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ミステリの祭典

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殺人鬼フジコの衝動

作家 真梨幸子
出版日2008年12月
平均点5.42点
書評数12人

No.12 6点 パメル
(2023/05/15 07:24登録)
全編に渡り、イヤミス要素満載。不快な気持ちになるにはもってこいの作品。
両親と姉を惨殺され、たった一人生き残った11歳のフジコは、その後の人生をどう歩んだのか。幸福を何より望んでいたはずの彼女は、運命の残酷な導きにより、あれよあれよという間に残忍極まりない連続殺人犯へと化してゆく。この作品は、そんな「殺人鬼フジコ」の生涯を追った未発表原稿が、亡くなった執筆者の関係者の手によって世に出たという、いささか凝った構成になっている。
とにかくフジコの幼少期の境遇の酷さといったら、筆舌には尽くし難い。何も持っていない彼女から、さらに人生は容赦なくすべてを奪い去ろうとする。そこには同情や憐憫さえ寄せ付けないほどの、強烈な悲惨さがある。彼女を取り巻く登場人物たちも、かけらほども共感できない。非道で悪辣な者だらけ。だが同時に、ここまで極めると妙な痛快さが漂ってくるのも確か。あまりにネガティブな展開の連続とフジコの犯行のあっけなさ加減には、ついつい笑ってしまう。終盤、腑に落ちないことが残ったまま、突然あとがきのページになるので、面食らったがそこからがこの作品の真骨頂。
この作品には巧妙なトリックが仕掛けられている。最後のページまで読めば、この小説の魅力が単に「人の不幸は蜜の味」だけではないことがわかるでしょう。

No.11 3点 sophia
(2018/10/02 19:29登録)
あとがきによる締めが強引でポカンとしてしまいました。イヤミスとよく言われますが、その域にも達していないと思います。心に嫌な気分どころか何も残らなかったですから。藤子の転落の過程も実に陳腐ですし、場面転換や時間の経過が上手く書き表せていないのにイライラさせられました。これは故意だと思いたいぐらいのものですが、仮に故意だとしても何の効果も上げられていません。
大きな疑問がひとつ。一家惨殺事件のとき妹は学校にいたんじゃないんですかねえ。姉は早退して帰ってきたはずなんですが。妹は実は生きているのでは?そして藤子の子どもを叔母として引き取ってループするのでは?と考えた人は多いと思うのですが、ミスディレクションだったのですかね。これも分かりにくい。
他にも、独白だと思っていたら会話文だったという箇所も多いですし、殺害シーンで藤子に「くっくっくっくくくく」とか言わせているのも上滑りしており痛々しい。とにかく文学的な趣が皆無です。同じくイヤミス女王と称される湊かなえや沼田まほかるに比べて力量はだいぶ劣るんじゃないでしょうか。

No.10 5点 tider-tiger
(2016/07/12 07:17登録)
技巧はある。文章力もある。イヤな個性(褒め言葉です)もある。なのにイマイチ評価されていなかった作家が、本作でブレイク。よかった。ただ、安堵した反面、本作はこの作者にしては出来が悪いとも感じた。
殺人鬼なのでたくさん殺す。個々の殺人の描き方が非常に粗雑。そんなんじゃ連続殺人無理でしょ。すぐに逮捕されるでしょうと。
個々の事件ではなくて、全体の構成を読ませたかったのでしょうが、いくらなんでも。
それから、初期作品よりも文章のレベルが下がっているように感じた。わざとなのかもしれない。読みやすくするため、もしくは視点人物が幼いからなのか。ただ、彼女が大人になってもあまり文章は変わらない。
イヤな作品ばかり書くが、本人は潔癖な人なんだろうと想像してます。
この作品を契機に本作よりも売れていないが質は高い(と私は思う)「女ともだち」や「みんな邪魔(更年期少女改題)」「深く深く砂に埋めて」などがもっと読まれるようになればと思います。

No.9 5点 HORNET
(2015/01/17 20:19登録)
 とにかく救いようのないダークな話だが、割り切って読めばこういうのは嫌いではない。主人公中心に話が進められ、余計な伏線もないので1日であっという間に読める。
 がやはりミステリとしての仕掛けはややチープ。最初に人称が変わった時点で、初めから疑っていたし、読んだうえで感想は「やっぱりね」だった。

No.8 6点 simo10
(2013/05/24 21:43登録)
--ネタばれ含みます--

帯表紙に「後書き」で全てが明らかになるようなことが書かれていたので、一体どんな構成なのか気になって読んでみました。
結局は本書に対する後書きではなく、作中の人物が作中作「臘人形、おがくず人形」に対して後書きを書いてるだけであることが早々に分かります。詐欺にあったという思いが凄くあります。それでなくとも気の利かない帯表紙の煽りのせいで恐らく叙述モノであろうことも察せられたので、なおさらがっかりです。
内容の方は帯表紙の通り、確かに読んでいて気分が悪くなります(グロ系の描写は私的には問題ないが、いじめやら虐待やらがキツい)。
とはいえ非常に読み易く、先の展開も気になり、サクサク読めました。フジコの各年代に所謂敵役が存在するわけですが、どれも早目に決着がつくのが良い(?)です。
叙述に関しては見当はついていたのですが、これは意外にも後書き前に明らかになり、後書きに少し期待が持てました。
注目の後書きを読んだ感想は「これだけ?」といった感じでした。多少意外ではあったが別に衝撃でも何でもなかった。
結論としては、後書きの衝撃とやらに関しては期待外れ、ただし全体的には読み易く、まあまあ面白かったと言える。
個人的には転校後の小学校編が一番面白かった。特に「へいき?へいき?」と「大人って、ちょろい」が気に入っている。

No.7 4点 ドクターマッコい
(2013/03/22 07:58登録)
(ネタばれ)
主人公の辛い立場のところは気の毒な感じが
したが、我が子を押し入れに突っ込んでおくところ
とか、殺人をして切り刻むところは読んでいて不愉快に
なりました。
こう言うのは個人的にダメです。

No.6 6点 まさむね
(2013/03/03 22:30登録)
 構成自体は,評価したいのです。最後の最後まで,練られています。一気読みさせてしまう魅力もあります。
 でも,相当な不快感。イヤな方々があまりにも多く登場しすぎて…。うーん,「イヤミス」ってのは,こういうことなのか?

No.5 5点 yoshi
(2013/02/05 03:16登録)
最初はフジコに同情し、感情移入もできるのだが、やたらと人を殺し始める終盤は、もう勝手にやってろという風に気持ちが醒めてしまう。だから最初の事件の真相(らしきもの)が最後に明らかになっても、もうどうでもいいという心境になる。

No.4 5点 いけお
(2012/07/16 13:27登録)
不自然な記述があり後半の叙述一発かと思ったので、少し退屈になった。
ラストはさらにもう一捻りあり、楽しめた。

No.3 6点 シーマスター
(2012/05/30 23:08登録)
まさに不快極まりないけど読み止まらない・・・・・・っていうことは結局楽しんで読んでるんだよね・・・
粗筋だけで言えばこれほど狂ってる話はない。しかしフジコの(惨劇前のイジメは流石に酷すぎるが)転校先の小学校のクラス内の派閥模様や中学以後の上昇、転落を繰り返す人生ストーリーは正直面白い。
ちょっとバカっぽい文体は漫画のようだし、度々出てくる現実、回想、夢を混在した会話描写も自然な感じで受け入れやすい。

結末は、意外といえば意外だが驚愕とまでは・・・

No.2 8点 虫暮部
(2012/01/04 15:53登録)
大変面白くほぼ一気読みだった、けれど、近年話題になる類の殺伐とした話題を寄せ集めて料理しただけ、という印象もある。勿論これだけ読ませればそれで充分だが、心にガツンと来ること無く消費してしまったのは否めない。「とても楽しめた」けれど、それは必ずしも「高評価」とは違うんだなぁ。

No.1 6点 メルカトル
(2011/10/19 21:39登録)
10人以上殺人を犯したフジコの半生を描いたジャンル不明の小説。
あくまで暗く、重い。決して文章が上手いわけでもない。
がしかし、物語に引き込まれることは間違いない。
特に前半の小学生時代の虐め苛まれるフジコの育った環境はあまりに異常で、嫌悪感は半端ではない。
だが、この小説のキモはあとがきにある。
このあとがきによって初めてミステリとしての姿をおもむろに現すことになる。
衝撃的とか、やられたとかという声が多いのだが、個人的には「ああ、そうだったのか」くらいにしか思えなかった。
しかし、このあとがきの存在はこの作品の全体像を引き締める役割を果たしているのは間違いないだろう。

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