| nukkamさんの登録情報 | |
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| 平均点:5.44点 | 書評数:2929件 |
| No.369 | 4点 | 法隆寺の殺人 篠田秀幸 |
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(2014/03/03 11:30登録) (ネタバレなしです) 2001年発表の弥生原公彦シリーズ第4作で、新たな試みが見られる意欲作の本格派推理小説です。一つは歴史の謎解きに挑戦していることです。こういう学問的な話が苦手な読者には(私もその一人ですけど)興ざめになってしまう危険性がありますが、語り手に熱く語らせるなど退屈にならないように工夫しています。もう一つはフェアな謎解きへのこだわりです。「読者への挑戦状」が挿入されているところはこれまでのシリーズ作品とも共通していますが、本書はさらに犯人からのフェアを主張するメッセージまでも用意されています。これは作者の主張でもあるだろうし、フェアであることの理由もわからないではないのですが、うーん、フェアの本質とはそういうところにあるのでしょうか?うまく説明できないのですが、ルール違反でないこととフェアであることは同じではないと思います。フェアというのは読者にもちゃんと謎解きできるチャンスが与えられているかどうかであって、反則ぎりぎりで読者を煙に巻いて反則でないからフェアですというのはちょっと違うような気がします。まあミステリーとは「読者を騙す」文学ですから、「うまく騙された」と感じるか「ずるく騙された」と感じるかは読者によってまちまちでしょうけど。 |
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| No.368 | 6点 | 水曜日ラビはずぶ濡れだった ハリイ・ケメルマン |
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(2014/03/03 10:24登録) (ネタバレなしです) 1976年発表のラビ・スモールシリーズ第6作です。不動産売買を巡っての思惑や駆け引きがたっぷりと描かれていて、国内ミステリーだったら社会派推理小説(海外ではこの用語は使われていませんけど)と分類されてもおかしくありません。一方で本格派推理小説としてもよく書かれていて、ある薬品が人から人へとバトンタッチ式で渡されていることで謎解きの興味に深みを与えることに成功しています。 |
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| No.367 | 5点 | オーガニック・ティーと黒ひげの杯 ローラ・チャイルズ |
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(2014/02/16 12:02登録) (ネタバレなしです) たいした推理もなく行き当たりばったりで解決してしまうことの多い「お茶と探偵」シリーズですが、2011年発表のシリーズ第12作の本書に至ってはセオドシアが唐突に犯人の名前が頭に浮かび上がり(その前には違う容疑者を散々疑っていますけど)、ティドウェル刑事の制止も聞かずに犯人を追い掛け回します。この追跡劇は結構面白いのですが、結局犯人がわかった理由は説明されずに終わってしまいました。もしかするとどこかに謎解き伏線があったのかもしれませんが、凡庸な読者の私には判らないままですっきりできませんでした。説明責任を果たしてほしい(願)。 |
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| No.366 | 4点 | 殺人シナリオ ハリー・カーニッツ |
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(2014/02/16 11:51登録) (ネタバレなしです) シナリオライターとしての方が有名な米国のハリー・カーニッツ(1907-1968)のミステリー小説はわずか4作、先に発表された3作はマルコ・ペイジ名義ですが1955年発表で最後の作品となった本書はカーニッツ名義です。英語原題が「Invasion of Privacy」、つまり直訳すると「プライヴァシーの侵害」ですがこのプロットが予想以上に難解でした。映画脚本を巡る訴訟問題に発展しそうな状況で物語が始まるのですが、そもそもどんな脚本なのかどこが問題なのかがはっきり説明されずに物語が進行します。色々な関係者の利害関係も曖昧で、誰と誰が協力関係で誰と誰が敵対関係なのかももやもやしています。最後は犯人当て本格派推理小説として着地していますが、作中で推理だ論理だと言っている割には犯人を特定した理由が説明不足なのも残念です。 |
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| No.365 | 6点 | ハイチムニー荘の醜聞 ジョン・ディクスン・カー |
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(2014/02/16 11:09登録) (ネタバレなしです) 1959年発表の歴史本格派推理小説ではありますが作中時代を19世紀後半(1865年の英国)にしたためか風俗描写がそれほど歴史を感じさせず、現代ミステリーに雰囲気が近くなっています。プロットは過去のある作品を髣髴させて二番煎じを感じさせるところは否めませんが、謎とロマンスの盛り上げ方はさすがに巨匠ならではの出来栄えですらすらと読ませる語り口もお見事です。 |
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| No.364 | 6点 | ウルフ連続殺人 ウィリアム・L・デアンドリア |
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(2014/02/16 10:55登録) (ネタバレなしです) 「ホッグ連続殺人事件」(1979年)から久しぶりの1992年に発表されたニッコロウ・ベイネディッティ教授シリーズ第2作となる本格派推理小説です。アルプスという舞台、世界中から集まった優秀な頭脳、狼男を連想させるような奇怪な事件といった面白そうな題材が十全に活かされていないように思いました。しかしそれでも技巧に走り過ぎてぎこちなさを感じさせる「ホッグ連続殺人事件」よりもすっきり読めました。ベネディッティ教授のエキセントリックぶりが控え目になったのも個人的には好ましいです。この作者は「普通の」謎解きを書いている方がしっくり来ていると思います。 |
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| No.363 | 5点 | 白い森の幽霊殺人 本岡類 |
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(2014/02/16 10:27登録) (ネタバレなしです) 1985年発表の本格派推理小説で、探偵役のペンションオーナー里中邦彦が事件に巻き込まれてどきどきしたり、慣れぬ犯罪捜査に苦心したりとアマチュア探偵ぶりがよく描けています。冬の描写にも力が入っています。推理も丁寧で共犯者や交換殺人の可能性までも議論していますがそんな可能性まで広げられると犯人当てとして難易度が高くなり過ぎて敷居が少々高いように思います。バラバラ死体の謎解きには創意工夫が感じられます。 |
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| No.362 | 7点 | 日光浴者の日記 E・S・ガードナー |
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(2014/02/16 10:09登録) (ネタバレなしです) 1955年発表のペリイ・メイスンシリーズ第47作の本格派推理小説です。メイスンは証拠隠滅や犯人隠匿と疑われても仕方ないような行動をとってはらはらさせることがありますけど、今回はそれを目撃されてしまいもう絶体絶命...、と思わせてのそこからの逆転劇が凄いです。それは巧妙なミスディレクションあっての賜物で、数あるシリーズ逆転劇の中でも鮮やかな印象を与えます。 |
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| No.361 | 6点 | 丹那殺人事件 森下雨村 |
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(2014/02/16 09:49登録) (ネタバレなしです) 江戸川乱歩が「日本探偵小説の生みの親」と称えた森下雨村(1890-1965)はスリラー系作品が多い作家ですが1935年発表の本書は犯人当て懸賞付きで雑誌連載された本格派推理小説です。ミステリー黎明期の作品で、とにかくミステリーを読者に親しませようとするねらいがあったためか手掛かり提示が相当あからさまだったり、「いよいよ犯人が判りかけてきました」というメッセージを挿入したりと読者サービス充実(笑)、懸賞応募が5万7千通に対して正解者が4万通という驚異的に犯人的中率の高い作品です(笑)。論創社の「森田雨村探偵小説選」に収録された版は仮名づかいや漢字を現代風に改訂されてあって読みやすいです。 |
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| No.360 | 6点 | そして犯人(ホシ)もいなくなった 司城志朗 |
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(2014/02/05 16:01登録) (ネタバレなしです) 1988年発表の本書はハードボイルドからSF、歴史小説と幅広いジャンルを書いている司城志朗(1950年生まれ)にとって初めての本格派推理小説だそうですが結構よくできています。探偵役の岩男警部補と上司の捜査一課長のまじめなようなふざけたような会話が滅法楽しく、それでいて謎解きの面白さがちゃんと両立しているところがいいですね。その代わり容疑者たちの登場場面が少な過ぎて誰が誰だかわかりにくいのは弱点ですが、本格派推理小説好きなら読んで損のない作品だと思います。どんでん返しの推理がなかなか魅力的です。 |
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| No.359 | 7点 | 翳深き谷 ピーター・トレメイン |
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(2014/01/25 15:54登録) (ネタバレなしです) 1998年発表の修道女フィデルマシリーズ第6作で創元推理文庫版で上下巻合わせて600ページ超、しかも前半(上巻)は政治外交的な活動や宗教議論が中心のプロットでミステリーらしさをあまり感じませんが語り口の巧さで退屈しませんでした。これまでの作品でも人物描写には定評ある作者ですが、本書では協力関係、対立関係、中立関係が明確でしかもその関係が二転三転するのも読ませどころです。ワトソン役のエイダルフにもご注目を。前半は全くのお荷物ですが、後半ではフィデルマを助けて結構頑張っており名誉回復(?)、でもちょっと女性問題で...(笑)。二転三転といえばどんでん返しの謎解き説明が楽しめる本格派推理小説として十分に楽しめました。 |
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| No.358 | 6点 | 悪の扉 山沢晴雄 |
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(2014/01/12 21:12登録) (ネタバレなしです) デビューは1951年ながら社会派推理小説全盛期の中でその作品は不評、或いは発表の場さえなかなか与えられなかった不遇の本格派推理小説家である山沢晴雄(1924-2013)の長編第1作です。書かれたのは1964年ながら出版を拒否されて長らくお蔵入り状態、ようやく1999年に同人誌に発表できたという不幸な運命をたどった作品です。前半は複雑な人間関係整理とアリバイ調査の地味な展開ですが、後半になると密室殺人が発生するし、「密室パズルを解いてみて下さい」と「読者への挑戦状」まで用意されています。しかも探偵役の砧順之助による密室殺人のトリック解説と犯人の指摘で物語は終わらず、まだまだどんでん返しの謎解きが続きます。考えに考え抜かれた複雑な謎解きプロットはまさにパズラー(作者は手品文学とアピールしています)、確かに社会派推理小説のリアリズムとは対極にある作品ですが、これだけの作品が埋もれていたのは時代が悪かったとしか言いようがないですね。 |
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| No.357 | 7点 | 謎解きはディナーのあとで 東川篤哉 |
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(2014/01/12 20:57登録) (ネタバレなしです) 大富豪の令嬢刑事と丁寧な口調の毒舌執事(こちらが名探偵です)の活躍する6作から成る(小学館文庫版ではショート・ショート1作を追加)2010年発表の短編集で、(おそらく)史上初の年間ベストセラーのトップに輝いたミステリーです。楽々と100万部を突破し、とにかく「売れた」の一言に尽きます。作者自身もなぜこれだけ売れたのかわからないというのは本心でしょう。本格派推理小説の短編集として水準は問題なくクリアしていますが他の東川作品と比べて傑出しているかと問われれば多分ノー、「案外普通の作品だった」という感想が多いかもしれません。でも大人も子供も楽しめるという普遍性は狙っても案外難しいもの。その中から将来「本書を読んでミステリー作家を目指しました」というミステリー作家が生まれてくれば、それこそ本書に対する最大限の賛辞となるでしょう。 |
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| No.356 | 6点 | 命取りの追伸 ドロシー・ボワーズ |
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(2014/01/12 20:43登録) (ネタバレなしです) 結核に倒れてわずか5作品しか残せませんでしたが、そのどれもが好評だった英国のドロシー・ボワーズ(1902-1948)が1938年に発表したデビュー作の本格派推理小説です。緻密すぎるぐらいの捜査描写が時に退屈ぎりぎりになってしまいますが、登場人物や自然描写など随所に光るものがあります。インパクトのある手掛かりはほとんどありませんがそれでも推理は丁寧です。パードウ警部の最後のせりふも印象的です。 |
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| No.355 | 4点 | 殺しはノンカロリー コリン・ホルト・ソーヤー |
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(2014/01/12 20:36登録) (ネタバレなしです) 1994年発表の「海の上のカムデン」シリーズ第5作ではあるのですが「海の上のカムデン」が舞台になっておらず、アンジェラとキャレドニア以外の住人も登場しません。とはいえこの2人がいれば面白さは十分、ダイエットプログラム積極派と消極派に分かれての対比が楽しいです。しかし謎解きは問題ありで、立ち聞きがきっかけで解決になだれ込むという展開は本格派推理小説好き読者としてはあまり感心できませんでした。 |
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| No.354 | 6点 | 監獄島 加賀美雅之 |
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(2014/01/12 20:20登録) (ネタバレなしです) 2004年発表のシャルル・ベルトランシリーズ第2作の本格派推理小説です。「綾辻行人の『「時計館の殺人』(1991年)と二階堂黎人の『人狼城の恐怖』(1998年)へのレスペクト作品」として書かれただけあって、光文社文庫版で上下巻合わせて1300ページを超す大分量と惜しげもなく注ぎ込んだアイデアの数々が圧巻です。これだけ謎解きのサービスされると気に入らない謎解きが少しぐらいあってもそれ以上に満足度の方が上回ります。バラバラ死体に火だるま死体など猟奇的な事件もありますが、グロテスク描写を極力排しているのも(そこが二階堂黎人とは大きく違う)個人的には好感度高いです。 |
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| No.353 | 4点 | アレン警部登場 ナイオ・マーシュ |
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(2013/10/28 01:00登録) (ネタバレなしです) ニュージーランドのナイオ・マーシュ(1895-1982)はクリスティー、セイヤーズ、アリンガムと共に本格派黄金時代の女性作家ビッグ4と評される存在です。30冊以上書いた長編ミステリーが全てロデリック・アレンシリーズで非シリーズ作品なしというのが珍しいです(短編には非シリーズ作品もあります)。本書は1934年に発表したデビュー作です。シンプル過ぎるぐらいのプロットに子供だまし的なトリック、物語としての深みも求めようもなく、気軽の読めることぐらいしか取柄のない本格派推理小説です。熱心なシリーズファン読者以外には勧めにくいです。 |
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| No.352 | 6点 | ムーンズエンド荘の殺人 エリック・キース |
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(2013/07/03 13:11登録) (ネタバレなしです) 創元推理文庫版の「雪の山荘版『そして誰もいなくなった』」という宣伝文句が強烈な(笑)、米国のエリック・キースによる2011年発表のデビュー作の本格派推理小説です。登場人物の過去を振り返る部分が多いのが諸刃の剣になっており、謎解きプロットを複雑にする一方でサスペンスを犠牲にしている点は否定できません。とはいえ後半はどきどきの連続になるし、最終章は畳み掛けるような推理説明が圧巻です。 |
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| No.351 | 5点 | 指はよく見る ベイナード・ケンドリック |
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(2013/06/23 23:03登録) (ネタバレなしです) 1945年発表のダンカン・マクレーンシリーズ第6作で彼の盲人設定を活かした描写もありますが、何といってもプロットのユニークさが光る本格派推理小説です。前半をマーシャを主人公にした犯罪小説、後半を本格派推理小説という構成は、ニコラス・ブレイクの「野獣死すべし」(1938年)や法月綸太郎の「頼子が死んだ」(1990年)を連想するかもしれませんが、後半も主役を依然としてマーシャにしているところはむしろパット・マガーの「探偵を捜せ!」(1948年)に近いかもしれません。読ませどころは一杯なのですが、終盤明らかになるマクレーンの「策略」はやり過ぎでしょう。これは意外性よりもアンフェアなやり方の方が目だってしまったような気がします。 |
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| No.350 | 5点 | 密室の妻 島久平 |
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(2013/05/26 18:04登録) (ネタバレなしです) 1962年発表の伝法義太郎シリーズ第2作ですがシリーズ前作の「硝子の家」(1950年)と比べるとハードボイルド要素が増えた、というよりずばりハードボイルド小説と言ってもいいかもしれません。過激ではないけど暴力の直接描写があり、探偵役の伝法のアクション場面も見られます。本格派推理小説としての推理による謎解きもありますが書かれた時代が本格派に逆風が吹いていた時期なので純然たる謎解きに徹した作品は発表しにくかったのかも。結末の伝法と犯人のやり取りは笠井潔の矢吹駆シリーズに見られる思想対決にも通じる重苦しいサスペンスに満ち溢れており、強烈な読後感を残します。 |
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