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ミステリの祭典

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スリーピング・マーダー
ミス・マープル

作家 アガサ・クリスティー
出版日1977年01月
平均点5.82点
書評数11人

No.11 6点 nukkam
(2021/09/11 17:06登録)
(ネタバレなしです) クリスティー(1890-1976)がエルキュール・ポアロシリーズの最終作「カーテン」(1975年)と共に死後発表用として書いたミス・マープルシリーズ第12作の本格派推理小説で、「カーテン」は結果的に生前発表になりましたが本書は予定通り作者の死後の1976年に遺作として出版されました。執筆されたのは1940年代らしく、作中でシリーズ第3作の「動く指」(1943年)が回想されているのでその後に着手されたのでしょう。新婚のグエンダが新居を購入し、その家で不思議な幻覚を何度も体験しながら失われた幼少時代の記憶をよみがえらせますが、その中にはホールで倒れている女性の絞殺死体の記憶もあったというプロットです。クリスティーが後期によく取り組んでいた回想の殺人で、死体なき殺人でもあります。色々な意味で異色で派手だった「カーテン」と違い、本書は手探り感の強い調査が延々と続いて実に地味だし、シリーズ最終作らしい演出もありませんがミスリードの巧妙さはクリスティーらしいです。これでもう新作が発表されないのは寂しい限りですが学生時代の私がミステリー好き読者になったきっかけをつくった作家の1人であり、いくら感謝しても足りません。

No.10 5点 レッドキング
(2020/09/08 21:35登録)
理想の新居を求めた新婚の女が心惹かれた家は、はるか幼少期に家族と暮らしたことのある海沿いの屋敷だった。追想の断片に閃くおぞましい殺人の情景。行方不明になったはずの継母は、実は殺されていたのか。BGMなしホラー映画にしたら、かなり怖いサスペンスミステリになりそう。筆跡鑑定のロジックからのフーダニットもストンと決まり・・あとは、あの「猿の前肢」ネタが、も少しホラーなオチだったらなおよく。

No.9 4点 ◇・・
(2020/05/04 18:10登録)
事件の起きた系列を順序を入れ替えて物語を説明している。時計の描写だとか、時間が後からわかるような手掛かりがない。これでは読者には推理しようがない。これは、アンフェアです。
犯人は、周りに誰もいないにもかかわらず、殺人現場に初めてきた振りをする。そんなことはあり得ない。

No.8 5点 ボナンザ
(2019/09/18 23:35登録)
マープル最後の事件。ポアロのように特別な終わり方ではないが、ある意味マープルらしいのではないか。
記憶の中の殺人ということで展開にご都合主義はあるものの、最後までしっかり読ませるのは流石。

No.7 5点 HORNET
(2016/11/26 19:51登録)
 記憶の奥にかすかに残る殺人。魅入られるように決めた新居が、実は自分が幼いころに住んだ家で、それがきっかけでその記憶が蘇る。殺人は本当にあったのか、であれば犯人は誰なのか―。
 ミステリである以上、実際に殺人があったことは間違いない(まぁ、そうではなかったという解決もあり得ないことはないが、そんなことなくてよかった。これはネタバレにはならんでしょう)
 過去に起こったことを暴くスト―リ―なので、周囲に真犯人はおり、素知らぬ顔で主人公に付き合っている人間の中にそれがいるのかと思うと…というスリルはあった。
 ミステリとしては標準レベル、だと思う。翻訳ものとしては読み易いのは相変わらず。

No.6 6点 クリスティ再読
(2016/03/22 22:30登録)
本作は日本の読者としてみるとちょっと不利な作品だよ。以前のミステリ文庫版の真鍋博の表紙が手がかりになるけども、「まっかな小さいヒナゲシと矢車菊がかわるがわる並んでいる模様の...(壁紙)」というのは、いわゆるモリス・ペーパーなので、だからこそモダンなマスタード色の壁に豊満な植物文様が隠れていたのが、子供時代が不意打ちするようにショックを与える効果を的確に描写していることになるのだけど、これをイメージできないと面白さは半減してしまうなぁ。
同様に、ウェブスターの「マルフィ公爵夫人」が重要なキーになるわけだが、シェイクスピアならともかくもその後続世代のスプラッターな大虐殺芝居なので日本で知られている、とはいかないよ(評者は昔ジョン・フォードの「あわれ彼女は娼婦」は翻訳を読んだことがあるが...アマゾンで検索すると同じシリーズで出てたウェブスターもトンでもないプレミアがついてるね)。まあ大南北の「四谷怪談」とか「五大力」とかあんな芝居のイメージするといいんじゃないかな。(あと猿の前肢がぴくっと動くのはホラー古典のジェイコブズ「猿の手」、雰囲気は「レベッカ」かな)
というわけで、本作はポイントとなるあたりが全部イギリスのサブカル関連になるので、楽しむのがちょっと難しいと思う。まあクリスティとしてはツカミはオッケーで前半すごい面白いんだが、中盤からは並くらいの出来だし、ミス・マープルも中期仕様でネメシスみたいな苛烈さはないし...で普通の作品ということになる。本作は「夢の家」モチーフの系列に入るけど取っ掛かりだけなので、後年の「終りなき夜に生れつく」とか「親指のうずき」(サナトリウムのシーンがそのまま転用)みたいに後を引いてる感じはない。ま、評者的にはマープル最後の事件はやっぱり「復讐の女神」だ。

さてこれで評者はクリスティ全ミステリ長編の本サイトでの評を達成した。1年ちょっとで全ミステリ長編を再読ベース(初読は数冊)で読み直して書いたのだから、基準はほぼ揃っていると思う。お楽しみのベストは1.終りなき夜に生れつく 2.ねじれた家 3.カーテン 4.葬儀を終えて 5.そして誰もいなくなった 6.ポケットにライ麦を 7.ナイルに死す 8.五匹の子豚 9.三幕の殺人 10.復讐の女神 ワーストは 1.フランクフルトへの乗客 2.愛国殺人 3.ビッグ4 4.複数の時計 5.秘密機関 6.運命の裏木戸 7.七つの時計 8.ヒッコリーロードの殺人 9.パディントン発4時50分 10.死への旅 になる。ベストは趣味が出てるけど、ワーストは順当だと思う。

No.5 5点 了然和尚
(2016/02/02 11:20登録)
マープルもの完読です。
皆さんご指摘の通り、比較する作品は「カーテン」ではなく「五匹の子豚」ということになりそうですね。「五匹の子豚」は容疑者があらかじめ示されており、聞き取りと手記から論理で追及していく、本格の良さはあるが、読み物として退屈。本作は、冒険譚的で、意外な犯人を見つけるまで読み物として楽しいが、本格の手がかりは甘く、論拠は怪しい。クリスティーが推理小説の両極を同時期に仕上げたのはさすがです。
本作では、特に手がかりも無く、容疑者に挙がっていないという理由で犯人の予想ができてしまうのですが、重要な証言である目撃された車について「しゃれたという形容詞は彼にとっては無意味だったのよ」とか、それはないでしょう。

No.4 7点 あびびび
(2012/04/06 16:00登録)
新婚の夫は仕事で海外に。その妻が家さがしに出掛けるが、なかなか夫婦の条件に叶う家がない。あきらめかけたその時、一目見ただけで気に入った家は、幼少のころ自殺?した父と一緒に住んだ家だった…。

謎が謎を呼ぶ設定はクリスティならではのものと思う。途中で犯人が分かってしまったが、18年前の殺人事件なので証拠がなく、ミス・マープルも最後は危険な手段を選ぶ。

No.3 7点
(2010/10/17 12:11登録)
同じように死後発表を予定して書かれた作品でも、いかにもという感じの『カーテン』と異なり、最後だからといって他のミス・マープルものと特に異なる点はありません。
ほぼ同時期に書かれたらしい『五匹の子豚』と対比してみた方がいいでしょう。どちらも十数年昔の殺人を調査する話ですが、ポアロの登場する『五匹の子豚』がひたすら地味な作品でそこがよかったのに対して、こちらは怪談めいた冒頭、新たに起こる殺人など変化をつけてストーリーの盛り上げにも気を配っています。特に最後の「猿の前肢」の意味がわかるところは、サスペンス映画をも髣髴とさせて印象的。ただ結末の意外性という点では、本作はちょっとパターン化にはまりすぎているかなとも思えます。
作者の長編の中でミス・マープルものの割合が増えるのは、本作執筆後であることを考えると、シリーズの中ではむしろ初期に属すると位置づけられそうです。

No.2 5点 江守森江
(2010/09/08 02:41登録)
現在、CS&BS放送ではクリスティ生誕120周年月間として大々的に特集されている。
AXNミステリーでは土曜日にミス・マープル(ジョーン・ヒクソン、山岡久乃吹替版)一括放送が組まれている。
先週土曜日にドラマを観て既視感があったが、以前にNHKで放送されたアニメ版で観ていた(一緒に観た息子に教えられた)
図書館の返却日(読書時間が無く読まずに返却の大技をカマシタ)なので、おさらいしたがドラマ通りで新鮮味がなかった(何故だかクリスティは貸出されず棚に8割方揃っている)
しかし、ミステリー・ドラマ(CSI&NCIS中心に週70本)に追い立てられた忙しない現状ではオサライは非常に楽チンでもある。

No.1 9点 シュウ
(2008/11/19 00:29登録)
クリスティの遺作でありミス・マープル最後の事件ということですが、書かれた年代はクリスティが亡くなるかなり前だというもあってか
あまり最後の事件という感じはしませんでした。記憶の中の殺人ものということで18年前の殺人事件が中心となるのですが、
登場人物が魅力的だしテンポ良く話が進むので全く退屈せずに最後までわくわくしながら読むことが出来ました。
全盛期のミステリの女王が書いたというだけあって読み応え十分な作品でした。

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