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ミステリの祭典

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九度目の十八歳を迎えた君と

作家 浅倉秋成
出版日2019年06月
平均点6.22点
書評数9人

No.9 5点 zuso
(2024/01/26 22:12登録)
主人公が、かつて思いを寄せた同級生が、ずっと十八歳を繰り返し続けているという謎をめぐるミステリ。彼女はなぜ十八歳のままなのか、なぜ周囲はおかしいと思わないのか。
時間SF的な解決が与えられるわけではないが、異常な設定を生かして鮮烈な青春小説とほろ苦い大小の小説が同時に進行する。二つが重なり合う結末が美しい。

No.8 5点 まさむね
(2023/08/03 21:07登録)
 私が年をとって、頭も固くなったからなのだと思うのですが、同年齢を繰り返すことは「あり得ること」と周りが違和感を持たないという設定に最後まで馴染めず、ちょっと入り込めなかったですね。それと、青臭さが何とも…。「だから?」みたないな感じも…。色々とストンと胸に落ちてこない部分があるのです。
 すみません、私が年をとってしまったのです。頭の柔軟性もなくなってしまったのです。そのせいです。ちなみに、教頭先生は素敵でした。ロックスター真鍋もいい。

No.7 6点 E-BANKER
(2023/01/28 14:52登録)
作者の作品は初読みとなるが、本作は数えて五作目の長編(とのこと)。
「六人の嘘つきな大学生」など、最近話題作の多い作者だけに期待値は高いのだが・・・
2019年の発表。

~通勤途中の駅で見かけた二和美咲はあの頃の、僕が恋した18歳の姿のままで佇んでいた。それは幻でも他人の空似でもなく、僕が高校を卒業した後も彼女は当時の姿のままずっと高校に通い続けているという。周囲の人々は不思議に感じないようだが、僕だけはいつまでたっても違和感がなくならない。なぜ彼女は18歳のままの姿なのか。その原因は最初の高校生の頃にあるはずだとし、当時の親友や恩師を訪ね、彼女の身に何が起こっているのか調べ始める・・・~

これ・・・新海誠監督に映画化してもらったらどうだろうか?
などということを読後に考えてしまった。「青春ミステリー」などという、オッサンが読むのには甚だ気恥ずかしいジャンルの読み物なのだが、伏線の巧みさや大人(含むオッサン)の回顧願望を満たす作品ということで、是非新海誠さんに一考いただきたい。
以上。

ということで、こういう作品に対してクドクド評価を述べるのはどうかなと思うのですが、まぁ雑感として書くなら・・・
やっぱりどうしても「違和感」は残るなぁー
私の理解力が足りないのか、想像力が乏しいのかもしれないけど、「美咲が18歳のままと言い張って高校生を続けることをどうして周囲のすべてが許したままであるのか」ということが。(姿形も老化or劣化していないということでいいんだよね?)
もちろん、アノ事件があったんです、ということは理解するのだが、常識で凝り固まった大人の私の頭の中では明確な回答がないまま終わった感が強い。
そして、間瀬の年齢の問題。これも100%呑み込めなかった。最後は「年齢なんて気にするな!」っていう主張に消された感があるのだが、これも周囲が特段違和感ないままやり過ごしていることに、どうにも??が消えなかった。

これは気にする方がいけないのか。すべてを呑み込んで、「いいお話だった」と感想を述べた方がきれいに違いない。でもやっぱり、「世間って汚いし、世知辛いぜ!」っていう反発を感じる自分もいる。

No.6 6点 パメル
(2022/12/07 07:32登録)
印刷会社に勤める間瀬はある九月の朝、通勤途中のプラットホームで高校時代の同級生・二和美咲の姿を目撃する。だが、どういうわけか彼女は十八歳のままの姿だった。確認したところ、彼女は間瀬が卒業してからも毎年、高校三年生として学校に通い続けているらしい。なぜ、彼女だけが停まった時間の中に取り残されているのか。間瀬は自分が高校三年生だった時期に何らかの原因があると考え、当時を知る同級生や先輩や教師のもとを訪れ、真実を知ろうとする。
二和ひとりだけが十八歳から成長しないことが、本書の謎ではあるが、二和の状態をおかしい感じているのは間瀬だけで、他の人々はそれを少しも奇妙だと思っていない。どうやら、二和に直接出会うと彼女の年齢の状態に疑問を抱かなくなるらしい。ならば、間瀬だけが二和を見かけても彼女の状態に違和感を抱いてしまったのはなぜなのかというのがメインの謎となる。間瀬が高校時代に彼女に片思いしていたことが、その謎に関係しているのだろうか。
本書では、人が死ぬわけではないし展開もどちらかといえば淡々とした雰囲気が漂う。しかし、クライマックスで当事者から明かされる心情は心に鋭く刺さる。すべてが明らかになった後の物語の意外の着地点は、怒涛のような伏線回収に感嘆させられる。大人になることで失われるものと得られるものは何かという青春小説の王道テーマを踏まえつつ、ミステリファンの琴線に触れる工夫が凝らされている。

No.5 5点 虫暮部
(2022/04/06 15:04登録)
 不思議な設定はあっさり許容出来たし、最後に色々嵌まって行く様は巧みで心地良かったが、何か今一つ乗り切れなかった。歳のせいかな。絶妙と言うか大胆なタイトル。

No.4 7点 makomako
(2021/06/19 07:29登録)
 これはミステリーというよりは青春ものプラスSF?といったお話でした。
 なかなか変わった設定で実際には絶対ありえないお話なのですが、読んでいくとそんなことはあまり気にならなくなります。作者が巧みなのでしょう。
 「教室が、ひとりになるまで」も同様の設定でしたので比較的違和感がなかったのかもしれません。「教室が」よりは悪意が少なく、気持ちよく読めます。
 作者はこの路線で行くのでしょうか。あり得ない設定が本格物はしょせんありえない設定だからありという方とちょっとねえとする方に分かれそうです。
 私はまあありぐらいですか。読んで面白かったです。

No.3 7点 HORNET
(2020/09/26 18:28登録)
 まもなく30歳を迎える会社勤務の男・間瀬は、ある朝駅のプラットフォームの向かいに高校の同級生・二和美咲の姿を見た。信じられないことに、彼女は18歳の姿のままで、高校へと通学する途中だった。学生時代、二和に淡い恋心を抱き、玉砕していた間瀬は、信じられない二和の姿にその真相を探ろうと動き出す。

 謎を解くべく高校時代の同級生の話を聞いて回る間瀬の行動が、いつの間にか「現実に落ち着いた同級生たちの、魂の解放」行脚になっているところが面白い。二和が18歳にとどまり続ける真の理由を探ることが主のミステリになっているのだが、その真相は正直やや陳腐に感じた。しかし、30近い社会人が、甘酸っぱい青春時代を振り返っていくその過程に、多くの読者が共感したり、切なさを感じたりするのではないだろうか。私自身もその一人で、楽しく読み進めることができた。

No.2 7点 sophia
(2020/04/06 17:32登録)
思っていたよりは地味な話でしたが、伏線がこれでもかと散りばめられており、興味を持って読めました。最初にたどり着いた仮説と最終的な真相の間にインターバルが欲しかったです。

No.1 8点 人並由真
(2020/02/11 04:39登録)
(ネタバレなし)
「俺」こと30代に向かう、印刷会社の営業職の青年・間瀬。彼は出社するその日の朝、かつて高校時代に思いを寄せた同学年の美少女・二和(ふたわ)美咲が、今も18歳の女子高校生のままの姿だとに気づく。間瀬は、二和の現在の学友の少女・夏川理奈そして自分のかつての学友や恩師たちの協力を得ながら、時を止めた二和の謎に踏み込んでいくが。

 表紙ジャケットの折り返しに書かれたあらすじ+作品紹介の最後に「ファンタスティックで切ない追憶のミステリ」とのセンテンスがある。
 それゆえスーパーナチュラル要素が何かしらの形で真相にからむのではないかと思う人もいるだろうが、その件については物語の着地点レベルでのネタバレになるので、ここには書かない。
 
 別の書評サイトではかなりのレビュー数を集めており、賛否両論の嵐(いくらか褒める声が多いような気がする)だが、個人的にはすごく良かった。
 ジャック・フィニイ作品のメンタリティだけを抽出して抜き取り、まったく別の形で書いたようなおっさん向けの青春小説。

 ただし、ヒロイン二和のためにあちこち駆け回る主人公の間瀬の奮闘ぶりは読んでいて応援したくなるほどだけど、これが現実の世界のできごとだったら必ずやるよねという種類のとある行動を、まったく試そうともしない。その辺が違和感といえば違和感なんだけど、まあ作劇の流れとして読む方も大目にみてあげたくなるような勢いを備えた作品だとは思う。

 最後の真相に至る大筋も悪くないが、全体的に細部が面白い作品。いわゆる送り手の都合を優先し、無神経にヘイトキャラを登場させるような無様さもない。人間の弱さやもろさをしっかり抑えながらも、それでも登場人物のひとりひとりを見捨てない温かさもある。
 2019年の現在形青春ミステリの優秀作が辻堂ゆめの『卒業タイムリミット』なら、こっちは回顧系青春ミステリのそれだな。
 この作者はまだ、今年の新刊二冊を読んだだけだけど、そのうちに既刊の作品にもトライしてみよう。

※最後に前述の、表紙折り返しのあらすじ紹介の本文で、間瀬の行動の軌跡を「僕」の一人称で記述してあるんだけど、実際の作品の本文は「俺」の一人称なんだよね。
 青春ミステリだから「僕」の方が似合うという編集部の判断だったのかもしれないけれど、キャラクターイメージに関わる感じで相応に違和感。
 あらすじの箇所は「間瀬は~」とかの三人称記述の方が、まだ良かったような気がする。

【2020年2月15日追記】
 あと本作が心地よかったポイントは、モブキャラ的な作中人物のひとりひとりに設定上の名前、無駄な固有名詞を与えず、なるべくそのポジション、立場のみの表意で済ませていること。些末な情報がノイズにならず、全体的に小説がスムーズに読み進められた。まったくもってバランスの問題ではあるけれど、書き手が自分の世界を築くある種の万能感に酔うのか、この辺の感覚が無神経な作家も時々見かけるような気もするので。

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