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ミステリの祭典

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ゲー・ムーランの踊子/三文酒場
メグレ警視

作家 ジョルジュ・シムノン
出版日1980年01月
平均点6.50点
書評数2人

No.2 6点 クリスティ再読
(2018/01/08 10:25登録)
第一期メグレ物の合本である。例の瀬名氏は「ゲー・ムーラン」をメグレ物への「情熱が醒めつつあるか」と評しているけども、ちょっと読んだ感じは戦後のメグレ物っぽい雰囲気だ。初期の陰鬱なところがあまりなくて、プロット中心の話になっていると感じた。
リエージュの流行らないキャバレー「ゲー・ムーラン」では、二人の不良少年が隠れておいて閉店後にレジ荒らしをしようと、待機していた....彼らのほかには客は外国人旅行者とフランス人らしい恰幅のいい男しかいない。閉店後に彼らはその外国人の死体を見つけた。
という話。メグレはなかなか登場しないが、洞察よりもメグレの仕掛というか狙いが中心。ライト感覚なので、あまり大したことがない。
それよりも「三文酒場」の方がシムノンらしい。「メグレのバカンス」に似た話というか、同じく夏のバカンスなのに、メグレ夫人が待つリゾートに、事件をかぎつけちゃったメグレがなかなか行けない話。セーヌの川岸に週末にパリの商店主たちが家族連れで川遊びを楽しむリゾートがある。彼らはそこで地元の漁師たちが集う「三文酒場」をちょっとした隠れ家のようにして、楽しんでいた....メグレはある死刑囚が漏らした言葉に導かれて、「三文酒場」とこの旦那衆たちと近づきになる。平穏な夏のリゾートでのお楽しみの中で、発砲事件が起きた。単なる事故のようなのに、撃った男は突然逃亡した。その仲間たちもメグレの目の前で、その逃亡を手伝ったりする...なぜだろう?
という話。こりゃホントにシムノンにしか書けないタイプの話だ。旦那衆と付き合うのに、いつものビールじゃなくて、メグレもプチブル趣味なペルノー(アブサンの代用品として飲まれるアニス系の甘いハーブ・リキュール。日本人は結構苦手な味)を飲む....ちょっと浮かれて倦怠の漂う夏の夕暮れ感が本作の本質。メグレ夫人はメグレに早く来るように催促する

杏のジャムを作り始めました。いつになったら、それを食べにいらっしゃるつもり?

No.1 7点
(2012/01/18 22:12登録)
カバー・タイトルは『ゲー・ムーランの踊子 他』となっているのですが、中表紙や奥付では収録2長編が併記されていて、Amazonでもそうなっているので、本サイトへの登録タイトルもそれに従いました。
『ゲー・ムーランの踊子』はシムノンの生地、ベルギーのリエージュが舞台。前半は16歳の不良になりかけた少年の視点が中心です。その間メグレの視点が全く出てこないという点が非常に珍しい作品で、メグレものだと知らずに読めば、半ばでメグレが登場するシーンでは驚かされそうな構成になっています。その後も殺人事件の犯人はなかなかわからない展開で、最初に読んだ時はパズラー的な点がかえって不満だったのですが、読み返してみるとおもしろくできています。
『三文酒場』はそれに比べるとかなり地味な作品です。死刑囚から、「三文酒場」で6年前の殺人事件の犯人と出会ったことを聞いたメグレが、偶然帽子屋でその「三文酒場」という言葉を耳にしたことから、事件は始まります。最後に明かされる犯人の灰色の絶望には、感動させられました。個人的には、一般的評価の高い『~踊子』よりこっちの方が好きですね。

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