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ミステリの祭典

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平凡な革命家の食卓
卯月枝衣子警部補/改題『平凡な革命家の死 警部補卯月枝衣子の思惑』

作家 樋口有介
出版日2018年04月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 6点 makomako
(2021/06/12 20:56登録)
この作品は初めのうちはちょっといつもの樋口氏の雰囲気と違うと思っていたら、だんだんいつもの軽妙なそして女性が魅力的な展開となり、途中からは私の好きないつもの調子となったので、愉しく読めました。
作者は警察小説が嫌いとのことですが、これって警察小説だよねと思っているうちに、主人公の卯月はどんどん警察官の枠を飛び出しナンパされるわ、その男が好きになってすぐ寝てしまうわ、となかなか面白いこととなります。
続編も出ているとの事なので読んでみましょう。

No.1 6点 人並由真
(2019/02/02 17:39登録)
(ネタバレなし)
 ある夜、国分寺の住宅街で、市会議員に当選したばかりの62歳の男・増岡誠人が急死した。係り付けの医者・横田は、死因は心不全と診断を下す。だが国分寺署刑事課の美人刑事で29歳の野心家・卯月枝衣子警部補は、この一見事件性のない案件を自分のキャリアアップのため、強力犯の殺人事件にできないかと発想。その観点から執拗に捜査を始める。一方、増岡家の隣りの古アパート「福寿荘」でも雑誌の契約ライターである小清水柚香たち入居者が、かねてより面識のあった隣家への関心を向けて……。

 恥ずかしながら樋口作品は本作が初読み(汗)。まずは敷居の低そうなノンシリーズ作品を…と思って、2018年の新刊で面白そうな設定の本書を手に取ったが、あら……これも、某人気シリーズの番外編というかスピンオフみたいであった。とりあえずココではそれ以上は書かないが。
 
 しかし男性主権社会の警察機構の中で、手柄を立てようといささか強引な手段に出る女性刑事という文芸は、本当に流行だね。2018年の新刊だけでそのネタは東西のミステリで大小3回以上は読んだわ。ただまあ本作の場合、悪徳警官の変種ものまでに振り切るのではなく、主人公がマジメな他の警察官の姿を見て自分の打算や我欲を恥じる慎みをちゃんと知っているあたりは、良くも悪くも口当たりの良いエンターテインメントという感じだったが。
 ミステリとしては結構(中略)な犯人の設定で、手掛かりというか真相に至る布石もそれなりに大きめにあらかじめ張られており、悪くない。これもいかにも早めの深夜番組、23時からの一時間枠の半クールもののテレビドラマとかにできそうな感じだ。
 なお本作の題名は、死亡した増岡が立候補時に「国分寺から革命を」と滑稽なまでに大仰なスローガンを掲げていたことによる。この印象的なタイトルはいいよね。佳作~秀作。

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