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みりんさん
平均点: 6.65点 書評数: 260件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.180 6点 確率2/2の死- 島田荘司 2023/08/17 18:59
吉敷竹史シリーズ第5弾(のはず)
2時間でサラッと読めた。前作あたりから文体がスリムになったのかなあ?読むスピードが異常に上がった。なんか超不評ですが、私は楽しめました。

やっぱり誘拐ものってある程度の面白さは保証されてると思う。犯人の目的がわからない誘拐モノは特にね。そしてタイトルもイイ皮肉ですね。
しかし、前作『消える水晶特急』同様に推理で真相を引き当てることは不可能だと思う。どうせヒントをもらっても推理を組み立てられないので私には問題ありませんが(笑)

No.179 7点 消える「水晶特急」- 島田荘司 2023/08/17 06:38
島田荘司「その列車 消えるよ」 な、なんだとぉ??
人間消失程度では飽き足らなくなった島荘は遂に列車消失も演出してしまいます。草。

吉敷竹史シリーズ第4弾

本作はなんか知らんが前3作に比べてリーダビリティが異常に高い。私は小説を読む時に100ページごとに時間を測るという奇特な習慣があるんだが、島荘作品は大体100ページで80〜90分くらいかかるのね。でも今作はなぜか100ページ55分ペース(これは東野圭吾クラスw)。なんでだろうね。やっぱり立て篭もり事件はサスペンスフルで読む手が止まらなくなるのかな。それとも今回は語り手が吉敷竹史じゃなかったからかな。ともかく一気読みできる快作でした。

最後の"感動の再会"シーンは作者のサービス精神に拍手です。いや〜面白かった。
この愛らしい女性コンビはこれからも登場してくれないかな〜なんて思っちゃったわけです。

No.178 8点 北の夕鶴2/3の殺人- 島田荘司 2023/08/16 17:38
私は本格ミステリに"実現可能性"というあまりに些細なことを気にする余り、『斜め屋敷』や『姑獲鳥の夏』を読んでブチギレそうになったのも今は昔。今読めばどちらも傑作という評価を下すでしょう。いつか読み返そうと思いつつ、なかなかタイミングがねぇ…

この『北の夕鶴2/3の殺人』も実現可能性が著しく低そうなトリック、それでいい(保険付きなのは笑った)。『占星術』『斜め屋敷』そして今作『北の夕鶴』。一生忘れられないであろうトリックを島荘はいくつ生み出しているのだろうと楽しみにこれからも読んでいきます。

吉敷竹史シリーズは3作品目。奇妙奇天烈で掴みやすい御手洗潔と違って冷静な好青年というぼやけた印象しかなかった吉敷竹史がこんなに情熱的で感情的なキャラクターだったとは。男とはこうあるべきだという少々古臭い価値観だが、元妻の幸せを心から祈る元亭主の命懸けのラブロマンス+サスペンスとしても優秀だと思います。しかし、あのユニークな物理トリックとこのラブロマンスがややミスマッチな気がしないでもない笑

No.177 7点 出雲伝説7/8の殺人- 島田荘司 2023/08/15 15:49
虫暮部さん(名前出して申し訳ありません)のおっしゃる通りで犯人はヒジョーに不可解な偽装工作をしていると言わざるを得ません。普段、物語の整合性・矛盾というものに鈍感で何でも受け入れてしまう私ですら今作はさすがに変だと感じました。

が、これは好きな作品になりました。
まず、首無のバラバラ遺体が7つの終着駅で部位ごとに見つかる。もうこれだけで読む推進力になるのに更に胴体には「五穀の起源」の見立てが施されている。出血大サービスです。でも時刻表は思考停止するので無視無視♪
「八岐の大蛇伝説」について巻き起こる学術的な対立がまあ面白い。そしてこんな見立てをしたのも8つに切り刻んだのもすべては犯人の学術研究由来の憎悪であるというのが良い。ラストの犯人を追い詰めるトラップもそれに心を揺さぶられた犯人という皮肉も最高でした。
「学術研究は成果なんて出さなくても楽しければ良いんだ」という前向きなメッセージもいただきました。


ということでミステリとしては大きく減点、それ以外の要素で大きく加点としこの点数にします。

No.176 6点 寝台特急「はやぶさ」1/60秒の壁- 島田荘司 2023/08/14 03:50
吉敷竹史シリーズ第1弾
タイトルから明らかなトラベルミステリーだったので避けていた。

「死んだはずの女がなぜ寝台列車に?」「なぜ犯人は被害者の顔の皮膚を剥いだのか?」
相変わらず冒頭からとてつもなく魅力的な謎、いや、越えるべき"壁"を提示してくれる。さすが島荘です。その謎の強大さに対して、吉敷竹史はあまりにも丁寧な筋道を示し、合理的な解決を試みる。このあたりは奇想天外な真相を唐突に思いつく御手洗潔との対比でしょうか。
真相はトラベルミステリーの域を出ないかと思っていたら一捻り、二捻り、どんでん返しと見せかけて1.5捻りほどで留まりました。

綾辻先生の解説によると『占星術』『斜め屋敷』では先生のようなマニア間では既にカルト人気を得ていたが、売れ行きは芳しくなかったそうです。そこで流行のトラベル要素を取り入れ見事『はやぶさ』は大ヒットしたそうな。そんな苦心の末生み出された一冊、なかなか楽しかったです。

No.175 7点 亜愛一郎の逃亡- 泡坂妻夫 2023/08/13 05:59
徹夜で読んでしまった。亜愛一郎と出会ってからわずか2日でお別れの時が来たようだ…
亜愛一郎、名探偵ランキングを作るなら間違いなく上位の逸材である。(当然1位は京極堂w)

今作『逃亡』は"何を推理するのか"を推理する所から始まるお話が多い。難易度激高です。
狼狽の『DL2号機事件』と転倒の『藁の猫』のような"超次元ロジック"は今回も『歯痛の思い出』にて健在。一見関係のないように見える出来事も論理の飛躍のためには重要な要素となってくるのが気持ち良い。この超次元ロジック作品(?)は泡坂センセーの他に書いてる人いないのか??って思うくらい楽しかった。
表題作『亜愛一郎の逃亡』ではシリーズ最大の謎、亜愛一郎が何者であるのかが明かされるわけだが、読み終わった後、不覚にも寂寥感を覚えた。これはズルい。
ラスト1行の完璧さ。最後まで作者の遊び心満載のシリーズだった。

※ミステリとしては『転倒』を1番に推していきたい

No.174 8点 亜愛一郎の転倒- 泡坂妻夫 2023/08/12 15:31
こ〜れは読んでいて楽しい。ヒジョーに楽しい(^^)
なんだ『狼狽』より『転倒』の方がイイじゃん。
『狼狽』に比べたらハズレもあるけど『転倒』の方が3発くらいガツンと来たよ。

気に入ったの3つ挙げると『藁の猫』『意外な遺骸』『病人に刃物』
『藁の猫』は狼狽の『DL2号機事件』っぽい。完全を忌避する人間の心理をついたロジックのマジック(?) いや〜実に素晴らしい。
『意外な遺骸』では趣向を偏重する犯人が登場するが、遊び心満載の泡坂妻夫そのものじゃんね。
『病人に刃物』 もしこれが無かったら『狼狽』を超えたとは思わなかっただろうってほど驚いた。これこそINPERFECT INSIDERにふさわしい。

『三郎町路上』の響子姉さんの再登場を願いながら『逃亡』に進みます

No.173 7点 亜愛一郎の狼狽- 泡坂妻夫 2023/08/11 14:18
泡坂妻夫の中では世間的に1番評価の高い作品かな?というだけあってどれも無難に面白い。しかし『しあわせの書』で作者の変態ぶりに衝撃を受け、『乱れからくり』の美しさに感銘を受けた私としてはいささか物足りない。上記と違って短編だから仕方ない部分もあるけど、こう何か一発ガツンと来るものがなかった。

1番面白かったのは『掌上の黄金仮面』でこの反転は流石に見事でした。「あ、この作者そういえば変態だったなあ」と再確認したのは私史上最高難度の暗号が登場する『掘り出された童話』ですかねぇ。でもね〜とある人間の心理を深く突いたロジックのマジック(?)『DL2号機事件』とこれぞザ・本格『曲がった部屋』も捨てがたい。
いや、やっぱり世評通りのすげえ濃密な短編集な気がしてきたぞ。

連城とか泡坂とか幻影城出身の方って連載形式だから短編が人気になりがち?

No.172 8点 十戒- 夕木春央 2023/08/08 22:35
あえてハードルは下げておきます。『方舟』よりはやや劣ると思います(でも新刊補正で+1)。発売からわずか1年で既に28件の書評数と8.39点と高い評点を獲得した『方舟』はもう本サイトではレジェンドに片足を突っ込んでるので、それと比べるのは酷ですが…
『方舟』からわずか1年でこれを書き上げる夕木春央はミステリ界の救世主(出版社的にも)ですね。
ハードルを下げたいのか上げたいのかよくわからない評価になってしまいましたが、『方舟』が好きな方は買って損はないでしょう。

No.171 5点 二銭銅貨- 江戸川乱歩 2023/08/08 03:05
乱歩のデビュー作。
よく練られたショートコントっぽい。8字ずつ飛ばす理由までついてると嬉しかった。
当時男同士では頭脳の優劣を競い合うことくらいしかやることなかったんでしょうか笑

No.170 6点 殺人鬼- 綾辻行人 2023/08/07 23:59
キツすぎ。
読んでるだけなのに共感性(?)からくる痛みを感じたのでスプラッタシーンは1部読み飛ばした。でも冒頭に気になる記述があったので最後まで耐えながら読んだらしっかり騙された。あとこれ囁きシリーズと世界繋がってるんですね。
でも2は読まなくて良さそうかな。怖いもの見たさもあって読むか迷う。

No.169 5点 盗まれた手紙- エドガー・アラン・ポー 2023/08/07 17:47
結構前に海外の古典短編集が6つくらい乗ってるやつ(著者はバラバラ)で読んでて、唯一覚えてるお話。なんかコナンドイルの赤毛連盟とかも乗ってたような気もするが思い出せん。
ふと登録されてるの発見して嬉しいので書いときます。


これにピッタリなことわざ知ってますよ。
『灯台下暗し』ドヤ

No.168 7点 黄昏の囁き- 綾辻行人 2023/08/06 23:07
ヘボ探偵すぎてたぶんここ30作品くらい連続で犯人が当てられていません(笑)

シリーズ3作品を通して読みました。
語り手の幼少期の封印された記憶が"囁き"という形で徐々に蘇ってくるのが共通ですね。物語の終盤までその記憶は2重3重に包み隠され、多用される色彩表現が幻想的な雰囲気を作り、表現し難い気持ち悪さがずっと味わえます。ずっと不安定なんですよねこの世界。最後には記憶の全貌と意外な犯人が浮かび上がり、モヤモヤが溶けました。
トリックや衝撃度は館シリーズに劣るけど、文体や雰囲気や読後の気持ち悪さはこちらの方が好みです。続編ないのですか?

シリーズの中で1番は僅差で『緋色の囁き』ですかねぇ…

No.167 7点 暗闇の囁き- 綾辻行人 2023/08/06 13:18
囁きシリーズ第二弾 
人形館〜霧越邸を描いた頃の綾辻先生、抜群に雰囲気がイイ。人形館と霧越邸好きなんです。ミステリというよりもオカルトホラー・幻想小説って感じで。で、この人形館と霧越邸の中間みたいな感じの作品が『暗闇の囁き』ですかね。
ずっと足場が不安定で眩暈のするような別世界にいる少年達。主人公との邂逅で交錯した異世界が一つの真実に収束する。そんな幻想的で救いのないお話でした。

個人的には舞台設定も含めて『緋色の囁き』の方がやや上かな。

No.166 8点 緋色の囁き- 綾辻行人 2023/08/05 16:36
綾辻先生が「今読み返すと赤面してしまう箇所がある」ってあとがきで言ってるけど、この文章が好きですよ。

【ネタバレがあります】



全寮制の厳格なお嬢様学校が舞台のキャッキャウフフな青春ミステリ…ではない!相当ホラー寄りです。
まあ十中八九二重人格オチだろうと半ば確信しながら読んでいくと、徐々に自信が揺らいでいく。いや…それでもさすがに…と思っていると反則スレスレの真相が待っています。
テーマはたぶん「血」ですよね。
ずっとこの作品に漂うカラーはタイトル通り緋色なわけですが、視覚的・物理的な血のみにとどまらず、DNAとしての血も内包しています。ラストの主人公の独白から、鮮やかな血に魅入られた母親と恐らく同じ末路を辿り、DNAには抗えないというメッセージでしょう。

No.165 7点 しおかぜ市一家殺害事件あるいは迷宮牢の殺人- 早坂吝 2023/08/04 10:46
新刊の書評なのに既に4件!
こういうのはいつも騙されるので幸せな脳です。おもしろかった。

No.164 9点 生ける屍の死- 山口雅也 2023/08/03 20:51
とんでもないのを読んでしまった。
いやこれはすごい。人生何周したらこのシナリオを思いつくのでしょうか??
特にこの作品のとあるミスリードは某国内作品の超有名なあのミスリードを遥かに超えてると思う個人的に。「なぜ死人が甦る世界で殺人が起こるのか?」動機には無限の可能性があることを示してくれました。そして「永遠」を失った人間がその代償として得た対価について問うエピローグはミステリの域を超えた。"性愛と死は兄弟" たっぷり謎解きを読ませたその先に作品の根幹にあったこのテーマを描き切った作者に拍手を。まさしく傑作中の傑作、大傑作です。

東西ミステリー15位とか10年間のミステリーで1位とか過大評価ではないと思う。審査員ウケも良さそうだし(笑)
は?じゃあなんでお前満点つけねえんだ?って言われると、エンタメ大好きマンにはキツいんだよ特に前半とか。ファストフード大好きな奴がマクドナルド行ったら高級フランス料理出てきたみたいな感じ。十分エンタメ作品ではあるし面白くないわけではないけど"すごい"って感情が勝つ。
なんか作品の重厚さに対して薄い書評になっちゃいました。

No.163 6点 彼女はひとり闇の中- 天祢涼 2023/07/31 22:47
倒叙形式は久しぶりなのでたまにはこういうのも良いね。
表紙もオシャレです。

No.162 5点 少女- 湊かなえ 2023/07/31 03:27
初湊かなえ作品
湊かなえとか東野圭吾とか辻村深月あたりの売れっ子の作家さんってどの方も文章がなめらかでスーッと頭に入ってくるから良いですよね。簡潔で物語を追う以外に一切の無駄がない感じ。

【ネタバレがあります】


テーマは友情(と因果応報)でしょうか。登場する3組の親友関係の中でもダブル主人公である敦子と由紀の脆くて繊細な関係がやはり共感を生む。お互いがお互いをどこか見下しながらも、自己より優れた個性を認めて足りないところを補完し合う。病院でのクライマックスはプライドの高い両者がそれを自覚するエピソードとして無理なく物語に落とし込まれているのではないかと思います。

No.161 6点 不連続殺人事件- 坂口安吾 2023/07/30 14:31
いやあ疲れた。名前持ちの登場人物が33人+α。今までで1番多かった『悪魔の手毬唄』の1.5倍くらいいるんじゃないか?よく多いと言われる『月光ゲーム』の2倍?
「登場人物一覧がない」とみなさんが書評で嘆いているけど、2018年新潮文庫刊行の文庫本にはちゃんと載っていました。登場人物一覧なしで読み進められた方に敬意を表します(笑)

純文学作家が探偵小説を書くって当時の本格ファンは嬉しかっただろうなあ。今なら村上春樹が急にコテコテのクローズドサークル書くようなもんか?


【ネタバレします】


「優れた犯人は心理の足跡がバレるのを嫌って密室なんて作らない」っての良いですね。この自論を主張するだけで終わるのではなく、きちんと即席の殺人による"心理の足跡"が決め手となって全ての謎が解ける構成になっているのも面白いです。

他の方の書評を見て知ったのですが、この作品があの「獄門島」と「刺青殺人事件」を抑えて日本推理協会作家賞ってまーじか。色々凄すぎるなこの1948年。

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