指はよく見る ダンカン・マクレーン |
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作家 | ベイナード・ケンドリック |
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出版日 | 1956年04月 |
平均点 | 6.00点 |
書評数 | 2人 |
No.2 | 7点 | mini | |
(2015/03/31 09:59登録) 明日4月1日に論創社からティモシー・フラー「ハーバード同窓会殺人事件」とベイナード・ケンドリック「暗闇の鬼ごっこ」が刊行予定 日本の推理作家協会に相当するアメリカの探偵作家クラブ、通称MWAは英国のCWAと共に世界のミステリー小説業界を牽引する機関である その会長職を年代別に第10代まで並べてみよう ベイナード・ケンドリック エラリイ・クイーン ヒュウ・ペンティコースト ローレンス・G・ブロックマン J・D・カー ヘレン・マクロイ アントニイ・バウチャー ジョージ・ハーマン・コックス ヘレン・ライリー スチュアート・パーマー 第11代以降も重要な名前(一部順不同)を挙げただけでも、シムノン、女流サスペンスの代表格ドロシー・S・デイヴィスとM・ミラー、スタウト、チャンドラー、ロックリッジ夫妻、ホームズ研究家V・スタリット、J・D・マクドナルド、評論家のH・ヘイクラフト、ロスマク、ジョン・クリーシイ、H・ブリーン、短篇作家のエリンとR・ブロック、警察小説のウォーとL・トリートとT・ウォルシュ、マスル、エバハート、R・L・フィッシュ、デ・ラ・トーレ、マッギヴァーン、E・D・ホックと続く まさにアメリカのミステリー作家見本市状態である、ただし戦後にアメリカに移住したシムノンや英国作家クリーシーあたりは国際色も考慮したのだろうか それと一部に日本で知名度の低い作家が含まれているが、あくまでも日本での紹介に恵まれていないだけで、例えば第8代ジョージ・ハーマン・コックスはブラック・マスク誌の常連で当時の人気作家の1人である 私が歴代会長の名簿リストを眺めて、これは本国でもややマイナーかなと感じる作家は本職が児童ミステリだとかの2~3名位だ 任期は1年位だったようで、どうも持ち回り制名誉職みたいな感も有り必ずしも全員が超大物ではないが、さりとて作家仲間から定評が無ければ選ばれるはずも無く、大体が本国アメリカでは重要な作家ばかりである そして栄えある初代会長が御大クイーンを差し置いてベイナード・ケンドリックなのである、MWA創設にも関わったのも就任の理由かも知れない 視力にハンデキャップのある探偵役と言えば古典ホームズのライヴァル時代に登場したアーネスト・ブラマのマックス・カラドスだが、カラドスは指で触っただけで文字を読み取るなどあまりに超人過ぎて不自然だとの非難が当時から有った ケンドリックの盲人探偵ダンカン・マクレーン大尉は現実に目の不自由な人が受け取り可能な情報から真相を見抜くのである もちろん安楽椅子探偵では視力のハンデという特徴が全く活かされないから現場にも赴く、多分だが大尉が危難に陥るサスペンスも考慮してか補助として盲導犬と警察犬の2頭の犬を登場させるなど用意周到だ この探偵役マクレーン大尉の人物造形が素晴らしい、寡黙で冷静沈着な態度は一読してファンになる読者も居るんじゃないだろうか また「指はよく見る」はシリーズの中では異色作らしいのだが、従来型の本格派の形式に則らない倒叙がかった物語進行も、様式美を求める読者には合わないが、様式嫌いの私には面白かった 一般的形式を外しているので、実は仕掛けの根幹を成すある情報に私はちょっと疑いが有ったらたまたま当たっていたんだけどね(微笑) |
No.1 | 5点 | nukkam | |
(2013/06/23 23:03登録) (ネタバレなしです) 1945年発表のダンカン・マクレーンシリーズ第6作で彼の盲人設定を活かした描写もありますが、何といってもプロットのユニークさが光る本格派推理小説です。前半をマーシャを主人公にした犯罪小説、後半を本格派推理小説という構成は、ニコラス・ブレイクの「野獣死すべし」(1938年)や法月綸太郎の「頼子が死んだ」(1990年)を連想するかもしれませんが、後半も主役を依然としてマーシャにしているところはむしろパット・マガーの「探偵を捜せ!」(1948年)に近いかもしれません。読ませどころは一杯なのですが、終盤明らかになるマクレーンの「策略」はやり過ぎでしょう。これは意外性よりもアンフェアなやり方の方が目だってしまったような気がします。 |