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ミステリの祭典

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平均点:6.15点 書評数:55件

プロフィール| 書評

No.35 7点 赤い指
東野圭吾
(2010/09/25 12:18登録)
東野さんのデビュー当時はまだ若々しかった加賀恭一郎も本作では結構年をとり腕のいい刑事になっている、もはやベテラン格といってもいいだろう。
月日の経つのは早いものだ。
さて、この「赤い指」で描かれるテーマは「幼児殺害事件」と「未成年による犯罪」が混ざったものだと思う。さらに、その犯罪の親による隠蔽工作も描かれる。
「幼児殺害事件」、「未成年による犯罪」のいずれもここ何年かで頻発している。「幼児殺害事件」は抵抗できない相手を殺害するという卑劣極まりない行為だし、「未成年による犯罪」は近年の犯罪事件の低年齢化を示している。
毎日のように新聞に少年犯罪の記事が掲載されるのを見ると馬鹿らしくなってくる。
ちなみにこの「赤い指」というタイトルが何を示すのかは読んでから分かるのだが、非常に重要なキーワードとなっている。


No.34 9点 神のロジック 人間のマジック
西澤保彦
(2010/09/25 12:17登録)
元々、タイトルのインパクトにひかれて読んでみただけなのだが、想像以上に面白かった。
主人公の11歳のマモルたち6人が学校に集められて、そこでは"実習"と称された推理ゲームをやらされるという、いきなりものすごい展開。
「驚愕の結末・周到な伏線」と文庫の裏に書かれているが、確かに驚愕の結末である。
しかし、ラストが某作品に酷似している。
これはどちらかがパクったというわけではなく、刊行時期が非常に近いため、偶然のことだろう。
伏線の上手さでは、その某作品が勝っていると思うのだが、とにかく刊行時期が重なってしまった偶然が残念。
でも、俺はこっちのほうが好き。


No.33 7点 使命と魂のリミット
東野圭吾
(2010/09/25 12:16登録)
最初の方は淡々としていてつまらない。
ただ中盤辺りからの盛り上がりは、とても心地よい。
次々と分かってくる人間関係。
最初に出てきた何の関係があるのか分からない人物同士が意外なところで結び付けられる。
そして、新たに起こされる事件も、とても悲しいもの。
最期に切なさの残る作品である。
ちなみに、犯人の犯行も理系の東野さんならではのトリックが今回も使われている。


No.32 6点 ぶぶ漬け伝説の謎
北森鴻
(2010/09/25 12:14登録)
相変わらず料理が美味しそうだ。
でも読む度に言っていては疲れるので、敢えてこれ以上は言わない。
前作に比べると、少し劣る感じがした。
俺はこれをミステリーとしてではなく、京都に関する雑学・知識を得る本だと思って読んでいる。
ぶぶ漬けの話などは、なかなか興味深い。
白味噌は甘い、と言われるが、俺はそんな風に思った事はない。まあ確かに普通の味噌などから比べると、格段に甘いのだろうが。


No.31 6点 福家警部補の挨拶
大倉崇裕
(2010/09/25 12:13登録)
古畑っぽい・・・。
これが第一印象である。
実際には、「刑事コロンボ」好きの著者が、コロンボのような倒叙ミステリをまねて書いたものらしいのだが、残念な事に俺は「刑事コロンボ」シリーズは未読である。
予想外だったのは、福家警部補が女性だったということ。
俺は紳士っぽい男性だと勝手に思い込んでいた。
その点では驚いた。
タイトルに「~挨拶」とあるからには、当然のように続編もあるのだろう、と期待してみる。


No.30 7点 闇の底
薬丸岳
(2010/09/25 12:12登録)
江戸川乱歩受賞後第一作となる本作だが、期待を裏切らない出来だった。
ミステリに社会問題を盛り込み、さらにミステリとしてのうまさもある。この人には将来的にもっとビッグになってもらいたい。
前作の「天使のナイフ」ではテーマが少年犯罪で子供は加害者であったが、本作のテーマは児童への性的な暴行及び殺人、子供たちは被害者である。
最後まで犯人は分からなかった。まさか、のラストだった。重いテーマながらも、面白いのですぐに読める。オススメ。


No.29 5点 東京ダモイ
鏑木蓮
(2010/09/25 12:11登録)
戦後、シベリアで捕虜として過酷な労働を科せられていた日本兵をテーマにしたミステリー。
ダモイというのは帰還という意味である。

まず思ったのは、江戸川乱歩賞のレベルの高さである。中途半端なミステリー作家よりは、作品は十分面白いと思う。
ただ面白いというのと、ミステリーとしての上手さは別である。
まだまだミステリーとしての未熟さは感じた。
しかし要注目である。

足りなかったのは、読者を引き込む力・そして犯人の意外性。後、刑事と槙野の視点が交代で話が進んでいくのは少し面倒くさい。


No.28 5点 晩夏に捧ぐ
大崎梢
(2010/09/25 12:11登録)
書店で起こる事件だから書店ミステリーなのに、出張しちゃっていいのかよ、と思っていたが、
やっぱりこだわっている。
出張先は老舗の書店だった。
事件そのものにも小説の原稿が関わってくる。
なかなかよかったと思う。
ただ、あまりにも簡単に事件を解決しすぎだ。
読んだ限り、事件を解決できるだけの手がかりがそんなあったように思えない。
それなのに事件を解決するなんて、書店員をやめて探偵になったほうがいいとしか思えない。
次回作も執筆中とのこと。
今度は短編集らしいので楽しみ。
このシリーズがずっと続いてくれると嬉しい。


No.27 4点 依頼人の娘
東野圭吾
(2010/09/25 12:11登録)
東野作品にしてはイマイチ。
”ハズレ”といっていいかもしれない。
短編一つ一つの出来が中途半端だった気もする。
探偵倶楽部の人たちも、あまりに冷淡すぎてつまらない。
やっぱり探偵は少し変人であるほうがいいと思う。
あくまでも俺の主観だが。


No.26 7点 セーラー服と機関銃
赤川次郎
(2010/09/25 12:09登録)
爽快、の一言に尽きる。
早くドラマが観たくなってしまった。
俺はプリズンホテルを読んで、ヤクザのイメージを自分の中で多少良くしてしまっていたが、やはりヤクザというのはこわいものだ。
しかし、俺は佐久間という人間は好きだ。
なんともヤクザらしくない……が、やはり目高組の中では、最もドスがきいているというくらいだから、やっぱりヤクザなんだなあ。
星泉は組長の素質があるらしい。
たった一人で他の組にズカズカとあがりこんでは、危ない目にあっている。


No.25 6点 グラスホッパー
伊坂幸太郎
(2010/09/25 12:09登録)
伊坂作品にしてはイマイチ。
しかし小説としては面白い。
どうも俺はこの作品の世界に引き込まれなかった。
作品は三人の人物(鈴木、鯨、蝉)の視点で物語が進むというもの。
非合法な商売をしている会社の社長である寺原の息子が押し屋に押されて車に轢かれてしまうという事件から物語が始まる。
そしてその押し屋を偶然目撃してしまう鈴木。
その時は鯨と蝉が全然違うところにいるのだが、いつもの伊坂作品通りに最後に三人が繋がってしまうんだから爽快だ。
ちなみにいつも思うが、伊坂作品の登場人物はカッコいいことを言う。だから好きだ。


No.24 2点 海のある奈良に死す
有栖川有栖
(2010/09/25 12:08登録)
これは旅情ミステリーっぽくもある。
まず有栖川有栖っぽくない。
トリックだって、「ほんとかよ」と思ってしまうようなものだった。
本格ミステリを目指しているのか、旅情ミステリっぽくしたいのか、どちらにもとれず、なんとも中途半端に思えてしまうミステリ。
第一、40歳半ばの女性が20歳に見えるってどういうことなのか。
40過ぎてもキレイと言われる黒木瞳でも20代には、とてもとても見えないぞ?
設定からして色々と無理がある。
「エクソシスト」の話に関しては、なかなか参考になったし面白かった。


No.23 4点 誰か Somebody
宮部みゆき
(2010/09/25 12:08登録)
「名もなき毒」を読もうと思ったが、この「誰か」の続編であるらしいので、それならこれを読んでからにしよう、ということで、これを読了。
俺は読む前から、「名もなき毒」がかなり売れていることや、宮部みゆきの作品の面白さなどから過剰な期待を抱いていた。
しかし、その過剰な期待のせいで、おだやかに進んでいくこの話に面白さを感じられなかった。
起こった事件といえば「自転車事故」くらい。とはいえ、それで人が死んでいるのだから、「くらい」などというのは不謹慎であるのだが。
俺はもっとミステリとしての面白さを求めていた。
しかしこの話にはミステリとしての面白さは、ほとんどない。おだやかに、特に何の起伏もなくトントンと進んでいく。
ラストが少し衝撃だが、でもそれほど衝撃的でもない。
過剰な期待のあまり、読了後に「うーん」と唸ってしまった。まあ、たまにはこんなものもいいかな、とは思う。
ちなみに装丁は最高です。


No.22 3点 紙魚家崩壊 九つの謎
北村薫
(2010/09/25 12:08登録)
うーん。
やはり初期短編集だからなのか、あまり面白くない。
新作の「新釈おとぎばなし」の出来は良かったけど。
とはいえ、初期短編全てが外れというわけではない。
「サイコロ、コロコロ」は極短いながらも、心に染み渡り、とても印象に残った。
いい感じの余韻も残り、とても良かった。
表題作の「紙魚家崩壊」は最初はイマイチ入り込めなかったが、結果的には結構楽しめた。
特に最後の場面は印象的だ。
「新釈おとぎばなし」は面白い。
なるほど!ミステリ風にね……。と思ってしまった。
ついでに太宰治の「御伽草子」を読みたくなった。
太宰治曰く、カチカチ山は残酷らしいので。
まあ確かにそうだなあ。


No.21 6点 桜宵
北森鴻
(2010/09/25 12:07登録)
ちょっとした日常ミステリを描いた短編が収められた作品集なのだと思う。
だが、俺はそんなことよりも、作中に登場する美味しそうな食事の数々に思わず唾が出てしまいそうだった。
これはミステリというよりも、美味しい食事たちを描いた作品集だと思う、俺は。
もし、ほんとにこの店があったなら、どこであろうと俺は行くだろうと思う。
そして成人したら美味しい酒も飲んでみたい。
作中で美味しい食事を食べている客たちが実に恨めしい。


No.20 9点 葉桜の季節に君を想うということ
歌野晶午
(2010/09/25 12:06登録)
身構えていたのに、やっぱりだまされた。
結末を知り、そう言えばそうだったなあと思う部分も多々。
冒頭部分も読了後に読み返してみれば非常に上手い。
結末を知った上で再読してみても面白そうだ。
他に何も言うことはない。
読んで驚くしかない。
どの書評を見ても「だまされた」と書かれていたので、「早くだまされたい」とワクワクしながら一気に読み進めた。
3分の2くらいまで読むと、変な緊張感が生まれてきた。
こんな気持ちで本を読んだのは初めてかもしれない。
とにかく終盤部分では驚きの連続だ。
叙述トリックとは、まさにこの作品のことである。


No.19 7点 制服捜査
佐々木譲
(2010/09/25 12:05登録)
面白い。予想以上に面白かった。
しかし、この警察小説という分野では横山秀夫という第一人者がいるので、どうしても比べてしまい、そしてやっぱり横山さんの方が上手いなあ……と思ってしまうのである。
と言いながらも、俺の中では横山さんと十分匹敵するほどの上手さだったと思っている。
そして、これはどっちかというと地元密着型の警察ですね。装丁が哀愁を感じさせ何となく好き。
装丁だけ見ると、暗い感じの作品のような気がするが、読んでみると意外にそうでもなくスラスラ読める。


No.18 5点 模倣密室
折原一
(2010/09/25 12:05登録)
「密室もの」ばかりを集めた短編集。
登場する黒星警部は密室マニアで密室殺人事件に遭遇すると、不謹慎にも「ウヒョッ」と声をあげる。
しかし、事件を解決できないのである。
探偵役なのに事件を解決できないとは、ミステリーの中でも珍しい部類に入るだろう。
ストーリーは割りと本格っぽい雰囲気の中で進むが、黒星警部と部下の竹内のやり取りや竹内と虹子のやり取りなどは、結構笑えるもので、俺の中では完全な「新本格」とは言い切れません。
でも現在のミステリー作家の中ではかなり「本格ミステリ」に近い位置にいる作家だと思う。
トリックがイマイチだったので星一つマイナス。「トロイの密室」のトリックは、なかなか面白かったけど。


No.17 6点 失はれる物語
乙一
(2010/09/25 12:04登録)
書き下ろし作品が読みたくて借りて、そのついでに他の短編も再読。
書き下ろし作品は微妙だった。
面白くも面白くなくもない。何ともいえない。
一番の出来だったのは「失はれる物語」。
抜きん出ていい。
俺はあんまり乙一作品と相性が良くないのか、どの作品を読んでもピンとこないのだが、この「失はれる物語」だけは、ものすごく心に響いた。
これだけなら◎だ。


No.16 9点 顔 FACE
横山秀夫
(2010/09/25 12:04登録)
いつもの横山作品とは少し違って、これでは主人公が婦警。まあ警察小説という点では同じだが、いつものオヤジくさいものから、サッパリした婦警が主人公のものとでは大違いである。
でも、サッパリした、とは言いながらも警察内での婦警の扱いはヒドいものであるようだ。
男女差別が未だに警察内で行われているということである。
そしてもうひとつ、似顔絵婦警というのはすごいと思った。わずかな手がかりから犯人そっくりの似顔絵を描き上げるのである。
もはや常人ではない。

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