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ミステリの祭典

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空さんの登録情報
平均点:6.12点 書評数:1515件

プロフィール| 書評

No.475 5点 最後の一撃
エラリイ・クイーン
(2011/12/12 22:40登録)
クイーン作家暦30年目にして30冊目の長編で、そのことについては作中の名探偵兼作家のエラリーも疲れたとぼやいています。本作で長編創作を打ち切るつもりであったことは、タイトルも含め、はっきりうかがえます。結局クイーン名義長編が再開されるのは、M・リーが監修(内容確認)しただけの作品を除けば5年後になります。
そんな私小説的なため息も聞かれる本作の事件が起こるのは1929年で、エラリーは長編第1作を発表したばかりという設定です。国名シリーズの設定とは完全に矛盾していますが、作品相互間の矛盾はクイーンにはよくあることで。
作者がこれまで何度も書いてきたミッシング・リンク系プロットです。謎のふくらませ方はさすがですが、複雑化しすぎて、かえって不自然でキレが悪くなっているだけのような気がします。経験を積まなければ見破れない真相とも思えません。それより隠されていた過去の秘密が、いんちきっぽいとは言え意外な感じがしました。


No.474 7点 花園の迷宮
山崎洋子
(2011/12/09 21:23登録)
1986年の江戸川乱歩賞は、昭和7年横浜の遊郭を舞台にして、娼館福寿に売られてきた17歳の少女の視点から描かれた作品です。
中島河太郎氏は選評で「文章にうるおいがない」と書いていますが、個人的には賛成できません。確かに一文一文は短く、また改行も多いのですが、それでも必要なことは充分表現されていると思うからです。謎解きミステリですからして、同じく娼婦の世界を描いているからといって、たとえば宮尾登美子の『寒椿』なんかと比較されるべきではないでしょう。それでも、そのような純文学作品を思い出してしまったほど、当時の遊郭の様子が伝わってくる、小説としてのおもしろさを持った作品です。
謎解き面では、様々な人物を複雑に絡み合わせすぎて、最後の意外性はあるのですが、すっきり納得とまでは行かなかったように思います。手がかりがフェアに提示されていないところもありますが、まあいいでしょう。


No.473 5点 重罪裁判所のメグレ
ジョルジュ・シムノン
(2011/12/07 20:42登録)
前作『メグレの打明け話』では裁判で人を裁くということがテーマにされていましたが、本作でもその問題が再度取り上げられ、裁判になると、事件関係者はもう現実に生きている人間ではなくなり、「非人格化された世界」「不変の典礼による儀式」になってしまうことが述べられています。
と言っても、今回の事件の中心は判決確定後。裁判所のシーンは冒頭に置かれていて、メグレによる事件の最新情報証言により、被告人は結局証拠不十分で無罪になるのです。家に帰った被告人とその妻を、メグレは監視尾行させます。その結果がどうなるかということなのですが、結末はちょっともの足らない感じです。もちろん意外性を求めるような作品ではないわけですが、それでも哀しみがもうちょっと盛り上がるようにできなかったかな、という気がしました。
なお、本作ではメグレも定年が2年後に迫ったという設定ですが、シリーズはまだまだ10年以上続きます。


No.472 6点 時計の中の骸骨
カーター・ディクスン
(2011/12/03 09:54登録)
ずいぶん前に読んだ時には、つまらないという印象だったのですが、それは過去の墜落死事件トリックの凡庸さと、犯行隠蔽工作に対する不満からでした。
ところが今回再読してみると、意外に楽しめました。kanamoriさんも書かれているようにブレイル伯爵夫人とH・M卿との間で繰り広げられるギャグがよく話題にされますが、カーにはもっと悪ふざけ度の高い作品もあります。むしろ旧刑務所内での深夜の肝試しの不気味な雰囲気とか、例によっての無鉄砲なラブロマンスとか、最後の鏡の迷路の緊迫感とか、様々な要素をうまく詰め込んでいて、まとまりよく仕上がっていると思いました。
真犯人の性格設定もなかなかのものですし、この全体構成ならば、墜落死トリックもこの程度にとどめたのがむしろよかったようにさえ思えます。新たに起こる殺人の印象が薄い(すっかり忘れてました)とは言えますし、その動機に異議を唱える人もいるでしょうが。


No.471 7点 烙印
大下宇陀児
(2011/11/30 21:08登録)
宇陀児と書いて「うだる」と読ませるというこの奇妙なペン・ネームの由来は、本作の解説にも載っていませんし、ネットでちょっと調べても出てこないようです。
ともあれ、本短編集には作者の様々なタイプの作品が収められていて楽しめます。
表題作は典型的な倒叙ものです。犯人が自滅していくサスペンスが見所ではありますが、伏線も行き届いていて、犯人の不用意な一言がうまく決まっています。『毒』は幼稚園児から見られた殺人計画の顛末ですし、『灰人』は殺人容疑者の飼い犬の立場に立った部分がかなり多いというように、視点を工夫した作品もあります。『偽悪病患者』は集中唯一のパズラーですが、手紙のやり取りのみという構成。『金色の獏』は楽しい作品ですが、タイプを言えばそれだけでネタバレしてしまいます。戦後の『不思議な母』『蛍』の2作品では、作者の文学的志向がより強く出ているように思いました。


No.470 6点 もっとも危険なゲーム
ギャビン・ライアル
(2011/11/27 11:45登録)
 ライアルの代表作の一つということで、主人公のパイロットの人物像がいいとか、しゃれた文章がうまく決まっているとか、舞台であるフィンランドの情景とか、様々な出来事が最後にすべて結びついてくるところとか、それからもちろんクライマックスの戦いの迫力とか、褒めるに事欠かないのはわかります。
しかし個人的には、読み終わってみると今一つ釈然としないものが残ってしまったのも確かなのです。これは翻訳の問題でしょうが、会話のつながりがよくわからないところがあります。冒頭で主人公が飛行機に乗せる客が結局事件とどう絡んでくるのかというところも、驚かされたのですが、その人物の考え方に共感できないのも、もやもやの理由の一つです。主人公の酒の飲み方も、アル中でもないのになんだかなあという感じ。また、様々な事件の結び付け方に偶然を多用していているのも気になりました。
そうは言っても、最後3割を切ってから俄然盛り上がってくるアクションは、さすがです。


No.469 6点 メグレの打明け話
ジョルジュ・シムノン
(2011/11/24 21:04登録)
訳者あとがきにも書かれていますが、メグレもの長編の中でも珍しくリドル・ストーリー仕立てにした作品です。どちらかというと一方の解釈に傾いているような終り方ではありますが、結局はあいまいにしています。こういうパターンは同じシリーズで何度も繰り返すものではないでしょうが、作家としては1回ぐらいはやってみたいと思うのかもしれません。
裁判によって人を裁く場合に不可避の問題提起は、裁かれる者の視点から書かれた『青の寝室』等にも見られますが、本作はいわば裁きの中間地点にいる警視の立場から捉えられたリドル・ストーリーにすることで、そのテーマを効果的に描けていると思います。
タイトルどおり「打明け話」ということで、過去に手がけて不本意なまま終っていた事件について、メグレが友人の医師に語る構成になっているのも、異色と言えるでしょう。前作『メグレと口の固い証人たち』ではすでに引退していたコメリオ判事が在職中の時期設定です。


No.468 5点 蟲の宴
水上勉
(2011/11/20 09:45登録)
事件に巻き込まれて、その事件の裏を探っていく民間人の視点と、警察による捜査との二つの視点を交互に描いていく手法は、この作者にはよく見られますが、本作はその手法がかなり成功していると思われます。
失業中の主人公が、偶然(?)会った男から紹介された繊維会社の就職面談担当者は、実はその会社の人間ではなく、行方をくらましてしまうという冒頭の謎は、なかなか魅力的です。その会社自体なんだか怪しいというのは、誰でも考えることでしょうが、2つの殺人事件との結びつけ方はいかにも社会派的発想です。
警部補がいろいろ仮説を頭の中で立てているところなど、作者自身どう結末をつけたらいいか、悩んでいた(大雑把な構造は最初から考えていたにしても)のではないかと思えるのですが、最後に逮捕が行われる地方の奇妙な風景もうまく使われていて、味のある作品に仕上がっていると思いました。
タイトルの意味は不明ですけれど。


No.467 6点 夜の熱気の中で
ジョン・ボール
(2011/11/17 20:31登録)
ジョン・ボールは本作が評判になる前にも、何冊か小説を書いていたそうです。しかしどれもミステリではないらしく、翻訳されたものもありません。中に"Judo Boy"なんて作品があるのは、日本通で、本作でもヴァージル・ティッブスに柔道だか合気道だかの技を披露させていた作者らしいところです。
ティッブスはカリフォルニア警察の刑事ですが、初登場の舞台は本拠地ではなく、人種差別のはげしい南部の町です。久々に再読してみると、事件の内容はきれいさっぱり忘れていたのですが、彼の登場の仕方と上記格闘のところは記憶に残っていました。差別テーマについては、今回、差別意識の強い警察署長の視点が中心となっていたことに気づきました。差別する側の意識を問題にしているわけです。
本作については謎解きの要素も兼ね備えているという評価が多いようです。確かにティッブスはホームズ流の細かい観察による推理をしているのですが、最後の犯人指摘の推理は、かなりあいまいです。


No.466 5点 霧の中の虎
マージェリー・アリンガム
(2011/11/14 20:40登録)
5年前に戦死したはずの前夫の最近撮影された写真が何枚も送られてくるという冒頭の謎は、なかなか魅力的です。その理由の説明も、説得力があります。
しかしその部分を除くと、本作には謎解きの要素はほとんどありません。タイトルの虎とは、霧に包まれたロンドンで犯罪を重ねる脱獄囚のことです。捜査側と犯罪者側の視点を交錯させるサスペンス系で、緊迫感はそれほどではありませんが、雰囲気はいいですし、登場人物の性格設定も巧みで、おもしろく読んでいけました。ところが…
最後2章での偶然積み重ねにはがっかりでした。たとえば第16章で部長刑事が眠ってしまうのも偶然ですが、これは経緯に工夫があるので、問題ないと思うのです。しかし、最後にフランスの村に舞台を移す手順は安易なご都合主義にすぎません。悪役は自分の運のよさに驚いていますが、その幸運の女神の正体は作者に他ならないわけですから、ばかばかしくなります。ここでは名探偵のはずのキャンピオンも不穏な状況に気づかない間抜けぶりで、興をそがれます。


No.465 4点 黒魔術の女
森村誠一
(2011/11/11 21:36登録)
森村誠一と黒魔術オカルティズム。これほどミスマッチな取り合わせ実例もめったにないのではないかと思われるほどです。
実際、黒魔術に関する部分は必要なかったのではないかというのが、再読してみての正直な感想でした。アメリカでの黒ミサのシーンにはサスペンスもありましたが、本筋の殺人事件とは無関係なのです。その黒魔術も冒頭から明示されてしまっているので、不気味な雰囲気とかは感じられません。
最初に起こる女性の惨殺事件から、密室殺人、さらにもう一つの殺人と、一連の事件全体の構造は見当がつくにしても、悪くないと思いますし、最後に明かされる悲しい秘密には納得させられます。しかし、描き方には疑問があります。章によって視点が変わったりするのですが、なんだかバラバラな印象を受けるのです。密室殺人の計画も、作中で刑事たちが疑問視していたとおり不自然すぎます。密室トリックは、途中で示されるアイディアの方が真相よりおもしろかったかな。


No.464 6点 逃げるアヒル
ポーラ・ゴズリング
(2011/11/07 21:25登録)
ゴズリングのデビュー作。ハヤカワ文庫のカバー紹介文には「傑作サスペンス」としてありますが、これはどう見てもアクション・スリラーでしょう。謎めいたところも心理的恐怖もありません。広告会社に勤めるヒロインに対する2度目の襲撃は爆弾で派手にやってくれますし、最後の何人もの警官に護衛されている彼女を襲うところなんて、さらに大げさ。ロマンスをからめたところもあわせて、いかにも映画化向きです。解説で褒められているクライマックス部分だけは間抜けな感じがしますが。
ヒロインを護衛する警部補はベトナム戦争で狙撃兵だった経歴の持ち主だということで、スタローン主演の『ランボー』(特に第1作)と重なるところもあります。そんなわけで、悪評ばかりの映画化『コブラ』はもっと原作に忠実な脚本にしていれば、スタローンも役にはまっていたのではと思ってしまいました。2度目の映画化『フェア・ゲーム』は未見ですが、粗筋を読むとやはり原作からはずいぶん離れてしまってますしねえ。


No.463 5点 メグレと口の固い証人たち
ジョルジュ・シムノン
(2011/11/04 20:51登録)
証人たちは、原題を直訳すれば口が堅いというより反抗的ということなのですが、内容的にも本当にそうです。館の中で死体が発見され、初期捜査での聞き込みにあたってさえ、弁護士を呼ぶという家族たち。老女中も妙にメグレに対して攻撃的です。
一方、若い予審判事はやたらに事件捜査の指揮をとりたがって、最後の方では夢にまで見るほどメグレをわずらわせます。前作『メグレと火曜の朝の訪問者』ではメグレにあまりにあっさり事件を片付けられてしまって少々不満だったコメリオ判事も、本作ではもう引退してしまっているという設定です。
本当ならば時代の要求に応じられず、もっと前につぶれていたはずの老舗ビスケット工場をなんとかそれまで存続させていたのは何か、そしてその存続が危機に瀕した時に一家に何が起こったか、というところが本作のテーマです。最後の尋問場面(直接的には予審判事による)ではその家族全員の身勝手さと不安の主題を盛り上げてくれました。


No.462 6点
笠井潔
(2011/11/01 20:46登録)
「ジェルソミーナ」というサブタイトルの付いた『道』というと、もちろんイタリア映画の巨匠フェリーニ監督による1954年の名作のことで、本作を読んでみたのも、このタイトルに惹かれたからなのです。しかし、短編か中編か微妙な長さの4編が収録された本作、表題作の中にジェルソミーナという宝石店が出てくるだけで、フェリーニ監督の哀感たっぷりの上質なセンチメンタリズムとは関係ありませんでした。
いや、全編に漂う暗い雰囲気はなかなかいいのです。『硝子の指輪』『晩年』『銀の海馬』の3編は明らかにロス・マクドナルドからの影響を感じさせる家庭の悲劇を描いた作品です。表題作はそうでもありませんが、やはりロス・マク系のパズラー的な要素がかなりあるハードボイルド。
アメリカ帰りの私立探偵飛鳥井のシリーズで、すべて彼の視点から描かれているのですが、一人称形式とは断定できないところがあります。飛鳥井を示す一人称代名詞(私、俺など)を一切使っていないのです。


No.461 6点 ニコラス・クインの静かな世界
コリン・デクスター
(2011/10/29 10:50登録)
例によって仮説を組み上げては、新たな情報の入手により最初から組み直していくプロットを予想していたら、それは最後の80ページほどに圧縮されてしまっていました。今回は、モース警部はルイス部長刑事相手に思いついた推理をすぐ述べ立てるのではなく、むしろポアロ風に秘密めかしているところさえあります。
デクスターの経歴を見ると、彼自身が熟知していたに違いない試験作成委員会という、関係者が最初から限られたかなりクローズドな世界での殺人事件です。そのことが、普通のフーダニットに近くなった原因なのでしょうか。
最終的な解決のきっかけについては、最初の方に伏線があったので、ここで使ってきたかと納得したのですが、そのひねりのため、かえって某登場人物の最後の方のある行動が不自然になってしまっているのは残念です。また、本作での意味あり気な証人視点シーンの挿入は、前2作ほどには成功していないように思えます。


No.460 7点 黄色いアイリス
アガサ・クリスティー
(2011/10/25 20:54登録)
全9編中ポアロが5編ですが、そのうち3編が、訳者あとがきにも書いてあるように他作品の原型(前後がはっきりしないものもありますが)です。『二度目のゴング』には中編版(別題)がありますし、表題作はノン・シリーズ長編の原型として知られています。『バグダッドの大櫃の謎』は、倍ぐらいの長さにした『スペイン櫃の秘密』というほとんど同じ話があります。いずれにせよ、他の2編も含め、佳作ぞろいという感じ。
パーカー・パインの2編は、宝石盗難事件解明の仕事を依頼され、旅行中に人間関係の悩み相談を受けるという、『パーカー・パイン登場』収録作とは逆パターンになっています。
短い『ミス・マープルの思い出話』は蓋然性のツメが甘いところが気になりました。
ホラー系の『仄暗い鏡の中に』はパズラー作家らしい鏡像利用アイディアや伏線もいいのですが、特に決着のつけ方が気に入りました。


No.459 7点 緑色の犯罪
甲賀三郎
(2011/10/22 12:01登録)
甲賀三郎と言えば、戦前の本格探偵小説擁護者として有名です。それは間違いないのですが、問題は「本格探偵小説」という言葉の意味です。
実際にこの短編集を読んでみると、ルブランを思わせる作品が何編かあるのです。怪盗が出てきたり、スリラー風な展開だったり。実際作者自身、ポー、ドイルを別格とすれば、ルパンものが好きだと語ったこともあるくらいです。ではルパンは「本格」かというと、甲賀三郎の定義ではそうなのです。甲賀流「本格探偵小説」とは、現代の「ミステリ」とほとんど同義と言っていいでしょう。
もう一つ、作者の傾向として挙げられるのが科学利用トリックで、実際『ニッケルの文鎮』『緑色の犯罪』『誰が裁いたか』等で使われています。『妖光殺人事件』になると、実現可能ではあっても、ほとんどSF的と言えるくらい。これが意外に楽しめました。一方、倒叙の『音声フィルム』では当時最新技術のトーキー映画の録音原理を利用していますが、それより少し前に書かれた英国超有名作を考えると、ちょっと遅れているといわざるを得ません。


No.458 6点 メグレと火曜の朝の訪問者
ジョルジュ・シムノン
(2011/10/19 21:23登録)
火曜日の朝メグレを訪ねてきた男は、妻に殺されそうだと告げます。しかしこの訪問者、本当に正常なのか疑問があるのです。
事件が起こってからの捜査の話ではなく、事件が起こる前に関係者たちについて捜査を進めるということで、メグレも慎重な対応を迫られます。最終的にはその男の家で事件が起こることになるのですが、どんな事件になるのかが見どころと言えるでしょう。意外に謎解き的興味がある作品です。で、事件が発生してしまうと、そこから解決まではあっという間。コメリオ判事が事件現場に行っている間にメグレは関係者の尋問を済ませ、逮捕にまで至ってしまいます。
メグレは訪問者の妻に対して不快感を示していますが、個人的にはそれほどいやな人物とも思えません。この人物関係では、結局こうならざるを得なかったかなあと、とりあえず納得できる結末でした。
ミステリと関係ない部分では、メグレ夫人の体調を警視が気に掛けるところがちょっとした味付けになっています。


No.457 6点 血統
ディック・フランシス
(2011/10/16 08:06登録)
本作の主人公は英国諜報部員ということで、フランシスには珍しく、捜査の専門家です。休暇中に上司の友人から依頼された事件とはいえ、巻き込まれ型ではありません。アメリカを舞台に、盗聴器などを駆使して、敵に迫っていきます。
有名な種馬の失踪事件ですが、犯人としては自分の持っているのがその名馬であることが人に知られては困るわけですから、金に換えることができない。となると、動機は何か、というのが第1の謎です。もうひとつの謎は、馬を盗まれた依頼人を殺そうとまでした理由は何か、とういうこと。どちらもきれいに解決はしているのですが、まあたいしたことはありません。
ではアクションの方はというと、偶然を利用してラストで盛り上げてくれてはいますが、今までに読んだフランシスの他の作品と比べると、さらにもう一山あってよさそうなところです。
主人公のキャラクターを始めとした登場人物の描き方はさすがですが、点数は少し低めで。


No.456 8点 待っている
レイモンド・チャンドラー
(2011/10/12 21:21登録)
5編中、マーロウの出てくるのは最初に収められた一番長い『ベイ・シティ・ブルース』だけですが、続く2編も一人称形式の、いかにもハードボイルドらしい作品。『真珠は困りもの』の「私」は私立探偵ではありませんが、恋人に頼まれて探偵仕事をすることになります。この作品は、特に語り口にユーモアが感じられます。『犬が好きだった男』の探偵はカーマディという名前になっていますが、内容は『さらば愛しき人よ』の病院から賭博船にかけたあたりの部分の元ネタです。本作の方が、ストーリーとしては首尾一貫していて、おもしろく仕上がっています。ちなみに大鹿マロイに相当する人物は出てきません。
『ビンゴ教授の嗅ぎ薬』は気楽な作品ですが、こんなに長かったっけ(80ページぐらい)、と思いました。ブリテンの『ジョン・ディクスン・カーを読んだ男』ほどのおとぼけではありませんが、似たような発想がありますね。最後の短い『待っている』は、この中短編集の中でも特に雰囲気のいい作品で、最も気に入っています。チャンドラー自身はこの作品に否定的らしいのですが。

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