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ミステリの祭典

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nukkamさんの登録情報
平均点:5.44点 書評数:2929件

プロフィール| 書評

No.809 5点 猫はスイッチを入れる
リリアン・J・ブラウン
(2015/09/12 09:04登録)
(ネタバレなしです) 1968年発表のシャム猫ココシリーズ第3作です。私はジャンカーとジャンキーは意味が違うことを本書で初めて知りました。アンティーク商売の怪しさ(真面目に商売している人、ごめんなさい)が謎解きの雰囲気と上手く合っています。コージー派なので淡白な謎解きではありますが、真相の納得度では1960年代の3作品の中ではベストと思います。ただ3勝1敗の1敗はなかった方がよかったかなと思います(1敗が何のことかは最終章で説明されています)。しかしながら時代が早すぎたのかこのシリーズは評判にならず、シリーズ次作もすぐ書かれてたのですが長らくお蔵入りになりました。それが「猫は殺しをかぎつける」として出版されたのは1986年です。


No.808 6点 四月の屍衣
レジナルド・ヒル
(2015/09/12 08:29登録)
(ネタバレなしです) 1975年発表のダルジールシリーズ第4作です(本当はディーエルと発音するのが正しようです)。前作の「秘められた感情」(1973年)ではやや脇役的な扱いだったダルジール、本書では堂々の主役です。逆にパスコーはほとんど出番なしで、主役を1人に絞ったためかヒル作品では屈指のシンプルで読みやすいプロットです。1970年代の作品ながら昔風の「世にも奇妙な物語」的な雰囲気が漂っているのが特色で、初期代表作と評価されているのも納得です。ところでダルジールは見事な推理を披露していますが最終的には失敗したことになったのでしょうか?名探偵のようでもあり迷探偵のようでもあり、最後まで奇妙な本格派推理小説でした。それも作者の計算の内かもすれません。


No.807 6点 自殺の殺人
エリザベス・フェラーズ
(2015/09/12 08:00登録)
(ネタバレなしです) 1941年発表のトビー・ダイク&ジョージシリーズ第3作の本格派推理小説です。劇的な展開があるわけでなく、退屈ぎりぎりの物語を淡々とページをめくりながら読み進めましたがエピローグで明かされた真相には結構驚かされました。あんな複雑などんでん返しがあったとは。それをああもあっさりと説明したことを凄い筆力と感じるか、物足りないと感じるかは読者によって分かれそうですね。このエピローグでは登場人物たち(トビー、ジョージ、ティンギー警部も含まれます)がしでかした間違いが次々に紹介されるという趣向もあってなかなか面白かったです。なお創元推理文庫版の巻末解説には明らさまなネタバレではないけれど事前には読まない方がいい記述がありますので注意下さい。


No.806 6点 雷鳴の夜
ロバート・ファン・ヒューリック
(2015/09/12 07:44登録)
(ネタバレなしです) 当初は「中国迷路殺人事件」(1956年)から「中国鉄釘殺人事件」(1961年)までの5作でディー判事シリーズ終了の予定だったのがさらに書き続けることになり(うれしい翻意です)、第6作として1961年に発表されたのが本書です。舞台となる「朝雲観」の見取図が2種類も用意されているのに恥ずかしながらどこがどこなのかさっぱり理解できませんでした。まるで迷路のような寺院の中を手掛かりを求めてディー判事がさまよいます。何者かに襲撃されたり、恋愛相談を持ちかけられたり、熊とご対面したり(!)、大忙しですが全ては一夜の出来事、夜明けには全てが収束されています。幻の部屋トリックは感心しませんが、前観主の死の謎を解く手掛りは印象的です(但し解説によればファン・ヒューリックのオリジナルアイデアではないようですが)。あと本筋とは関係ありませんが、昔の中国は一夫多妻制だったそうですがディー判事には3人の妻がいたんですね。女性読者は目くじらたてたくなるかもしれませんが、歴史ミステリーゆえ大目に見てあげて下さい(と男性読者の私が書いても説得力ないでしょうけど)。


No.805 8点 女の顔を覆え
P・D・ジェイムズ
(2015/09/06 23:51登録)
(ネタバレなしです) 英国ミステリーの新女王(前女王はもちろんアガサ・クリスティー)と称されたP・D・ジェイムズ(1920-2014)のデビュー作が1962年発表の本書です。作者自身がクリスティーの影響を脱しきれない失敗作と自己批判しており、後の重厚な作品と比べると違和感さえ感じる作品ですが決してクリスティーの亜流ではないし、読み易さと重厚さが両立しています。探偵役のダルグリッシュ(本書では主任警部)が容疑者を一堂に集めて真犯人を指摘する場面などは確かに本格派黄金期ミステリーの名残が見られますが、人間ドラマの部分にも十分配慮されていて謎解きと物語のバランスがとれています。ところで1960年代は英国でも本格派冬の時代で、その中で唯一売れていたのがクリスティー、そのためか当時の新進女性作家はクリスティー的作風を出版社から強要されていたという不幸な歴史があったそうですが、それに反発してジェイムズがアンチ・クリスティーになったのも理解できなくはないのですが、謎解きの面白さを後回しにしたかのような後期の作風は個人的には残念です。私にとって1番好きなジェイムズ作品は本書です。


No.804 7点 ジェリコ街の女
コリン・デクスター
(2015/09/06 22:34登録)
(ネタバレなしです) 1981年発表のモース主任警部シリーズ第5作の本書は前作の「死者たちの礼拝」(1979年)に続いてCWA(英国推理作家協会)のシルバー・ダガー賞を受賞しました。作家の数が飛躍的に増えた現在、同じ作家が連続して受賞できたというのは凄いですね。極めて複雑難解な「死者たちの礼拝」と同じぐらい難解な「謎まで三マイル」(1983年)に挟まれて発表された本書は比較的プロットがシンプルな本格派推理小説で、私の読解力ではこのあたりが限界でした(笑)。シンプルといってもちゃんと読者を驚かす仕掛けはあり、37章の終わりで驚かされ、38章のモースの説明で気づかされた時はもう遅い、私は完全にやられました。その38章にもさらにまた驚きがありました。ただ結末はちょっと蛇足気味、悲哀に満ちた演出をねらったのかもしれませんが、曖昧さのおかげで何を訴えたいのか私にはぴんと来ませんでした。


No.803 4点 バール・イ・ヴァ荘
モーリス・ルブラン
(2015/09/06 02:21登録)
(ネタバレなしです) 冒険スリラーに属するアルセーヌ・リュパンリーズですが、1931年発表のシリーズ第11作の本書は本格派推理小説の要素が濃く、リュパンは探偵役に徹します(但し第2章ではちょっと泥棒してますが)。もっとも謎解きはぱっとせず、さりとて冒険スリラーとしてはアクションシーンが少なくて盛り上がりに乏しく、中途半端感が残ります。敵役(犯人)がそれほど強敵でないのも物足りません(その割りにリュパン、手こずってます)。


No.802 6点 うつろな男の死
キャロライン・グレアム
(2015/09/06 02:02登録)
(ネタバレなしです) 1989年発表のバーナービー警部シリーズ第2作の本格派推理小説です。作者自身が演劇界で働いていた経験があるからか劇団の舞台裏描写がとてもしっかりしています。デビュー作の「蘭の告発」(1987年)が暗く重い読後感があったのに比べて本書は随分と明るく軽くなった気がします。登場人物を多彩に描き分ける手腕は本書でも発揮されていますが、前作と比べてサイドストーリーが増えて若干冗長になった感じがしました。あと殺人場面の描写、リアルな出血シーンがあるわけではありませんが思わず自分の喉を押さえてしまいました。苦手なんですけどねえ、ああいうのは。


No.801 6点 「悶える者を救え」亭の復讐
マーサ・グライムズ
(2015/09/06 01:45登録)
(ネタバレなしです) 1985年発表のリチャード・ジュリーシリーズ第6作です。基本は本格派推理小説ではあるのですがハードボイルド小説のタフな私立探偵を髣髴させるマキャルヴィ主任警視を登場させたり、サイコ・スリラー小説的な要素を加味したりと作者が色々と試行錯誤していることが伺えます。結末の付け方も何とも言えないやるせなさを感じさせます。


No.800 6点 歌うスカート
E・S・ガードナー
(2015/09/06 01:20登録)
(ネタバレなしです) 1959年発表のペリイ・メイスンシリーズ第60作です。人物Aが撃った銃で致命傷を負わされた被害者がまだ死なないうちに別の人物Bが撃った別の銃で殺された場合、一体AとBはどういう罪を負わされるでしょう?その答えは本書の中でメイスンが説明していますが、その説明した状況と似たような殺人が実際に発生してしまい、被告だけでなくメイスン自身も絶体絶命のピンチに陥ります。これだけでも十分わくわくさせる展開になっていますが、それ以上に私の印象に残ったのが賭博で負けた金を取り返す方法(しかも合法的に)。いやー、本当にあれがまかり通るの?これさえ知っていればあなたもカリフォルニア州のカジノで負け知らず...なんてわけないか。でも本当にびっくりしました。


No.799 5点 眠れない聖夜
ジーン・M・ダムズ
(2015/09/06 01:00登録)
(ネタバレなしです) 全世界での出版総数が聖書に次ぐとも言われる、偉大なるアガサ・クリスティーの存在は不滅といっても過言ではなく、今でも本格派系の女性推理小説家がデビューするたびにクリスティーと比較されてしまっています。比較される側の反応も様々で、P・D・ジェイムズやルース・レンデルのように比較されるのを露骨に嫌って独自の作風に走る作家もいれば、このダムズ(1941年生まれ)のように明らかにクリスティーのスタイルを目指した作品を書いている作家もいます。1995年に発表されたドロシー・マーティンシリ ーズの第1作である本書は、物語の中でもクリスティー作品からの引用が散りばめられていてクリスティーファンなら思わずニヤリとするかも。ただ謎解き小説としての魅力では(少なくとも本書は)クリスティー作品には遠く及びません。どちらかと言えばホワイダニットの要素の強い作品ですがちょっとこの動機は一般読者に馴染みにくいし、動機以外の手掛かりがほとんどないのは謎解き好きの読者には物足りないでしょう。ちなみに舞台は英国にしていますがダムズ自身は米国の女性作家です。


No.798 8点 死の鉄路
F・W・クロフツ
(2015/09/06 00:41登録)
(ネタバレなしです) 1932年発表のフレンチシリーズ第9作の本格派推理小説です。「少年探偵ロビンの冒険」(1947年)の中で本書のことをとりあげていることから作者としても結構自信作ではなかったかと思いますが、私にとっても1番お気に入りのクロフツ作品です。別に凄いトリックが用意されているわけではありませんが、鉄道ミステリーの雰囲気が濃厚で、地道なアリバイ捜査と最後の劇的な展開の対比が鮮やかです。本筋とは関係ありませんが薄暗がりの中、遠方から近づく列車を描いた創元推理文庫版(初版)のジャケットが大変素晴らしいです。


No.797 4点 喉切り隊長
ジョン・ディクスン・カー
(2015/09/06 00:20登録)
(ネタバレなしです) 1805年のフランスを舞台にした1955年発表の歴史ミステリーです。カーの歴史ミステリーは冒険スリラー色の濃い本格派推理小説が多いのですが、本書はスパイ・スリラーに分類すべき作品かと思います。目撃者の監視状況下での見えない殺人者による殺人という謎はありますがその謎は9章であっさりと解かれ(トリックもそれほどのものではありません)、19章の終わりで説明される真相は本格派推理小説の謎解きというよりは冒険小説でラスボスの正体が暴かれるものに近いと思います。


No.796 6点 虚数の眼
湯川薫
(2015/09/05 23:22登録)
(ネタバレなしです) 1999年発表の湯川幸四郎シリーズ第2作の本格派推理小説です。本書を読んだ都筑道夫が「二十一世紀の小栗虫太郎」と誉めてますが、あの「黒死館殺人事件」(1934年)の難解さに頭を抱えた読者層にとってはこれはマイナスの宣伝効果ではないでしょうか(笑)。かなり覚悟して読みましたが、ありゃ意外と読みやすい。確かに作中で膨大な知識が披露され、理系の苦手な(芸術系や歴史系も苦手です)私にとってはわかったようなわからなかったようなもやもや感がつきまといますが、ちゃんと謎解きと融合されていますのでプロットに無駄がありません。殺人トリックが非常にユニークで印象に残りました。なおデビュー作「ディオニシオスの耳」(1999年)のネタバレが作中であるので未読の方は注意下さい。


No.795 5点 ディオニシオスの耳
湯川薫
(2015/09/02 13:27登録)
(ネタバレなしです) 湯川薫(1960年生まれ)(男性です)はサイエンスライターである竹内薫のミステリー用ペンネームです。1999年に湯川幸四郎シリーズ第1作となる本格派推理小説の本書でミステリーデビューしました。科学に関する知識が散りばめられていますが読者にわかりやすくしようと説明しているところは好感がもてます。松本清張の某トリックをより大掛かりにしたようなメイントリックも面白いです。しかし人物描写が弱くて整理不十分となってしまい、終盤のどんでん返しの連続がもう一つ効果を上げていません。複雑な真相が悪いとは言いませんけど、本書の場合は無駄に複雑にした印象が残ってしまいました。なお本書は2010年に改訂版(私は未読です)が出版されましたが、作者名が竹内薫に変更になったのはまだしも、探偵役の名前を湯川幸四郎から竹内幸四郎に変更したのは理解に苦しみます。既にその時点で湯川幸四郎シリーズ作品が5作発表されているのに。


No.794 6点 ジョージ・サンダース殺人事件
クレイグ・ライス
(2015/09/02 09:00登録)
(ネタバレなしです) 実在した米国の人気俳優ジョージ・サンダース(1906-1972)の名義で1944年に発表された本格派推理小説で、サンダース自身が主人公で探偵役です。英語原題は「Crime on My hands」で原書房版の日本語タイトルは個人的には感心しません(別にサンダースが殺されるわけではない)。それ以上に遺憾に思うのは代作者であるクレイグ・ライスの名前ばかりハイライトされていますが、実はSF作家のクリーヴ・カートミル(1908-1964)との共同執筆なのです。しかしそのことは巻末解説で簡潔に触れているだけで、カートミルにとってちょっと不公平な扱い方だと思います。まあ内容的には、例えばサンダースが犯人をおびき寄せようとすると、次から次へと容疑者が集まってきて罠が台無しになってしまうなどライスらしい作風になっており、共作といってもライス主導だったであろうとは思いますが。俳優として探偵役を演じるのはもううんざりと言いながら事件に巻き込まれて真剣に探偵役を務めるサンダースの描写が面白く、起伏に富んだプロットで読ませる作品です。


No.793 7点 法の悲劇
シリル・ヘアー
(2015/08/29 10:48登録)
(ネタバレなしです) 1942年発表の長編第4作で、ヘアーの最高傑作と評価されるにふさわしい本格派推理小説です。本書ではシリーズ探偵のマレット警部に加えてもう一人シリーズ重要人物が登場します(ばればれかもしれませんが本書では容疑者扱いなので一応名前は伏せます)。しかし両名とも意外と出番が少なく、バーバー判事とその周辺人物による人間ドラマが物語の中心となるプロットです。後半まで小さな事件しか発生しない、とてもゆっくりした展開ですがこのドラマの読み応えが素晴らしくて退屈しません。生身の人間としてはほとんど登場しないのにしっかり存在感を示す人物さえいるのがすごい小説テクニックです。そして得意とする法律知識と謎解きの組み合わせに加えてタイトル通りの「悲劇」色の絡ませ方がまた絶妙。専門知識を使った推理はあまり好きではない私ですが本書は別格の存在です。


No.792 6点 アリバイの唄
笹沢左保
(2015/08/29 08:54登録)
(ネタバレなしです) 1990年発表の夜明日出夫(よあけひでお)シリーズ第1作の本格派推理小説です。容疑者は2人しかおらず、犯人当てに挑戦する謎解きではなくアリバイ崩しのプロットになっています。発表した時代は新本格派推理小説の全盛期時代で、1960年代に自身が新本格派を標榜していた笹沢としては先輩作家の意地を見せたかったのかもしれません。講談社文庫版では「前代未聞の大トリック」と宣伝していますがまさにトリック一発に全てを賭けたような作品です。感心するよりも呆れる読者の方が多いかもしれませんが、よくもここまでと唸りたくなるような手の込んだトリックが使われています。


No.791 6点 白薔薇と鎖
ポール・ドハティ
(2015/08/29 00:08登録)
(ネタバレなしです) ポール・ドハティーがマイクル・クラインズ名義で発表している、16世紀の英国を舞台にベンジャミン・ドーンビーとロジャー・シャーロットの主従コンビを探偵役にしたシリーズの第1作(1991年出版)です。ジョン・ディクスン・カーの歴史本格派を彷彿させるような冒険小説的要素が濃厚な作品ですがその語り口が独特で、主人公のロジャー・シャーロットをはじめ登場人物の俗人ぶりがこれでもかと言わんばかりに書き込まれています。上品さや洗練さとはほど遠い描写ですので好き嫌いは分かれるでしょう。謎解きとしては歴史本格派ならではのトリックや手掛かりが使われています。


No.790 5点 そそっかしい小猫
E・S・ガードナー
(2015/08/29 00:00登録)
(ネタバレなしです) 1942年発表のペリイ・メイスンシリーズ第21作です。失踪事件に小猫の事件に殺人事件とばらばらな印象の出来事が続き、しまいには〇〇(殺人事件ではない)の容疑で意外な被告が告発されるなど予想もしない展開に振り回されますが最後はもつれあった事件がきれいに収束される解決につながっています。真相には不満な点もありますが謎解きの伏線も巧く張ってあります。あと恒例行事のハミルトン・バーガー検事とメイスン弁護士の論戦(皮肉合戦?)がいつも以上に楽しく読めました。

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