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ミステリの祭典

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あびびびさんの登録情報
平均点:6.33点 書評数:669件

プロフィール| 書評

No.509 6点 逃げる幻
ヘレン・マクロイ
(2015/11/22 18:18登録)
相変わらずうまいし、重厚な世界観を醸し出している。舞台はスコットランドで、独特の歴史感、自然感がミステリ度を加速させる…。

訳ありの?少年が何度も家出をし、家族を含む捜索隊が彼を追うのだが、ある場所に来ると、神隠しのように消えてしまう。その謎は、「それしかない」と思うほど簡単なトリックだったが、問題は少年そのものだった。まさに、「逃げる幻」だったのである。


No.508 6点 壺中の天国
倉知淳
(2015/11/17 03:02登録)
本格としては微妙な作品だが、フィギア作りのページがサスペンスを盛り上げている。殺意を抱くには伏線が弱いと感じるのは普通の感覚だからで、犯人のような異常者には当然のことなのだろう。

そのあたりの効果を出すために長い作品になったが、短編でこの犯人では困る。色々な要素を鑑みると、すべてが計算されているのだなと思う。


No.507 8点 殺す者と殺される者
ヘレン・マクロイ
(2015/11/13 11:09登録)
題材はよくある話だと思うが、構成力と専門的筆致力が凄い。語り手のハリーを自分に置き換えてみたら、これ以上の恐怖はないくらい寒気を感じた。

名作中の名作だと思う。


No.506 5点 名もなき毒
宮部みゆき
(2015/11/09 16:59登録)
いろいろな毒が盛り込まれていて、興味深い立ち上がりだったが、後半は尻すぼみの感じがした。特に原田と言う女性。どんな形で暴走するのだろう…と期待?したが、誰もが考えそうな結末になった。

その点が物足りなかった。主人公も、もう少し毅然とした方が、話がまとまりやすいような気がした。


No.505 6点 プロフェッショナル
ロバート・B・パーカー
(2015/11/07 12:00登録)
一時、このシリーズを読みすぎて、ワンパターンに飽きが来た。しばらく読んでいなかったが、また読み始めたら、以前より面白く感じた。

探偵スペンサーの魅力が加速して、恋人スーザン、親友ホークとの会話も円熟している。この3人の会話の面白さは、大げさにいえば、一種の麻薬状態になってしまった。アメリカで長きにわたって支持され続けてきたのも、理解できる。


No.504 7点 赤い右手
ジョエル・タウンズリー・ロジャーズ
(2015/11/04 18:18登録)
大きな館や、孤島、あるいは吊橋をなくした陸の孤島と、安定した本格設定を好む人は最後まで錯乱すると思う。何がなんやら~である。実は自分がそうだった。怪しいと思う人物がダミーであることは薄々感じていたが、最後に、畳みかけるような解決編は辻褄はあっているものの、疑心暗鬼で、とても納得の行くものではない(特にひとり?役)。

ただ、自分の好みに合わないから評価を低くするーという作品ではなく、いろいろな方に読んでもらい、その評価を見てみたいと思う一冊だった。


No.503 3点 ぼくらの時代
栗本薫
(2015/10/31 15:54登録)
この世代を知っている者として、読まなければいけないと感じて手にしたが、動機と真相はもうひとつ共感できなかった。半分、クリスティーの「アクロイド殺し」のような手法だが、これも中途半端な感は否めなかった…。

22歳で「ガキ」と、はっきり区別できるのだろうか?


No.502 5点 殺人者と恐喝者
カーター・ディクスン
(2015/10/28 12:19登録)
舞台設定はわくわくするほど楽しく、指摘された謎も興味津津だったが、解決してほしくなかった。犯人についてはまったく問題なしだったが、あのトリックは?

(ネタばれ注)あのドタバタの中で、皆が注意をそらしている時に、あの位置から、あの道具で、うまく凶器をすりかえることができるかどうか?タイミング的にも、操作的にも、90%の確率で失敗すると思う。

だからどうなんだ?と言われればそれまでだが…。表題のミスディレクションについては、別に気にはならなかった。


No.501 7点 灰色の嵐
ロバート・B・パーカー
(2015/10/26 00:29登録)
2010年に亡くなったパーカー。ほとんど読みつくした感はあったが、毎年一冊文庫が出ているらしい?この本も2011年10月発行となっている。

スペンサー・シリーズは「水戸黄門」のようなもので、主役の探偵スペンサーに恋人のスーザン、そして黒人の殺し屋ホーク。そのほか、刑事、FBI捜査官、マフィアのボスと、登場人物はほぼ固定されている。

それだけに作品内容が酷似する場合があるが、ファンにとっては、それがまた魅力の一つである。ただ、今回の事件は垢抜けていた。スペンサーの仇敵と言える稀代の殺し屋グレー・マンが、全ページにわたって不気味さを漂わせていた。

このシリーズの一番の読みどころは、スペンサー、スーザン、ホークの3人の会話だが、訳者の方が本当にうまく言葉を並べていて、ハードボイルドの面白さを満喫させてもらっている。


No.500 7点 スケアクロウ
マイクル・コナリー
(2015/10/26 00:06登録)
人員整理のため二週間後に解雇されることになったロサンゼルス・タイムズの記者マカヴォイは、ロス南部の貧困地区で起こった「ストリッパートランク詰め殺人」で逮捕された少年が冤罪である可能性に気づく。

スクープを予感し取材する彼は、真犯人の「スケアクロウ(案山子)」に逆に発見され、そこから追いつ追われつのスリリングなシーンが始まる。

ジェフリー・ディヴァーの作品とよく似ているが、あちらは動で、こちらは静。大胆な仕掛けはないが、連続殺人犯の本質を繊細に表現して、不気味な犯人像がよく伝わってきた。

この作家も外れはなさそうだ。


No.499 5点 仮借なき明日
佐々木譲
(2015/10/12 00:45登録)
大手農機メーカーの原田亮平はトラブルの渦中にいるのが好きな男…。そのせいで休職中だが、彼の能力を買っている常務から、フィリピン工場の出張を命じられる。なんでも、最近は不良品が続出しており、正常に稼働しているとは思えないらしい。

さっそく現地に飛んでみると、そこは地元権力者、やくざ、警察関係者が絡む不正、わいろの巣窟だった。その巨悪に対して原田は持ち前のフットワークの軽さで、工場を正常化しようとするが…。

ハメットの「血の収穫」そのものである。最初は面白かったが、主人公のスーパーマンぶりが鼻についてきて、結末も露見し、スピードダウンとなってしまった。


No.498 6点 跡形なく沈む
D・M・ディヴァイン
(2015/10/08 23:24登録)
ジェフリー・デーヴァーのように、現代感覚の先端を行く話も好きだが、根本的にはアガサ・クリスティーのような、英国本格ミステリーが好みである。

この作者はそれを満喫させてくれる。この物語の犯人なんて、まさにクリスティそのものではないか。やや、意外性、キレ味には欠けるけど…。


No.497 6点 翳ある墓標
鮎川哲也
(2015/10/08 17:48登録)
「メトロ取材グループ」の杉田は、同僚の高森映子とともに西銀座のキャバレーを取材するが、それに応じてくれた映子の友人のホステスが、翌日、熱海沖合で水死体となって発見された。自殺という警察の判断に納得のいかない映子は独自に調査を開始するが、今度は彼女が何者かに殺害されてしまう―。

映子の遺したダイイング・メッセージを手がかりに、杉田が会社の応援もあり、粘り強く捜査するが、最後の最後で手がかりを掴む。犯人より、幇助した形になった人物の告白が意外だった。


No.496 7点 間違いの悲劇
エラリイ・クイーン
(2015/10/08 11:32登録)
最初の「動機」と、表題作の「間違いの悲劇」の2編はなかなか興味深かった。動機はあの長さでしっかり収まったが、間違いの悲劇は、もう少し色付けして、一冊の名作が出来上がりそうな可能性を秘めた作品だったと思う。

殺人事件からにじみ出る人間の苦悩に、エラリー・クイーンが落胆する様は、読み手にもしっかり伝わってきた。


No.495 6点 枯草の根
陳舜臣
(2015/10/05 15:50登録)
文章に厚みがあるというか、確かな知識で構成されていて、納得させられる部分が多い。犯人、トリックについては、だいたい想像できるものであり、結末は読者の想定内だと思うが、殺意が殺意を呼ぶ展開は昔からのパターンと言える。

神戸が、異文化の街だということを認識させられるくだりも興味深い。


No.494 6点 イン・ザ・ブラッド
ジャック・カーリイ
(2015/09/21 17:42登録)
どんでん返しの作家はプロローグとともに身構えてしまう。その時点ではほとんど材料はないのに、どんでん返しを考えてしまう。その中のひとつがの結末だったが、こういう読み方は良くない(笑)。

ブラザーと称する刑事二人は快活で魅力的で、スピード感あふれる捜査は映像的で楽しい。


No.493 7点 失踪当時の服装は
ヒラリー・ウォー
(2015/09/21 17:04登録)
ミステリのベスト100を見ると、どこにもランクインされている。大学の寮から突然消えた女学生を巡る捜査は、地味だが、そのレベルの内容はあると思う。

警察署長と部下との皮肉の応酬は外国ならではの辛辣さ。最初は耳障り?だったが、進行的になくてはならないやり取りになって行った。全体的にそつなくまとまった作品だと思った。


No.492 5点 小鬼の市
ヘレン・マクロイ
(2015/09/21 15:50登録)
戦時下のスパイ潜入的サスペンス。難解ではないが、共感も薄い。使者の残したメッセージはある程度予測できるものだが、「まあ、あの時代はそういうこともあっただろうな?」という程度で、カタルシスは感じなかった。


No.491 7点 砂の城
鮎川哲也
(2015/09/07 16:57登録)
時刻表のアリバイトリックは、他にも可能性があることを指摘されたみたいだが、殺人犯が使ったルートが分かればそれで良しではないか。

急行いずもが、豊岡、浜坂と、いわゆる山陰本線を通っていたことが興味深い。現在は姫路、上郡から智頭急行線を通って鳥取へ出るのが定番である。さらに、鳥取市の人口が5万人と言うことに驚いた。松江市の方が大都市ぽく書かれていたが、現在ではそうは変わらないだろう。


No.490 7点 夜のオデッセイア
船戸与一
(2015/09/06 15:45登録)
ゴルゴ13の原作も書いていたという作者。政治がらみの冒険、スリラーというイメージだが、こんなくだけた作品もあったのかー。「猛き箱舟」以来、船戸さんの作品は手にしたことがなかったが、ベースがしっかりしているので、安心して読める。

日本で新人王決定戦で敗れたボクサーが、育ててくれたマネージャーとともにアメリカで八百長の負け役の旅。ある試合の八百長を元プロレスラー二人に見破られ、旅の同行を強制される。そこから始まるワゴンカー・オデッセイアの旅は、危険だが大きな夢が広がっていた。

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