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ミステリの祭典

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死人の鏡
ポアロ、中短編集

作家 アガサ・クリスティー
出版日1960年09月
平均点6.14点
書評数7人

No.7 5点 虫暮部
(2023/12/14 13:28登録)
 「厩舎街の殺人」はシンプルにまとめたことが良い効果を発揮していると思う。このタイトルはアンフェアに見せかけてポアロの台詞に注目するとフェア?
 表題作の真相は意味が判らない。計画的犯行なのに、開けたまま撃って、その後で慌てて偽装工作。そもそも、犯意が有ろうと無かろうと、開けたドアは閉めるのが普通だと思う。つまり、偽装自体は面白いが、それが必然性を持つ状況設定が出来ていない。

No.6 7点 レッドキング
(2022/05/02 18:41登録)
アガサ・クリスティー第八短(中)編集。 意外に「拾い物」の傑作揃い。
  「厩舎街の殺人」密室に銃を持った死体 → 「自殺だな」 「いや自殺に見せかけた射殺」「~と見せかけた・・」 ・7点
  「信じがたい盗難」  クリスティーに時々出てくる国際スパイネタの機密書類盗難事件。3点。
  「死人の鏡」 クリスティーには珍しや見取図付き密室殺人。絵に描いた様な本格中編。7点。
  「ロードス島の三角形」 十八番の人間関係トリックと、四角形の二重三角形の鮮やかな要の移転。8点。
で、全体・・平均でなく・・で7点。

No.5 7点 蟷螂の斧
(2022/01/03 18:06登録)
4編とも、よくあるプロットですが、初出は誰なのだろう?著者なのか?気になるところ
①厩舎街の殺人 7点 密室での自殺と思われたが、ピストルを持っていた手の逆側のこめかみに銃痕があった・・・
②謎の盗難事件 6点 居間に置いたばかりの重要な設計図が紛失した。窓から出る人の気配がしたというが、窓の外には足跡はなかった・・・
③死人の鏡 8点 密室でのピストル自殺?。頭蓋骨を通過した銃弾で鏡が割れていた。そうなると体の角度がおかしくないか?・・・長篇ならば、ある人物がレッド・へリングになるのは明らかですね。ラストはちょっぴりホロッとする
④砂にかかれた三角形 8点  二組の夫婦の間に三角関係が、そして殺人事件へ・・・ 著者らしい騙しのテクニック。してやられた(笑)

No.4 6点 クリスティ再読
(2016/12/18 23:50登録)
本質が短編作家ではないクリスティの場合、その短編の存在意義は..ということになると、難しいものがある。短編の作品というのは、じゃあ「長編になれなかったネタ」なのか、というと、長編でトリックもロジックもロクにないとりとめのない真相の作品だってあるわけで、そういうわけでもない...けど、本短編集で「死人の鏡」と「砂にかかれた三角形」を続けて読むと、なんとなくクリスティのモチベーションみたいなものが感じると思う。
「死人の鏡」は、本当に「本格推理小説」を書いてやろうとして書いている作品である。ポアロへの依頼があって、到着を待たずに殺人があり、順に関係者を尋問して、最後に関係者全員を集めて謎解きをする...という「推理小説らしさ」全開の作品である。本作は150ページくらいの長編1/2くらいの作品だから、長編から「本格推理小説の骨格」だけを抽出したようなことになっている..でこれ、よく出来てはいるとは思うけど、小説としては面白くないというか小説としての面白さを狙ってないし、そのうえにクリスティらしさみたいなもの(クリスティ一流のミスディレクションを含め)を感じないんだよね...
クリスティの短編の一覧を見てもパズラーは実は少ないし、長編でも形式的なクラシックな探偵小説らしい探偵小説って実は「ゴルフ場」「オリエント急行」「ABC」あたりが典型で、他の作品はずっと崩れた形式になっているというあたりが、クリスティのそもそもの志向のように感じる。
そう見てみると「砂にかかれた三角形」なんて実にクリスティそのものの作品だ。「ナイルに死す」や「白昼の悪魔」を思わせるリゾートでの、人間関係の錯綜から飛び出た死と、その反転による真相..とクリスティらしさをぎゅっと凝縮したようなミステリ短編である。
初出を見ると「死人の鏡」は 1931年で、「シタフォード」とか「邪悪の家」を書いていた頃、「砂にかかれた」は1936年で「ナイルに死す」の前年、となるとやはり「死人の鏡」は「本格推理小説を書かなきゃ!」と妙に肩に力が入った修行期で、「砂にかかれた」は「いいやもう自分流で」と自分の資質をちゃんと理解した開花期の作品と見ることができると思う。
意外なことにクリスティはヴァン・ダインを形式基準とする古典パズラーの苦手な作家だった、というのが真相であり、だからこそ他の黄金期作家とは一線を画すポピュラリティを備えたように評者は思うのだよ...

No.3 6点 nukkam
(2015/06/22 00:29登録)
(ネタバレなしです) 1937年出版のポアロシリーズの中短編集です(中編3作と短編1作)。中編は3作とも過去に発表された短編をリメイクしたものです。オリジナル短編は純然たる犯人当てミステリーですが、中編化によって登場人物の描写を充実させています。それが最も成功したのが「厩舎街(ミューズ)の殺人」でしょう。「謎の盗難事件」と「死人の鏡」は対照的な作品ですね。前者は中編化する必要性を感じない軽いテーマだし、後者は長編ネタでもおかしくないぐらい複雑なプロットです。唯一の短編「砂にかかれた三角形」は短編らしく小ぢんまりとまとまっていますがポアロの警告はなかなか印象的です。

No.2 6点 あびびび
(2012/01/30 16:34登録)
短編4作になるシリーズ。表題の「死人の鏡」が特に優れているわけではないが、どれも味のある佳作だと思う。

個人的には、「厩舎街の殺人」が読後、波紋のように広がりを見せて印象的だった。いくつもの伏線が解明される様は、自分自身の無能ぶりを改めて思い知るような感じだった。しかし、頭の回転のいい読者はすぐに察知できたと思う。

最後の「砂に書かれた三角形」もクリスティの術中にはまってしまった?これまた自分の視点の甘さを突かれたようなラストだった。

No.1 6点
(2012/01/08 11:34登録)
本サイトに登録されている他の短編集に合わせて、ハヤカワ版を対象にしていますが、実際には収録4編どれも創元版で読んでいます。どちらの版もすべてポアロもの。違いは、ハヤカワ版『砂にかかれた三角形』の代わりに創元版には『負け犬』が入っていることです。
その長めの短編『~三角形』は、某長編の人間関係・動機の元ネタです。その長編とは違い、アイディアをこの動機の意外性だけに絞り、ポアロの人間観察が冴えるきれいにまとまった秀作です。
他の3編はすべて、逆に以前に書かれた短編を引き伸ばした中編です。『厩舎街(ミューズ)の殺人』は、被害者の性別を変え、新たな手がかりを加えているぐらいですが、中編化が最もうまくいっていると思えました。『謎の盗難事件』はもっと短くてもいいでしょう。
表題作はトリックはそのままで、犯人の設定と動機を変更しています。これは短編の方が、冒頭部分と事件依頼内容の点でうまくまとまっている感じで、ひょっとしたらこの中編の方が先に書かれたのかもしれません。

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