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皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止 していません。ご注意を!

弾十六さん
平均点: 6.13点 書評数: 459件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.239 6点 うまい汁- A・A・フェア 2020/01/29 00:22
クール&ラム第19話。1959年2月出版。HPBで読了。(なお、以下はAmazon書評をちょっと手直しした再録です。)
依頼人は15歳の娘、ラム君は無料でエルクス所属の叔父さんの捜索を引き受けます。バーサが受けたお金になる依頼は行方不明の夫の捜索。偶然を信じないラム君 。二つの捜査が絡まりあい一本の筋になるのは作者の得意技です。警察と新聞記者を相手に危ない橋を渡るラム君、こんがらがった筋書きを見事な推理で解決、なのですが、犯人側から再構成すると、計画の意図がよくわかりません…
(2017年7月15日記載)

No.238 5点 歌うスカート- E・S・ガードナー 2020/01/29 00:14
ペリーファン評価★★★☆☆
ペリー メイスン第60話。1959年9月出版。ハヤカワ文庫で読了。(なお、以下はAmazon書評をちょっと手直しした再録です。)
黒いストッキングと悪巧みの相談、メイスン登場は第2章から。判例をスラスラと暗唱し、相手を打ちのめしますが、策略はブーメランとなり結局メイスン自身を破滅に追い込みます。メイスンは若い女好きを自白。法廷は予審、バーガーがメイスンを磔にしようと頑張りあと一歩のところまで行きますが、土俵際で返され幕。事務所のドアにある「弁護士」のペンキ文字は今回も安泰です。
銃は.38口径スミス&ウェッソン リボルバー、シリアルC48809が登場。このシリアルはKフレームfixed sight1948-52年製Military&Policeですね。(同一番号の銃は今回でシリーズ3回目) メイスンの金庫には依頼人からとりあげた(surrendered)ピストルが相当数あり「警官用に準じた(one of a police models)」2.5インチ銃身の.38S&Wスペシャル、シリアル133347が登場。頭文字無しの数字だけのシリアルは1942年以前、この番号なら.38 Special Military & Police M1905 1st or 2nd changeで1908-1909年製くらいか。
文庫巻末にはお馴染み「があどなあ・ほうだん/3」今回のテーマは「異議あり」
(2017年5月6日記載)

No.237 6点 死のスカーフ- E・S・ガードナー 2020/01/28 23:53
ペリーファン評価★★★★☆
ペリー メイスン第59話。1959年6月出版。HPBで読了。(なお、以下はAmazon書評を手直しした再録です。)
Saturday Evening Post連載(1959-5-2〜6-20)ポスト誌集中連載時代(10年間に14作)の9作目。原題Mythical Monkeysは日本の三猿(みざる、きかざる、いわざる; see no evil, hear no evil, speak no evil)
謎の女性作家と美人秘書、メイスン登場は第4章から。メイスンが死体を発見する確率は50%とのトラッグ予想。レストランの席を予約したら事が起こって何度も食事おあずけの三人。法廷シーンは予審、異例の展開に判事も困惑、メイスンは上手く立ち回り、バーガーの告発をかわし、事件を解決します。今回はホルコムの出番なし、トラッグが優秀さを見せつけ、判事にも賞賛されます。本作が第4シーズンの最高傑作のような気がします。
銃は「22口径のライフル銃」が登場。ただし「22口径長距離ライフル」「22口径の長ライフル銃」と銃の種類のように翻訳されているのは弾丸の名称(.22Long Rifle)です。一般的には22LR、22ロングライフルと表記。この弾丸を発射出来る拳銃(コルト ウッズマンなど多数)もライフル銃もありますが、ここに出てくる銃は翻訳通り「ライフル銃」です。
宇野訳「22口径の、高性能を持つ銃でした。ふつうに、22口径長距離ライフルといわれているものです。(A twenty-two-calibre, high-velocity bullet of the type known as a long-rifle.) [試訳: 22口径で、ロング・ライフルという種類の高速弾でした。] 22ロング・ライフル弾には装薬量によりSubsonic, Standard-velocity, High-velocity, Hyper-velocityという4種類がある。
自動車は4輪駆動のジープ ステーション・ワゴン、エンジン6気筒の最初のモデル(だとすると1949年製Willys Jeep Station Wagon 4x663?)
タイプライターはレミングトンとスミス コロナが登場。専門家はタイプされた文字を見ただけでメーカーや型式を判別出来るらしいです。
(2017年5月6日記載)

No.236 5点 恐ろしい玩具- E・S・ガードナー 2020/01/28 23:18
ペリーファン評価★★★☆☆
ペリー メイスン第58話。1959年1月出版。ハヤカワ文庫で読了。(なお、以下はAmazon書評をちょっと手直しした再録です。)
Saturday Evening Post連載(1958-10-25〜12-13)ポスト誌集中連載時代(10年間に14作)の8作目。連載中のタイトルはThe Case of the Greedy Grandpa。
子供を殴る父、子供を取り戻したい母、メイスン登場は第3章から。子供が沢山登場します。(読んだのは偶然5月5日こどもの日) 学校が全焼したと聞いた7つの子供のような喜び方ってESGもそっちの仲間だと思います。シリーズ初、デラのファンが登場、デラに会って感激します。メイスンとデラは赤ちゃんを借りて小芝居、二人は上等なミント・ジュレップを楽しみますが、まんまと尾行されちゃいます。裁判は予備審問、バーガーは他人がメイスンにしてやられ憤慨するのを見て思わずニヤリ、メイスンへの告発を手助けします。最後はネチネチ尋問と閃きで解決、結末はちょっと心配です。
銃は22口径オートマチック・コルト・ウッズマン、シリアル21323Sが登場。シリアルから2nd series 1948年製です。もう一丁、38口径ライトウェイト・コルト・リボルバーも登場。こちらは情報なし。コルト コブラでしょうか。
(2017年5月5日記載)

No.235 5点 カウント9- A・A・フェア 2020/01/27 21:40
クール&ラム第18話。1958年6月出版。HPBで読了。(なお、以下はAmazon書評をちょっと手直しした再録です。)
C&R探偵事務所の女性職員はエルシー以外名無しでしたが、今回一人名前が判明、文書係エヴァ・エニス。でもバーサって、こーゆーセクシー系を雇うタイプとは思えないのですが... ラム君は写真屋から女性と仲良くなるコツを聞きます。密室っぽい設定と盗まれた東洋の秘宝探し。不自然な行動(襲われる直前のやつ)もありますが、起伏に富んだスピーディな展開で飽きさせません。解説では「本格物」要素が多いとありますが、いつものガードナー風味でした。
(2017年7月10日記載)

No.234 6点 カレンダー・ガール- E・S・ガードナー 2020/01/27 21:30
ペリーファン評価★★★★☆
ペリー メイスン第57話。1958年10月出版。ハヤカワ文庫で読了。(なお、以下はAmazon書評をちょっと手直しした再録です。)
政治ボスと小さな事故、メイスン登場は第2章から。デラと食事中に邪魔されます。トラッグもメイスンと会食、地味な警察捜査のやり方で久しぶりに活躍、今回はホルコムの出番無し。メイスンはモデルの写真が大好き。法廷シーンはいつもの予審ですが、2回開かれるという贅沢仕様、いずれもバーガーがやり込められます。
銃は三年前に盗まれた.38口径コルト連発銃(revolver)シリアル613096が登場。トラッグ証言では「警察式として知られている型(the type known as a police model)」シリアルで調べるとOfficial Policeなら1937年製、Officer's Model Specialなら1950年製、Police Positive Specialなら1952年製が該当。(いずれも38スペシャル弾) Wiki情報ではOfficial Policeが最も多く警察機関に納入され、コルト社カタログ(1933年)によるとL.A.市警も正式採用だそうです。自動車はスマートなキャディラック最新型が登場。
(2017年5月5日記載)

No.233 5点 気ままな女- E・S・ガードナー 2020/01/27 21:21
ペリーファン評価★★★☆☆
ペリー メイスン第56話。1958年5月出版。HPBで読了。(なお、以下はAmazon書評をちょっと手直しした再録です。)
Saturday Evening Post連載(1958-2-1〜3-22)ポスト誌集中連載時代(10年間に14作)の7作目。ヴァガボンドの衝撃的告白に打ちのめされる娘、運命に翻弄されます。メイスン登場は第2章から。むかしは帽子ピンが女の武器、今はアイスピックをハンドバッグに忍ばせるのが良い、という行動的な娘。恐喝者には平手打ちです。デラはミス・アメリカみたいな美人秘書だ、とホーカム(ホルコム)はお世辞、メイスンはミス・ユニヴァースと訂正。法廷は予備審問、メイスンはネチネチ尋問、バーガーは途中から参戦、目標は相変わらずメイスンの破滅。最後はメイスンの閃きで真相が判明します。判事は被告鑑別手続き(先入観を持たせた証人に被告が一人でいるところを見せ識別させる)が不適切だ、と検察側に反省を求めます。(似たような鑑別法がメイスン物では今迄何度も繰り返し描かれていますが、当時の実態がこの通りだとすると恐ろしいことですね…)
(2017年5月5日記載)

No.232 5点 長い脚のモデル- E・S・ガードナー 2020/01/27 21:12
ペリーファン評価★★★☆☆
ペリー メイスン第55話。1958年1月出版。HPBで読了。(なお、以下はAmazon書評をちょっと手直しした再録です。)
Saturday Evening Post連載(1957-8-10〜9-28)ポスト誌集中連載時代(10年間に14作)の6作目。連載時のタイトルはThe Case of the Dead Man's Daughter。結婚祝いの定番は、電気コーヒー沸かし、ワッフル焼き器、電気シチュー鍋。メイスンとデラはルーレットごっこをするが目が出ず、トラッグと追いかけっこ。メイスンが拳銃を弄んでると、ホルコムがズカズカ侵入、トラッグはバーガーに毒づきます。陪審裁判では冒頭からバーガーがメイスンを陥れようとしますが、ガーティのおかげで閃くメイスン、事件を解決します。
銃は.38口径コルト「銃身のずんぐりした2インチ径の弾巣の探偵用」(snub-nosed, two-inch barrel, detective guns「銃身2インチ、スナブノーズ型のデカ用拳銃」)、Colt Detective Specialのこと? Colt Official Police等も候補ですね。
(2017年5月8日記載)

No.231 6点 盗まれた手紙- エドガー・アラン・ポー 2020/01/25 22:56
初出は年刊誌The Gift for 1845(1844年9月発行)。創元文庫の『ポオ小説全集4』(丸谷 才一 訳)と青空文庫(佐々木直次郎訳)で読了。丸谷訳は相変わらずセリフが一部だけ丁寧になったりして気になります。(丸谷さんはそーゆー語り口だったのか。)
以前『クイーンの定員I』に感想を書きましたが、あらためて読んでみると、結構、上手くいく隠し方かも?と思い直しました。ほのぼのとした可笑しさが味ですね。Purloinといえば、この小説、というくらいの古風な珍しい語。直次郎訳のかつての表記『偸まれた手紙』なら良い感じかも。 (でも何故ポオはこの単語を使ったのだろう。フランス語っぽいから?)
原文はサイトThe Edgar Allan Poe Society of BaltimoreのTales(1845)バージョンを参照しました。
作中時間は「18**年、秋(p237, autumn of 18—)」でマリー・ロジェの「数年」(p238, several years)後、ということは1841年か1842年くらいか。
現在価値は、手持ちのが仏消費者物価指数は1902以降有効だったので、金基準1841/1902(1.00797倍)&仏消費者物価指数基準1902/2019(2630倍)で合計2651倍、1フラン=4.042ユーロ=489円で換算。
p237 セネカのエピグラム(Nil sapientiae odiosius acumine nimio): セネカではなく、ペトラルカのもの。De remediis utriusque fortunaeの第7の対話De ingenioより。(最初の語がNihilだが意味は同じらしい)
p237 フォーブール・サン・ジェルマン、デュノ街33、4階(au troisiême, No. 33, Rue Dunôt, Faubourg St. Germain): デュパンの「書庫兼書斎」(his little back library, or book-closet)の住所。残念ながらRue Dunôtは実在しないようだ。
p237 海泡石のパイプ(meerschaum): 何か響きが良いですよね。厳密に言うと「私」がミアシャムを楽しんでたのは確実だが、ここではデュパンは「いっしょ」だったと書かれてるだけ。後段p244でデュパンもミアシャムを使ってるのがハッキリします。
p242 ナポリ者(Neapolitans): 召使いは大抵ナポリ者だと言う。南フランスは貧しい印象があるが…
p242 ぼくの持ってる鍵: 警視総監のすごい武器。現実に似たようなネタがあったのか?
p242 三ヵ月間(three months): やっぱり本作の隠し方は無理。だって三ヵ月間ずーっと、手紙はそーゆー状態だったのでしょ? 探索が数回ならあり得るかもですが… (2020-1-26追記)
p244 一ラインの50分の1(The fiftieth part of a line): line=ligneは1/12インチ。英米式だと2.12mm、フランス式(メートル法以前の単位)なら2.25mm。直次郎訳註「1インチの1/12」は正確。丸谷訳註「約1ミリ」は、ボタンの直径を図る1/40インチ(約0.6mm)のline/ligneと混同した?
p248 五千フラン(fifty thousand francs): 丸谷訳のケアレスミス。50000フランは2445万円。
p248 アバニシー(Abernethy): John Abernethy(1764-1831) 英国の外科医。丸谷訳は注なしだが、直次郎訳註は丁寧「とくに、その奇矯な人格をもって知られていた。」
p250 丁半あそび(game of ‘even and odd’): 英wikiのOdds and evens (hand game)で解説されてるゲームとは違うようだ。作中の説明だと、おはじき(marbles)を握るのは聞く側一人だけで、答える側は握らない。
p259 緑いろの眼鏡(pair of green spectacles): 視線を相手に悟られないためか。
p261 手ずれがしている(chafed): 原語は「すり減ってる、擦り切れている」の意味。直次郎訳では「こすれている」
p262 マスケット銃(a musket): 先込め銃。当時ならパーカッション・ロックが主流。
p263 カタラーニ(Catalani): Angelica Catalani(1780-1849) 有名なイタリア人オペラ歌手。3オクターブ近くの声域。
p264 クレビヨンの『アトレ』(Crébillon’s ‘Atrée.’): Prosper Jolyot de Crébillon(1674-1762)は詩人、劇作家。引用されてる悲劇Atrée et Thyeste(1707)のAtréeとThyesteは兄弟で、Atréeが妻を奪ったThyesteに復讐する話。(直次郎訳の注が詳しくて良い。丸谷訳は註なし) 英Wikiによるとフランスの言語学者Milnerが1985年にD—とデュパンは兄弟という説を唱えてるらしい… 根拠はこの引用。ちょっと意表を突かれました。(確かにp254でD—は「二人兄弟(There are two brothers)」とありますが、奇説の類ですな。)

(2020-1-26追記)
本作は映画化されてませんが、TVシリーズSuspenseが1952-4-29に30分番組として映像化していて某tubeで見られます。残念ながらデュパンは登場しませんが、筋は結構忠実。隠し方を変更しててガッカリ。間のコマーシャルがカットされず残っているのがあって、当時のCMが一番面白かった… 主演Mary Sinclair, Arnold Moss, Edgar Stehli。

No.230 6点 スリップに気をつけて- A・A・フェア 2020/01/25 12:47
クール&ラム第17話。1957年10月出版。HPBで読了。(なお、以下はAmazon書評をちょっと手直しした再録です。)
指関節を叩くイライラさせる依頼人。今回は変な人たちが沢山登場。サンフランシスコが主な舞台(SFが美人の街という噂って本当かなあ)なのでセラーズ部長刑事は出てきません。登場人物たちのめまぐるしい行動で混乱しますが、最後はすっきりとパズルのピースが嵌ります。
(2017年7月15日記載)

No.229 6点 笑ってくたばる奴もいる- A・A・フェア 2020/01/25 12:40
クール&ラム第16話。1957年3月出版。HPBで読了。(なお、以下はAmazon書評をちょっと手直しした再録です。)
テキサス男が依頼人、めまぐるしい展開で休む間も無く進行するストーリー、相手をギャフンと言わせて終了。気持ちの良い幕切れです。ラム君はドイツ語が少しわかるらしい。セラーズ部長刑事が久しぶりに活躍。銃はほんのちょっとだけ38口径のピストルが出てきます。
(2017年7月8日記載)

No.228 6点 大胆なおとり- E・S・ガードナー 2020/01/25 08:50
ペリーファン評価★★★★☆
ペリー メイスン第54話。1957年11月出版。ハヤカワ文庫で読了。(なお、以下はAmazon書評をちょっと手直しした再録です。)
Chicago Tribune-New York News Syndicate 1957-9-8〜10-19連載(日曜版?、The Proxy Murderの題で掲載) 委任状戦争、甘い女の声、メイスン登場は第2章から。『日光浴者の日記』での宣言通り、交通法規を守るメイスン、きっかけは交通係記者が公表したメイスンの無謀運転の記事だという。水着女の写真に興味を持ち過ぎたメイスンは腕を捩じ上げられて悲鳴をあげ、無理やり強いウィスキーを飲まされます。メイスンの乾杯は久しぶりのHere's to crime。エレベーター・ガールが読んでいたエロい(spicy)ペイパーバックは「明日はスモッグなし」(No Smog Tommorow)。スモッグはWikiによるとLAでは1944年から発生。ホルコムは出しゃ張りトラッグは控えめ。デラは事務所の新兵器、大きな電気パーコレーターでたっぷりコーヒーを入れ、ポールは油断のならない荷物を抱え込み、徹夜仕事で胃を壊します。法廷は陪審裁判、バーガーはいつもの空回り、一方メイスンはハッタリが見事当たり事件は解決。50年代後半の本シリーズは真相の複雑さが減り、スッキリとなった印象です。
銃は38口径スミス&ウェッソン製レヴォルヴァ、シリアルC48809、三年前の9月購入。このシリアルはKフレームfixed sightで1948-1952年製、該当銃はMilitary&Police。もう一丁の銃、38口径コルト製レヴォルヴァ、シリアル740818、1年半前に盗まれたもの。このシリアルはOfficial Police 1948年製かOfficer's Model Special 1950年製です。(同一番号の銃が『メッキした百合』にも登場)
なお14-15章「顔に栄養をあたえる」(feed one's face)は米俗語で「食べる」の意味ですね。(faceが口の意)
(2017年5月4日記載)

No.227 5点 叫ぶ女- E・S・ガードナー 2020/01/25 08:37
ペリーファン評価★★★☆☆
ペリー メイスン第53話。1957年5月出版。ハヤカワ文庫で読了。(なお、以下はAmazon書評をちょっと手直しした再録です。)
嘘が嘘を呼ぶのですが、お互いはどう思ってたのでしょう? 全体的に何かモヤモヤした感じの話です。ホルコムもトラッグも出てきません。バーガーの異常な復讐心だけが際立っています。(私怨たっぷりの行動を露わにし始めたのは「消えた看護婦」あたりからかなぁ) 一生懸命にデラを讃えるところが微笑ましい。
(2017年5月4日記載)

No.226 6点 運のいい敗北者- E・S・ガードナー 2020/01/25 08:28
ペリーファン評価★★★★☆
ペリー メイスン第52話。1957年1月出版。ハヤカワ文庫で読了。(なお、以下はAmazon書評をちょっと手直しした再録です。)
Saturday Evening Post連載(1956-9-1〜10-20)ポスト誌集中連載時代(10年間に14作)の5作目。メイスンは匿名の依頼人から裁判を傍聴する役目で雇われます。轢き逃げ裁判で他の弁護士の反対尋問を見物。妥協せず戦うことの価値を説く、被告の叔父。人身保護に関する審理でメイスンは重要な争点を指摘し、陪審裁判では偽装を破れず追い詰められますが、閃きの一撃で鮮やかに解決します。遂にメイスンに勝てると見込んでわざわざ法廷に駆けつけたバーガー、真実が明らかになってもグズグズとメイスンの非行を非難する姿が哀れです。銃は.22口径の自動拳銃が登場、メーカー等詳細不明。なおThe Perry Mason Bookによると第12章に出てくる判例中の「クルーパ」はジャズドラマーのジーン クルーパだそうです。
(2017年5月3日記載)

No.225 5点 マリー・ロジェの謎- エドガー・アラン・ポー 2020/01/24 03:41
初出Ladies’ Companion 1842-11, 12, 1843-2(三回分載)。創元文庫の『ポオ小説全集3』(丸谷 才一 訳)と青空文庫(佐々木直次郎訳)で読了。丸谷訳は相変わらずデュパンのセリフが急に丁寧になったりして変テコ。文章もこなれてない感じで流れが悪く読みにくい。直次郎訳の方が『モルグ街』同様、安定していて読みやすいです。
金欠のポオが当時話題のMary Cecilia Rogers殺人事件(Wiki「メアリー・ロジャース」参照)をネタにして稼ごう、という趣旨で『ポオ書簡集』を読むと雑誌発表前1842-6-4の手紙で、編集者たちに売り込んでいます。(100ドルの価値があるけど…と吹っかけておいて、グレアムズ誌に50ドル=17万円、ボルチモアの編集者に40ドル=14万円を提示。米国消費者物価指数基準1842/2020で31.34倍により換算) その手紙の中では「デュパンが謎を解く」unravelled the mysteryとあります。原型ではちゃんと解決までいってた?
作品の発表時と単行本版には作者の原注にあるように異同があり、私の興味は、①この作品と実在の事件の違いはどの程度?と②ポオはどのくらい書き直したのか?というものでした。ネットに雑誌発表版と単行本版(Tales 1845)を収めた便利なサイトThe Edgar Allan Poe Society of Baltimore(www.eapoe.org/works/info/pt040.htm)があったので、斜め読みしたところ、注釈以外は大きな変動はない様子。どうやら現実の事件で1842年11月ごろ重大告白(Mrs. Loss)の発表があり、連載中に原稿をいじったらしく、そのため連載三回目が一か月延期になったようです。(オリジナル原稿は残っていないらしい。) 多分連載三回目の分に多くの修正が入っているはず。2回目の始まりは(以下、創元文庫のページ数)p170「そこで、すぐ判るだろうけれど…」(YOU will see at once that...)、3回目の始まりはp193「話をさきに進める前に…」(BEFORE proceeding farther...)です。
小説では、途中までデュパンがある人物に疑いを振っているのですが、最後は腰砕け。ラストは、パリの事件とニューヨークの事件との類似はあくまで超偶然なので、デュパンの方法を現実に当てはめちゃダメよ、という情けない終わり方。(これは訴訟対策なのか?) ジャーナリズムと探偵小説の深い関係が印象に残りますが、デュパンの推理が驚きに満ちたものでもないので、特別面白いとは言えません。
以下、トリビア。翻訳及びページ数は創元文庫。原文は上記サイトの単行本版テキスト。
作中時間は『モルグ街』の「約二年後」(p149)、「18**年6月22日、日曜日」(p153)が手がかり。日付と曜日が一致するのは、作品発表時1842年の直近は1834年。閏年の飛びを無視して曜日が1年に1日ずつずれるとして遡及計算すれば『マリー・ロジェ』1839年、『モルグ街』1837年となり『モルグ街』の設定にも一致して良い感じ。(ポオは閏年の曜日の飛びを充分理解してなかったのでしょう。)
現在価値は、手持ちのが仏消費者物価指数は1902以降有効だったので、金基準1839/1902(0.98倍)&仏消費者物価指数基準1902/2019(2630倍)で合計2577倍、1フラン=3.93ユーロ=475円で換算。
p146 注釈: バツの悪い感じの書き方。ポオは「失敗」を自覚しています。
p147 二人の人物の告白(confessions of two persons): 一人はFrederica Lossだが、二人目は誰のこと?Andersonの秘密は1891年まで公になっていなかったはずだが…
p150 五か月(about five months): 最初の失踪から次の失踪までの期間。現実の事件では1838-10と1841-7で約2年9月。
p151 一千フラン: 47万5000円。当初の懸賞金。確かに安い。
p151 二万フラン: 950万円。
p152 二人の全精神を集中せねばならぬほどの、ある研究に従事(Engaged in researches which had absorbed our whole attention): 『モルグ街』と同様、二人は謎の研究にかかりきり。
p153 率直でかつ気前のよいある申し出(a direct, and certainly a liberal proposition): この表現だと大金を積んだ、ということか。
p153 緑色のレンズの底(beneath their green glasses): サングラスか。
p156 女結び(レデイズ・ノット)ではなく、引き結び(スリップ)すなわち水夫結び(セイラーズ・ノット)(a lady’s, but a slip or sailor’s knot): 『モルグ街』と似たような手がかり。slip knotは見つかったが、lady’s knotがWeb検索や辞書で見当たらない。イメージとしては蝶結びだが… (ここではボンネットの紐の結び目)
p158 死体に向けて大砲を射った(a cannon is fired over a corpse): ここは丸谷訳の明白な誤り。直次郎訳では「死骸の上で大砲を発射」川の付近で大砲を撃つと、衝撃で引っかかりが外れ、底に沈んでいた死体が浮き上がることがある、という意味だと思います。
p166 センセイショナリズム: いまも変わらぬマスコミの本質ですね。
p167 文学の場合でも推理の場合でも、最も直接に、そして最も広く理解されるのは警句(エピグラム)(In ratiocination, not less than in literature, it is the epigram which is the most immediately and the most universally appreciated): ratiocinationは1843年John Stuart Millの用例あり。当時の流行語だったのか。
p174 足跡(trace): 丸谷訳は限定し過ぎでは? 直次郎訳では「形跡」
p176 発見されたガーターの止め金は小さくするために逆に動かしてあった(the clasp on the garter found, had been set back to take it in): どうして知人(男)がガーターの設定を知ってたのか?ガーターって見せびらかすものなのか。実際の事件では母親がそのことに気づいたようだ。(詳しく確認してません。) 直次郎訳では「靴下留めを縮めるためにその釦金(とめがね)がずらしてあった」
p183 最近ハンカチは、悪党にとって必要不可欠なもの(absolutely indispensable, of late years, to the thorough blackguard, has become the pocket-handkerchief): そーゆーものですか。
p188『ディリジャンス』6月26日(原注ニューヨーク・スタンダード): この記事(第六の切り抜き)だけ実在せず、ポオの創作か?と疑われたが、注釈の書き間違いでNew York Times and Evening Star紙に該当記事があった。
p190 他人には知らせない或る目的(for certain other purposes known only to myself): ここは単行本での追加。ここら辺、雑誌発表時には「駆落」限定のように書かれており、他にもニュアンスを変える追加があります。(p191「少なくとも数週間は--あるいは隠れ家がみつかるまでは帰らないつもりなのだから」)
p212 オール六(sixes): 欧米ではクラップスのような二つのサイコロを使うゲームが一般的なような気がする。オール六だとチンチロリンみたいな感じ。直次郎訳では「六の目」、試訳「六が揃う」

ついでにマリア・モンテス主演の映画(MYSTERY OF MARIE ROGET 1942)[英語版、字幕なし]を見ました。作中年代は1889年でモンテスはミュージカルスター。デュパンは警察の研究所に勤める医師?という設定。モルグ街に死体安置所があったりします。原作とはほとんど関係ない筋。大砲を撃って死体を浮かばせようとするシーンが面白かった。まーお気楽・安易な探偵ものなので評価4点程度です。

No.224 6点 メッキした百合- E・S・ガードナー 2020/01/20 01:54
ペリーファン評価★★★★☆
ペリー メイスン第51話。1956年11月出版。HPBで読了。(なお、以下はAmazon書評をちょっと手直しした再録です。)
恐喝と美女、犯罪が起きた後でメイスン登場、第5章からです。
「ごゆっくりモテル」はStaylonger Motelの翻訳。刑事連は友好的なトラッグ(ただし「ペリー」とは呼ばない)と強引なホルコム。大陪審経由なので検察側のネタ不明状態で陪審裁判に臨むメイスン、更にバーガーは手の内を隠すため、冒頭弁論を棄権(先例の無い行為、と自ら言う) 被告に無能扱いされるメイスンですが、鮮やかな逆転劇を演出し事件を解決します。(性懲りもなく騙されちゃうのがバーガーです) 「犯罪に乾杯」が出てきますが、メイスンのセリフではありません。
銃は被告が5年ほど前に買った0.38口径のコルト六連発廻転拳銃、青っぽい鋼鉄製、シリアル740818が登場。シリアルからOfficial Police 1948年製かOfficer's Model Special 1950年製が該当。(よく似たシリアル704818のコルト製38口径リボルバーが登場するのは「怒った会葬者」、メイスンものには拳銃のシリアルの使い回しが結構あります)
(2017年5月3日記載)

No.223 6点 とりすました被告- E・S・ガードナー 2020/01/20 01:43
ペリーファン評価★★★★☆
ペリー メイスン第50話。1956年5月出版。HPBで読了。(なお、以下はAmazon書評をちょっと手直しした再録です。)
Saturday Evening Post連載(1955-12-10〜1956-1-28)ポスト誌集中連載時代(10年間に14作)の4作目。連載中のタイトルはThe Case of the Missing Poison。眠る女と医師の不気味な実験室から始まる物語、メイスン登場は第2章から。5ドルで子供たちを手なずけるメイスン。メイスンの乾杯は「健康を祝して」トラッグ久々の顔出し、嬉々として新聞発表をする「ホーカム」巡査部長はお馴染みホルコムのことですね。チョコレート・サンデーに抵抗できず肥りかけた20代の半ばすぎのガーティ。裁判の予想は10対1でメイスンの不利、バーガーは嵩にかかって攻め立てますが、メイスンの鋭い指摘でヘナヘナとなります。解決は鮮やかですが検察側が間抜け過ぎです。
銃は登場しませんが、レミントン製UMC16番と刻印された16ゲージの猟銃の弾が登場、散弾ですね。
(2017年5月1日記載)

No.222 6点 怯えるタイピスト- E・S・ガードナー 2020/01/20 01:37
ペリーファン評価★★★★☆
ペリー メイスン第49話。1956年1月出版。ハヤカワ文庫で読了。(なお、以下はAmazon書評をちょっと手直しした再録です。)
フランス、イギリス、南アフリカ -- 国際色豊かな事件。完璧なタイピスト、消えた女、古風な手紙、宝石密輸事件が道具立てです。ロボトミー手術を受けた男が出てきたり、綱引き(7月4日に田舎町でやっているらしい)のコツが語られます。今回は被告側が反対尋問出来ない起訴陪審(grand jury「大陪審」と訳されることが多い)経由なので、何が出てくるか五里霧中で陪審裁判を迎えます。いやに自信たっぷりなバーガー、メイスンは焦りますが… ラストはちょっとどうかなあ、というややスッキリしない感じ。
ジャクソンとトラッグは名前だけ登場、二人ともしばらくご無沙汰です。
文庫版には「があどなあ・ほうだん/5」が付属、弁護士の秘密交通権についての解説があります。
(2017年4月30日記載)

No.221 6点 小鬼の市- ヘレン・マクロイ 2020/01/18 23:18
1943年出版。ウィリング第6作。本作もDellのMapbackになってて、サンタ・テレサ島の全体が見渡せます。同じDellの表紙に「小鬼」も描かれています。
肝心の内省が省かれてて、いつもの最後はコレジャナイ感。でも今回はストーリーとマッチして結構心地良いラスト。
あらためてマクロイさんは素直な人だな〜、と感じました。今まで読んだ本格ものの筋もよじれてないし、本作のように陰謀を描いてもストレート過ぎです。このさばさばしたあっさり味が、今はとても気に入って続けて読んでいます。全然、胃もたれしません。(探偵ウィリングのキャラも推理もあっさりしてますね。)
ところでカリブ海といえばヴードゥーかな?と思ったのですが、出てきません。そーゆーどことなくちゃんとしてるところがマクロイさんらしくて良いですね。
本作はスパイ冒険もの。格闘シーンも頑張ってます。(理屈優先過ぎですが…) 女性記者のキャラが良い。(もしかしてマクロイさんの自画像?根拠はありません…)
以下トリビア。
作中時間は1943年1月4日(p15)と明記。
現在価値は米国消費者物価指数基準1943/2020で14.85倍、1ドル=1620円で換算。
p39 あるフランス人女性は断頭台へ向かうとき「誰でも最後の一歩は絶対に踏みはずしたくないものです」(One would not wish one’s last step to be a faux pas): 調べつかず。
p48 生年月日1906年7月5日: とすると主人公フィリップ・スタークは現在36歳ということになる。ウィリングはWWIにも参加(『家蠅とカナリア』)、45歳くらいか。
p63 バートレット引用句辞典…ロジェ類語辞典: Bartlett's Familiar Quotations(初版1855)、米国人John Bartlett(1820-1905)編集。Roget's Thesaurus(初版1852)、英国人Peter Mark Roget(1779–1869)編集。
p69 ジョニー・ウォーカー: Johnnie Walker(このブランド名は1909から)、Kilmarnockのスコッチ・ウィスキー。 「ジョニ黒」という語は何か懐かしい。
p85 最近ニューヨークでホールドアップと呼ばれている路上強盗(casual muggers, as hold up men were now called in NewYork): この頃の言葉だったのか。
p86 幻という強い絆があれば、死者と生者はともに暮らしていけるのです(By the strong bond of illusion, the dead and the living are bound together): 訳注で「牡丹灯籠」より、とあるがラフカディオ・ハーンのA Passional Karma(In Ghostly Japan(1899)収録)には該当なし。調べつかず。
p90 五百エスクード: Escudo、架空の国サンタ・テレサの通貨単位。ポルトガル・エスクード換算だと金基準1943/1956で1.23倍、ポルトガル消費者物価指数基準1956/2020で100.62倍(=0.5ユーロ)なので合計123.76倍(=0.615ユーロ)、500エスクードは37144円。
p101 ラヴェルの曲: p232ではロマ音楽と言われています。Tzigane(1924)か。
p118 ホイッスラーの言う“マントルピースの上にある見苦しい興ざめな物”(Whistler's “something awful on the mantelpiece that gives the whole show away”): Symphony in White, No. 2: The Little White Girl(1864)のこと?調べつかず。
p124 キップリング… “新聞の威力”: 調べつかず。ジャーナリスト賛歌ですね。
ローマ教皇は禁止令を発令できる/大英帝国の命令も絶対である/しかし泡は必ずつつかれ、はじける/われわれのような者たちの手で
p132 トロイのの要塞と馬の頭(walls of Troy and the head of a horse): Who’s Calling?(1942)より。若干のネタバレ。
p133 五十ドル: 81000円。精神科医への謝礼。
p140 ペトラルカの手書き文字をもとに考案されたとされる優雅なイタリック体(the elegant italic script said to have been first copied from the handwriting of the poet Petrarch): 調べつかず。「ペトラルカ (1304-74) がCarolingian minusculeを真似て使い出したfere-humanisticaと呼ばれる書体」(国会図書館HP)というのがあったが、そちらはローマン体のようだ。
p154 百エスクード: ポルトガル・エスクード換算なら7428円。一ヶ月の生計費らしいので、サンタ・テレサのエスクードはポルトガル・エスクードより高い?(物価を考えると同じくらいなのかも。)
p155 コントラクト・ブリッジのお相手も出来ます(I can even play contract bridge): いろいろ役に立ちますよ、ということで、何か深い意味があるわけじゃない…と思う。
p160 通貨単位がエスクードじゃなくてドルだったら、払えなかった(If he'd had to pay in dollars instead of escudos, he couldn't have done it): ということはエスクードはドルより結構安いようだ。
p176 千ドル: 162万円。
p176 メキシコ・ドル: 8レアル銀貨(規定量目27.073グラム、規定品位90.28%)のことらしい。当時もメキシコの貨幣単位はpeso。1943年の銀価格は0.45ドル/オンスなので、1メキシコ・ドル=0.43ドル。
p178 半年間の給料が1000ドルにも満たない雑用係: 年収324万円以下。
p180 こちらとニューヨークは… 経度は同じ: サンタ・テレサの地理的な設定。ニューヨーク(74.0059)はカリブ海のハイチ(ポルトー・プランス72.3074)とジャマイカ(キングストン76.8099)の間。
p184 三百エスクード: p9の三週間分の下宿代(a board bill overdue for three weeks)、正確には294エスクード(p198)、ポルトガル・エスクード換算だと21840円、月額31548円。
p210 ホイッスラーが描いたフリュネーの裸体: Purple and Gold: Phryne the Superb! - Builder of Temples(1901) by James Abbott McNeill Whistlerのことか。
p228 イギリスでは“野生の蜂蜜”として知られる地元産の奇妙な果物… 見た目はカラーの花とパイナップルを合わせたような感じで、ラテン語名には“おいしい怪物”という意味がある(the odd native fruit known as “wild honey” in English—something between a calla lily and a pineapple with a Latin name meaning “delicious monster.”): 調べつかず。架空のものか。
p232 ロマ音楽(Gypsy music): 「ジプシー音楽」と訳せば良いような気がします。
p268 アメリカ人用の朝食、すなわちコーンフレーク、ポスト・トースティーズ、グレープナッツ、シュレッデッド・ホイートなどのシリアル類: Henry PerkyのShredded Wheatは1890年、KelloggのCorn Flakesは1894年、PostのGrape-Nutsは1897年、Post Toastiesは1904年。wikiのList of breakfast cereals参照。
p270 “記者は眠らない”(Newspaper correspondents seldom die and never sleep): We Never Sleepはピンカートン社のキャッチフレーズ。翻訳ではseldom dieが抜けてます。
p272 満州族による南京陥落: 清の曾国藩が1864年に太平天国の首都天京(南京)で行った大虐殺。
p272 ノルマン朝によるベリック占領: 1069-1070のWilliam's Harrying of the Northのことか。
p277 コルトの38口径のリヴォルヴァー: 当時ならOfficial Police、Detective Specialなど候補は豊富。Official Policeの戦時手抜きバージョンCommandoが適当か。
p280 カメラをぶら下げた能天気な観光客: 私も大嫌いです。
p313 A・E・W・メースンの小説: 連想からややネタバレ物件かも。読んだことがないので私には不明。
p352 スコットランドの東海岸: 珍しく次作The One That Got Away(1945)の予告か。

No.220 6点 あなたは誰?- ヘレン・マクロイ 2020/01/13 06:37
1942年出版。ウィリング第4作。例によってDellのMapbackがあります。翻訳は情景描写の癖がちょっと気になる感じですが、まあ好みの問題?私は駒月ファンです。
冒頭から不気味な電話… 素晴らしい!でも解決篇はコレジャナイ… マクロイさんのラストには、いつもこんな感じが付きまとうのですが、ようやく正体がわかりました。マクロイさんは、登場人物それぞれの内省たっぷりな記述スタイルで、それが臨場感を生み出してるのですが、真相とそれまでの内省が一致しないのです。一種の叙述トリック。読み返してみると、ギリギリ違反ではなく、上手くすり抜けてて感心しますが、でも当然の内省がワザとはぶかれてる感じ。なので、真相でいきなり裏設定を明かされても、ナンカ違うんじゃない?という落差を感じてしまうのでしょう。
ところで心ならずも三流小説で稼ぐ女流作家が登場するんだけど、マクロイさん自身のこと?…ではないと思いたいなあ。
以下トリビア。
献辞は「R・C・Mに」調べつかず。
作中時間は、冒頭から「十月三日金曜日」で1941年が該当。登場するヒトラーねたが他人事のようなのは米国参戦前だからなんですね。
現在価値は、米国消費者物価指数基準1941/2020で17.50倍、1ドル=1909円で換算。
p11 ニューオリンズのパテの高騰(the high price of putty in New Orleans): 具体的な何かがあったのかな?と思ったけど調べつかず。
p13 長距離電話(long-distance call): 交換手を通さない長距離電話が可能となったのは1951年以降、とのこと。(wiki: Long-distance calling)
p19 二十五ドル: 第一次大戦直後の25ドルなので、米国消費者物価指数基準1918/2020(17.03倍)で計算すると46450円。1000語の風刺短篇の原稿料(1語2.5セント) 。もしかしてマクロイさんの初原稿料なのか?
p19 年数千ドル(several thousands a year): 2000なら382万、3000なら573万円。
p24 ター・ベビー(Tar Baby): Joel Chandler Harris(1848-1908)のUncle Remusシリーズ(1881-1907)に出てくる、ウサギどん捕獲目的で作られた、もの言わぬタール人形。真っ黒な犬なんでしょうね。まとわりつく感じからの連想か?
p25 クロード・ロランの風景画: Claude Lorrain(c.1600-1682)、フランスの画家。
p27 フルバック: ランニングバック(RB)の道を開けるブロッカー。頑強で足の速い男。昔は(大学では今でも)ボールを持つプレーが多かったらしいので、そちらのイメージか。
p57 足の速いブガッティ: 当時ならBugatti Type 57(1934-1940)か。
p57 白ネクタイ… 黒ネクタイ: ドレスコードはよく知らないのですが、Wiki “Formal wear”を参照するとwhite tie (dress coat) after 6 p.m.かevening black tie (dinner suit/tuxedo)のどちらか、ということ? 後段(p103)で、燕尾服を持ってない若者たちも来るから黒タイにした、とか「ワシントンなら、たしなみのある男が女性も参加する夕食会に黒ネクタイで来るなんて考えられない」という発言あり。
p68 月光ソナタ: Moonlight Sonata(1801)、Beethoven作曲、Piano Sonata No. 14 in C♯ minor "Quasi una fantasia", Op. 27, No. 2
p73 メレディス: George Meredith(1828-1909) 英国作家。コナン・ドイルの時代にやたら尊敬されてた作家、との印象あり。
p82 家に鍵をかける者はいない: 田舎はそーゆー感じですよね。なので「密室殺人」は都市化でお互いが信用できない時代の産物だと思うのです。
p84 人前でラブシーンを演じるような婚約カップル: 米国でも当時は珍しかったのか。
p91 チョコレート: 飲用のチョコレートのレシピあり。ポアロが飲んでたのも、こーゆーのか。
p122 ベルグソンの生命論: élan vitalですね。p243にも『笑い』(1900)が出てきます。Henri-Louis Bergson(1859-1941)はフランスの哲学者。
p131 “花形”の古い定義: 落語に出てくる長唄のお師匠さんを思い出しました。
p151 A&Pのスーパーマーケットもありません。郵便局と教会が一つずつあるだけ: 田舎の風景。The Great Atlantic & Pacific Tea Companyは1940年代がピーク。全米10%のgroceryシェアがあった。
p153 年額2万5000ドル: 4773万円。
p161 短銃身のリボルバー… ルガー: ボディーガードがヨーロッパ(イタリア?)から持ち込んだもの。Lugerピストル(正式名称Pistole Parabellum P08)はリボルバーではなくオートマチックだが…。通常は3.9インチ銃身だが短銃身版も作成されている。
p192 アーティマス・ウォード: 米国のユーモア作家Charles Farrar Browne(1834-1867)の変名。米国初のスタンダップ・コメディアンと目されているらしい。作中の引用はArtemus Ward His Book (1862)の中のOne of Mr. Ward’s Business Lettersより。
p194 金枝篇: James George Frazer(1854-1941)著、The Golden Bough(初版1890) ベルグソン同様1941年死去。死亡記事で思い出してる?
p211 しゃべる男と聞く女は馬が合う(カタカナから復元すればVille qui parle et femme qui ecoute se rendreか?): 検索するとVille qui parlemente est à demi renduë. Façon de parler proverbiale, pour dire qu' une fille ou une femme qui écoute des propositions n'est pas éloignée de les accepter & de se rendre.が見つかりました。(「砦が交渉を始めたら降伏も同然」女性が話を聴いてるってことは断る姿勢ではない、という諺。)
p220 幹線道路では時速30マイル: 48km。速度制限。
p220 フランスの75ミリ砲より大きな野砲: 75ミリ砲(Canon de 75 modèle 1897)はフランス軍が開発した大砲の革命。世界で初めて液気圧式駐退復座機を搭載し、飛躍的に連射速度が向上した。当時の米国でそれより大きな野砲なら90–mm Gun M1(1940)か。
p235 スティルマンの訴訟事件: James A. Stillman(1873-1944)、president(1919-1921) of National City Bank of New York。
p235 ホール=ミルズ殺人事件: Hall–Mills murder case。1922年9月14日にSomerset, New JerseyでEleanor Reinhardt Mills(34)とRev. Edward Wheeler Hall(41)が32口径のピストルで射殺された事件。
p239 ひげそりも歯ブラシも電動式: ちゃんと動くelectric razorはドイツ人Johann Brueckerの発明(1915)、米人Jacob Schickは最初のelectric razorパテントを1930に取得、Remington Randはelectric razorを1937に製造した。Philips(Alexandre Horowitz)の回転式刃の米国上陸はWWII後らしい。電動歯ブラシの方は1954年の発明らしいが…(Broxodent, Switzerland)
p250 六千ドル: 1145万円。
p263 道化者は真の世界市民: 有名な文句?
p314 一着20ドルもした下着: 38180円。女性の高級下着。

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弾十六さん
ひとこと
気になるトリヴィア中心です。ネタバレ大嫌いなので粗筋すらなるべく書かないようにしています。
採点基準は「趣好が似てる人に薦めるとしたら」で
10 殿堂入り(好きすぎて採点不能)
9 読まずに死ぬ...
好きな作家
ディクスン カー(カーター ディクスン)、E.S. ガードナー、アンソニー バーク...
採点傾向
平均点: 6.13点   採点数: 459件
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E・S・ガードナー(95)
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雑誌、年間ベスト、定期刊行物(19)
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カーター・ディクスン(18)
アントニイ・バークリー(13)
G・K・チェスタトン(12)
ダシール・ハメット(11)
F・W・クロフツ(11)