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Tetchyさん
平均点: 6.73点 書評数: 1631件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.291 8点 楽園の骨- アーロン・エルキンズ 2008/07/19 20:53
今度は南の島タヒチが舞台。ホントこの主人公達は役得が多いと思う。

プロットは今までのシリーズに比べても、特に目立つような驚きやどんでん返しがあるわけではないが、これはやはりストーリーとキャラクターの勝利でしょう。
ジョン・ロウの親戚が出てきて、更にキャラクターは膨らみを増すし、最後の終わり方がなんともほっこりしてよろしい。

No.290 6点 死者の心臓- アーロン・エルキンズ 2008/07/18 20:19
今回の舞台はエジプト。形質人類学者という特殊な職業であるのも解るが、ホント色んなところに行く夫婦である。

で、今回は事件が起きるまでが非常に長く、なかば世界観光小説のようになってきている。
とはいえ、このシリーズの売りである骨の鑑定もしっかりあり、その結果も新たな知識を得られ、ひとまず満足感は得られる。

しかし邦題はあからさまに煽情しすぎであろう。
原題は“Deadman's Heart”で素直に訳せば“死者の気持ち”であり、こっちの方が内容的にしっくり来る。
でも確かにこの題名だと売れそうにないな。

No.289 6点 遺骨- アーロン・エルキンズ 2008/07/17 20:24
今回は自国アメリカオレゴン州が舞台。
司法人類学会の権威ジャスパーの遺骨が盗まれ、さらに埋められた死体まで発見してしまうというお話。

そして骨の鑑定による意外な死体の正体と、定番を抑えるしっかりとした作りです。

No.288 7点 陸の海賊- アーサー・コナン・ドイル 2008/07/16 20:08
今回は非常にバラエティに富んだ内容となっているのが特徴だ。
それぞれテーマがボクシング、狩猟、クリケット、海賊物とに分かれている。

本作の約半分を占めるボクシング小説はドイル自身ボクシングをしていたこともあって、実に描写が活き活きとしており、選手の内面まで写実的に描いている。しかも単純にボクシングの試合をする話ではなく、ミステリ風味が加味されており、舞台設定も様々なところにドイルの作家としての矜持が見られる。

クリケットを材に採った「スペティグの魔球」も日本人には馴染みはないものの、十分楽しめる1編だ。映像化に適した作品だともいえる。

狩猟小説である「狐の王」の狐を追うシーンの場面の移り変わりゆく描写の確かさは目の前に映像が浮かぶかのようであった。

また海賊シャーキー物も最近放映されたジャック・スパロウ物が頭に浮かび、自然と物語にのめりこむことが出来た。

ドイルはホームズだけではない、そんな風に思わせてくれる短編集だ。

No.287 7点 氷の眠り- アーロン・エルキンズ 2008/07/15 21:52
今回の舞台はアラスカ。
スケルトン探偵、世界中を飛び回りますな。
そして氷河から出てきた30年前に遭難した調査隊員たちの骨の鑑定を行う。
遭難死したと思われた隊員の骨にピッケルで殺害された跡を見つけてから、疑惑が生まれる。

今回はジョン・ロウが再び登場。このキャラクター、かなり好きだなぁ。
まずFBI捜査官に見えないほど、あっけからかんとしてる。
物語の作りとしてはオーソドックスだが、水準はきちっと保っているので、安心して読める。

No.286 7点 呪い!- アーロン・エルキンズ 2008/07/14 23:46
今回の舞台はメキシコのマヤ文明の遺跡。
これに纏わる呪いにかかって死んだとしか思えない事件に巻き込まれる。
そして今回も遺跡から出てきた骨に関する鑑定結果はけっこう驚かされます。

そして今回出てくるギデオンの師匠エイブ・ゴールドスタインのキャラクター造形が素晴らしい。
ホント、安心して読めるシリーズだ。

No.285 8点 古い骨- アーロン・エルキンズ 2008/07/13 21:20
海外ミステリが苦手という人もこの作家の作品は読めるのでは?と思うくらい読みやすい作品です。
特に代表作とされる本書はフランスのモン・サン・ミッシェルを舞台に見つかる古い骨の正体を探るスケルトン探偵ギデオン・オリヴァーの骨に関する含蓄溢れた推理と、あるトリックを使った事件の真相にあっと驚かされる、佳作となってます。
私はこの1作を読んで以来、このシリーズの虜です。

No.284 7点 クルンバーの謎- アーサー・コナン・ドイル 2008/07/12 20:14
今回は初めて読む作品群だったせいもあったのか、結構面白く読めた。

今回の中短編にはアジアを中心とした諸国に古くから信仰されている古代宗教に伝わる呪術をモチーフにした怪異譚という一貫したテーマがある。
しかし、作品に使われているモチーフは21世紀のこの世においてもはや手垢のついたテーマ以外何物でもなく、新たなる驚き、衝撃が走るような物は1つも無かった。

だが、これら中短編群はドイルという作家の一側面を語るのに貴重である事は確かだ。

長くなるので詳しくは述べないが、アジア各国に伝わる呪術や宗教に関する記述は詳細を極め、単なる物語を編むための取材に終わっていない。ここにドイルが晩年、心霊研究科の権威として色んな活動を行っていた片鱗が窺える。

上に述べたように作品の内容に斬新さはないが、ドイルという人物の側面を知る上で、非常に有益な短編集であると云えるだろう。

No.283 4点 北極星号の船長- アーサー・コナン・ドイル 2008/07/11 21:31
本コレクションは、新潮文庫から出ているドイル傑作選ともダブっている作品があり、読むのが二度目という作品もけっこうあった。

高空領域、北極、未開の島、洞窟と未知の領域が多かった19世紀という時代だからこそ、受けたであろう怪物譚も今となっては少年少女の読み物といった感じ。

個人的には最後に読んだ「寄生体」が、かろうじて現代にも通じる怖さを持っていると感じた。

No.282 4点 まだらの紐 ドイル傑作集1- アーサー・コナン・ドイル 2008/07/10 20:30
東京創元社が独自に編纂しているドイルの未発表短編、もしくはホームズ物以外の短編を集めたドイル・コレクション第1集。
「王冠とダイヤモンド」、「まだらの紐」の2つの戯曲が入っているところが、ミステリ収集家の興味をそそるだろうが、そうでない人にしてみれば、あまり価値のない短編集かも。

とはいえ、「ジェレミー伯父の家」、「田園の恐怖」の2編は今読むと古臭く感じるが、当時としてはその真相が奇抜で、かなりセンセーショナルな内容だったと思われる。

シャーロッキアンもしくはドイルファンならば、読んでおくに損はない1冊。

No.281 6点 バースデイ- 鈴木光司 2008/06/23 20:13
『リング』、『らせん』、そして『ループ』で登場した高野舞、山村貞子、杉浦礼子という3人の女性の物語を描いた連作短編集。内容的にはこれら3作で語られなかったエピソードを補完するような内容となっている。

高野舞が主人公の「空に浮かぶ棺」、山村貞子が主人公の「レモンハート」までを読んだ時は、これは書く必要があったのか、と思うくらい、内容がない話で、むしろ何故本編にいれなかったのか、疑問に思った。
この2編を読んだときまでは、どうしたものかと憤慨していたが、最後の杉浦礼子が主人公の「ハッピー・バースデイ」がとても良かったので安心した。

結末はよくある物だと云われれば確かにそうだが、やはり子を持つ親になった今、こういう話は心に響く。
最後のこの1編でどうにか救われた感じがした―貴重な読書時間を無駄にしなかったという意味で。

No.280 1点 シャーロック・ホームズ最後の挨拶- アーサー・コナン・ドイル 2008/06/22 13:16
とうとう来るべきものが来たという感じ。
各短編全てにおいて興趣を欠いている。

有名な短編としては「瀕死の探偵」が挙げられるが、この話もホームズの馬鹿さ振りを髣髴させるエピソードとして色んな作家の作品中で語られるものなので実は大したことはない(実際、この短編におけるホームズはアホである。それにまんまと引っかかるワトスンもまた斯くや)。
短編集の題名になっている「最後の挨拶」はもはや本格ですらない。

これこそドイルがホームズ譚を執筆するのにうんざりしていた証拠だ。

やっぱり何事も引き際が肝心である。

No.279 4点 シャーロック・ホームズの帰還- アーサー・コナン・ドイル 2008/06/21 20:04
小学校の頃、学校の図書館で読んだ「踊る人形」が入っていたのが懐かしく感じた。
しかし今読むと、ポーの『黄金虫』のほとんど二番煎じじゃないか?と思ってしまった。

「犯人は二人」のように義侠心からホームズとワトスンが窃盗を働くユニークな一編があるものの、やはり全体としては小粒。

No.278 10点 恐怖の谷- アーサー・コナン・ドイル 2008/06/20 20:08
数あるホームズシリーズの中でもさほど名の知られていない本書。しかし、私はこの作品が一番好きである。

今回も第1部は本格ミステリパートになっており、本件で明かされる事件の真相は、ミスディレクションがなされてはいるが、現代ミステリを読んだ者達にとってみれば、さほど目新しさを感じないだろう。

しかし、本作における魅力は第2部の加害者のバックストーリーにある。
これはシリーズ中、白眉の傑作である!
なんとハードボイルドなのだ。
しかもこのパートにもどんでん返しが用意されており、逆にこっちの真相に驚いた。
これもよく考えるとよくあるパターンなのだが、もうすっかり騙されてしまった。

本作を読むと、本当にドイルが書きたかった小説が何なのかというのが解る。

No.277 6点 バスカヴィル家の犬- アーサー・コナン・ドイル 2008/06/19 19:42
初めて読んだのは小学4年生のころ。
児童向けにリライトされた作品で題名も『呪いの魔犬』だった。
あの時と最近になって読んだときとはやはり当然のことながら、読後感は違っていた。

ただ陳腐な内容には変わりないのだが、ここには本格ミステリの定型があり、特にそれが私が傾倒する島田氏の唱える「冒頭の幻想的な謎を結末で論理的に解明する」形式がきちんと形になっているのが興味深かった。

No.276 5点 ループ- 鈴木光司 2008/06/18 19:20
『リング』、『らせん』シリーズの最終作『ループ』。
しかしこの作品の評判が非常に悪いのが気になっていた。
実際映画化されたのも『らせん』止まりだし(短編集『バースデイ』から『リング0』という映画も出来たが)、あれだけ世間で大ブームを起こしたこれらの作品に比して、この『ループ』は一種のタブーめいた扱いを受けているような気がした。

で、なぜなのかは解った。

ああ、こういう風に持っていっちゃったのね、という内容だった。
これをスゴイと思うか、え~、そりゃないよ~と思うか賛否分かれると思うが、私はやっぱり前2作を楽しく読んでいただけに、この設定には壁に投げつけようかと思った。

やっぱりホラーは路地裏の暗闇とか台所の隅の暗がりみたいな部分があってこそ面白いのだなぁと今回痛感した。

最後に抱いた感想は、「ハイ、お疲れさん」でした。

No.275 5点 生と死の幻想- 鈴木光司 2008/06/17 20:08
タイトルどおり、生と死をテーマにした短編集・・・と思いきや、あとがきで作者は堂々と「これは父性と母性をテーマにした短編集である」とのたまっている。
しかしどちらにしても、一貫性はない。

6編中、「闇のむこう」がよかったかな。
誰にも起こりそうな恐怖を、しかもありえる形で描いているのが怖かった。

No.274 7点 らせん- 鈴木光司 2008/06/16 14:50
大ヒットホラー『リング』の続編。
高山の死の謎をかつての大学時代の同級生である監察医安藤が探るといった内容。

途中『リング』と重複するところがあり、退屈したが、そこも大事な伏線だった事がわかる。
しかし結末は自作が思った以上に大ヒットした事を皮肉るような内容になっている。
しかし、やっぱやりすぎだなぁ、あの結末は。
何でもアリ過ぎる。

No.273 4点 四つの署名- アーサー・コナン・ドイル 2008/06/15 20:06
やはり大人になった今読むと、ここに書かれている推理が穴だらけで噴飯物であることがよく解る。
ほとんど偶然の産物だもんなぁ。

今回も推理小説の第1部より、第2部の方が面白かった。

No.272 7点 シャーロック・ホームズの冒険- アーサー・コナン・ドイル 2008/06/14 23:29
この『シャーロック・ホームズの冒険』はオールタイム・ベスト選出に必ず上位5位の内に入る逸品ではあるが、三十路を控えた我が身にはやはり子供の頃のように純粋に愉しめたとは云えない。
やっぱり今読むと、ホームズの推理は恣意的かつ独善的に感じるし、ワトスンは医者の割にはアホじゃなかろうか?と思えるほど盲目的に見える。
でも各短編はヴァラエティに富んでいるので、推理小説というものを未体験ならば、お勧めできる。
やっぱ小学生ぐらいのときに読むのが妥当だろうな。

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