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36230. 太宰治原案「走れメロちゃん」アニメ版!高・ノユウチャン訳(オソマツ書房、2124年)   弾十六  2024/04/08 03:39  [雑談/足跡]  


格調高いこの欄には相応しくないので、バッサリ。誰か(バカボンボン?)の圧力ではありません。

興味のある方は「danjuurock 十六 × 二十」をご覧ください!

オソマツ書房が、特に気にいってます。今更ジュブナイル(南先生には及びもつかないレベル…jなんてねえ。やっぱり頭の出来が悪いんだね!


36229. 作品の追加   人並由真  2024/04/07 21:46  [新作作家/作品の追加]  


事典・ガイドの「現代の探偵・スパイ名鑑 海外ミステリーがもっとおもしろくなる」を追加しました。


36228. 作品の追加   人並由真  2024/04/07 21:38  [新作作家/作品の追加]  


マイクル・アレグレットの「欲望の石」を追加しました。


36227. 作家の追加   人並由真  2024/04/07 21:37  [新作作家/作品の追加]  


「マイクル・アレグレット」を追加しました。


36226. RE:『メグレとマジェスティック・ホテルの地階』の翻訳について   tider-tiger  2024/04/07 19:27  [雑談/足跡]  


>>『メグレとマジェスティック・ホテルの地階』コメントの中で、翻訳文に疑問を呈されていた点について、原書と比較してみましたので、報告させていただきます。

コメントは拝見しておりましたが、せめて該当部分を読み直したうえで返信させていただきたく思い、参上が遅くなってしまいました。申し訳ありません。軽佻浮薄な独り言にこれほどのことをして頂けて、ただただ感激であります。
弾十六さんにも貴重なコメントを頂きまして、とても感謝しております。

> 20頁『だが、(メグレは)すぐに肩をすくめて、パイプをくわえなおすと、ゆっくりとふかした。朝いちばんの煙草だ。最高の味がする』後の二文、シムノンが書いたとは思えない。

空さんの訳文、弾さんの解釈について
自分は高野訳の問題の二文は実は原文には存在していないのではないかと憶測しておりました。それは勇み足だったようです。
自分はパイプはやりませんが、煙草は吸いますので朝一番の煙草が最高だという感覚は理解できます。大袈裟にいえば喫煙には儀式的な側面もあるのです。味だけではなく、喫煙時の一連の動作はこれに含まれます。そして、パイプの場合にはパイプを選ぶ、噛む、撫でるといった動作もそこに含まれるのではないかと推測します。
高野さんは喫煙はなさらないのではないかと想像いたします。煙草の愉しみ=味 という固定観念があって、原文にはない『味』を入れてしまったのかなと。
お二人のお考えについてはどちらが正解なのか断定はできませんが、誤訳であるかどうかはともかくとして、これら二つの文章をシムノンが書いたとは思えないという感想に変わりはありません。これが空さんの試訳であったならば、スッと呑み込めたように思います。

> 22頁『支配人の顔は暗かった。殺人事件が起きるなんて、ホテルにとっては大迷惑だ』二つ目の文章、小学生が読んでいるんじゃないんだからこんなわかりきったことの説明はいらない。

>試訳:支配人は沈鬱そうだった。メグレのような男に向かって、それはホテルにとっては災難であり、もし騒ぎを鎮める唯一の可能性があるとしたら云々などと言ってみても無駄なことなのだ。

文章の格調がぜんぜん違います。空さんは『災難』と訳されていますが、かりにここが『大迷惑』であったとしても、これなら幼稚には感じません。
複雑な文章を分けてしまうと、切り方によってはものすごく幼稚に感じさせてしまいます。
※平易な文章は幼稚だと言っているのではありません。


>試訳:ラミュエルは階段に突進し、ホールの携帯品預り所に飛び込んで、受付係が運転手と話しているのを見つけた。「支配人は来てるか?」
 受付係は顎で、執務室の方を示した。

>この部分を、高野優氏はどう訳しているか。

>ドンジュは言われたとおり、誰も来ないか、その場で見張っていた。その間にラミュエルは階段を駆けあがってフロントに行き、泊まり客の運転手と話していたフロントマンに支配人の居場所を尋ねた。支配人は執務室にいるということだった。

これは……。余計な説明はいりませんし、それ以上に問題だと思うのは直接話法を間接話法に変換、動作を間接話法へ変換、とくに後者はいけません。
これらは人物描写であり、またホテルの雰囲気を伝えるものでもありますが、印象が大きく変わってしまいます。

>その後の18頁14行目から、19頁全体の文章。この部分、少なくともGallimard社から2009年に出版された版には存在しません。

後出しですが、やはりそうかと。シムノンはこんなに親切じゃないし、いよいよメグレ警視のお出ましだ、みたいな演出も強い違和感ありました。
本作には他にもシムノンらしからぬ説明的な文章が多々見受けられました。

是非はともかく、高野訳はわかりやすさを主眼においているようですね。
シムノンは読者に対して不親切な作家だと思います。話者が誰なのかわからなくなる、状況がよく理解できない、こうしたことがよくあります。
そこを整理して、読者にきちんと伝わるよう説明的な文章を付け加えたり、表現をわかりやすくしたりしているのかもしれません。
自分としては普通に訳して欲しいのですが。

空さま、弾さまには本当に感謝です。
未熟な自分に今後も御教示いただければ幸いに存じます。

追伸
人並さんが同作品のあとがきについて、人称の間違いに触れていらっしゃいました。自分もあれは驚きました。
メグレシリーズは未読作品がおそらく10作ほどありますが、自分は一人称で書かれたメグレものは読んだことがありません。


36224. 作品の追加   猫サーカス  2024/04/07 18:07  [新作作家/作品の追加]  


安東能明の「消えた警官」を追加しました。


36223. 作品の追加   猫サーカス  2024/04/07 18:06  [新作作家/作品の追加]  


ローレンス・ブロックの「石を放つとき」を追加しました。


36222. RE:RE:リチャード・コネル「閃光」前半(謎の呈示部まで)   弾十六  2024/04/07 13:52  [雑談/足跡]  


虫暮部 さま、ありがとうございます!

やっぱりたくさん独りよがりになっていたなあ、とおもいます。
校正者になって欲しいくらいです!(お金は全く出せませんけど)

> [ 虫暮部さんのコメント ]
> (42)「with white hair billowing back from a wizened face / 白髪は後ろに流れ、しわだらけの顔が出ている」→ billow は辞書引くと「大波を立てる、うねる、ふくらむ」とあるので、しわくちゃな顔と対比して髪はドバッと残っている感じかなと思ったのです。それなら訳語が「流れ」では静か過ぎかも? (代案無し)
◆ 具体的なイメージがわかないままの適当な訳語がバレました。Webでググると流れのある髪型のように思えたので…

> (49)「それでもゲルダが心配なら」→ここだけ読むと「ゲルダのことが心配」と、ゲルダ=目的語にも読めます。はっきり主語にするなら「それでもゲルダが心配するなら」とか? まぁ文脈で判るけど。
◆ それでもゲルダが心配するなら、採用で。

> (60)「jerked out / 前に出た」→ただ出ただけではなく「急にグイッと」みたいなニュアンスでは。「飛び出た」とか?
◆ ここは軽く流したいので、前に出た、くらいが良いと。エリカ・ジョングの飛ぶのが怖いのジャーコフをいつも同じ思い出します… (訂正2024-4-7 17:44 Longman LODCEを改めて見るとto say something quickly and nervouslyでした… 動作ではなく「素早く(神経質に)言った」ここではまだ動いていない)

> (60)「You hold the torch. / トーチを当ててくれ。」→torch も flashlight も「懐中電灯」ですよね。日本文で読むと別なものだと思ってしまうかも。「トーチ=たいまつ」と知識があるし。原文で言い換えているのだから訳文でも換えるべき、と言う判断でしょうか。「照らしていてくれ」とか?
◆ なぜか、というと、トーチが英国英語らしい、と書いてあったので、作者がそこに意味をもたせてるのかも?というだけ。

> (62)「He's dead.Horribly dead./ 死んでる。ひどい状態だ。」→軽く検索してみましたが horribly dead の例文は見付からず。これは乱れた文、あわてて変な言い方になっているという演出では、と思うのです。そう考えるなら、上手に意訳せずに「死んでる。ひどく死んでる。」とか?
◆ たぶん用例はありうる、という感じなので、そのままで。("was horribly dead"と””で囲んでググると結構出てきました)


> (68)「私はここに残る…彼とともに…検視官が到着するまで」→これだと文の切れ目が「私はここに残る。彼とともに検視官が到着するまで」とも解釈できて「彼が検視官と一緒に来る」みたいです。意訳で「私はここに残る…彼のそばに…検視官が到着するまで」とか?
◆ ここは虫暮部さんに全面的に賛成。自由に日本語を操りたいなあ!

> (71)「the coroner,the doctor,the chief of police from the village across the dunes,and Andrew Moor. / 検視官、医者、砂丘の向こうの村の警察署長、そしてアンドリュー・ムーア」→ from 以下が the chief of police のみに掛かっているとの解釈ですね。私は三者全員かと思うのです。「砂丘の向こうの村から検視官、医者、警察署長。そしてアンドリュー・ムーア」?
◆ ここも虫暮部さんの感覚が正しいのでは、と私も思います!

> (73)「こんばんわ」→「こんばんは」?「わ」を認めるかどうかは学者間でも意見が分かれる、とか読んだ記憶があります。別にいいかと思う一方、私のようにアレッと思う読者もいると指摘しておきます。
◆ これはうっかり。(追記2024-4-7 19:16 意外と結構根深い。内閣告示昭和61年にことさら「こんにちは」と「こんばんは」の用例が示されてるのも気になる。志ん生の「こんちわ」はこの表記じゃないと嫌だなあ… 気づきませんでしたが、私は「わ」派かもです)

> (75)「what else could it be? / 他にどんな可能性がある?」→英文和文並列で読むと、シンプルな単語の英文に「可能性」と言うやや硬い語を当てはめたアンバランスな印象。「他に何があり得る?」とか?
◆ ここは虫暮部さんの感覚が正しい!

> (82)「There is only one thing it can mean. / 一つだけハッキリしている」→「それが意味することは一つだけだ」だからニュアンスがちょっと違うのでは。
◆ 後者は直訳っぽくて… 日本語ならこういうのでは?を採用しました。→でもやっぱり気になるので、なんか考え中です。

> (83)ワン・センテンス「Mr.Moor was...」訳し忘れ。あと「rum-rnnners / 密造酒の輩」→「酒の密売人」ってことですよね。判るけど変な言い方では? 何か上手い言い方無いかな~。
◆ 注意力が途切れてきてましたね。ここはまあ… 考えるのもめんどくさくて。適当です。ならず者もヘンテコですよね。

> (85)「a heavy stone」→「重石(おもし)」としたのは意図的なものですか。単純に「重い石」ではなく?
◆ オモシって読めるのか! 重い石のつもりで書きました。

> (97)「in the better light / 明るさのなかで」→「明け方の、夜よりはマシな薄明かり」って感じですよね。better も訳文に反映させた方が良いのでは。
◆ ここはちょっと悩んだんですけど、最後の方は気力が抜けちゃいますね。マシなは英語表現では良く出てきますけど、日本語になりにくい、という個人的な感じがあって、まあいいや、とぶん投げました。「前回の調査時より明るいなかで」を上手くかんたんに表現したいです…

本当にありがとうございます。何かお礼をさしあげたいなあ。直しは我がブログでの発表時に反映いたします!


36219. アンフェアか誤訳か?   弾十六  2024/04/06 21:32  [雑談/足跡]  


蟷螂の斧さま、おばんでした。

初めて連絡するのに厚かましいお願いですんません。もちろんスルーしていただいても全く問題ありません!

『スターヴェル』誤訳かも?というアンフェア部分、何ページ目か、教えていただければ幸いです。

早川や番町でお読みになっている場合は全体のページ数と該当箇所のページ数で教えていただければ嬉しいです。

蟷螂の斧さまの書評は興味と重なる本が少ないのでたまに拝見するくらいですが、黄金時代の英米ミステリのはいつも楽しく読ませていただいております。


36218. 作品の追加   文生  2024/04/06 21:29  [新作作家/作品の追加]  


芦辺拓の「乱歩殺人事件――「悪霊」ふたたび」を追加しました。


36217. 作品の追加   クリスティ再読  2024/04/06 18:43  [新作作家/作品の追加]  


ボアロー&ナルスジャックの「野獣世代」を追加しました。


36216. 作品の変更   人並由真  2024/04/06 16:16  [新作作家/作品の追加]  


レナード・ウイバーリーの「小鼠 ニューヨークを侵略 」を変更しました。


36215. 作品の追加   人並由真  2024/04/06 16:09  [新作作家/作品の追加]  


レナード・ウイバーリーの「小鼠 ニューヨークを侵略 」を追加しました。


36214. 作家の追加   人並由真  2024/04/06 16:08  [新作作家/作品の追加]  


「レナード・ウイバーリー」を追加しました。


36213. RE:RE:RE:RE:『メグレとマジェスティック・ホテルの地階』の翻訳について   弾十六  2024/04/06 07:39  [雑談/足跡]  


空さま、コメントありがとうございました!

> [ 空さんのコメント ]
>
>文をわざわざ分けたりせず、あっさり訳したいですね。

本当にそう思います!翻訳家もどきは、SDGsのためにも紙資源を節約せよ!と言いたいです。

でも、今回マジメに翻訳の真似事をして痛感するのですが、ニュアンスを上手く伝える日本語がサッと浮かばないんですよ。そうすると伝えるためにダラダラやった方がずっと楽ちん。

今回の件は単独に la meilleure pipe(the best pipe)と表現されていたら、誤解は無いはず。これをタバコの味、という意味にするためには前後でそういうふうになっていないとかなり強引だと感じます。(だから高野も直前に、原文にない「ふかした」をつけくわえているのだろう。文の後を確かめようかな?と思ったのですが仏文に電子版は無さそう、英訳電子版も結構高いので諦めました…)

無心で捉えると、朝一番は客観的叙述なので、省略のla meilleureも客観でないと気持ち悪い文章だと思いました。(ありえない、とは言いませんが、文章の名手ならやらないでしょう。定冠詞を落とせばそれっぽいかも、ですが、それは多分仏人には気持ち悪い文章なのでは?なんて知ってるように書きましたが、私の仏文レベルは低いので、皆さん信用しないでくださいね)

高野某は手抜きで気持ち悪い、多分、いわゆる「誤訳」は少なく、余計な付け加え、大きなお世話、翻訳家が読者の読みを曲解させるなよ!という翻案作品で、直ちに考えを改めるか、引退するか、翻案と明記するかしてほしい。それくらい憤っています。早川書房はチャンドラーの村上訳とかチェスタトンの誰だっけ訳とか、ムダにダラダラした文章をありがたがる癖があるのですが、バカボンボン社長のせいかしら?

ああ、最後は悪口になっちゃった。

<参考>
高野訳: だが、(メグレは)すぐに肩をすくめて、パイプをくわえなおすと、ゆっくりとふかした。朝いちばんの煙草だ。最高の味がする。

原文:Puis il haussa les épaules et la remit entre ses dents. C'était sa première pipe du matin, la meilleure.

空さま試訳:それから彼は肩をすくめて、歯の間にくわえ直した。それは朝最初の、最高のパイプだった。

<追伸 2024-4-6 9:53>
客観叙述なのかも?とだんだん思ってきました。つまり、後半を試訳すると「朝最初のパイプで、それは最高である」(一般論)
これならいきなりメグレの私的感想が出てくるわけではないので許容範囲です。まあでも仏人ならどう感じますかねぇ。私は九割「最も上等なパイプ」と受け取るのでは?と空想しています。


36212. 作品の追加   メルカトル  2024/04/05 21:57  [新作作家/作品の追加]  


青本雪平の「人鳥クインテット」を追加しました。


36211. RE:RE:RE:『メグレとマジェスティック・ホテルの地階』の翻訳について     2024/04/05 20:56  [雑談/足跡]  


弾十六 様

ご意見、ありがとうございます。

> なのでla meilleure は「一番上等の」という事。空さまは優しいので「誤訳だ!」と断じておられませんが、朝イチだから、数あるパイプコレクションの中から、最も上等のパイプを選んだのでしょう。メグレが「おいチイ」なんて軽々しく表現するか?

実はこれ、原文に忠実に「最高のパイプ」と訳していながら、弾十六さんのようには考えていませんでした。
sa première pipe du matin, la meilleure(英語なら his first pipe of morning, the best)の pipe をパイプ本体と捉えるか、「パイプにつめた一服のたばこ」(大修館書店「スタンダード佛和辞典」より)と捉えるかということで、自分は高野優さんの訳が頭にあったせいもあるでしょうね、後者と見ていました。タバコには縁がないのでアルコールで言えば、夏の風呂上がりのビールは最高ぐらいの感覚だったのです。ただ、どっちにしても、la meilleur は文をわざわざ分けたりせず、あっさり訳したいですね。


36210. リチャード・コネル「閃光」前半(謎の呈示部まで)   弾十六  2024/04/05 18:57  [雑談/足跡]  


虫暮部さま ありがとうございます。
おかげで、ちょっとはマシになった、でしょうか。

前回公開は(1)〜(31)まででした。修正して以下に再録。
深まる謎をどう解決するのでしょう?
続きはWeb「danjuurock 十六 × 二十」で近日公開予定です!

Black night was pressing down on the hard gray sand.(1)
夜の黒が、砂の灰色を押し固めていた。
The surf smashed and hissed on the beach.(2)
波が浜辺で砕け、ざわめいた。
Like advancing artillery pushing relentlessly across the dunes, the angry bass rumble of the oncoming storm could be heard.(3)
前進する戦車が無慈悲に砂丘を蹂躙するときのような、重い怒りの響きが感じられるようだ。嵐が近づきつつあった。
Jagged daggers of lightning plunged into the dark breast of the surging sea, and were followed by the grim applause of the thunder.(4)
稲妻のギザギザの刃がうねる海の奥深くまで何度も突き刺さり、続いて苦い拍手のような雷鳴が響きわたる。
In the great, gaunt house on the cliff, a man and woman stood by the living-room window, watching the crazy play of the lightning, and after each flash, counting off the seconds until the clap of thunder came, that they might judge how near the storm had drawn.(5)
崖の上の大きく陰鬱な屋敷。なかでは男と女が居間の窓辺に立ち、稲妻の狂乱の一幕を眺めていた。光るたびに雷鳴が届くまでの秒数を測り、嵐がどこまで来ているかを確かめているようだ。
"I'm frightened." said the woman. She had almost to scream the words to be heard, so great was the crashing din outside.(6)
「怖い」女が言った。外の騒音がひどいので、負けない大声を出そうとして金切り声になる。
"Why, Gerda?"(7)
「なぜ?ゲルダ」
"It's an evil night. I wish Roger would get here."(8)
「イヤな夜。ロジャー、早く帰ってきて」
The man glanced at the clock.(9)
男は時計を見た。
"He'll be here soon. Perhaps in ten minutes," he said. "You know Roger—-regular as that clock."(10)
「すぐに着くさ。十分ぐらいか。ロジャーはあの時計みたいに律儀で正確だよ」
"But the storm may overtake him," she said.(11)
「嵐につかまるかも」
"I think not. It seems to be passing around."(12)
「そうかな。ここら辺を避けて行くようだよ」
They turned from the window and walked to the far end of the long, somber room.(13)
二人は窓を離れ、奥に長い陰気な部屋の反対側に向かった。
The wind tore at the roof of the old house, snarling.(14)
風が古屋敷の屋根で裂け、唸りをあげた。
The windows rattled.(15)
窓がガタガタと揺れた。
Thunder, far off, muttered. They gave up trying to make themselves heard.(16)
雷鳴が遠くでゴロゴロと響いた。二人は大声での会話を諦めた。
A flash of light, unusually brilliant, made them turn toward the window again.(17)
閃光。異常に明るかったので、二人は再び窓に向かった。
"That hit on the beach," Andrew Moor shouted above the noise.(18)
「浜に落ちた」アンドリュー・ムーアは周りの音に負けぬよう大声。
"About a mile away, I'd say. Wait. We'll hear the thunder soon. One, two, three, four, five, six, seven -- well, that's rather odd. Where's the thunder?"(19)
「いちマイルくらいかな。待って。すぐ雷鳴が聞こえるはず。イチ、ニ、サン、シ、ゴ、ロク、ナナ… あれ、変だぞ。雷鳴はどうなった?」
"I heard a sound." Gerda Moor said. "A hissing and a cry."(20)
「わたしには何か聞こえた」とゲルダ・ムーア。「シューって。それと叫び」
"This night is full of weird sounds." said Moor. "The cry must be that of some lost night-bird. But you know, Gerda, it is odd about the thunder."(21)
「今夜は変な音ばかりだ。叫びって迷い夜鳥かなんかだろうさ。でもゲルダ、雷鳴の件は変だよ」
"There! Hear it now."(22)
「ほら!今聞こえた」
"Yes. But that's far away across the bay. That flash should have been accompanied by a sharp crack."(23)
「うん。でもこれは湾のずっと向こうのだよ。さっきの閃光なら大音量のバリバリのはず」
"I do wish Roger would get here," said Gerda Moor. "He shouldn't walk that lonely two miles across the dunes. Yet he always does."(24)
「本当にロジャーが帰ってきて欲しい。砂丘を2マイルもひとりぼっちで歩くなんて無茶よ。でもいつもそうしてる」
"Why, it's safer than a city street," said Andrew Moor reassuringly. "No one ever goes that way but Roger. He phoned from the station, didn't he?"(25)
「街の街道より安全じゃないか」アンドリュー・ムーアが保証する。「ロジャーのほか、あの道を通る奴なんかいない。駅から電話があっただろう?」
"Yes. He got in on the seven-twenty-seven train, as he always does. It takes him about half an hour to walk across the sand. His own path, he calls it. He's proud that he can gauge the time it takes for him to walk here -- never less than twenty-nine minutes, never more than thirty."(26)
「ええ。7時20分の列車で、いつもどおりにね。砂浜を渡るのに三十分。あの人が「我が道」と呼んでる通路で。ここまで歩いて来る時間を常に一定に出来るんだ、って自慢してる。きっかり29分から30分の間だって」
"Oh, he'll get here, all right," said Andrew. "Stop worrying, Gerda. Worry is the most futile thing in the world."(27)
「うん、すぐに帰ってくるよ。大丈夫」とアンドリュー。「心配無用、ゲルダ。心配するなんて世界一ムダなことさ」
"I know. But I do worry. Roger hasn't been himself lately."(28)
「知ってる。でも心配なの。最近、ロジャーの様子がおかしかった」
Andrew Moor looked keenly at his sister-in-law.(29)
アンドリュー・ムーアは義姉に鋭い視線を向けた。
"You've noticed that?" he said.(30)
「気づいてたの?」
"It has seemed," Gerda Moor said, "almost as if Roger were afraid of something."(31)
「まるでロジャーは」ゲルダ・ムーアは言った。「何かを怖がってるみたいだった」
"Nonsense," said the man. "Roger afraid? What has an honest, healthy banker like my brother to fear?"(32)
「馬鹿馬鹿しい。ロジャーが怖がる?誠実で健全な銀行家である兄貴が何を恐れる?」
"I don't know. But Andrew, there is something. And I feel you know what it is."(33)
「わからない。でもアンドリュー、何かある。あなたは知ってるんでしょう?」
"Oh, come, Gerda, this eerie house is making you imagine things. Roger is as solid as this cliff. Now, don't be in a state of nerves when he gets here for his birthday dinner."(34)
「おいおい、ゲルダ、この不気味な屋敷のせいで空想的になってるよ。ロジャーは下の崖と同じくらい堅牢だ。さあ、そんな気分は忘れて、兄貴が着いたらヤツの誕生日の晩餐なんだから」
"I think I'll call Uncle Matthew." Gerda said.(35)
「マシュー伯父さんを呼ばなきゃ」ゲルダが言った。
"How is the old dodo?" asked Andrew.(36)
「ドードー爺は元気なの?」
"Oh, puttering around as cheerfully as ever."(37)
「いつもどおりぶらぶらと、毎日楽しそうにしてる」
She pulled a bell-cord.(38)
彼女は呼鈴の紐を引いた。
"Clements," she said to the butler who appeared, "please go to Mr. Kelton's room and tell him dinner will be served soon. And Clements, serve the cocktails in here just as soon as Mr. Moor arrives. He'll be here in a few minutes now."(39)
「クレメンツ」あらわれた執事に命じた。「ミスター・ケルトンの部屋に行って、晩餐はすぐです、と伝えて。それからクレメンツ、ミスター・ムーアが帰って来たらすぐ、カクテルを出してね。数分で到着するはず」
"Yes, madam " the butler said, and glided away.(40)
「はい奥様」執事は静かに出ていった。
Andrew Moor stood staring at the clock. The storm had swerved away from the house on the cliff, and they could see and hear the lightning and thunder far across the dunes, like cannon on a distant front. No rain had fallen near the house.(41)
アンドリュー・ムーアは立って時計をじっと見つめていた。嵐は崖の上の屋敷をそれていったようで、見える稲妻と聞こえる雷鳴は、はるかな最前線の大砲のように遠かった。屋敷付近で雨はまだ降っていなかった。
"A wicked night," said a high treble voice. Matthew Kelton, small and fragile-looking, with white hair billowing back from a wizened face, was standing in the doorway, patting his old-fashioned evening tie.(42)
「薄気味悪い夜だなあ」かん高い声がした。マシュー・ケルトン、小柄で華奢な姿、白髪は後ろに流れ、しわだらけの顔が出ている。出入口に立って、古臭いイヴニング・タイをさすっていた。
"The gods are angry tonight."(43)
「今夜は神がお怒りだ」
"Roger isn't home yet," said Gerda Moor.(44)
「ロジャーがまだ戻らないの」ゲルダ・ムーアが言った。
"Regular Roger not home? Dear me, this is a curious night." said Matthew Kelton.(45)
「律儀なロジャーが戻らない?おやおや、珍しい夜だなあ」マシュー・ケルトンが言った。
"I'm worried, Uncle Matthew."(46)
「わたし、心配なんです。マシュー伯父さん」
"My dear child." said Matthew Kelton, patting her hand, "I see no cause for alarm."(47)
「まあまあ」マシュー・ケルトンは彼女の手を撫でた。「心配することなんて無いと思うよ」
He looked at Andrew Moor, standing at the window again, and saw that his face was white and tense.(48)
また窓辺に立っていたアンドリュー・ムーアを見ると、顔が白く、緊張している。
"If you're really worried, Gerda," said Matthew Kelton quietly. "we'll do the obvious thing -- go search for Roger. Just sit down at the piano and soothe yourself with some Chopin, and we'll be back with Roger in a few minutes. Come along, Andrew. And bring a flashlight."(49)
「それでもゲルダが心配なら」静かにマシュー・ケルトンは言った。「やるべき事は明らかだ。ロジャーを迎えに行こう。お前はただピアノに向かって、ショパンなどで心を鎮めておれば良い。そしたら我々はロジャーと一緒に数分で戻る。さあ来い、アンドリュー。懐中電灯を頼む」
When the door had closed on the two men. Matthew Kelton said.(50)
男二人の後ろでドアが閉まると、マシュー・ケルトンは言った。
"Andrew, you're worried too. Deeply worried."(51)
「アンドリュー、君も心配している。普通以上に」
"Yes."(52)
「ええ」
"Why?"(53)
「何故かな?」
"Oh, it isn't like Roger--being late."(54)
「やっぱりロジャーらしくないです… 遅れるなんて」
"There's something more."(55)
「他にもあるのでは」
"No. Nothing tangible. It must be the night. My nerves are jumpy. Here we are -- on Roger's path. It leads straight away from the house across the sand --"(56)
「いえ、何も具体的なのは。きっと夜のせいです。神経が過敏になって… さあ、ここからがロジャーの道。屋敷から真っ直ぐ、砂浜を越えて…」
In silence the men trudged along the path. The night was calmer now. They had walked for nearly a mile when Andrew Moor cried out.(57)
沈黙の中、男たちはゆっくり道を進んだ。夜は穏やかになりつつある。一マイルほど進んだ時、アンドリュー・ムーアが叫んだ。
"Great God! What's that?"(58)
「何てことだ!あれは?」
The strong beam of their flashlight had picked up a dark object, a figure, lying across their path.(59)
懐中電灯の強い光輪が黒い形をとらえた。人だ。倒れて道を塞いでいる。
"Stand still," jerked out Matthew Kelton. "You hold the torch. Steady. I'll go closer."(60)
「そのまま動かないで」マシュー・ケルトンが前に出た。「トーチを当てていてくれ。揺らさないで。私が近くに行く」
Walking on the toes of his patent-leather evening slippers, Matthew Kelton approached the figure.(61)
エナメルの夜会靴を履いていたマシュー・ケルトンは、つま先立ちで人型に近づいた。
"Andrew." he called back in a choking voice, "it's Roger. He's dead. Horribly dead. Wait. Stay where you are. You'll make footprints."(62)
「アンドリュー」ふりかえって押し殺した声で言う。「ロジャーだ。死んでる。ひどい状態だ。そのままそこに居なさい。足跡がつくといけない」
Kelton bent over the body that had been Roger Moor.(63)
マシュー・ケルトンは死体の上から覗き込んだ。かつてはロジャー・ムーアだった身体。
"His head has been crushed by a frightful blow," he said. "He was killed instantly. I'd say, and but a few minutes ago."(64)
「ものすごい打撃で頭を砕かれている。即死だ。せいぜい数分前か」
"It was that flash -- the lightning," cried Andrew Moor hysterically. "It must have hit about here."(65)
「あの閃光だ… 稲妻の」アンドリュー・ムーアは興奮して大声を出した。「ここら辺に落ちたはず」
"Yes," said Matthew Kelton slowly. "That must have been it. The lightning. No gun could have made that great wound. It might have been made by a heavy club -- but there is no weapon here, no footprints--"(66)
「うむ」マシュー・ケルトンはゆっくり言った。「そうかもしれない。稲妻か。銃ではこんな大きな傷にはならん。重い棍棒でやられたように見えるが… 近くにそんな物は無い。足跡も無い」
"Poor, poor Roger!" said Andrew Moor. He was sobbing.(67)
「かわいそうに、ああ… ロジャー!」アンドリュー・ムーアは泣きじゃくっていた。
"I'm thinking of Gerda--now," said Kelton. "You'd better go to her, Andrew. I'll wait here -- with him -- till the coroner comes."(68)
「ゲルダのことを考えないとな… さあ、アンドリュー。お前は彼女のところに戻るのだ。私はここに残る… 彼とともに… 検死官が到着するまで」
Andrew Moor went back to the house on the cliff, and as he mounted the steps, the music of a Chopin nocturne came to his ears.(69)
アンドリュー・ムーアは崖の上の屋敷に戻った。階段を昇っているとショパンのノクターンが耳に入ってくる。
Matthew Kelton, flashlight in hand, bent again over the body.(70)
マシュー・ケルトンは、懐中電灯を手に、再び、死体の上から覗き込んでいた。

... Presently he heard the muttering of voices as a party of men drew near, the coroner, the doctor, the chief of police from the village across the dunes, and Andrew Moor.(71)
… やがて、遠くで男たちが話す声がだんだん近づいてきた。検死官、医者、砂丘の向こうの村の警察署長、そしてアンドリュー・ムーア。
"Stop." ordered Matthew Kelton sharply. "Don't come near for a moment. I want the space about the body free of footprints."(72)
「止まって」マシュー・ケルトンは鋭く命じた。「今は近くに来ないでくれ。死体の周りに足跡をつけたくない」
"Evening, Mr. Kelton," said the Doctor. "Why bother about footprints? Lightning doesn't leave any."(73)
「こんばんわ、ミスター・ケルトン」医者が言った。「足跡を気にする必要があるかね?稲妻に足は無いよ」
"Wait." said Matthew Kelton. "I'm not at all sure it was lightning."(74)
「待ってくれ」マシュー・ケルトンが言った。「稲妻だとは思えない」
"Oh, come, Mr. Kelton," said the Doctor, "what else could it be?"(75)
「おいおい、ミスター・ケルトン」と医者。「他にどんな可能性がある?」
"I don't know." replied Kelton, "Something diabolic. Come here. Doctor. Walk on your tiptoes."(76)
「わからん」ケルトンが答える。「悪魔のしわざかも。こっちに来たまえ、先生。爪先立ちで頼む」
The Doctor obeyed.(77)
医者はその通りにした。
"Lightning burns." said Matthew Kelton. "There is no trace of burning here. Absolutely none."(78)
「稲妻なら焦げるはず」とマシュー・ケルトン。「ここに焦げた跡は無い。全然無い」
"That's a fact." agreed the Doctor. "Most unusual."(79)
「本当だ」医者は認めた。「おかしいな」
“And look here," said Kelton, pointing, "at those streaks of silver in the hair. Roger Moor was a vigorous young man with coal-black hair, with no white hairs whatsoever. That's paint, Doctor -- silver paint."(80)
「ここを見てくれ」ケルトンが指さす。「銀色の筋がいくつか髪についている。ロジャー・ムーアは健康な若者で頭髪は真っ黒だった。白髪なんて全然なかった。これは塗料だよ、先生。銀色の塗料だ」
"Yes." said the Doctor. "You're right. What can it mean?"(81)
「うむ」医者が言った。「その通りだ。それでどういう事になる?」
"There is only one thing it can mean. I'm afraid," said Matthew Kelton, very gravely, "and that is that Roger Moor was murdered, foully murdered."(82)
「一つだけハッキリとしている。残念ながら」マシュー・ケルトンの声はとても陰鬱だった。「ロジャー・ムーアは殺されたのだ。残虐に」
"It's clear what happened." said the chief of police. "Mr. Moor was coming home across the sands as he had done every night at this time for years. Somebody laid for him. Some yeggs, maybe, or one of those hard guys from the rum-runners. He was rich, and carried a lot of money, they figured. They hit him with a piece of pipe or iron painted silver. We'll get the motorcycle squad out on the roads after 'em right away. They can't have gone far --"(83)
「何が起きたのかは、明らかだな」警察署長は言った。「何者かが待ち伏せしていた。ならず者とか密売酒の輩たちだろう。彼は裕福だからお金をたくさん持ち歩いている、と見込まれたんだ。奴らは銀色に塗ったパイプか鉄塊でぶん殴った。バイク部隊をすぐ差し向けよう。まだ遠くに行ってないはず…」
"Not so fast, please," said Matthew Kelton. "First, Mr. Moor has not been robbed. His watch, wallet and brief-case are all intact. Second, there are no footprints near this body. This sand would catch and hold the lightest step. But you will find only the imprints of the dead man as he walked toward his house, and the imprints of Mr. Moor and myself when we walked out from the house to find him, and the imprints that you three men have just made."(84)
「慌てないでくれ」マシュー・ケルトンは言った。「第一にミスター・ムーアは何も奪われていない。時計、財布、ブリーフケースは全部手つかずだ。第二に死体近くに足跡が全く無い。この砂なら、ごく軽く足を踏んでも跡が残るはずだ。だが残っているのは、死者が屋敷に向かっていた足跡、ミスター・ムーアと私が屋敷から彼を探しに来た時の足跡、そして今君ら三人がつけた足跡、それだけだ」
"Well, that does complicate things up some," admitted the policeman. "Since it wasn't the lightning, and since I don't believe in unnatural devils, it must have been somebody -- Wait —I got it! Somebody who wanted to put Mr. Moor out of the way waited in the darkness for him to pass, and from a distance threw or shot a heavy stone or lump of metal at him—"(85)
「はあ、ちょっと困ったことになるな」署長は認めた。「雷でもないし、悪魔がやったとは到底信じられない、となると誰かのしわざのはず… 待てよ… そうか! 殺意を持った何者かが、ミスター・ムーアが通るのを暗闇のなか待っていた。そして遠くから彼に向かって重石とか金属塊とかを投げつけ…」
"In which case," said Matthew Kelton, "the missile would be lying near the body. I found no missile -- not even a pebble. Only fine sand."(86)
「どちらの場合でも」マシュー・ケルトンは言った。「飛んできたものが死体の近くにあるはず。重い物体は見つけられなかった… 小石すらも。細かい砂ばかりだ」
"Yes, there's a hole in that theory, all right," said the chief of police. "But suppose they potted him from the cliff, or -- here's an idea -- from a boat out on the water -- and a cord tied to the missle, the way harpooners do, and after it struck, hauled it back --"(87)
「まあ理論上の穴は認めるよ」警察署長は言った。「だがヤツらが崖から投げつけるとか、そうだな… 海上の船からでもいい… 投げつけたものには銛打ちがやるように紐を縛りつけておき、当たった後で引っ張り戻せば…」
"Not possible," said Matthew Kelton. "Remember, this sand records the slightest impression. A mouse crossing it would leave tracks. I have examined the area around the body for yards, and here is no trace of any missile having been dragged away. Besides, Chief, it is a good six hundred yards to the cliff, and at least three hundred to the water. It would take a rare marksman to hit a moving figure at that distance -- and on a pitch-black night."(88)
「不可能だ」マシュー・ケルトンは言った。「前にも言ったが、この砂は最小の圧迫でも跡が付く。ネズミの小走りでさえ軌道が残るだろう。死体の周り数ヤードを調べたが、飛翔物が引きずられたような跡は全く無かった。それに署長、崖まで六百ヤードは優にある。海までは最低でも三百くらいか。動く人影をこの距離で仕留められるのは余程の名射手だけだよ… あたりは真っ暗闇だし」
"A heavy-caliber gun--an elephant gun, for example, could mess up a man's skull like that. What do you think, Doctor Somers?" said the chief.(89)
「とても大口径の銃… 象撃ち用とか… なら人間の頭蓋骨をこんな風に潰せるのでは。どう思います?ソマーズ先生」署長が聞いた。
"No gun of any description did this job," declared the Doctor positively. "It was a blow with a large object, delivered with terrific force."(90)
「どんな性能の銃でも無理だ」医者は断固として述べた。「これは大きな物体がものすごい力でぶつかった衝撃によるものだ」
"It beats me, then," said the chief. "It would be easy, if I could believe in devils--"(91)
「じゃあ降参だ」と署長。「悪魔の存在を信じられれば、話は簡単なんだが…」
"There are all sorts of devils," said Matthew Kelton.(92)
「悪魔ならいろんなのがこの世には存在する」とマシュー・ケルトン。
"Have you any theory how it was done, or who did it, Mr. Kelton?" the coroner asked.(93)
「どうやったのか、誰がやったのか、仮説をお持ちでは?
ミスター・ケルトン」検死官が尋ねた。
"No." said Matthew Kelton. "I know only the facts I have related to you. Roger Moor is dead, murdered. It is my earnest prayer that I can find out how, and why, and who did it. Now, I want you to do something for me.
Mr. Coroner. I want you not to move the body, but to leave it lying here, exactly as it was found, until morning. By the first light of the new day we may find things which our flashlights have not found tonight."(94)
「いや」マシュー・ケルトンは言った。「わかってるのは君らに話した事実だけだ。ロジャー・ムーアは死んだ、殺されたのだ。その方法、動機、犯人、ぜひ突き止めたいと真摯に願うよ。さて、わがままを聞いてくれ、検死官どの。私は死体を動かしたくない。ここで見つけたときの状態で横たえたまま、朝まで置いて欲しい。明日朝一番の陽の光なら、懐中電灯では見つからなかったものが見つかるかもしれない」
"There's sound sense in that, Mr. Kelton." said the coroner.(95)
「道理にかなってますな、ミスター・ケルトン」検死官は言った。
"Let's go to the house," said Matthew Kelton. "and wait for dawn."(96)
「屋敷へ行って」マシュー・ケルトンは言った。「夜明けを待とう」
Through the night the men talked and dozed in the house on the cliff. When the first faint rays of the rising sun came across the dunes, they went to where the body of Roger Moor was lying. Matthew Kelton made another careful examination in the better light.(97)
崖の上の屋敷で、夜のあいだじゅう、男たちは話したり、うとうとしたりした。昇る太陽から朝一番の弱い光が砂丘を越えて届くと、ロジャー・ムーアの死体が横たわっているところに向かった。マシュー・ケルトンは明るさのなかで、もう一度注意深く探索した。
"I find nothing." he announced, "which changes the facts we arrived at last night. See -- the firm sand spreads in every direction from the body, and there is no mark on it of any kind for hundreds of yards. The footprints we made ourselves are easily identified."(98)
「何も無い」皆に伝えた。「昨夜わかった事実を覆すものは何も。漏れなく砂だけが死体の周りをいちめんに取り囲んでいる。何かの痕跡もここら辺数百ヤードには残っていない。我々がつけた足跡だけが際立っている」

<続きは danjuurock 十六 × 二十 で発表します>

(16)を修正。×鳴った→◯響いた


36209. RE:RE:RE:ジョン・ヒューストンの映画『セルピコ』   人並由真  2024/04/05 17:52  [雑談/足跡]  


> たまには人並由真さまも間違える…

いや しょっちゅうです(笑・汗)。

なるべく、投稿後に読み返して自分で気づいたものは
早めに直したりしてますが、たぶんこれまでのレビュー中でも
なんか潜在してるかもしれません(汗)。

とはいえ『セルピコ』はちゃんと映画は観てはいるのですよ。
大昔ですが。中盤~後半の山場で、同僚の悪徳警官(刑事だっけ)の
いきなりの嫌がらせで、捜査中に体の自由を奪われてピンチになる
場面とか、ラストシーンの無常観とかは、たぶんしっかりと?
覚えています。ピーター・マーズ著作の原作
(ドキュメントノンフィクション)は
買ってあったような、まだのような……。
いずれにしろ、まだ読んでないですが。

いずれにしろ、今回は改めまして
ありがとうございました。
今後とも何かありましたら、宜しくお願いします。

人並由真 拝


36208. RE:RE:ジョン・ヒューストンの映画『セルピコ』   弾十六  2024/04/05 17:31  [雑談/足跡]  


たまには人並由真さまも間違える…

アマゾン評価に大分前に書きましたが/www.amazon.co.jp/gp/customer-reviews/R3UM77411VL5PU/ref=cm_cr_getr_d_rvw_ttl?ie=UTF8&ASIN=B000068WKD

この映画とセットで思い出すのは「ハリウッドの裏切り者」エリア・カザンの、ベトナム帰還兵の「復讐」物語。もう一回見たいなあ…

タイトルは「突然の訪問者」(The Visters 1972)、確かTVでしか日本公開はなかったはず。




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