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ミステリの祭典

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シタフォードの秘密
別題『山荘の秘密』『ハーゼルムアの殺人』『シタフォードの謎』ほか

作家 アガサ・クリスティー
出版日1952年01月
平均点5.38点
書評数13人

No.13 5点 ALFA
(2023/01/17 15:45登録)
冒頭から降霊会という魅力的なモチーフが出てくる。
しかしクリスティはオカルト方向には向かわないことがわかっているから、その時点で犯人の見当がついてしまってガッカリ。

トリックは日本の風土からすればショボイが英国ではレアだというならまずまず。
でもクリスティ作品に求めたいのは濃密な人間関係の描写やその反転なので、これはものたりない作品だった。
八つ当たり気味に言うと何だか昭和日本のいわゆる「本格」を読んだ気持ち。

でも若い探偵役二人の活躍はトミーとタペンスみたいで楽しい。

No.12 7点 レッドキング
(2021/02/11 06:07登録)
雪の山荘での招霊会遊びと同時刻の遠隔地での殺人。遠隔超能力殺人トリックがGood。ただ、この手のトリックとしては飛鳥部勝則「レオナルドの沈黙」の方が面白い・・とか書こうとして、ふと気付いたら早川文庫の解説、その飛鳥部勝則が書いてて驚いた。そっか!まんまこれに影響受けてあのトリック拵えたのか。

坂口安吾がこれ称賛したのは、あのトリックではなく、ヒロインの最後の男の選択・・「できすぎ君」でなく「のび太」を選ぶ「シズカちゃん」・・が、安吾の心の琴線に触れたからだと睨んでる。
「あの人は一人で立派にやっていける人」「でも、もう一人の方は、あたしが世話焼かなければ、どうなるか分からない・・」無頼派にとって、こんな涙が出そうなセリフはなかろう。

No.11 6点 人並由真
(2020/12/24 05:13登録)
(ネタバレなし)
 1930年代初頭のイギリス。ダートムアのシタフォード山荘では、借主のウィレット夫人とその娘ヴァイオレットが、近所の人々とともに降霊会を催していた。その最中に、一同のよく知る人物が殺される? とお告げがある。そして実際に殺人が発生。エクセター地方の敏腕刑事ナラコット警部はこの殺人事件の捜査に当たり、やがて一人の容疑者が逮捕されるが。

 1931年の英国作品。クリスティーの第11番目の長編。
 メイントリックは少年時代から、どっかの推理クイズ本で図入りで教えられていた。それで興味が薄れたこともあって読むのが今まで後回しになったが、まあそれでも直接、犯人を知っているわけでもないし……と思って、なんとなく読んでみたくなり、このたび手にとってみる。
(なお、その少年時に購入したはずの本が見つからず、しかたなくweb経由で創元文庫版『シタフォードの謎』の安い古書を買い直した。)

 しかしながらメイントリックを前もって知っていてもそれに関連する描写がなかなか登場せず、おかげでかなりギリギリまで犯人がわからない。これはある意味でウレシイ誤算ではあったが、一方で真犯人が明かされると事前の叙述の一部が、どうもアンフェアに思える(前述のように、今回は創元の鮎川信夫訳で読んだが)。あまり詳しくは書けないが、こちらも一応は疑念を浮かべたので、なんか裏切られた気分。
 
 プロ探偵のナラコット警部、さらに登場するアマチュア探偵……と複数の探偵役の競演は楽しく、最終的に誰が推理のトリをとるのかという興味はなかなか面白かった。中盤から登場するメインヒロインのエミリーは、その劇中ポジションをふくめてクリスティの某・先行作の<彼女>を思い出した。なんとなくこちら(『シタフォード』のエミリー)の方が先行のプロトタイプで、もうひとつのくだんの作品のヒロインの方が完成形だと思っていたが、実際には逆である。ちょっと意外。

 謎解きミステリとしての興味や結構の部分だけ絞り込めば、もっともっとコンデンスに作り直せる感触はある。
 しかし一方で、全編にクリスティーらしいギミックが満ちており、そういう意味では結構、満腹感のある作品。
 
 ちなみにナラコット警部って、この作品だけの単発キャラかと思っていたら、数年前に発掘された<クリスティー執筆のオリジナルラジオミステリドラマ>の中でも再登場していたと聞く。
 登場作品は少ないとはいえ、めでたくクリスティーのレギュラー探偵のひとりに公然と昇格したわけで。
 ……で現在の「ミステリマガジン」はこの数年、何回もクリスティー特集をやりながら、いつになったらそんなおいしいネタのラジオドラマを訳載するのだ? 編集部にやる気がないのがよくわかる。

No.10 6点 蟷螂の斧
(2020/02/26 19:50登録)
本作「吹雪の山荘」を坂口安吾氏がべた褒め。~このトリックほど平凡なものはない。現実に最もありうることで、奇も変もないのであるが、読者は見逃してしまうのである。露出しているトリックに気付くことができないのである。このトリックの在り方は推理作家が最大のお手本とすべきものである。~なるほど、その通り。主人公エミリーの男殺しの言動に気を取られ、動機のミスリードにすっかり騙されてしまった(笑)。

No.9 5点 虫暮部
(2020/02/25 10:54登録)
 冒頭の降霊会は魅力的な謎だが、作中では殆どフィーチュアされていないので、もしやシレッと“本物の心霊現象”として片付けるのか、と心配(期待?)してしまった。
 まぁ冷静に見れば犯人が最も怪しい行動を取っている。しかし心情の描写に少々アンフェアな記述があるような。だから見破れなかったのだ、と強弁はしないけど。
 トリックは良いし、動機の設定も上手い。高評価出来ないのは、中盤の地道な調査行が退屈だから。それにその成果のうち犯人究明に直接役立った手掛かりって最後のアレだけ……?

No.8 5点 文生
(2017/11/07 17:07登録)
江戸川乱歩の「帽子収集狂事件」推しと並んで不可解な坂口安吾絶賛の本作。トリックの新境地と言っているがどこにそんな要素があるのかと首をかしげてしまう。クリスティの作品としてはせいぜい中の下ぐらいの作品ではないだろうか。

No.7 6点 クリスティ再読
(2016/03/13 15:05登録)
批評的には問題の本作。評者今まで本作は駄作、という意見だったが、今回読み直して意見を改めることにする。
本作は元気女子大活躍の話だけど、ガッチガチの本格ミステリ。クリスティは他にこういう冒険スパイ色のない元気ヒロインの作品がないしねぇ。で本作の一番イイところ、というのは冬の荒涼としたダートムア(あのバスカヴィルの舞台でもある)に行ってみたくなるあたり。クリスティの出身地トーケイと同じ州だね。でヒロインのエミリーは「茶色の服の男」のアンをさらにシタタカにした感じの子で、若干ワルいのが魅力。オトコドモを手玉に取りまくる大活躍。なのでダレずに楽しく読める。でしかも、冒頭の降霊会から殺人発見への流れは大衆小説としてのツカミも十分のうえ、遠隔殺人みたいな趣向がステキ。また動機もナイスなもので、「続・幻影城」を読むと乱歩が本作のいろいろな要素を買ってることを確認できるよ。

(ここから盛大にバレます。どうしようか悩んだけど、アイマイにぼかして書いてもネタは推測つきそうだから、隠さないことにします。)

要するに本作否定派はスキーという移動手段がバレバレじゃん、といいたいわけだけど、どうやらイギリスというのは北国のクセに、全然雪の降らない国らしい。実は日本が世界一の豪雪国になるわけで、スキーの普及度で見ると意外なことに極端な差があるようだ(ここらの事情を題材にした映画「エディ・ザ・イーグル」がじきに公開されるようだね。イギリスのオリンピックでのスキー系全競技獲得通算メダル数はゼロだ..)。だからクリスティが本作を書いた時点でのイギリスのジョーシキに照らせば、しっかりトリックとして成立していた、と考えていいようだ。本作のトリックが日本でバレやすいのは単に「不運」とか「アタりが悪いよね」という程度の問題のように評者は思う。「物理トリックの推測がつきやすいから駄作」と主観的に短絡的な評価を下すのはためらわれるなぁ。
評者はその名の通り「再読」ベースでミステリ評を書く立場だから、「わかっててダマされる」ようなミステリの楽しみ方を皆さんにオススメしたいとつねづね思っている。本作は少し良い評価にしたい。

No.6 6点 斎藤警部
(2016/01/05 11:21登録)
探偵役は二組三人(ポアロ等有名人は不在)。登場人物表に書ききれない程のキャラクター群が雪深い静寂の郷に賑わいの空気を震わす。寒空の冬を舞台とした古典ミステリは素敵にcozyな味わい。真相糾明に驚きも無し。それでいい。呆気ない尻すぼみは飽くまで謎解きの領域だけ。
しかし、真犯人当てられなかった。。登場人物表瞬殺でまず間違いないと思ったんだがなぁ。。まさかの動機まで一瞬で思い当たったのに。。’意外な結末’にも騙された感まるで無し。それでいい(w)。 '負け手’を数えた馬鹿話のくだり、これはただの小休止だろうか? まさかね。。と思えば直後、二手の探偵役が合流、かと思いきややはり三人二組のまま、一人がサイドを乗り換えただけ.. これはいったい結末の何に繋がる動きなの? と気を引くプロットのギミックも効いた。
真犯人弾劾とはまた別の、意外な結末もある。真犯人ならぬ真探偵が最後は物語の襞に埋れた形になるを潔しとするも粋だ。予想外の二人による最後の会話がキラキラ素敵で、雪焼けしそうだったぜ。。

裕次郎のデビュー年、昭和三十一年初版の創元社世界推理小説全集(箱カバー)で読みました。巻末解説、中島河太郎先生の”そして誰もいなくなった”に託す推理小説の未来への期待が眩しかった。まるでロックンロールの未来をスプリングスティーンに見たジョン・ランドーの時めきの様な、されど胸中に鎮めた深い興奮が垣間見えて、泣けました。

No.5 6点 nukkam
(2014/12/01 00:20登録)
(ネタバレなしです) 1931年発表のシリーズ探偵の登場しない本格派推理小説です。使われているトリックが有名ですが、使われ方があまりにもシンプルなので現代ミステリーの複雑なトリックに馴染んだ読者にはさすがに古臭く感じるかもしれません。もっともトリックだけに依存した作品でもないので今でもそれなりの面白さはあります。登場人物が多いのですが後年の名作「ナイルに死す」(1937年)などに比べると人物描写がまだ不十分なのは仕方ないとはいえ惜しまれます。

No.4 4点 あびびび
(2014/09/02 15:24登録)
プロローグから犯人の予測がつく流れ。いつもはいい意味で期待が裏切られ、さすがクリスティ!となるのだが、これはアリバイトリックも正常。この作品は短編で良かったのでは…と感じた。

No.3 5点 りゅう
(2010/04/20 19:07登録)
 雪に埋もれた山荘で霊媒占いが行われ、殺人のお告げがあった。お告げどおりに、山荘から2時間離れた場所でほぼ同時刻に人が殺された...。
 まるで、ディクスン・カーのような書き出しだが、クリスティーはカーと違って、不可能犯罪であることを強調しなかった。
 本作品については、江戸川乱歩だけではなく、坂口安吾も「推理小説論」の中で「意表をつくトリックによって、軽妙、抜群の発明品であり、推理小説のトリックに新天地をひらいたもの」として絶賛している。発表当時は斬新なトリックだったのであろうが、今となっては陳腐としか言いようがないのは残念。クリスティーの作品らしく、犯行の動機には工夫がある。

No.2 5点
(2009/03/16 22:06登録)
降霊会で霊が告げたメッセージは、老大佐の死だったという発端は、どう見ても疑わしい感じがします。さて、これはやはり大佐の死を知っていた者のしわざか、それともひょっとして単なるミスリーディングか…
読んでいて、現場付近の位置関係がはっきりしないため、トリックが明らかになってもすっきりとはいきませんでした。またそのトリックも、「それ」が可能なら普通そうするんじゃないの、と思えてしまいます。ポアロもミス・マープルも登場しない作品だからということもあるでしょうが、手がかりが直接的すぎる上フェアな描写と言えない点も気になりました。乱歩などは高く評価していたそうですが、それほどの作品とは思えません。
ただ、直接の動機はなかなか意外でしたし、さらにその直接の動機があるにしても殺人までを決意させた理由も、納得のいくものでした。

No.1 4点 ElderMizuho
(2008/02/05 01:36登録)
なにやらいろいろ伏線は多いのですが、残念ながら全く生かされていません。
しょぼいアリバイトリック単発で終了。これまでの話は何だったの?

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