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ミステリの祭典

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イニシエーションラブ
タロット・シリーズ

作家 乾くるみ
出版日2004年03月
平均点7.05点
書評数87人

No.67 8点 makomako
(2013/06/21 21:12登録)
 「最後から2行目で本書は全く違った物語に変貌する」と裏書に書いてあるのだが、読んでみるとなかなか素敵な青春小説のよう。なんだか自分の青春時代に重なるようにも思えて実にほほえましい。これがどうなるのだろうと思いつつ後半になると何となく違和感を感じてきた。
 確かに最後でびっくり。こんな風とは思わなかった。はっきり言って良く分からないまま終了。大矢氏の解説に再読のお供にとあったところを読み、再読してみるとこれはなかなかの話なのだ。
 女は怖いねえ。

No.66 7点 ayulifeman
(2013/06/12 21:55登録)
“終盤の衝撃!”が大好きで色々なところでうわさを聞きながらネタバレを恐れて遠巻きに眺めていた作品。
さてどうだっていうと、、、しっかりガツンと食らいました。
ただやはり「衝撃のラスト」が用意されていると思ってしまうので、ハードルが高くはなりますよね。
ページを故意に増やしておくとかどうでしょう?

No.65 6点 simo10
(2013/05/28 23:10登録)
-ネタばれ含みます-

評価が高いのでずっと気になっていた作品ですが、帯表紙にデカデカとネタばれされているのが目に入る度に読む気を失っていました。
しかしあのトリックであることがほぼ確実な状態で読んだらどんなもんだろう?と無理矢理視点を変えて読んで見ました。
結果として「たっく…」のセリフで大体分かりました。ラストのセリフで「ああ、タクヤじゃなかったのか」と思う程度。
しかし読み終わった瞬間は時系列が入れ替わっているものと思いましたが、細かい点を思い返すと同時進行だったこと、さらにそこからある人物の行為が浮き上がってくる構造にも思い至ることができました。いや、非常によく出来た作品だなと思いました。
とはいえあの無神経な帯表紙のため、その面白さの半分も味わえませんでした。(細かい点はネタばれサイトで確認し二度読みしませんでした)
優れた作品だけにデカデカとネタばれをした連中に対してひたすら腹が立つ思いです。(読み終わってから背表紙を読みましたが、これを書いた奴が全ての元凶ですね。)

No.64 5点 okutetsu
(2012/07/28 18:16登録)
そもそも「驚愕のラスト」とか「再読したくなる」みたいな煽り文句の時点でもう叙述トリックってのは見え見えになってしまうのでやめて欲しい。
そこそこは楽しめたけどこの手のものを読み慣れた人にはなんとなくネタがわかってしまうのではないだろうか。
前評判とかまったく知らずに見たら驚愕できただろうなと残念に思う。

No.63 5点 スパイラルライフ
(2012/02/20 12:37登録)
恋愛小説だと思いますが、意外な結末を用意した優れた叙述モノとして評価しました。
面白いですが、殺人もなく不可能犯罪が起こるわけでもなく、狭義?のミステリーを希望される方にはイマイチかも。
一方、叙述モノが好きな方にはオススメ。
しっかり騙された。

No.62 5点 NAP
(2012/02/13 22:41登録)
すごいフワフワと読んでて、最後に「??」ってなりました。
気になってネットで調べたほど。笑
そこまでしなきゃわからない自分。。笑

No.61 6点 kutoro
(2012/01/06 05:31登録)
(少しネタバレ気味)

緻密なトリックの美しさはかなりのものであり、更に恋愛小説という形式を用いている点もこの作品の完成度を上げる一因となっていると思う。
綺麗に嵌った場合トリックが読者に与える衝撃はとてつもなく、文字通り世界の崩壊を味わうであろう。
しかしトリック自体が少々露見する可能性があり、また物語全体に所謂ミステリ的な山場が無く退屈に思う場面が多かったので6点。

No.60 5点 レイ・ブラッドベリへ
(2011/12/23 23:54登録)
【ネタばれしています】

 この作品のキモになる部分を明かしています。未読の方はご注意下さい。
それから作者に、あれこれインネンをつけて絡んでいます。
不快に思うかもしれないので、既読の方もご注意下さい。

1.「解説サイト」へのお礼 

 「ネタバレしています」と大見得を切ったけど、実は読んだ後、どういう話なのかサッパリ分からなかった。その後「解説サイト」というのがあることを知り、それを見て初めてこの作品の仕組みが理解できた。

 解説サイトに感謝します。
ネタバレの部分は、全てこのサイトの記事に負っています。
(【ゴンザの園】というサイトの、「謎解き『イニシエーション・ラブ』」という記事です)
(…なんかこの『ミステリの祭典』で、他のサイトについて触れるのは滑稽ですが…)

2.自力では見破れなかった真相

 最初は「ある女の子の恋愛とその後日談が、side-Aとside-Bの2章で語られている話」だと思った。だが、解説サイトでは時系列を揃えて、この男2人と女1人の話が書かれていた。

 ①side-A・Bの男性は それぞれ別人だった
 ②side-A・Bの話は ほぼ同時進行だった

「ふーん この作品はこんなストーリーだったのか。じゃあ作者はなぜ、このような書き方をしたのだろう…。

…この前読んだ「独裁者の掟」は動機と行為が並行して語られ、それが結末でひとつに結びつくことで感動をより深いものにした。
それに比べ、この作品は、叙述の技法を駆使して緻密な物語を紡いでいても、なんら読後の感動は深まらない。きっと元の話が陳腐なものだからなのだろう。
 そして、ことさら作者から、「同時進行だったのですよ!」と強調されると、この女の子が、とんでもなく悪いことをしたかのように思わされる。
 
 作者はきっとこう言いたいのだろう。
 
「女性が失恋後、新たな男性と交際を始めるのは構わない。
だが同時に二人の男と付き合うのは絶対に許されないぞ!
それって人倫に悖(もと)る鬼畜同然の行為だ!」
(…あ、そこまでは言っていないか)

――尤もこんな風に思うのも、自分が若い頃に持っていた(であろう)「潔癖さ」みたいなものが、歳と共に薄れていったせいかもしれない。

 それにしても本作の仕掛けは、何故こんなにも分かりにくいのだろう?

3.叙述物における「謎」とは?

 通常の推理小説では作者がストーリーを語り、「犯人は誰か」「どのように行ったのか」と問いかける。
読者は作中の探偵と同等の立場で事件の説明を受け、手掛かりを探し、作者の出した謎に挑む。
読者は登場人物と物語世界を共有し、解明すべき謎について共通認識を持っている。
(それゆえ読者は探偵役が解き明かす真相に耳を傾け、それに同意することになる。また探偵役も読者が抱く疑問についてはよく理解しており、時には占星術教室の黒板に、一万円札の図まで書いて説明してくれる)

 一方叙述物では、解明すべき謎が明示されない。
作者が問うのは“ Who?”でも“How?“でもない。
それは「この作品に仕掛けたものを見破ってみろ」という漠然としたものだ。
そのため読者は、解き明かす謎自体を自ら探し出さなくてならない。
 またこの「仕掛け」は作中で語られる事件についてのものではなく、小説そのもの――あるいは小説の構成要素(例えば作中の人物や場所・時代など)に関するものが多い。
作者は、作中の世界の一部について読者が誤認するように導く。
作中での出来事が正しく、読者は何らかの誤認をさせられて物語を読んでいるように導く。
(これが最後の「騙された」という感想につながる)。

叙述物では元々両者の認識がずれたまま開始される。
作者が語る世界、作中の人物には自明である事実が、実は読者だけが誤認している。

 叙述物においては、読者は登場人物と物語世界を共有していない。読者の抱く疑問は、登場人物にとっては謎ではなく自明の事実なのだ。
だから叙述物では、探偵役は読者の抱いている疑問を知りえない。
登場人物にとっては自明なことなので、読者が違和感を抱いていることに気付かない。(気付くことが出来ない)。
従って探偵役は、作者の仕掛けを読者に説明することは出来ない。

……それゆえ読者は、探偵役の次のような指摘は聞くことが出来ない。

「皆さんは彼女のことを『木綿のハンカチーフ』に歌われている女の子みたいだと思っていたでしょう。でも本当は、そうではないのです」…

 よく出来た叙述物においては、種明かしをされた瞬間、「何が起きたのか?」という戸惑いを覚える。
これまでのストーリーが破綻したかのように感じる。
(例えば、死んだはずの男が突然生き返り、大手を振って街中を歩くシーンに遭遇する)。
だが読み直してみると「なるほど、そうだったのか」と頷くことになる。
叙述物では作者の手で仕掛けが明かされ、登場人物と物語世界を共有したときに作品は終幕となる。 

4.叙述物 での解決編とは?

(1)探偵役は謎の解明を出来ない。そもそも読者が謎と思っていることを知りえない。

 叙述物ではそのトリックがシンプルであることから「解決編」――というか「種明かし」のシーンは短いものが多い。作者は物語の最後でサラリと事実を書いて、あとは読者の「気付き」に委ねる。

(2)すべての作者は、だれもが自作解説をしない

 本作の仕掛けは2つある。そのうちの①は本文の「最後の2行」で作者から明かされる。
だが作者は②の事実を明示していない。②については「作中に書かれた事から読者自身が読み取れ」と言っているのだ。

 ……だが、この仕掛けに気付く読者は、先ずいないだろう。
仕掛けが二段構えになっている場合、普通の読者の心理として、仕掛けの一方に気付いた時点で解読を中止してしまう。その先にもうひとつの仕掛けがあるとは思わない。だから②の仕掛けがあることを知らないまま、この本を読了してしまう人も多いに違いない。

――だが、これは作者にとって不本意なことだろう。せっかく苦労して仕込んだ仕掛けに、気付いてもらえないのだから。

作者は、もし出来ることなら『日本昔話』を語るように「その娘っこは二股をかけていたのだとさ。めでたし、めでたし」と「本当の」種明かしをして楽になりたいのだろうが、そうはいかない。
それでは『ロートレック荘』の作者が散々叩かれたように、読者が許してくれないだろう。

(3)本作での気付かれない真相――解説サイトの意義

 そこで登場人物でもなく作者でもない「第三者」による種明かしが必要となる。
ここでいう第三者とは「作者の仕掛けに気付いた読者」であり、彼らが発信する解説サイトだ。この場合、彼らは本来はタブーである「ネタバレ」というよりも、作品本来の狙いを伝えてくれる「解説」の役割を果たす。

 この解説サイトは、物分りの悪い読者である自分にとって大いに有用だった。だが作者にとっても大いに幸運だったに違いない……少なくとも改めて自作解説をしないで済んだのだから(笑)

 それから……。読者が自力で解明できないような仕掛けを含んだ作品は、このような解説サイトの記事とセットにし、共著の合本として出版して欲しい。そのとき、解説の部分は是非とも「袋綴じ」にして貰いたいものだ(笑)。

5.終わりに

 それにしても、この②の仕掛けには全く気付かなかった。
 
 ぼくは平安遷都や鎌倉幕府が滅びた年代は、まだ辛うじて覚えている。だが、この作品に出てくる出来事やテレビ番組が「何年」のものだったかは、スッカリ忘れてしまっている。(いや、そんなことは覚えようともしなかった)。
 だけど「いつの事だったのか」を知らないと謎を解くことが出来ないのなら、これからは各時代の出来事の年代を記した参考資料を手元に置くことが必要になるだろう。

 推理小説には「時刻表もの」というジャンルがあるそうだ。今ではもう廃れてしまったらしいが…。だが、もしかしたらこの作者は、「歴史年表もの」という新しい分野を開拓したのかもしれない。

(時事風俗を中心に据えた作品は、時の経過と共に瞬く間に風化する。作者もそんなことは百も承知なのだろう。
 だが敢えてそれを行ったのは、作者の「潔さ」なのかもしれない。
…と書いてみたけど、果たしてフォローになっているのかどうか…)

No.59 9点 いいちこ
(2011/12/23 20:07登録)
途中からもやもやとした違和感を感じつつ読了し、作者の恐るべき意図が分かって愕然とした。
チープな恋愛小説であるのは仕方ない、それさえも作者の狙いだから。
また伏線の数々が厳しく同時代性を要求するため、経年劣化していく弱点は如何ともし難い。
ただそれでも、フェアに張られた伏線の数々、明かされた真相の衝撃度からして傑作の評価が相応しく、必読の作品であることに変わりはない

No.58 9点 蟷螂の斧
(2011/08/18 18:07登録)
青春のほろ苦さがなんともいえない。最初、A面B面(目次)を理解しないで読んだので、?マークでしたが、理解できると満足できます。古い小説(ミステリーには分類されない)で「青春の蹉跌」(石川達三氏)を思い出しました。これも「オチ」があります。

No.57 8点 take5
(2011/08/10 23:38登録)
文字を追う「読書」という行為の可能性を感じさせてくれる良作だと思います。
映像には表せない文学の良さがたくさんありますが(有名なのは「人が一人もいない荒野」という文章は「人」が使えるが、映像では絶対に「人」では表せないっていうのがありますが)、この作品もミステリーのカテゴリーを越えて、文章の挑戦として読まれるべきだと思います。

No.56 8点 つよ
(2011/05/01 21:57登録)
定番。

No.55 9点 haruka
(2011/04/25 00:43登録)
多くのヒントが用意されていたにもかかわらず、見事に騙された。と同時に、ありふれた物語だからこそ、女性の怖さ、狡猾さが際立って、身につまされる思いだった。

No.54 7点 まめ
(2011/04/22 22:50登録)
ネタバレ注意!

とある雑誌の小欄で「衝撃のラスト!」みたいな書評があったので読んでみた。どんな事件が起こるのかとドキドキしながら読み進んでも、いっこうに「事件」が起らない。ただひたすら若い男女が出会って、恋に落ちて、ナニをして…という恋愛小説?!でも単行本の裏表紙にミステリーと書いてあるのを信じて、最後まで読みたら…すでに「事件」は起きてたのね。そうかぁ、静岡県ってそんなに鈴木さんが多いのかぁ。後半は確かに、「えっ?そうだっけ?」と前の既読ページを見返すことが多く気にはなってたが、その結末は予想できなかった。ただ、驚きとかはなくて、「あぁ、やっぱりそうだったのかぁ」って感じ。負け惜しみじゃないけど、結末読んでマユが二股かけてたのはなんとか自力で気付いたよ!
あとは、国電やラジカセなど懐かしいキーワードが出てきて少しノスタルジックな気分になれた。
確かにもう一度読むとまた違う面白さがあるのかなぁと思ったけど、何だか面倒だなと思っていたら親切丁寧な解説サイトを見つけてそれを読んで済ませた。タイムテーブルがあってスッキリ!
あと、マユの便秘は本当に便秘で妊娠は辰也と別れるためのこれまた嘘だったと解釈。それでこそ誰も死なない「ミステリ」なんじゃない?!

No.53 5点 3880403
(2011/04/03 23:39登録)
まぁ騙された…人は見かけ?によらない。

No.52 5点 HORNET
(2011/03/02 16:15登録)
 「この恋愛話から何か事件が起こっていくのだろう」と純粋にミステリ的な展開がどこかで起きるのだとばかり思い,そうした先入観のもと「事件が起きるのはいつか?いつか?・・・まだか?・・・おかしいな・・・」と訝りながら最後まで読んでしまったので,まったく途中で気付きませんでした(情けない)。なので,一瞬意味が分からず,分かった後も,それまでそういう目で読んでいないので,あとで読み返してみてやっと仕掛けのうまさに気付いた次第です。しかしやはり,作中で謎が謎としてちゃんと提示され(たとえこうした事件を題材としたものでなくても),読み進めながら解いていくスタイルのほうが私は好きなので,ミステリとしての評価はイマイチです。
 ただ,「イニシエーション・ラヴ」という恋愛概念や,登場人物の心情描写,さらに80年代をリアルに描いた作風など,昔を懐かしく思い出してしまい,それはそれで楽しめました。

No.51 5点 ムラ
(2010/12/21 20:19登録)
(ネタバレあり)
騙されたー、という感じはしませんでしたね。結構予想できますし。このトリックならもうちょっと上手くやれたんじゃないかとう感想(さすがに恋愛小説or青春小説として出されたら見破れる気はしないが、驚愕のオチ~とか後ろに書かれちゃったらねぇ)
テンポもどんどん先が気になると行った感じではなく、ちょっとだれてしまう。
ただ、違和感の出し方は良かったです。AパートとBパートで明らかに男の性格が違ったので。いくら成長したとしても、あの変わりようは無いでしょうし。
プロットの進め方も卑怯な感じはなかったです。二度読み返すと、なるほど、という部分も多々です。

No.50 8点 Q-1
(2010/10/17 03:41登録)
最初は何だこの甘ったるい恋愛小説はと感じていました。
どこがミステリーなんだと。
しかし最後にひっくり返されました。途中で投げ出さなくてよかったです。
物語自体は全く違和感がなく平凡です。(この手のものはそれが凄いことなのですが)

No.49 9点 frontsan
(2010/10/15 23:18登録)
トリックも秀逸だったが、作品の時代背景が自分と重なっているので当時のことを懐かしみながら読めた。

No.48 6点 Take
(2010/08/30 00:04登録)
確かに楽しめた。ただ、叙述物は自分には合わないことがよくわかった。
騙されたけどそれがなにか?という気持ちになってしまう・・・。

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