでしまいましたが、パティオはお気に入り。心が温かくなりました。

No.2 9点 itokin
(2008/09/14 09:03登録)
うーん、どの物語も自分の気持ちと同化できるすばらしいの一語に尽きる短編集です。主人公の心の揺れをてらいなくユーモアを交えて表現する奥田さんは天才です。

No.1 10点 ひこうき雲
(2008/08/13 00:50登録)
40代の課長を主人公とした短編集。なんてことのない話でも飽きることなく、主人公の心の動きをコミカルに描くの書き方に感服してしまう。どの話も満足の行く面白さ。あっと言う間に読み終わった。
それぞれの話はこんな話…、
「マドンナ」、自分の部署に配属になった若い女性に惚れてしまう。気持ちを抑える葛藤が笑える。
「ダンス」、自分の息子が大学に進学せず、ダンサーをめざすと言う。
「総務は女房」は、営業のエリートが総務へ異動し、荒れた総務に我慢がならない。
「ボス」は、自分の同い年の女性が自分の上司になった。完璧な彼女に成すすべがないのか。
「パティオ」は、職・遊・住が共生する未来型な街を作った会社に勤める鈴木。この街、遊の部分だけが閑散。その閑散した時間にその街で読書で過ごす老人が。

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