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ミステリの祭典

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幽霊塔
A・M・ウィリアムスン「灰色の女」の翻案

作家 黒岩涙香
出版日1977年12月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点
(2011/12/18 13:25登録)
黒岩涙香と云っても、よくわからぬ。ナニ、乱歩の文体を古めかしくしたようなものだろうぐらいに思っていたのだよ。ところが読んでみると、これア驚いたのさ。
といった調子の文章で書かれた、ウィリアムスン『灰色の女』(1898)の翻案です。数年前にやっと忠実な翻訳も出ましたが、涙香は原作出版の翌年にもう連載を開始していたことになります。発表当時は原作としてでたらめな本を挙げていて、そのため乱歩が自分流に翻案する時、原作を参照できなかったとか。
驚いたのは、翻案だというので舞台を日本に移し変えているのだと思っていたら、そうではなかったことです。登場人物は日本人名ですが、地名はイギリスのまま。金もポンド表記ですが、途中で千円とか出てきたりして、統一がとれていないところもあります。さらに登場人物中フランス人医師だけは原書どおりポール・ラペルという名前になっていて、意味が分かりません。
内容的には今となっては、灰色の女の正体を始めとしてありきたりな筋書きですが、涙香の文体のゆえもあって、いかにも乱歩好みな古風な雰囲気が楽しめました。

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