犯罪ホロスコープⅡ 三人の女神の問題 法月綸太郎シリーズ |
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作家 | 法月綸太郎 |
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出版日 | 2012年12月 |
平均点 | 5.78点 |
書評数 | 9人 |
No.9 | 5点 | ボナンザ | |
(2020/08/09 22:37登録) 第一弾よりも楽しめた。まさか男の娘という単語を法月作品で見ることになるとは・・・。 |
No.8 | 6点 | 虫暮部 | |
(2020/07/26 14:49登録) 決定的な傑作は無いが、どれもまぁそれなりに良く出来ている。“交換殺人のカラクリ”や“背理法推理”がマーヴェラス。 元ネタのあるネーミングを犯人役に割り振るのは如何なものか。芸能人なら喜ぶかな? |
No.7 | 8点 | 青い車 | |
(2016/02/18 21:30登録) より玄人受けする『ノックス・マシン』の陰に隠れてしまいましたが、実は2014年版本格ミステリベスト10で第5位だった短篇集。前半六作より謎解きが高密度で上質な短編がそろっています。個人的ベストは『錯乱のシランクス』。 以下、各話の感想です。 ①『宿命の交わる城で』 作者お得意の交換殺人テーマをうまく料理しています。複雑な構図なので流し読みには向かない作品。 ②『三人の女神の問題』 ケータイの通話履歴という現代的な手掛かりから、ロジカルな推理を展開してみせる手際がさすがです。ミステリーの21世紀における可能性が垣間見えた気がします。 ③『オーキュロエの死』 緊密なプロットの構築度はこの連作中一番だと思います。最後に浮かび上がる犯人の切ない思惑が何とも言えない余韻を残します。 ④『錯乱のシランクス』 ダイイング・メッセージの捻りっぷりに心酔しました。ただ、飛躍気味な部分もあるので気に入らない人もいるかもしれません。 ⑤『ガニュメデスの骸』 殺人事件の犯人当ては完全におまけで、奇妙な誘拐事件の謎を中心に据えた異色作。非本格な内容ですが、この作品が入っていることでこの本のヴァラエティが広がっています。 ⑥『引き裂かれた双魚』 不穏なストーリー運びに戸惑いましたが、全ての謎が解けた後の母親の狂気とやりきれない結末が印象的です。 |
No.6 | 6点 | E-BANKER | |
(2015/04/06 21:11登録) ~Ⅰ(「六人の女王の問題」)に続き、黄道十二宮の後半戦が描かれる本作。 というわけで、天秤座、蠍座、射手座、山羊座、水瓶座、魚座・・・それぞれに纏わる事件がテーマとなっている。 ①「宿命の交わる城で」=天秤座。作者あとがきにも触れられているが、「あるキング」のパイロット版とも言えそうな作品。つまりは“交換殺人”がテーマとなっているのだが、そこは策士らしくひと捻りもふた捻りも仕掛けてある。でもこれって「策士、策に溺れる」の典型だな。 ②「三人の女神の問題」=蠍座。オリオンと毒蠍の逸話はギリシャ神話で有名だが、それをモチーフにうまく取り込んだ作品。プロットとしては、ラストに事件の構図をきれいに反転させるのが旨い。携帯の通話記録もこんなふうに使えばフーダニットの材料になるんだねぇ・・・。サブタイトルとして使われているだけある作品。 ③「オーキュロエの死」=射手座。ギリシャ神話に因んだ名前のアナグラム(駄洒落?)は本作の特徴だが、何か無理矢理感はある。これもラストでひっくり返されるが、②よりは唐突。 ④「錯乱のシランクス」=山羊座。ダイイングメッセージを扱った作品なのだが、これはかなり強引というか無理矢理。こんなメッセージに気付く奴いるか? 楽譜の薀蓄はなかなか面白かったが・・・ ⑤「ガニュメデスの骸」=水瓶座。やり手の女性実業家が一千万円の身代金を用意した相手は何と「亀」・・・。長年飼っていた“愛亀”とは言うが、そこには大きな秘密が隠されていた・・・ラストにタイトルの意味が明かされて納得。 ⑥「引き裂かれた双魚」=魚座。④~⑥は“よろずジャーナリスト”飯田才蔵がサブキャラとして登場し、事件を賑わしている。いかにも怪しいオカルト専門家の変死が主題なのだが、ちょっとごちゃごちゃしたプロット。 以上6編。 さすがに短編職人(個人的に勝手に命名しているだけですが・・・)法月綸太郎! という感じ。 星座に因んだ作品を十二もひねり出すだけでも大変なのに、どれも水準級若しくは水準以上の作品に仕上げているのは賞賛に値する。 もちろん“縛り”がある分、無理矢理感のある作品もあるのだが、それは致し方ないかな・・・ まぁできれば、なんの縛りもなく伸び伸び書いてもらった方が、面白い作品になるのかもしれないけど、そこはそこ。こんな凝った連作短編集も面白いとは思った。 (ベストは他の方と同様②で決まり。後は①③の順。) |
No.5 | 5点 | 公アキ | |
(2015/02/21 15:24登録) 小説家(?)の法月綸太郎と警視庁の警視である父の二人が、6つの「ちょっと奇妙な事件」に立ち向かいます。趣向としては「安楽椅子探偵」のようなジャンルかもしれません。限られた情報から論理と情理(?)で犯人を割り出したり、事件の真相を突き止めていきます。 他の方もおっしゃっているように、前半3作は比較的ストレートアヘッドな殺人事件、後半3作はもう少しぶっ飛んだ奇天烈な事件という風に配置されており、さながらレコードのA面、B面のように趣の違う短編が楽しめるようになっています。 個人的には4作目『錯乱のシランクス』がおすすめですが、最も精巧に練られた一発ネタとしては1作目『宿命の交わる城で』が秀逸です。残念であり同時にすばらしい点でもあるのは、謎がパズル的な側面のみで構成されているのではなく、人情的な側面、つまり「この状況ならこの人はこう考えるはず」というような「推理」が少なくなく、リアリティをミステリにもとめる人には傑作なのかもしれませんが、論理の潔癖性は薄く、サスペンスドラマを観ている感覚に陥ったりもします。犯人の断定の根拠と犯人ではない明確な根拠が完全に提示されないまま幕引きとなる話もあり、私はあまり好みではありませんでした。 |
No.4 | 6点 | 名探偵ジャパン | |
(2015/02/19 17:21登録) 黄道十二星座をモチーフにした連作短編集。 とはいっても、綸太郎シリーズは比較的リアルな本格ものなので、こういった星座にまつわる事件ばかりが起きる世界、というのは相容れないと思うのだが。 (「機動戦士ガンダム」の敵として宇宙人が出てくるような違和感。綸太郎シリーズは、リアルかスーパーかで言えば、リアル、なのだ) 最後になって、「星座にまつわる事件を意図的に引き起こしていた黒幕が登場し、綸太郎と最後の対決」なんて展開も頭をよぎったが、そうならないで安心(笑) とはいえ、個々の作品はさすがの完成度で、他の方もおっしゃっていたように、このプロットを生かして「星座」というしがらみを外した自由な短編として書いたほうがよかったと感じる。 「Ⅰ」のほうも既読だが、あまりに昔のことなので、ほとんど記憶になく、また機会があればレビューしたい。 |
No.3 | 4点 | simo10 | |
(2013/05/23 22:17登録) --ネタばれ含みます-- 十二星座シリーズ(?)第二弾。以下の六話で構成されています。 ①「[天秤座]宿命の交わる城で」:交換殺人もの。ちょっとややこしいけど良く出来ている。短編にしとくのが勿体ない。 ②「[蠍座]三人の女神の問題」:犯人が犯行後に三人の人物に電話をかけた真の理由は…なるほどなとは思うけどインパクト薄し。 ③「[射手座]オーキュロエの死」:ちょい役にわざわざ名前を与える時点で読者は勘繰ってしまうんだから気を遣って欲しい。(名前無くても良かったんじゃない?) ④「[山羊座]錯乱のシランクス」:ダイイングメッセージもの。こういった駄洒落系は嫌いです。 ⑤「[水瓶座]ガニュメデスの骸」:変則的誘拐もの。息子が男の娘(おとこのこ)である必要があるのだろうか? ⑥「[魚座]引き裂かれた双魚」:会長が息子の生まれ変わりを探す真の理由は?という結果論的ワイダニットにあたるんですかね。 第一弾と同様、縛りがあるせいでどれもキツそうです。①、②は法月親子の会話のみで成立しており、謎解きに注力している感じです。好きな人は良いでしょうが私には無機質過ぎてイマイチです。残りの作品は事件関係者が登場してきて物語性はありますが、どれもインパクトに欠けるかな。私は探偵法月綸太郎が好きでないと思っていたのですが、この親子が作り出す雰囲気、特に法月警視の方が苦手だということを発見しました。 |
No.2 | 6点 | kanamori | |
(2013/02/08 11:06登録) 黄道十二星座をモチーフにしたパズラー短編集の2巻目。「犯罪カレンダー」の法月綸太郎風アレンジといったところでしょうか。 ギリシャ神話のエピソードを活かしてパズラーを構築するという作者の苦労・労力が、それほどミステリの面白さにつながっていない感もありますが、最初の2作品は完成度が高いように思います。 1話目の「宿命の交わる城で」は、メイン・プロットが作者自身の某長編と同じですが、見せ方を180度変え、最後まで悟らせない複雑な仕掛けがすごい。意味深なタイトルもいいです。 次の「三人の女神の問題」は、チェスタトン的ロジックによる構図の反転が面白い。ギリシャ神話のモチーフが編中で一番活かされているように思います。 残りの作品で共通して気になったのは、犯人の意外性を演出するための、その人物の配置方法ですね。 |
No.1 | 6点 | シーマスター | |
(2013/02/04 22:30登録) 法月ホロスコ-プ第2弾。黄道十二宮の後半の6話。 ・「宿命の交わる城で」・・作者らしい巧みの業が遺憾なく盛り込まれているが如何せん、ややこしい。 ・「三人の女神の問題」・・全体に凝り過ぎの感がある本短編集のなかでは、ほどよい凝り加減。 ・「オーキュロンの死」・・悪くはないけど、こういう犯人はねぇ... ・「錯乱のシランクス」・・そんなん知らんくす ・「ガニュメデスの骸」・・悪くはないけど、こういう犯人はねぇ... ・「引き裂かれた双魚」・・無茶苦茶な話だが、洗脳を使われちゃうとね... 全作、法月氏らしい技巧と構図の変転を兼ね備えていると思うが、真相究明に当たっての「心理面の推測」がいずれも独善的というかコジツケが強い印象は拭えない。人の内面の動きなんてそんなに単純に他人が読めるものではないだろうと。 いずれにせよ、のりりんはやっぱりテーマに縛られずに自由に書いた方がいいですね。 |