simo10さんの登録情報 | |
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平均点:5.69点 | 書評数:193件 |
No.173 | 4点 | 疑心 今野敏 |
(2013/06/11 23:11登録) 隠蔽捜査シリーズ第三弾。 もはやこの作品に対してはミステリは期待しておらず、主人公竜崎のキャラクターを楽しむのが目的となっています。 しかし今作の竜崎は非常にらしくない。その「らしくなさ」も他の方の書評からも窺えますが、多くの読者にとってガッカリな方向に作用しています。当然私もガッカリです。しかもそのガッカリな展開が長い。こんなのは短編だけにしてくれやという感じです。 この後の作品でも畠山女史が登場しそうで嫌だなあ。 |
No.172 | 6点 | 顔 FACE 横山秀夫 |
(2013/06/10 23:18登録) D県警シリーズ第三弾。第一弾の短編「黒い線」で登場したお手柄似顔絵女性警察官平野瑞穂が主人公とした短編集です。以下の五話で構成されます。 ①「魔女狩り」:警察側からするとネタ元は裏切り者のようなものなんですね。密告があるでもなし、ちょっとタイトル負けな内容。 ②「訣別の春」:<なんでも相談テレホン>に移動した平野巡査の優しいお姉さんぶりが発揮されます。 ③「疑惑のデッサン」:自分が就きたいポストに自分より実力が明らかに劣る者に就かれたら嫌ですねえ。実は逆もまた然りで劣る方は奪われまいとビクビクしてしまうもんなんですね。 ④「共犯者」:抜き打ちで銀行強盗対策の訓練というのがあるんですね。監査課というのが憎まれ役というのもよく解りました。 ⑤「心の銃口」:この著者の描く刑事はどれも荒っぽいが、それがなかなか好きであったりする。犯人のイメージはシズちゃんを連想してしまった。 女性警察官が主人公ということで、これまでの氏の作品に比べて、グッと華やいだ印象があります。どれも読み易いですが個人的ヒット作はありませんでした。平野瑞穂は私のイメージでは綾瀬はるかだったのですが、すでにドラマ化されていて仲間由紀恵が演じてるんですね。 |
No.171 | 6点 | 動機 横山秀夫 |
(2013/06/05 22:38登録) D県警シリーズ第二弾。以下の四話で構成されます。 ①「動機」:一種の「木を隠すなら森」のパターンですが、なるほど巧い。個人的には好戦的な刑事の描写がしびれる。 ②「逆転の夏」:警察官ではなく、刑期を終えた前科を持つ人のお話。非常に暗いジメジメとした雰囲気だったのですが、ラストのカサイの独白(?)以降で一気に内容が深まりました。 ③「ネタ元」:元記者の著者ならではの、記者視点のお話。やっぱ男稼業で女性が働くのは厳しいよなあ。 ④「密室の人」:裁判官のお話。裁判所の世界は独特ですね。しかし茶を入れる人の心を分かれと言われてもそれは厳しいかな。 D県警シリーズとのことですが、D県警絡みの話は①だけでした。個人的には②がベスト、次点に①でした。 |
No.170 | 6点 | 陰の季節 横山秀夫 |
(2013/05/30 22:59登録) 氏の「半落ち」が面白かったことと非常に読み易かったことから他の作品にも興味を持ちました。 そんな訳でまずは当たり障りのないシリーズものを順番に読んでみようということにしました。 最近話題の「64」をシリーズ作品とするD県警シリーズ第一弾。以下の四話で構成されます。 ①「陰の季節」:真相も面白かったが、人事の内情に触れられているのも新鮮でした。天下りって普通なんですね。 ②「地の声」:冴えないベテラン警察官を貶める怪文書。その真意にまんまと私も引っ掛かりました。 ③「黒い線」:警察という男社会における女性警察官の立場というか扱いがいかに厳しいものであるか分かります。 ④「鞄」:秘書課のお話。出世のために、邪魔な人間の弱みを握るどころか、弱みを作り出してしまう。実際ここまでやるかどうかはともかく、警察の出世競争はそれだけ激しいことは伝わった。 著者の作品は主に警務課を舞台としているんですね。非常に新鮮で楽しめました。事件はなくとも謎の提示から真相の解明までの流れはミステリの味わいがありました。 |
No.169 | 6点 | 半落ち 横山秀夫 |
(2013/05/29 22:38登録) この作品の映画版を飛行機の中で見たことがあるのですがラスト辺りで着陸態勢に入ってしまい、落ちを知ることはありませんでした。 以来この作品の存在を忘れていたのですが、書店でふと目に入り、読んでみようと思いました。 他の方々がおっしゃるように、確かにオチまでは非常に面白かった。 特に一章、二章の登場人物の荒っぽいノリが最高でした。 そしてオチに関してはまさに半オチ。唐突な感じだし、特に感動もできない。 一番釈然としないのは半落ちの理由付けかな。警察へ迷惑がかからないよう配慮することも考えてるなら、さっさと虚偽の自白をすりゃ良かったのに。 |
No.168 | 6点 | イニシエーションラブ 乾くるみ |
(2013/05/28 23:10登録) -ネタばれ含みます- 評価が高いのでずっと気になっていた作品ですが、帯表紙にデカデカとネタばれされているのが目に入る度に読む気を失っていました。 しかしあのトリックであることがほぼ確実な状態で読んだらどんなもんだろう?と無理矢理視点を変えて読んで見ました。 結果として「たっく…」のセリフで大体分かりました。ラストのセリフで「ああ、タクヤじゃなかったのか」と思う程度。 しかし読み終わった瞬間は時系列が入れ替わっているものと思いましたが、細かい点を思い返すと同時進行だったこと、さらにそこからある人物の行為が浮き上がってくる構造にも思い至ることができました。いや、非常によく出来た作品だなと思いました。 とはいえあの無神経な帯表紙のため、その面白さの半分も味わえませんでした。(細かい点はネタばれサイトで確認し二度読みしませんでした) 優れた作品だけにデカデカとネタばれをした連中に対してひたすら腹が立つ思いです。(読み終わってから背表紙を読みましたが、これを書いた奴が全ての元凶ですね。) |
No.167 | 2点 | インタビュー・イン・セル 真梨幸子 |
(2013/05/27 21:09登録) 「殺人鬼フジコの衝動」の続編。第一作「~衝動」のその後が描かれており、その真相にもさらに迫るとのこと。(それだけで買ったのだが‥) 話の構成はフジコの小学校以降の育ての親、下田茂子とその息子健二に対して第三者(雑誌記者)の視点からクローズアップしたもの。 その内容たるや「~衝動」のような面白みも全くなく、只々胸糞が悪くなるものでした。 確かにラストの方に新たな真相が明かされたが「ふうんそうなんだ」としか思えない。 はっきり言って「~衝動」の売れ行きに便乗しただけの適当な作品です。いきなり書き下ろしで文庫化したこともその裏付けになってると思います。こんな内容のない糞みたいな本を買ってしまった自分に腹が立つ。 |
No.166 | 6点 | 殺人鬼フジコの衝動 真梨幸子 |
(2013/05/24 21:43登録) --ネタばれ含みます-- 帯表紙に「後書き」で全てが明らかになるようなことが書かれていたので、一体どんな構成なのか気になって読んでみました。 結局は本書に対する後書きではなく、作中の人物が作中作「臘人形、おがくず人形」に対して後書きを書いてるだけであることが早々に分かります。詐欺にあったという思いが凄くあります。それでなくとも気の利かない帯表紙の煽りのせいで恐らく叙述モノであろうことも察せられたので、なおさらがっかりです。 内容の方は帯表紙の通り、確かに読んでいて気分が悪くなります(グロ系の描写は私的には問題ないが、いじめやら虐待やらがキツい)。 とはいえ非常に読み易く、先の展開も気になり、サクサク読めました。フジコの各年代に所謂敵役が存在するわけですが、どれも早目に決着がつくのが良い(?)です。 叙述に関しては見当はついていたのですが、これは意外にも後書き前に明らかになり、後書きに少し期待が持てました。 注目の後書きを読んだ感想は「これだけ?」といった感じでした。多少意外ではあったが別に衝撃でも何でもなかった。 結論としては、後書きの衝撃とやらに関しては期待外れ、ただし全体的には読み易く、まあまあ面白かったと言える。 個人的には転校後の小学校編が一番面白かった。特に「へいき?へいき?」と「大人って、ちょろい」が気に入っている。 |
No.165 | 4点 | 犯罪ホロスコープⅡ 三人の女神の問題 法月綸太郎 |
(2013/05/23 22:17登録) --ネタばれ含みます-- 十二星座シリーズ(?)第二弾。以下の六話で構成されています。 ①「[天秤座]宿命の交わる城で」:交換殺人もの。ちょっとややこしいけど良く出来ている。短編にしとくのが勿体ない。 ②「[蠍座]三人の女神の問題」:犯人が犯行後に三人の人物に電話をかけた真の理由は…なるほどなとは思うけどインパクト薄し。 ③「[射手座]オーキュロエの死」:ちょい役にわざわざ名前を与える時点で読者は勘繰ってしまうんだから気を遣って欲しい。(名前無くても良かったんじゃない?) ④「[山羊座]錯乱のシランクス」:ダイイングメッセージもの。こういった駄洒落系は嫌いです。 ⑤「[水瓶座]ガニュメデスの骸」:変則的誘拐もの。息子が男の娘(おとこのこ)である必要があるのだろうか? ⑥「[魚座]引き裂かれた双魚」:会長が息子の生まれ変わりを探す真の理由は?という結果論的ワイダニットにあたるんですかね。 第一弾と同様、縛りがあるせいでどれもキツそうです。①、②は法月親子の会話のみで成立しており、謎解きに注力している感じです。好きな人は良いでしょうが私には無機質過ぎてイマイチです。残りの作品は事件関係者が登場してきて物語性はありますが、どれもインパクトに欠けるかな。私は探偵法月綸太郎が好きでないと思っていたのですが、この親子が作り出す雰囲気、特に法月警視の方が苦手だということを発見しました。 |
No.164 | 6点 | 凶鳥の如き忌むもの 三津田信三 |
(2013/05/22 20:49登録) --ネタばれ含みます-- 刀城言耶シリーズ第二弾。覚悟はしていましたが、やはり第一弾と同様、漢字、用語が難しいわ、蘊蓄が長いわ、事件がなかなか発生しないわ(前作同様250ページくらいで発生) で読むのが大変でした。 ミステリ的には密室状況からの消失トリックに分類されます。 その真相は…う~ん、評価が難しい。赤黒の死の真相も合わせてちゃんと説明は合理的になされてるんだけど。 ショッキングな真相でありながら、拍子抜けの感も否めないといったところです。 朱音の過去の証言も消失トリックにどう絡めてくれるか期待していたんですが…これが一番残念だったかな。 他の方の書評を読んでから知りましたが、本作が文庫化されたのは最近だったんですね。(書店で新作コーナーに置かれていたのでなんでやねんと思っていました。) |
No.163 | 8点 | 厭魅の如き憑くもの 三津田信三 |
(2013/05/21 23:04登録) --ネタばれ含みます-- 刀城言耶シリーズ第一弾。本サイトで評価の高い、同シリーズ第三弾「首無~」を読みたいと思い、順番通りにまずは第一弾を読んでみました。 予想はしていましたが、難しい漢字、言葉の連続、長い蘊蓄で、とにかく読み進み辛い。しかも250ページほど進んでようやく事件が発生するという展開の遅さ。 正直なところ話が9割程(550ページ程)進んでもあまり面白いとは思えませんでした(このままなら採点4点、ラストうまくまとめてもいいとこ6点だなと思っていました)。 しかし最後の最後で、心から「あ!」と言わせてくれました。 本当に読み辛かったため、最初の方を何度も読み返していたので、「視点」の件はしっかり意識していた(つもりだった)ので、より感激できました。 解決編のドンデンの連続はなんだこりゃとは思いましたが、ミスリードの仕掛けまできっちり回収していると考えれば、とても親切だと言えます(よくこれだけ罠を張ったもんだ)。 怪奇モノということで、雰囲気で勝負してくる作家だと思っていたので、意表をつかれました。 犯人はどんだけ殺しプロやねんと言いたくなるなど、荒っぽい点は多いですが、こういう大技は好きです。 文庫化される前は地図がなかったようですね。そりゃキツいですわ。九供山での描写が全然解らなかったのでこれも見取り図が欲しいところです。 |
No.162 | 5点 | 眠りの森 東野圭吾 |
(2012/11/10 11:05登録) 加賀シリーズ第二弾。 以前に「卒業」に引き続き読んだのだが、あまりの甘ったるさに辟易したのと事件のインパクトのなさがあいまって三日で内容を完全に忘れてしまい、書評が書けませんでした。再読する気もなかなか起きず、「内容を完全に忘れてしまうくらいつまらなかった」と書評して1点付けてやろうかとも思いましたが、何とか再読することができました。 事件の最大の謎は「バレエ団と接点のないはずの風間という男がなぜ侵入したのか?一体過去にどんな因縁があったのか?」だったと思って読んでいました。 そしてその人物の正体は何とバレエ団のある人物と深い関係を持つ人物の友人だった(つまり赤の他人だった)。なんだそりゃ。そりゃ忘れるわ、と内容を忘れた原因が解り、納得できました。 殺人の動機はバレエダンサーの独特の心理を汲んだ形であったのが特徴的でしたが、やはり一般的にはその心情は察し難く、これも印象を弱める要素かなと思います。 唯一強く覚えていたのがラストの強烈な甘さに思わずスピードワゴンのあのセリフを発したことですが、今回もやはり同じセリフを口にしてしまった。 |
No.161 | 6点 | 嘘をもうひとつだけ 東野圭吾 |
(2012/11/10 11:01登録) 加賀シリーズ短編集を再読。以下の五話で構成されます。 ①「嘘をもうひとつだけ」:「眠りの森」以来のバレエもの。バレリーナの習慣、心理を活かしたハウダニット、ワイダニットが特徴的。 ②「冷たい灼熱」:例の社会問題をはっきり書かないのが印象的な作品。遺族に気を遣ってるのかなとも思います。 ③「第二の希望」:さらっと解説されたが、本当にそんな大技が可能なんだろうか?ガリレオ系トリックに属すると思います。 ④「狂った計算」:加賀の推理した通り程の悲惨な結末でなくて良かった。最低の旦那だが、実際いるんだろうな、こういうの。 ⑤「友の助言」:未必の故意という言葉は初めて知りましたが、その内容は聞いたことあります。「死んでくれたらラッキー」て、恐ろしい…。ラストの夫妻のやり取りがブラックでしびれる。 基本的にどれも語り手が犯人または事件の真相を知る者で、倒叙に近い形です。そんな語り手に対して加賀刑事が古畑任三郎よろしく、しつこくまとわりついてボロを出させます。どれも安定してよくできているが、突出して面白いのもないかな。 |
No.160 | 5点 | あるキング 伊坂幸太郎 |
(2012/11/10 10:56登録) あるキング(野球選手)のお話。何がキングかというと野球の才能。 非常に読みやすく、忙しい時にサクっと読めるのが助かりました。 ただ全然ミステリではないし、ラストも意味がわからんです。 |
No.159 | 4点 | 名探偵 木更津悠也 麻耶雄嵩 |
(2012/11/10 10:54登録) 翼ある闇で登場した名探偵、木更津悠也が活躍する短編集です。以下の四話で構成されます。 ①「白幽霊」:各人の証言をきっちり拾っていけば矛盾点が浮かび上がり、解決の糸口となるようです。カーテンの描写だが、コの字型に切っただけなのか、完全に切り取ったのかがよく解らん。 ②「禁区」:知耶子は何を見たのか?着眼点は面白いけど、知耶子の発想は飛躍し過ぎだし、周りがそれを理解するのも有り得ないと思う。 ③「交換殺人」:交換殺人のメリットは動機がバレバレでもアリバイを作れることにあるが、本作では交換殺人を露見させることで真の動機を隠すことにある、と解釈して良いのかな?それでも普通に警察にバレると思うんだが。 ④「時間外返却」:様々な伏線の意味は理解できたけど、それだけで犯人を割り出すのは本当に可能なのかな?まあ名探偵だから可能なんだろうな。意外過ぎる犯人が面白い。 木更津と香月の関係はホームズとワトスンのそれではなく、毛利小五郎とコナン君の関係に近い。必ず香月の方が先に真相に辿り着き、後は木更津の名探偵としての活躍を密かに楽しむという設定がちょっとSっぽいが面白い。 しかし最大の難点だが、初期の麻耶氏の作品は非常に読み辛いし解り辛い。忙しい時に途切れ途切れに読むと全然解らん。だからといって再読しようと思う程面白いとも思わなかった。 |
No.158 | 4点 | 痾 麻耶雄嵩 |
(2012/11/10 10:41登録) 麻耶氏の三作目。ブックオフにて絶版中の本書と「あいにくの雨で」、「木製の王子」、「名探偵木更津悠也」を見掛けたのですぐ購入しました。 内容は二作目「夏冬」の続編でした。烏有と桐璃のその後が描かれています。 一応ミステリ風の体裁ではあるのですが、真相は「夏冬」同様、ミステリではないです。雰囲気は嫌いでないが、はっきり言って意味不明の作品です(リテラアートとか、わぴ子とかって何やねん?)。 にもかかわらずあっさり読了できたのは、「夏冬」の真相にある程度触れられていたことと、メルカトルの他に木更津、香月といった「翼ある闇」の登場人物達が出演していたからに他なりません。そういった意味ではある程度は楽しめました。 そんなわけで当然前二作を未読の方にはオススメできません。 「夏冬」ネタばれサイトに書かれていた内容はただの仮定に基づいた推測だと思っていたのですが、この作品を基にしていたのだとようやく解りました。これを受けて、「夏冬」の評価も訂正しました。 |
No.157 | 7点 | 聖女の救済 東野圭吾 |
(2012/09/30 20:53登録) --ネタばれ含みます-- ガリレオシリーズの長編第二弾。 シリーズお馴染みの倒叙形式のハウダニットものです。トリック自体は理系モノではないのですが、実際にそれが行われるということが有り得ないため、それを虚数解に据えるということで理系に結びつけたのが巧いです。 その有り得ないトリックを実行するにための動機付けが、ワイダニットとして素晴らしいと思います。 とはいえ、その動機付けはやはり多少無理矢理な印象を受けてしまいました。絶望を感じているはずなのにわざわざ完全犯罪を企てるのか?と違和感を感じてしまいました。 物理的には可能だけど実行されることはありえない、そんな虚数解トリックは動機付けが最大のキモとなると思いますが、その動機付けを放棄した歌野氏の密室殺人ゲームシリーズの設定はうまいというかズル賢いというか、特許もんだなあと思う。 |
No.156 | 5点 | ガリレオの苦悩 東野圭吾 |
(2012/09/30 20:44登録) --(一応)ネタばれ含みます-- ガリレオシリーズ短編集第三弾。以下の五話で構成されます。 ①「落下る(おちる)」:温度と圧力の関係を利用したシンプルな時限式落下装置。難し過ぎず、良問だと思います。 ②「操縦る(あやつる)」:爆発成形による金属の流体的挙動とやらを利用した、ガリレオシリーズらしい大技トリック。素人が推測不可能なトリックなんか使うなよ、と最初は思っていましたが、やはりこのシリーズに限っては最低一つはこんなトリックが欲しいなと思っています。 ③「密室る(とじる)」:ホログラフィを利用した密室アリバイトリック。インパクトに欠けるかな。 ④「指標す(しめす)」:ダウジングに関するお話。結局種は解んないのね。 ⑤「攪乱す(みだす)」:超指向性スピーカーとやらの悪用例。文中にもある通り、怪人二十面相よろしくといった犯人の登場で結構盛上がった。しかし学会において他人の発表の質疑応答中に自分の研究内容のほうが優れていることを示唆するのは普通のことなんだろうか? 初期の短編集に関してはTVの方が圧倒的に面白いと思いました。しかし、本作からはTV版オリジナルキャラの内海刑事が登場したこともあり、まるでTV版をそのまま見ているような感覚でサクサク読めました。TV版のアレンジ力も凄いが、東野氏の柔軟性も凄い。 |
No.155 | 8点 | 容疑者Xの献身 東野圭吾 |
(2012/09/30 20:40登録) --ネタばれ含みます-- ガリレオシリーズ初の長編もの。 まさかこのシリーズで長編やんのかよ、ってとこですね。 どうやって科学トリックを長編に持ち込むかが焦点だったのですが、実際はオーソドックスなミステリでした。 とはいえ、よくできていたと思います。倒叙形式なのですが、その偽装工作の方こそが真の犯罪であり、ハウダニットにもなっている点が面白いです。 登場人物も個性的で、ブラックな終わり方も私好みです。 |
No.154 | 5点 | 予知夢 東野圭吾 |
(2012/09/20 23:26登録) --(一応)ネタばれ含みます-- ガリレオシリーズ短編集第二弾。以下の五話で構成されます。 ①「夢想る(ゆめみる)」:森下礼美との出会いは十七年前に予言されていた!一応話は理解したけど、何だか人間関係がごちゃごちゃしてるし驚きもないし科学ですらない。ガリレオシリーズでこのネタをやる意味が理解できない。 ②「霊視る(みえる)」:彼女の幽霊を見た!これまた科学トリックなし。それっぽいとこはガリの部分くらい。警察も形無しの湯川の名探偵ぶり。 ③「騒霊ぐ(さわぐ)」:ポルターガイスト現象発生!=共振 というのはよく使われるので私にも分かった。 ④「絞殺る(しめる)」:火の玉発生!せっかくの科学トリックなんだから共犯無しで成立させてほしい。 ⑤「予知る(しる)」:娘が予知夢を開眼!ER流体なるものを用いた偽装・偽装自殺トリック(?)はガリレオシリーズならでは。オチはブラックでしびれる。TV版もうまくアレンジされて面白い。 今回再読してみたが、前作と違い多くの作品が超常現象=科学トリックとはなっていなかったためか、タイトルから話の内容を思い出せるものは少なかった。個人的には⑤が良かった。①、②はつまらなかった。 |