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ミステリの祭典

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写楽殺人事件
浮世絵三部作

作家 高橋克彦
出版日1983年09月
平均点6.85点
書評数13人

No.13 9点 斎藤警部
(2022/01/07 06:35登録)
“…は泣き出しそうに顔をゆがめながら、オレを殴った――自分でも分かったのだ。”

誰か/何かを操ろうとするなら、支点をどこに置くかが肝要だ。

「必らずそのうちに完全な証拠がでてきます。浮世絵をやめるなんて言わんで、これからも研究を続けてって下さいよ」 

大きく分けて二種の謎にまたがる二人の探偵役、プラスアルファ。 片方の謎の多重解決?披瀝もさることながら、結局はそれすら軽く跳び越える、もう片方、奥深い犯罪の謎にキリキリ舞いス。

”君は何ヵ月も前から、●●グループにマークされていたのだ。”

過去の謎と現在の謎、もう少し巧みにカットバック進行させたらよいのに、、過去案件から現在案件に戻るまでのブランクが長過ぎて、現在側の人物たちがアイデンティティ・クライシスだよー、などとも思ったんスがね。。そいった構成の所為もあり、途中、もしやコレはちょいとアレな作品なのかな.. と疑いもしましたが、終わってみれば、あれーー、過去の謎(写楽の正体)と現在の謎(浮世絵界連続殺人?+αβγ)を、ここまで有機的に、更には巨大な欺瞞をこっそりと抱えながら、結合させていたとはな!!

<オレ達は浮世絵から見れば、通りすがりの人間でしかないんですよ――放っておいても、浮世絵は自分だけの力で遺り続けていったのに・・・・・・>

古美術●●のトリックと、それを暴露に掛かるロジック(どちらも快く複雑系!)のぶつかり合いは、憶測を遥かに超えて熱かった。。。心理の動きを安直なコマにし過ぎのきらいはあるものの、そんなんもうええよ。。 また特筆すべきは、予想外に独特な主人公の立ち位置!! (セーーーフ ってが。。 泣笑) 物語前半では思いも寄らなかった、事件の地層の迫り来る分厚さ。叙述トリックとさえ呼べそうな、ある事案の巧みな隠匿。腹にずいずい来る、めくるめく真相深掘り、時としてふわりと飛翔、この容赦ない連打のスリリングなこと!! やべー、もう鼻血出るじゃよーー……

”研究者として、どちらが正しい立場なのか、オレには分からなくなってしまった。 (中略) だが、これは世の中に問うべき問題なのだ。このまま闇から闇へ葬り去ってしまうには、あまりにも大きな魅力を (中略)  もはや、これは◯◯◯◯の構想を超えて一人立ちしている。”

犯罪動機発生の機微。利用する側、される側の鮮やかな逆転悲劇。いやいや、現在だけでなく過去謎のほうも相当にやばい。で、あの現在事件の真相がどうなのか、最後にひっくり返されたらどうしよう。。。。 いっやー、あらためて、この人間心理を大胆に操作した大トリックは相当な凄み。そこへ補完の中小トリックも含め、とーーにかくビッチリ詰まってますよ、参ったスよ。 そう言ゃア細かい物理トリックにも予想外の細やかな伏線があったな。。 とにかくこの最終章の熱さったらない! 連城のハマった短篇を読んでる如し。

<死んでしまえば、もう責任はないって言うんですか。それでいいって言うんですか――>

しかし、専門からほんの少し?ズレるだけで、いくら舞い上がっているとは言え、そんな事にも気付かないものか。。と違和感無くはない箇所があるが、、 そこはやっぱ瑕疵かな。。 愚かな工夫が命取りの案件、ここはガツンと来ますね。

”オレさえ黙っていればこれは世界にも通用する。すべてはオレにかかっているのだ。”

最後の最後に明かされた”罠”の置き場所も凄げえや。 □□□に爆弾を仕掛けるなんて蛮行は断じて許され得ないが、本作の場合の比喩的なそれは。。。。 そして見る間に爽やかな総締めへと、されど熱く繋げるエピローグまで文句無し!

No.12 8点 モグラの対義語はモゲラ
(2021/09/18 06:52登録)
読んだのは文庫本版。
前半の写楽や日本画に関する蘊蓄の数々、また作中内で提示された写楽の正体は非常に興味深かった。全く歴史に詳しくない私でも楽しめたのは、非常に丁寧に作中で個々の人物が説明されるだけでなく、田沼や松平と言った江戸期のビッグネームがその中で言及されたからもあろう。芸術や日本史に暗くても楽しめる歴史ミステリというのは珍しい、と勝手に思っている。
そしてその歴史ミステリで終わらず、陰謀渦巻く日本画界隈を舞台とした殺人劇も面白かった。特に犯人らの目的の変遷の仕方が好きだ。ちゃんと前半部分で語られた蘊蓄が論理的に絡んでいて良い。「罠」の張り方も面白かった。てっきり最後まで絵の蘊蓄で攻めると思っていたから、予想を外してしまった。
最後まで飽きず色々な楽しみ方が出来たので、個人的にはこの作品はポイント高い。

No.11 4点 nukkam
(2016/04/17 21:24登録)
(ネタバレなしです) 高橋克彦(1947年生まれ)はホラー小説、歴史小説、SF伝奇小説など幅広い作風で有名ですが、1983年発表のデビュー作である本書は歴史本格派推理小説で浮世絵三部作の1作目です。前半は主人公である津田良平が東洲斎写楽の素性を調べていく歴史の謎解き、後半は現代で起きた殺人事件の謎解きです。歴史にも美術にも疎い私は「写楽別人説」の章あたりまでは何とか付いていけましたけど、そこから先はもういけません。頭の中が真っ白状態のままで機械的にページめくりです(ひどいな)。殺人事件の謎解きも推理要素は少ないし、犯人当てとして楽しくありませんでした。しかし事件の背後にある事情や犯人の計画は複雑で緻密に考えられており、仮に推理の手掛かりを文中に忍ばせてあったとしても読者が完全に見抜くのは難しいでしょう。歴史の謎と現代の謎の関連づけがしっかりしているのも本書の良い一面だと思います。

No.10 7点 TON2
(2012/11/04 20:34登録)
写楽が誰かという問題を、田沼意次から松平定信への政治権力のシフトに伴う版元や浮世絵師の変化に視点を置いて推理しています。写楽=秋田蘭画絵師説。この部分の謎解きには、知的好奇心がくすぐられます。また、ニセ写楽を作ることにより、大きな利益を生むことができる浮世絵の世界も面白いと思いました。
殺人のトリックは、ありきたりで付け足し程度の味わいです。

No.9 7点 蟷螂の斧
(2012/06/24 19:14登録)
(再読)発売当時、ミステリーというより写楽は誰なのかの方に興味があり購読したものです。今回再読で、あらためて力作であるという思いを強くしました。ミステリー(事件)より写楽の謎を楽しむ作品だと思います。

No.8 8点
(2012/06/14 11:24登録)
写楽は誰なのか、という歴史ミステリー部分はもちろんですが、現代の事件の謎とその背景にも驚かされました。超力作です。最後の最後まで楽しめました。
細かなトリックや仕掛けなんかは、この際どうでもいいという感じでしょうか。大きな仕掛け、暗躍する登場人物、なんとも凄まじいです。浮世絵という芸術がテーマで、しかもアカデミックな色彩があるのに、まるでスパイ映画(かなり地味ですが)を観ているようです。

そして、もうひとつの凄さは、物語の構成にあります。歴史ミステリー編、現代の事件編、謎解明編と、場面におうじてテンポ、雰囲気をがらりと変えながら、きれいに3部にまとめています。すばらしいテクニックです。
後半の現代の事件編に入ってから流れが加速しますが、それまでの長くて読むのに時間を要した歴史ミステリー編が当然ながらきわめて重要なのです。この分量を少なくしたり、この新説を学説らしからぬ内容にすれば、この推理小説は成り立たなくなります。それぐらいこの歴史ミステリー編には重みがあります。いや、それぐらい重くしないといけなかったのです。

歴史ミステリー編に出てくる新説は高橋克彦氏が提唱したと信じる読者がいるらしい、と解説で中島河太郎が述べていましたが、たしかになんとなく説得力があります。私の場合はそれどころか、歴史ミステリー編を読みながら、新説候補が挙げられるたびに、そうだったのかと肯いていたほどです(笑)。

No.7 6点 E-BANKER
(2012/03/10 00:40登録)
1983年発表の第29回江戸川乱歩賞受賞作で作者処女長編。
謎の浮世絵師「写楽」を題材とした歴史ミステリー。

~謎の絵師といわれた東洲斎写楽は、いったい何者だったのか。後世の美術史家はこの謎に没頭する。大学助手の津田もふとしたことからヒントを得て、写楽の正体に肉薄する。そして或る結論に辿り着くのだが、現実の世界では彼の周辺に連続殺人が起きていた。2つの謎に津田が挑む~

「写楽」の正体をめぐる謎解きは面白かった。
多くの専門家や著名人がその正体について様々な説を発表しているという事実をもってしても、いかにそれが魅力的な謎なのかが分かるというものでしょう。
「秋田蘭画」についての薀蓄は全く知らなかったので非常に新鮮。平賀源内ってそんな人物だったんだねぇ・・・
(エレキテルを発明した科学者くらいに思ってた)

もともと歴史ミステリーは好きなジャンルなだけに、その点では非常に満足。
ただ、他の方の書評どおり、現実の殺人事件の方はそれほどアピールできるところはない。
アリバイトリックはトリックと呼べないほどのレベルだし、終盤に判明する二重構造もやや唐突な気はした。
この2つを両立させるのはなかなか難しいのだろう。

まぁ、「歴史ミステリー」部分だけでも読む価値はあるでしょう。
(島田荘司の「写楽」は未読だが・・・どうなのかな?)

No.6 7点 こう
(2012/02/12 01:43登録)
 作者のデビュー作であるだけでなく最高傑作だと思います。
現実の殺人事件は面白みがありませんでしたが写楽の謎に迫るストーリーは楽しめました。若いカップルに捜索させ会話仕立てにしているのも素人である読者にわかりやすく読ませる助けになっていると思います。写楽の正体の検討の所で過去の仮説の中で「石沢英太郎」が学者に混じって挙げられているのは少し驚きました。「北斎~」以降も読みましたがこの作品が最も楽しめました。
 この作品では伺えませんがシリーズが進行する中でこの作品の主人公たちのその後の扱いは読んでいて当時非常に不満だった覚えがあります。

No.5 7点 ボンボン
(2011/12/26 18:47登録)
写楽が何者かという謎と現実の殺人事件の二つの謎解きが絡み合う構成。写楽の正体を明かしていく調査過程が面白い。え、まだあるの?と思うほど次々と積み上げられる論拠や隙間のない理論構成には、驚かされた。「写楽が誰か」だけではなく、当時の政治経済の状況まで編みこまれていて、がっちり納得させられる。一方で、殺人事件のほうは、事件が起こっている間は充分引き込まれるけれど、最後の解明が、告白や報告の会話で長々と説明されるだけで、ちょっと残念だった。

No.4 7点 kanamori
(2010/08/01 16:51登録)
「東西ミステリーベスト100」国内編の66位は、”写楽の謎”を主題とした歴史ミステリ。
現在の殺人事件にはあまり惹きこまれなかったが、写楽の正体を特定するプロセスの緻密さ・作者の縦横無尽の博識には舌を巻く。最終的に提示される写楽の正体に関しては、ミステリ作家というより写楽研究学者の論考のような感じを受け、その点は最近読んだ島田荘司の作品と比べ、奇想天外さに欠けるように思います。

No.3 6点 測量ボ-イ
(2009/05/04 13:07登録)
歴史もの好きなので、小説として読めば面白かったし
勉強にもなったが、ミステリとして読むと平凡。という
訳でこの評価です。

No.2 7点 touko
(2009/01/30 00:48登録)
トンでも本路線に走る前の高橋克彦の傑作。
今思うと、和風ダヴィンチコードの趣があるかも? あんなにサスペンフルじゃないけど、万人向けのリーダービリティやワクワク感は負けてません。日本人ならこっちでしょう!?

No.1 6点 makomako
(2008/10/15 21:53登録)
高橋克彦がこのサイトになかったのは不思議なことだ。確かに伝奇ものや歴史ものが多いが、ミステリーだってちゃんと書いているのだ。この写楽殺人事件は29回江戸川乱歩賞受賞作品で出版されてすぐ読んだときは、浮世絵のことをまったく知らなかったのでその面白さや奥の深さを知らされ感心したものだ。写楽が誰であるかの新説であるかと思って読んでいくと事件と結びついてきて実に面白かった。今回再読してみると推理の過程がちょっとくどい感じがしてはじめ読んだときほどの感銘はなかった。でもこの作品は高橋克彦のその後発表された多様な作品を読むきっかけとなった私のとっては思いで深いものです。美術に関心があるならお勧めです。

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