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ミステリの祭典

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simo10さんの登録情報
平均点:5.69点 書評数:193件

プロフィール| 書評

No.113 5点 びっくり館の殺人
綾辻行人
(2010/10/30 13:49登録)
ミステリーランドものがどういう傾向の作品なのか分かっていたので、構えずに読みました。
序盤にいきなり密室殺人を発生させ、その後で事件発生までの過程を綴るという流れで、ターゲットの読者をまずは飽きさせないようにしようという意図を感じました。(さすがに首切り等のように生臭い表現はなかったです)
トリックに関しては部屋のからくりをうまくミスリードとして利用しているなと思いました。
その他、探偵島田潔(鹿谷門実)を謎めいた人物として扱い、初読者に他のシリーズに興味を持たせる作りになっています。
番外扱いではないとは言いますが、読んでみてやはり、あくまでも子供達をターゲットにした作品なのだなという印象は拭えなかったです。
ミステリーランドなので甘目に6点つけようと思ったのですが、番外ではないというので厳しくマイナス1点します。


No.112 5点 最後の記憶
綾辻行人
(2010/10/30 13:20登録)
初めてこの作品を読んでみました。
新しい記憶から失っていくと言う難病にかかってしまった母の最後に残る記憶は、バッタと白い閃光にまつわる凄惨な事件の記憶なのか、それとも…といった流れでした(他にも色々ありますが)。
また、この重い設定と綾辻氏のダークな描写がマッチして良い(?)雰囲気を醸し出していました。
しかし、物語の終盤に入ると、説明のつかない幻のような描写が延々と続き、どうやって現実での解決に持って行くのか不安が膨らむばかりだったのですが、結局異空間世界をそのまま受け入れる形での解決でした。
ミステリ要素が無い訳ではないのですが空間転移、時間転移が出て来るとは…(暗黒館と並行執筆だったと言うので納得)
拍子抜けしましたが超常現象を受け入れて再読すれば楽しめるかも。


No.111 4点 犯罪ホロスコープⅠ 六人の女王の問題
法月綸太郎
(2010/10/19 21:20登録)
探偵法月綸太郎シリーズの短編集です。
十二星座の各星座をテーマに十二作の短編があり、そのうち6つを収録したものが本作の様です。

①「牡羊座:ギリシャ羊の謎」:晴良さん酷すぎますよ。真相はチープ。
②「牡牛座:六人の女王の問題」:パズルというかクイズというか…終始読んでいてイライラしました。
③「双子座:ゼウスの息子達」:フーダニットもの。支配人のおっちゃんの話し振りが絶妙(確かに嘘は言っていない)。ラストが決まり過ぎ。
④「蟹座:ヒュドラの第十の首」:ちょっとしたフーダニットもの。最後のどんでんが読めてしまうタイトルの付け方が軽率。
⑤「獅子座:鏡の中のライオン」:作中作が非常に面白そうだったが、本編は…
⑥「乙女座:冥府に囚われた娘」:ドラッグの横行、熱中症といった社会現象をベースにしたフーダニットもの。後味が悪いが締めは決まった。

作品ごとの出来がかなりばらついている印象です。③、④、⑥は良いのですが①、②、⑤は読んでいてイラつきました。これまでの短編集の出来からは大分落ちます。


No.110 6点 黄昏の囁き
綾辻行人
(2010/10/15 23:26登録)
囁きシリーズを三作続けて再読しました。
この作品は綾辻氏ならではの良い意味での(?)ジメジメとした雰囲気で、私好みだったのを覚えており、再読した今回も変わらずに楽しく読めました。
ミステリ的にはフーダニットに属しますが、メインとして驚くべき真相が用意されています。(結構インパクトが強く、そこだけは強く覚えています)
真犯人の正体に関してはあまり伏線も張られておらず、ちょっと唐突な感じだったのが惜しいところです。
前二作との微妙なリンクが読者には嬉しいところです。
第四弾が出れば読みたいですね。


No.109 5点 暗闇の囁き
綾辻行人
(2010/10/15 23:23登録)
久々に再読しました。
この作品はミステリ性があまりなく、謎解きの観点ではあまり楽しめないです。
雰囲気はかなり幻想的に描かれているので霧越邸が好きな人は楽しめると思います。(私は人形館のようなオドロオドロ系が好きなので少々肌に合いませんでした。)
美しい双子や事件性など、設定が暗闇館にかなり近いように思えます。(雰囲気は逆ですが)
非常に読み易いのですが、登場人物が双子以外は印象が薄く(ドラ息子はなかなか良かったが)、全体的にインパクトの弱い作品でした。


No.108 6点 緋色の囁き
綾辻行人
(2010/09/29 22:45登録)
久々に読み返してみました。
女学園モノ、連続殺人モノ、アレに関する生々しい描写、カリスマ的美少女とその実態、といった記憶が残ってはいましたが、ミステリ要素に関してはほとんど覚えておらず、真犯人すら覚えていなかったので、懐かしさと新鮮さを味わいながら読むことができました。
ミステリ要素はやはり少なめで直感勝負のフーダニットものといったところでした。
ホラー的要素が強く、綾辻氏らしい陰鬱とした雰囲気が私的にはナイスでした。


No.107 8点 二の悲劇
法月綸太郎
(2010/09/21 22:02登録)
-ネタばれ含みます-

まさに悲劇的な話でしたが、非常に美しい作品だと思いました。
前半は二人称部分の回りくどさも含め、ややだるい展開でしたが、中盤での百合子の母の語り、奈津美の日記の辺りからぐいぐいと読まされました。
著者の長編にありがちな、自分的には食傷気味だった「複雑な血縁関係」が登場しなかったのも良かったです。
また、真相にも納得がいきました。
論理的に推理するのは難しいかも知れませんが、タイトル、二人称、誤認等のキーワードから考慮すれば、直感的に真相に辿り着くことは可能だと思います。
ちなみに、「頼子~」、「一の悲劇」、「身投げ女~」などのように、探偵法月綸太郎以外の人物が語り手を担っている作品の方が自分的に高評価な結果になっていると思いました。


No.106 6点 生首に聞いてみろ
法月綸太郎
(2010/09/04 02:37登録)
-ネタばれあり-

まず、タイトルと作風のギャップに違和感を感じました。地理的に馴染みがあるせいか、物静かな情景が浮かんで、作品世界に惹きこまれました。もう少しこのタイトル何とかならんのでしょうか?
ミステリとしては、終盤での伏線の回収の手際が良かったと思います。ただし、「なるほど」とは思わせられたけど、ビックリはさせてくれなかったので物足りなさを感じてしまいます。
生首に関しても説明はついているけど、それでもやっぱり「そこまでするかいな」と思ってしまう。
また、著者の長編にお馴染みの複雑な(今回は偽りのだけど)血縁関係に食傷気味です。どうしても安っぽい2時間サスペンスドラマを見た気分にさせられる。
あと、いつの間にか国友レイカがフェードアウトしていたのが気になった。
犯人のインパクトも弱い等、何かとタイトル負けしたインパクトの弱さが目に付く作品ですが、個人的にはこの雰囲気は好きでした。


No.105 6点 法月綸太郎の功績
法月綸太郎
(2010/08/24 21:46登録)
探偵法月綸太郎の短編集第三弾。五話構成です。

①「イコールYの悲劇」:ダイイングメッセージものはやっぱりクイズ的な感じが否めない。ラストはぞっとしました。
②「中国蝸牛の謎」:蝸牛をモチーフにした密室もの。蝸牛にちょっと詳しくなれます。
③「都市伝説パズル」:都市伝説を利用した心理トリック。著者には珍しく簡単なトリックでした。評価が高くて意外。
④「ABCD包囲網」:謎の提示までは非常に興味を引かれたが、動機が納得いかない。最後の締括りも解らんかった。
⑤「縊心伝心」:安楽椅子探偵モノ。基本的にダークな話は好きだけど、こういったリアルなダークさは嫌だと分かりました。

どれも水準以上の出来だと思いますが、個人的にはヒットした作品はありませんでした。


No.104 7点 法月綸太郎の新冒険
法月綸太郎
(2010/08/21 13:41登録)
-ネタばれ含みます-

探偵法月綸太郎の短編モノ第二弾。以下の五作品にて構成されます。

①「背信の交点」:著者には珍しい列車モノだけど本質はワイダニットかな。どの結果でも哀しいです。
②「世界の神秘を解く男」:功名心を利用した恐ろしい罠。ラストの綸太郎がちょっと格好いい。
③「身投げ女のブルース」:これまた著者には珍しい○○モノ。もう一つの事件の存在に戦慄が走りました。
④「現場から生中継」:電話アリバイトリックものは犯人のつまづきがワンパターンなのでイマイチ。
⑤「リターン・ザ・ギフト」:交換殺人をベースにしたワイダニットもの。論理の構築部が多く、やや面倒。

どの作品もレベルが高いです。個人的には③が好きですね。


No.103 4点 舞田ひとみ11歳、ダンスときどき探偵
歌野晶午
(2010/08/18 21:45登録)
6つの作品がちょっとだけリンクして構成された連作短編集です。
私も他の方の書評にあるように、タイトルからして警察もお手上げの難事件を小学生がコナンさながらに鮮やかに解決してしまうものだと思っていましたが、そうではなかったのですね。
ひとみちゃんの何気ない一言や行動がきっかけで叔父刑事が事件解決のヒントを得るというパターンはそれはそれで良いのですが、ヒントから解決までの論理が飛躍しているように思え、どうにも納得いきませんでした。
歌野氏の短編は私の中ではこれまではずれはなかったのですが、今作は期待はずれに終わってしまいました。


No.102 7点 法月綸太郎の冒険
法月綸太郎
(2010/07/08 23:30登録)
探偵法月綸太郎の短編モノ。以下の七作品にて構成されます。

①「死刑囚パズル」:何故死刑執行直前の囚人が殺されたのか?論理的に犯人を導くフーダニット形式を取りながらもワイダニットとのバランスも良い。
②「黒衣の家」:予想外のショッキングな結末。綸太郎は良く動機が分かったものだ。
③「カニバリズム小論」:ワイダニットに絞りつつ、ラストに捻りが効いている。
④「切り裂き魔」:こうするしかなかったんですとは言うが、そんなことはないでしょうと思ってしまう。
⑤「緑の扉は危険」:密室殺人もの。強引だけど大胆さが好きです。
⑥「土曜日の本」:結局主題に対する解答はなく、ミステリではない。作家が全員判明できずにちょっと悔しい。
⑦「過ぎにし薔薇は…」:お題的に「切り裂き魔」と変わらず、動機が後付けな印象がする。

⑤を除いて、全体的にワイダニットに重点を置いた形式のようです。
①②③がダークな話で個人的に好きだったのですが、④⑤⑥⑦の図書館シリーズが軽すぎて一冊の本としてバランスが悪くなっている印象です。
どうせなら作風に合わせて別々の本にして欲しかった。


No.101 5点 ふたたび赤い悪夢
法月綸太郎
(2010/07/04 22:54登録)
本作は「雪密室」と「頼子のために」の続編的なものとして描かれており、「頼子~」に関しては結構ネタばれされているので未読の方は十分注意されたし。
ミステリ部分としては、謎自体がイマイチ惹かれるものではなかったし、真相も「ふうん」といったところ。
物語としては「誰彼」、「頼子~」、「一の悲劇」に続いて四作続けて複雑過ぎる血縁関係が描かれているため、少々食傷気味ではありました。
とはいえ文庫版で600ページ強と結構なボリュームだったのですが、連作の総決算として、重いテーマながらもぐいぐいと読めました。
珍しく(?)、ようやく救われるオチとなってホッとしました。
(ちなみにクイーンに関連して云々言うのは、私にとっては異次元の話であり、正直さっぱりでした。)


No.100 6点 一の悲劇
法月綸太郎
(2010/07/04 22:28登録)
-ネタばれ含みます-

シリーズ四作目にして初の誘拐ミステリです。
探偵法月綸太郎視点ではなく、被害者の父親視点で描かれているため、緊迫感が伝わってきます。
密室トリックのほうはイマイチでしたが、真犯人はある意味ベタだったのが逆に意外でした。
この真犯人の存在によって、悲劇的な結末ではあったのですが、物語に一本芯が通ったような気がします。
「頼子~」に続き、非常に読み易いです。


No.99 6点 頼子のために
法月綸太郎
(2010/06/24 20:45登録)
法月氏の作品は四作品目になりますが、この作品はこれまでの作品に見られるような論理的な表現が抑えられており、恐らく多くの人にとってかなり読み易い仕上りになっていると思います。
また、タイトルから何となく予想ついたのですが、私好みのなかなかダークな作風でした。特に序盤の手記にはかなり感情移入させられました。
ラストの真相にもなかなか驚かされました。
しかし、全体的に面白いとは思ったのですが、何かもう一つ足りない気がする…


No.98 4点 誰彼
法月綸太郎
(2010/06/19 11:45登録)
これまでの氏の作品の後書きを見ていると、一作ごとに作風が大きく変わるとのことがよく書かれていたが、この三作品目を読み終えた印象は、例のごとく情報を論理的に細かくつついており、あまり変わらないなあといったところ。
また、「綸太郎の推理」⇒「ハズレ」の繰り返しが大半を占めるため、物語性に欠けた印象も受けます。
的はずれとも言える推理を繰り返す中で、時には正しい情報が含まれているため、その情報の取捨選択を楽しめるかどうかが、この作品を楽しめるかどうかの分かれ道になりそう。(正直、自分には合いませんでした。)
三作続けて、ページをめくる指がなかなか進まない…


No.97 4点 雪密室
法月綸太郎
(2010/05/29 14:05登録)
-ネタばれ含みます-

探偵「法月綸太郎」シリーズを初めて読みました。
タイトル通り、雪の密室一本に絞った作品です。
招待主である篠塚真棹を筆頭に、招待客達も皆一様に腹にイチモツ抱えている様な序盤の雰囲気は良かったです。
それらの正体もなかなか明かさずに焦らす手法も気に入りました。
ただ、肝心のトリックが共犯モノだったので、どうしてもガッカリしてしまいます。
まだ読み始めたばっかりだけど、この先このシリーズを読んでいけるだろうかと憂鬱になる。


No.96 5点 螢坂
北森鴻
(2010/05/18 23:35登録)
香菜里屋シリーズ第3弾。5つの短編で構成されています。

①「蛍坂」:蛍に込められた切ないメッセージ。ロマンチックなんですがマスターに解読してもらわない限り伝わらないような難しいメッセージというのも困るだろうに。
②「猫に恩返し」:作中作が良かった。しかしそううまく事が運ぶのかなと思ってしまう。
③「雪待人」:託された絵に雪が降るのを待ち続ける。ロマンチックですが周囲の迷惑を考えたほうが良いのでは、と無感動に思ってしまった。
④「双貌」:作中作による叙述トリック(?)によって構成されており、正直混乱した。時系列も分かり辛かった。
⑤「孤拳」:孤拳に託されたメッセージ。切ないですが、そんな難しい真意を汲み取るマスターの推理がちょっと強引な感じが‥。

今作の登場人物達は何だか婉曲的な表現を好むのが多いようで、メッセージを紐解く事に重点が置かれているような作品群でした。
シリーズ中、これまで以上に詩的で綺麗な文章だったのですが、今作の趣向は個人的にはイマイチでした。


No.95 7点 桜宵
北森鴻
(2010/05/05 22:33登録)
香菜里屋シリーズ第2弾。5つの短編で構成されています。

①「十五周年」:まあ特に裏のない、暖かいお話です。
②「桜宵」:最期を予期した人は大切な人のために何を残してあげられるのか。中々出来る事ではないです。
③「犬のお告げ」:様々な悪意が交錯しており、正に「歪んでいる」の一言。
④「旅人の真実」:献身的なお話と思いきや、これまた歪んだ話。
⑤「約束」:切々と語られる独白文が重い。予想外のダークなお話。

読み終わってから気がついたのですが、話が後半に進むほどに登場人物の歪み具合、悪意が深くなっているような気がします。
しかし、第一弾「花の下にて~」に続き、文章が非常に綺麗でした。
個人的には②、⑤が好きです。


No.94 5点 密閉教室
法月綸太郎
(2010/05/04 00:49登録)
密室殺人をメインとしてハウダニット、フーダニット、ワイダニット全てを含んだ贅沢な構成になっています。
ミステリ的にかなり細かい所まで論理的に構築されており、良くできていると思うのですが、必ずしもそのことが「読んでいて楽しい」という所につながらなかったのが正直痛い。
最初は主人公を含めた各生徒達のありえない言い回しに違和感いっぱいだったのですが、慣れれば逆に楽しめてきました。
かなりクセのある作品で、好きな人にはたまらないかも。

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