home

ミステリの祭典

login
makomakoさんの登録情報
平均点:6.17点 書評数:894件

プロフィール| 書評

No.774 4点 女王はかえらない
降田天
(2022/05/12 21:36登録)
 このサイトでは比較的高評価のようですが、私にはこの作品は合わなかった。
 第1部での陰湿ないじめや、いやになるほどの登場人物のうじうじが我慢できない。
 第2部になるとどうもおかしな展開。絶対騙そうとしているのがまるっとわかるので、どうも読み心地が悪い。
 第3部、真相では凝ったトリックではあるがこれって小説でしか通用しないでしょ。こういったトリックはほかでも読んだ覚えはありますが、あまり好みではありません。
 作者の作品では「すみれ屋敷」は良かったが、これはちょっといただけませんでした。
 


No.773 6点 QED 神鹿の棺
高田崇史
(2022/04/18 21:24登録)
 このシリーズはまた出たところをみると終わっているのではなく、時々出版されるということなのでしょう。ただし登場人物の年代は必ずしも出版順ではないようですが。
 今回もタタルとナナちゃんと小松崎の三人組の旅行中の事件です。
 お話の始まりはやっぱりタタルの果てしない薀蓄の間に一見無関係のような事件が起きます。まさにこのシリースの定型といってよい構造です。
 お話に出てくる鹿島神宮や香取神宮は行ったことがなくタケイカズチノカミやフツヌシノカミは何とか知っていたのですが、タケハヅチノカミは全く聞いたこともなかったので興味深く読みました。
 それにしても実際に人が死に、それが実は古来からの隠された歴史の結果であり、それを薀蓄から解決するといったお話で出来上がっているQEDシリーズは創作するのが大変なのでしょうね。でも楽しみにしているので途切れ途切れでもよいから次巻の発行を期待しています。


No.772 6点 スワロウテイルの消失点
川瀬七緒
(2022/04/11 20:48登録)
 このシリーズはまず初めに死亡した被害者の法医解剖から始まる。これがいつもグロイのだが、今回はひときわグロイ。さらにその場面で顔にウジをつけたまま顔を洗おうともしないで調査し続ける赤堀はさすがに異常です。
 その後はいつものように聞いたこともない昆虫が出てきてひどい目にあいながら最終的にはほのぼのとした解決となる。
 全く同じパターンなのです。最後が気分がよく終わるのも同様。
 これで何作も続くのはひどく異常なところをもつ赤堀が本質的には好感が持てる女性であることと、ほかの人物も変なやつが多いのに何故か良いところがあるためなのでしょう。
 それにしてもいつも初めがグロイのはあまり好みではないので、全体として好印象な割に私っとしての評価は少し低くなってしまいました。


No.771 6点 ハッピーアワーは終わらない
東川篤哉
(2022/04/02 22:12登録)
 かがやき荘のアラサー女子3人が謎を解いていくという設定は前作と変わりない。
 本作品では3人の個性がはっきり出てきた結果、謎を解くのは小野寺葵だけであとの二人はおはなしをにぎやかにしているだけといった風になってしまっているのはちょっと残念なところです。
 作者特有のユーモアはまあまあといったところでしょう。
 なお本作品は改題されているので現在は「かがやき荘西荻探偵局2」ということとなっています。


No.770 7点 沈黙のパレード
東野圭吾
(2022/03/13 11:59登録)
 初期の東野氏の作品はどれも本当に素晴らしかったのですが、このところ新作はでるが何となく薄利多売で、語り口のうまさで持たせているといった感じがしていました。
 本作品も読み始めるとすぐに犯人がわかりこれを語りのうまさでカバーするものかなあとやや心配気味でしたが、見事に良いほうへ裏切られました。
 凝ったトリックとそれだけで終わらない物語の真相。
 なかなかよかった。


No.769 6点 源平の怨霊 小余綾俊輔の最終講義
高田崇史
(2022/02/28 19:24登録)
なかなかの力作です。
ちょうど大河ドラマで北条義時中心のドラマが始まっているのでタイムリーな話題とも言えます。分量も多い。
鎌倉幕府創立に関する源平合戦から北条氏が天下を取るまでの作者独特の歴史観が述べべられています。
あっというような歴史解釈もありますので歴史ファンにはきっと興味深く読めると思います。
QEDシリーズと違って殺人事件は出てきません。歴史認識を無理やり?殺人事件に結び付ける必要がないので、純粋な歴史推理として楽しめる内容です。
あくまでも論文ではなく小説なのですから、ちょっと無理な解釈も多々出てきますが、それはそれで興味深いとも言えます。
歴史解釈としては全面的に賛成はしかねますが、小説としてはとても興味深く面白かった。


No.768 6点 みんなのふこう
若竹七海
(2022/02/23 17:42登録)
 この小説の主人公のココロちゃんはなかなかすごい。
 とんでもなくノー天気でトラブルメーカーなのに、なぜかぎりぎりで助かり本人は全くそういった意識がない。
 はじめはちょっとこれで大丈夫かと心配になるほどですが、これが何とかなってしまいます。さりげなくたいへんな事件も起きたりしているのだが、やっぱりなんとかかたずいてしまう。
 ちょっとした息抜きとして読むには良い小説でした。あまり長くもないし。


No.767 6点 ガソリン生活
伊坂幸太郎
(2022/01/19 21:13登録)
 奇抜な発想の小説です。
 車が擬人化されたようなSFというよりパロディといった感じのお話でした。
 内容が軽いので読む分にはスラスラ読めてしまうのです。結構いやな話も出てくるのですがね。
 推理小説としても読める内容ではありますが、こういったパロディ型のお話はある程度切れが良くないと途中でつまらなくなってしまう。
 要するに長すぎるのです。
 もうちょっと短いお話だったらもっと面白く読めたように感じました。


No.766 7点 兇人邸の殺人
今村昌弘
(2022/01/07 21:32登録)
 このシリーズも3作目となった。こういった設定だと物語の設定はある程度自由度があるのでどんなお話となるかと期待して読みました。
 確かに面白い内容でしたが、初めのほうは推理小説というよりオカルト小説の傾向が強い。
 中盤以後は密室迷路の推理がいろいろされて、いかにも本格推理小説となってきます。これかといった方法が提示されかなりよさそうだがやっぱり無理といった推理が次々と出てきて読者を混乱させます。こういった推理がめんどくさいと思う方にはこの小説は全く向きません。
 かなり後半になりようやく犯人の正体や怪物の正体がわかるような展開となり、私などは久しぶりに名探偵の推理の前に答えがわかったと喜んだのですが、どっこい作者はそう甘くはなくさらに奇抜などんでん返しとなり、哀れ私の推理は木っ端みじん。
 こういった感覚が味わえるのは作者の本格推理作家としての力なのでしょう。
 ただちょっと作風が二階堂蘭子シリーズのようになってきているのが心配です。蘭子シリーズも初めはとても良かったのですが後期にはスカスカになってしまったので。


No.765 7点 ヨルガオ殺人事件
アンソニー・ホロヴィッツ
(2021/10/17 16:21登録)
 謎解きが二度味わえるとのうたい文句どうり、作中作がほとんど長編推理小説並みのボリュームで入っており、まさに二つの推理小説を複雑に組み合わせながら最終的に完結するといった形式です。
 ほかの評者の方がおっしょっていたようにこの二つのお話は名前も同一性があって、私のように外人の名前を覚えるのが苦手になってきた読者にとってはなかなか大変でした。若い頃なら平気で覚えたのですが(言い訳に近い)老化した頭では名前のページと首っ引きということになります。そんなに頑張って名前比べしていたのですが、実はそれほどお話の肝ではないので読まれる方はご安心を。
 ピュントの出世となった事件のトリックはなんだか手品みたいでちょっといただけませんが、そこを除けば実に緻密で細部まで吟味された素晴らしい推理小説と思います。
 カササギよりはちょっと落ちるかもしれませんが、充分に読みごたえがある推理小説です。


No.764 6点 紅のアンデッド
川瀬七緒
(2021/09/29 07:23登録)
 今回から法医昆虫学者赤堀涼子は警察組織に取り込まれたこととなり、新しくプロファイラーなる女性も登場する。この女性は美人でスタイルがよく赤堀と正反対の性格に設定されているのだが、もうひとつ機能していないように感じました。もっと女の魅力をアピールするように書いてくれたらよかったが、女性の作家さんなのでセクシーさを描写するのは難しいかな。
 相変わらずこのシリーズでは探偵側だけでなく容疑者側にも異常に変わった人間が何人か登場します。よくやるよといった感もありますが、まあこんなこともあるかなあと思わせてしまうところがすごい。


No.763 7点 神のダイスを見上げて
知念実希人
(2021/09/23 20:08登録)
硝子の塔の殺人のようなバリバリ本格推理を読んだ後に本作を読んだせいか、大分SFぽい感じがしましたが、これはこれでなかなか楽しめました。
 ある星が地球へ激突するかもしれないといったパニック状態がベースにあるのですが、意外にパニック感は少ない。作者はむしろこのシチュエーションをベースとしての話をしたたかに作り上げています。
 素晴らしい才能の持ち主なのでしょう。同業者としてこんなことを言うのは何ですが、できれば我々ミステリーファンのために作家の方へ重点を置いてほしいものです。
 私は新本格の作家たちと年代が重なるので、多くの新本格作品をリアルタイムで読んできました。次の作品が出るのを心待ちに待ち続け、発表されると同時に本屋さんへ出向いたものです。
 現在私にとって知念氏は新作が出るのが最も心待ちになる作家さんです。
 次作も期待していますよ。


No.762 5点 炎舞館の殺人
月原渉
(2021/09/16 19:41登録)
 私は本格推理小説が好きです。そしてこのシリーズは本格推理小説であることは間違いないのですが、推理ゲームのためにここまで人間をバラバラにしたりして楽しむといったお話にはちょっとついていけませんでした。
 何でもよいから刺激があって殺しをゲームを楽しむというお話はちょっとね。
 本格物でもあまりにもひどい人間が登場するのは好みではないのです。ことに主人公たちがそんな風だとちょっと引いてしまいます。
 それでも本格物が好きなのでなんだかんだと言ってこのシリーズを出るたびに読んでいたのですが、今回でやめようかな。


No.761 7点 硝子の塔の殺人
知念実希人
(2021/09/12 13:15登録)
 久しぶりに読んだ新本格推理小説でした。こんなお話はなかなかできそうもない。ある意味凄いです。
 これが面白いと感じる人はかなりの推理小説マニア(というよりおたく)でしょう。
 本格物は人間性が欠けるとか真実味がないといった批評をいつも受けるものですが、これはその筆頭に挙げられそうです。
 とんでもないシチュエーション。そして推理小説おたくとしか思えない名探偵を自称するとんでもない女。こいつは人間の心が全くない。ちょっとしゃべるとすぐ脱線して推理小説の世界にはまり込んでしまう。
 こういた会話が理解できるには登場人物があげる推理小説を読んでいないといけません。
 推理小説マニア以外はバカらしくてやってられないと思うに違いありません。
 本サイトは多くが推理小説が好きな方が投稿しておられると思いますので、評価が高いのは当然でしょう。
 私も相当好きな方ですが、それでもちょっとやりすぎだなあと思うところは多々ありました。  
 それにしたも忙しい医師の仕事をこなしながらこんなすごいことをやってのけるとは。同業のものとして尊敬いたします。


 
 
 


No.760 6点 死香探偵 連なる死たちは狂おしく香る
喜多喜久
(2021/09/12 12:56登録)
 死体の香りが食べ物のように感じるといったとんでもない体質の男の子潤平と香りの科学者風間が主人公です。題名の死香探偵というと潤平が探偵ように見えますが、どちらかというと風間が探偵役を務めます。
 第2弾でも同じような傾向のお話が続きます。
 巧みなストーリーで飽きることはない。ただしこんな感じのお話はある意味いくらでも作れそうで作者にとっては楽?そうですが、そのうち飽きてしまいそうではあります。
 潤平君が成長することによりお話の幅ができてくることを期待しましょう。


No.759 6点 潮騒のアニマ
川瀬七緒
(2021/09/02 16:53登録)
 前作の書評でも書きましたが、このシリーズはパターンがはっきりしていて、まずとんでもない状態の遺体が発見される。それに対しての死亡時刻や状況についての検討が味丸が、法医昆虫学者の赤堀と従来の検証による推定時刻や状況が食い違う。いろいろやって最後には意外な犯人が登場。そしてめちゃくちゃな大活劇が展開される。毎回こんなことしていると赤堀さんはそのうち死んでしまうぞと心配していたら、なんと作品の中でも警視庁の岩楯がちゃんと心配してくれていた。
 こういった内容なので安心して読めるともいえるが、容易にマンネリ化してしまうことも否めないでしょう。
 作者の巧みな話の進め方と登場人物の奇抜さにより読んで十分に楽しめますが、先が見えているような気もしないではない。
 次の作品も出ていますが、この先読むかどうかは微妙です。
 でも赤堀さんが気に入っているので、きっと読んでしまいそう。パターンが変わっているとよいな。


No.758 6点 死香探偵 尊き死たちは気高く香る
喜多喜久
(2021/08/29 08:10登録)
 喜多氏の小説は理科系の推理といった様相が強いのですがこれはそちらかというとファンタジー風の設定です。
 勿論探偵としては感情が氷着いたような白衣の科学者で、この人に無理やり操作業務を手伝わさせられるといった設定ですが、主人公はあくまでも死臭を特定の食べ物の匂いと感じてしまうといった特殊能力を持った青年です。
 ちょっとした残り香でもかなり時間が過ぎていても特定の死臭をかぎ分けてしまう。こんな能力があれば犯人を見破ることは簡単にできてしまいそうです。
こういった設定は使い方のよってつまらなくも興味深くもなりそうです。
 作者は上手に使い分けているので興味深いほうが大きく、それなりに楽しく読めました。
 設定が特殊なため新しいお話が比較的簡単に作れそうではあります。すでにシリーズ化されているようなので次作も読んでみましょう。


No.757 6点 メビウスの守護者
川瀬七緒
(2021/08/22 22:13登録)
このシリーズの主人公の赤堀は相当変わったキャラクターでありますが、今回は赤堀に似たような性格を持った人物が登場する。
さらに昔の犯罪の加害者で、本質的に治しようのないような人間も出てきます。
こういった人の被害者となった人や家族は悲惨です。恨むのは当然でしょうが、恨まれた加害者の家族も不幸です。本作品ではこういった解決しがたい重いシチュエーションが下地にあります。本すじはバラバラ事件で腐った死体が発見されるといったお話です。こう書くといかにも重い小説のようですが、実際にはあまり重い雰囲気とはなっておらず、読んで気分が重くなることはありません。
ただちょっとワンパターン気味になってきたかな。


No.756 7点 シンクロニシティ
川瀬七緒
(2021/08/14 19:45登録)
 このシリーズは3作読みましたがいずれもはじめにうじだらけのグロイ描写が出てきて、犯人も被害者もなかなか見つからず、最後は派手の活劇用の場面となり解決するといったパターンのようです。
 法医昆虫学なのですからグロイのはやむを得ないのですが、読むたびに学生時代の法医学口座で死体のスライドを次々に見せられてげんなりした記憶がよみがえります。昆虫はあまり好きでない上に蜘蛛や蛇なども得意でない。
 こういったお話なのに結構面白く読めてしまいました。
 ひどくエキセントリックな赤堀涼子が結構面白い。一緒に活躍する警官たちもなかなか良いですね。さらに小生意気なやつらが痛快にひっくり返されるところも。
 続編が出ているので読み進めましょう。


No.755 7点 本と鍵の季節
米澤穂信
(2021/08/09 09:24登録)
 米澤氏は力のある推理作家であることは間違いないと思いますが、私にとって作品によってかなり好き嫌いがわかれる不思議な方です。
 古典部シリーズなんかは大好き。小市民シリーズは毒が強くてどうも好きになれない。
 この作品は連作で、初めのうちは古典部シリーズの味付けに似通っておりとても気分良く読めましたが、最後に行くに従い作者の毒がじわっと出てきて、ちょっと好みを外れる感じとなりました。
 とは言え、なかなか興味深い内容がしっかりと描かれており、読んで損はない作品であることは間違いないと思います。

894中の書評を表示しています 121 - 140