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ミステリの祭典

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雷鳴の夜
ディー判事

作家 ロバート・ファン・ヒューリック
出版日2003年04月
平均点5.25点
書評数4人

No.4 5点 E-BANKER
(2020/08/10 18:22登録)
古代中国に実在した(らしい)名判事”ディー判事”を探偵役とするシリーズ。
ウィキペディアを参照すると、本作はシリーズ七作目(?)だと思われる。
1961年の発表。

~旅の帰途、嵐に遭ったディー判事一行はやむなく山中の寺院に宿を求める。そこは相次いで三人の若い女が変死するという事件が勃発した場所だった。到着早々判事は窓越しに異様な光景を目撃する。昔の兜を被った大男と裸で抱き合う片腕の娘・・・しかし、そこは無人の物置のはずで、しかも窓すらない部屋だった。怪奇現象?幽霊? ディー判事の悩みをよそに夜が更けるにつれ次々と怪事件が襲ってきた!~

ロバート・ファン・ヒューリック・・・実は今回初めて作品を手に取った。
1910年、”ファン”というミドルネームからしてやはりオランダ生まれ。外交官として各国に駐在し、1964年からは在日オランダ大使として日本にも赴任。へぇーエライ人だったんだねぇー
中国が舞台となっているのは、中国人女性と結婚したから・・・何だろうな。
長く続いたシリーズだから、一度くらい聞いたことがありそうなんだけど、今回が初見だった。

前置きはこのくらいにして本筋についてなんだけど・・・
うーん。なんか分かりにくいというのが一番の感想。
とにかく展開が早すぎて、理解が追い付かなかったのかもしれない。紹介文のとおり、不思議な事件・出来事が次々と起こり、ディー判事が1つ1つ解決していく展開。
ただ、その解法が納得できるのかというと、これまた微妙。
紹介文にある「昔の兜を被った男と抱き合う片腕の娘」のくだり。このトリックは相当腰砕け。夜で暗かったとはいえ、〇〇と間違う?
ただ、フーダニットに関しては一応のサプライズが用意されているのでご安心を。こいつ(真犯人)は相当に悪い奴。ディー判事により手ひどい最期を迎えるのだが、ざまーみろっていう感じだ。

全体的な評価としてはこんなもんかな。あまり高い評価は無理。シリーズ他作品も読むかどうかは・・・?

No.3 6点 nukkam
(2015/09/12 07:44登録)
(ネタバレなしです) 当初は「中国迷路殺人事件」(1956年)から「中国鉄釘殺人事件」(1961年)までの5作でディー判事シリーズ終了の予定だったのがさらに書き続けることになり(うれしい翻意です)、第6作として1961年に発表されたのが本書です。舞台となる「朝雲観」の見取図が2種類も用意されているのに恥ずかしながらどこがどこなのかさっぱり理解できませんでした。まるで迷路のような寺院の中を手掛かりを求めてディー判事がさまよいます。何者かに襲撃されたり、恋愛相談を持ちかけられたり、熊とご対面したり(!)、大忙しですが全ては一夜の出来事、夜明けには全てが収束されています。幻の部屋トリックは感心しませんが、前観主の死の謎を解く手掛りは印象的です(但し解説によればファン・ヒューリックのオリジナルアイデアではないようですが)。あと本筋とは関係ありませんが、昔の中国は一夫多妻制だったそうですがディー判事には3人の妻がいたんですね。女性読者は目くじらたてたくなるかもしれませんが、歴史ミステリーゆえ大目に見てあげて下さい(と男性読者の私が書いても説得力ないでしょうけど)。

No.2 4点 mini
(2009/03/28 10:17登録)
任地に帰る途中で嵐に遭遇した狄(ディー)判事一行は、道教の寺院に一夜の宿を求めた
寺院なら仏教と思われようが、唐代の中国は国際国家であり仏教は外国輸入の宗教という認識が強く、辺境ではイスラム教徒も居住していた
政治的には儒教でも、宗教的には道教の存在も大きく神秘主義的な怪しさに満ちていた
西洋史で言うとカトリックやプロテスタントに対する第三の宗派、東ローマ(ビザンチン)帝国由来のギリシア正教のような存在だろうか
狄判事は儒教派なので事ある毎に道教を批判している

狄判事シリーズの中で最初にこれを読む人が多いのを以前から不思議に思っていた
たしかに前期五部作の旧訳を除く現行のハヤカワ版の中では翻訳時期が早かったのはあるが、某サイトで理由を発見した
ヒューリック初心者が他者に薦められて「東方の黄金」と「雷鳴の夜」の二冊を買ってきて、まず「黄金」から読み始めたら序盤が肌に合わず中断、「雷鳴の夜」に切り替えたら嵐の山荘テーマというのが好みに合ったので最後まで読んだのだという
そうかそれかよ!典型的な嵐の山荘テーマだもんな
私という人間は、嵐の山荘などのCCものに全く興味が無く、「雷鳴の夜」の舞台設定面には特に魅かれない
狄判事シリーズは前期五部作と後期作では内容にかなり違いがあるのは知られた事だが、やはり本領は前期五部作だろう
初心者の方はぜひ「黄金」「迷路」のどちらかから読み始めることをお薦めする
登場する副官は陶侃(タオガン)一人だけで、おなじみの馬栄も喬泰も洪警部も今回は登場せず
これは水戸黄門に例えると、助さん格さんも由美かおるも登場せず、年老いた風車の矢七だけが同行したようなものだぜ
まあ陶侃だけは必要だったのは、今回は錠前を開ける場面が多かったからな

No.1 6点
(2009/03/11 22:11登録)
1961年の作品ですが、もっと古典的な雰囲気が楽しめました。ひとつには歴史ミステリということもあるでしょうが、謎解き部分に関しては、いわゆる英米の本格派黄金時代以来のフェアプレイ精神より前の時代、ホームズ・シリーズ等を思わせるようなところがあります。ファン・ヒューリック自身が描いた挿絵のうちいくつかには手がかりが隠されているという趣向も、微笑ましい感じです。
ただし、道教の大寺院については全体図はあるのですが、クライマックスの推理と告白(?)の部屋の位置も、その後の天の裁きの場所も、どうにもはっきりしないのが不満です。
ところで、実在の人物だという狄判事はともかくとして、他の登場人物の漢字名は、中国学者でもある作者自身が指定しているのでしょうか。

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