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[ ハードボイルド ]
探偵コンティネンタル・オプ
コンチネンタル・オプ
ダシール・ハメット 出版月: 1957年01月 平均: 7.25点 書評数: 4件

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六興・出版部
1957年01月

早川書房
1976年01月

No.4 7点 クリスティ再読 2020/06/12 19:14
コンチネンタル・オプの通常営業回。でもユーモラスなファンタジー①とかアクションの面白味のある⑤とか、バラエティに富んでいる。
①「シナ人の死」はやはりねえ「秘密暴き手閣下」「ナゾ解き皇帝陛下」「狩人の王子」「人狩り大公殿下」「スパイの王さま」「謎解きの名人」「探偵国の皇帝陛下」「ドロボー退治の王子」だのオプを褒め殺そうとするチャン・リン・チンのおだて文句が素敵。ゴテゴテしたヘンテコな話だが、ファンタジーと思って読めばいいだろうな。
②「メインの死」は、これ「セールスマンの死」か。リアリティのあるトリックでナイスだと思う。こういうのに評者はハメットらしい「ミステリ」を感じる。
③「金の馬蹄」人探しモノでティファナまで出張。少々話がロスマクっぽいか(苦笑)。臨時でオプが雇うエキストラの使い方が結構笑える。オチの付け方がハメットらしい因果応報。
④「だれがボブ・ティールを殺したか」後輩殺しを追求するオプ。冒頭の「おやじ(オールド・マン)」の描写がすべてじゃないかな。アリバイ工作としてなかなかナイスなアイデアがあるから、意外にトリッキーな作品としても面白いと思うんだが。
⑤「フウジス小僧」まあ「小僧」という柄じゃないから「フウジス・キッド」の方がカッコいいや。後半の密室劇でドンドンと野郎どもが片付いていくさまが非情。後先考えずに猪突猛進するフウジス・キッドのイケイケなキャラに妙な迫真性がある。悪党たちの個性もバラけていて、よく書けた作品。

なかなかナイスな短編集。でも短編集5冊でやっと 30/61。まだまだ道のりが遠い...

No.3 7点 弾十六 2020/04/18 12:23
グーテンベルク21の電子本(砧 一郎 訳)で読了。翻訳は意外と古くなっていないが「ぼく」では若過ぎる。全体的にもう少しこなれた感じに出来そう。是非とも創元社は若い翻訳者を起用してブラック・マスク等の初出テキストに準拠した『シン・ハメット短篇全集』を刊行して欲しい。(←多分、売れないと思う…)
以下は初出順に並べ直し。カッコ付き数字はこの本の収録順。初出データは小鷹編『チューリップ』(2015)の短篇リストをFictionMags Indexで補正。K番号はその短篇リストでの連番。#はオプものの連番。
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⑶ The Golden Horseshoe (初出The Black Mask 1924-11)「金の馬蹄」K30 #13: 評価6点
スピーディーな展開で地に足がついた捜査手法だが、死体は大盛り過ぎ。荒々しい大男のキャラ描写が上手。ダメ男の弱さも理解している。ふと思ったがTV映えしそうな話。1920年代米国を忠実に映像化するなら、オプものは派手だし魅力的な女も出てくるしで良いチョイスだと思う。(2022-2-11原文入手。追加分は❤︎で示した)
p1993/4344 ニッケルめっきした安ものの32口径(❤︎a cheap nickel-plated .32)♠️なんとなくリボルバーな感じ。
p1993 十ドル♠️米国消費者物価指数基準1924/2020(15.13倍)、$1=1662円で換算して16620円。
p2015 ハモウチャ(❤︎Jamocha)♠️悪党の通称。語感が面白いが何由来だろう? 原文発注中。(2022-2-11追記: java+mochaでコーヒー、(クロンボの)間抜け野郎、という意味らしい。発音はジャモウカ)
p2131 となりの部屋にはいり♠️Black Mask誌の原文ではコックニーたっぷりの歌が挿入されている。汚いヤク中街のかわい子チャン、彼氏とへべれけ、このアマ、夜じゅう大騒ぎ… みたいな歌詞。(❤︎2022-2-11追記)
p2421 五ドル♠️ほんのちょっとした手伝いの報酬
p2484 コンビネーション♠️ツナギの下着?パジャマの代わりに身につけようとしている。
p2524 古い黒しあげのピストル♠️お馴染みオプの古いリボルバー。オプならS&Wだと勝手に想像、普段使いなら短銃身のミリタリー&ポリスを推す。
(2020-4-17記載; 2022-2-11追記)
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⑷ Who Killed Bob Teal? (初出True Detective Mysteries 1924-11 挿絵画家不明)「だれがボブ・ティールを殺したか」K31 #14: 評価6点
ブラック・マスクが買わなかった作品。それで実話系雑誌に掲載された。(掲載時の作者名はDashiell Hammett of the Continental Detective Agencyとなっていて実話っぽさを盛り上げている)
探偵らしい捜査と活劇の話。冒頭のネタがラストで有耶無耶、という評価(小鷹さん)があるが、私はこれで良いと思う。当時既に仲間の死がテーマのおセンチ小説は沢山あったはず。現実はこんなもんだよ、とハメットが言ってるような気がする。
なお、Dead Yellow Women(1947)収録のダネイ版は随分語句を削っているが、この翻訳はオリジナル・テキストによるもののようだ。(Don Herron主宰のWebサイトでざっと確認) 単行本は翻訳時(1957)にはダネイ版しか無かったような気がするが、砧さんは正しいテキストをどこで入手したのだろう?
p2749 三二口径(a thirty-two)…小型の自動ピストル(p2923, a small automatic pistol)◆当時のベストセラーはブローニングFN M1910だが、他にも候補は沢山。銃を特定出来る情報は記されていない。
p2789 実名をもち出すことが、迷惑のたねとなったり…◆ここら辺、実話っぽい文章が挿入されている。この雑誌用に追記したような感じ。
p2809 二重にくくれた顎(the cleft chin)◆この訳だと意味不明だが、ケツ顎のこと。「割れ顎」が正しい日本語のようだ。
p2906 二十五ドル◆上記の換算で41550円。妻の全財産。
p3018 三二口径のピストルの弾丸の、封を切ったばかりの箱がひとつ――十発足りなくなっている(a new box of .32 cartridges—ten of which were missing)◆2発発射されてて、ブローニングM1910拳銃にフルロードなら7発マガジンに、1発薬室に、で一応数は合う。でも多分そーゆー意図ではなく、犯人が使う時、手掴みで大体の分を持ってったらそれが10発分だった、ということだろう。(正確に10発使う場合、まずマガジンに7発入れて2発撃つ。そーするとマガジンに4発、薬室に1発入った状態になるので残りの3発をマガジンに込める、という段取り。あまりやる意味が無い…)
p3025 係長(the captain)◆「デカ長」と訳したいなあ。
p3048 通話ごとに料金を入れる式の電話(It’s a slot phone)◆1911年からニッケル、ダイム、クォーターの3スロット式の公衆電話50AがWestern Electric & Gray Telephone Pay Station Co.によって製造販売されている。ダイヤルは無く、まずいずれかの硬貨(普通は一番安いニッケル=5¢)を入れると交換手に繋がり、そこで番号を言って必要な料金のコインを入れるとコインによってベルが違う音を出す。正しい料金の音を確認したら交換手が相手に繋いでくれる、という仕組みだったらしい。(人間の聴力をあてにした機械…)
p3048 ニッケル◆当時の5セント貨幣(Nickel)はBuffalo or Indian Head(1913–1938)、25% nickel & 75% copper、直径21.21mm、重さ5.00g、83円。貨幣面の表示はFIVE CENTS。
(2020-4-19記載; 電話の説明がわかりにくかったので2020-4-24修正)
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⑸ The Whosis Kid (初出The Black Mask 1925-3)「フウジス小僧」K34 #16: 評価8点
カヴァー・ストーリー。表紙の男は小太りではないがオプなのか?(小説にはこーゆー場面はないと思うがオプのつもりで描いてるのだろう) まぎれもない傑作。どんどん物語に引き込まれる。キャラも良い。ハメットの良い仕事です。原文取り寄せ中。(2022-2-11原文入手。追加分は❤︎で示した)
p3180 [1917年の]立ち話から一、二週間たったころ、ぼくは、コンティネンタル探偵社のボストン支社を去って、軍隊生活にはいった。戦争がすむと、シカゴ支社に舞いもどり、そこに、二年ばかりぐずぐずしたあげく、サンフランシスコへ転任した(❤︎A week or two after this conversation I left the Boston branch of the Continental Detective Agency to try army life. When the war was over I returned to the agency payroll in Chocago, stayed there for a couple of years, and got transferred to San Francisco)♣️オプが語る自身の略歴。『デイン家』時点(作中年代1928)でSF歴五年くらいと言っていた。1917-1918軍隊、1919-1921シカゴ、1922-1928サンフランシスコ、といったところか。
p3236 安タバコのファティマ(❤︎Fatimas)♣️1910年代Camelは一箱20本10セント、Fatimaは一箱20本15セントだったようだ。1910年代の広告で見るとMurad 15¢、Duke of York 15¢、Helmar 10¢(それぞれ一箱の値段。何本入りかは書いてないが20本がスタンダードっぽい)。米国物価指数基準1925/2020(14.75倍)で$1=1620円。Wikiによるとファティマは当時のベストセラー(the best-sellingなので一番売れていた、か)。「安」ではなさそう。(2020-4-24追記: Muradの1917年の広告を見ると“Judge yourself—compare Murad with any 25 cents cigarette”と書いてあった。25¢のタバコも数種あったようだ)(❤︎2022-2-11追記: 「安」は翻訳の余計な付け加えだった…)
p3261 十四才♣️こーゆー小僧が苦労してのし上がり大金持ちに、といった話が米国富豪物語に良くある。当時、若年労働者は沢山いた。
p3315 六インチ砲♣️6-inch gun M1897(及びその後継)のことか。米国沿岸警備で使用された大砲。50口径152mm砲(これは銃身の長さが口径の何倍かを示す砲世界の表現。152mm口径の50倍=7.6m銃身。ちなみに戦艦大和の主砲は45口径460mm砲で銃身長20.7m。しかも3連砲。凄すぎる…)。
p3438 筒のずんぐりと短い自動ピストル(❤︎a snub-nosed automatic)♣️原文が気になる。snub-nosed automaticか。(❤︎でした)
p3520 中背というよりは、いくぶん低めの、肌の浅黒い女(dark-skinned woman)… 髪のいろも、インディアンのように黒く、… 浅黒い胸もと(dark chest)には… / …茶いろの肌をした女…(p3606)(原文❤︎)♣️浅黒警察としては正訳だと思う。原文が楽しみ。(❤︎翻訳に誤りなし)
p3606 ジェリー・ヤング♣️今回のオプの偽名。思いついたのだが、使った偽名からオプの本名を探る試みはどうだろう? 偽名は本名から(多分確実に)除外出来るし、イニシャルを無意識に合わせている可能性もある。『赤い収穫』で使ったのはヘンリー・F・ネイル。とりあえずオプの本名はジェリーでもヘンリーでもヤングでもネイルでもない。(イニシャルは合わせていないようだ…)
p3630 四十前後というどっちつかずのとしごろ♣️執筆当時ハメットは31才。
p3653 通話管(speaking-tube)… 玄関のドアの錠をはずすボタン(the button that unlocks the street door, p3660) (原文❤︎) ♣️マンションのインターホンらしい。この時代くらいから普及し始めたものか。当時の映画でこういう場面を見てみたい。通話管は各部屋に別々のチューブを引いていたのだろうか?(一つのマイクを切り替えて使うのか。電話の交換台を応用すれば簡単に作れそう) 正面玄関のドアを開錠出来るボタンが各部屋にあるくらいだから、結構大仕掛け。かなり高級で最新式のマンションなのだろう。(2022-2-10追記: 色々調べると、大きなアパートのintercomはKellogg Switchboard & Supply Companyが1894年に開発したらしい。結構古い技術で、既にドアマンなどの人減らしは始まっていたわけだ。ならばここは電話風の仕組みで、最新型というわけでも無いということか。なおこの技術をオフィスのインターコムに応用したのはAdams Laboratories社の開発で1930年代後半のことだという。こちらは意外と新しい。)
p3712 色の白い女… 色の黒い女(one yellow and white lady…. dark woman)♣️翻訳はyellow抜け。yellow and whiteの意味がよく分からない。(❤︎2022-2-11追記)
p3728 洗濯に使う青味づけ(ブリューインク)(❤︎in blueing)♣️これも原文が楽しみ。
p3738「赤」のバーンズ(“Red” Burns)♣️カリフォルニアのボクサーで1923年と1926年に試合をした。(❤︎2022-2-11追記)
p3938 撃鉄をおこした回転胴式ピストルは、撃鉄のない自動式よりも(❤︎a cocked revolver a lot quicker than …. a hammerless automatic)♣️自動式でも撃鉄はある。cockedとuncockedの対比か。cockは撃鉄が起きている状態でちょっと引き金を引くと発射される。cockしてないと引き金を引ききって撃鉄を起こしてから発射、となるため、正確性と秒単位の時間が犠牲になる。(2022-2-11追記: シングル・アクションとダブル・アクションの違いだね、というとガンマニアっぽいかな)
(2020-4-23記載; 2022-2-11追記)
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⑴ Dead Yellow Women (初出The Black Mask 1925-11)「シナ人の死」K39 #19: 評価7点
Black Maskではカヴァー・ストーリー。初出誌表紙のがっしりとした男はオプなのか?
たくさんの中国人が出てくるが、バランスの良い描写。SFのチャイナタウンの雰囲気が良く出ている。ラスボスのキャラがとても素敵。リアルなホラ話という感じの語り口が楽しい。
p587 ぼくのピストルは三八口径のスペシャルなのだが、その店には、スペシャル用のがなかったので、それよりも射程の短い、威力の弱い弾丸で間にあわせた(My gun is a .38 Special, but I had to take the shorter, weaker cartridges, because the storekeeper didn’t keep the specials in stock)♠️ここのshorterは弾丸の「長さが短い」ということ。38スペシャルの弾丸全長は39.0mmだが、その前身(互換性あり)の38ロング・コルト弾は34.5mmだ。威力(初活力)は前者367ジュールに対して、後者276ジュール。(床井雅美『ピストル弾薬事典』より)
(2022-2-10記載)
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⑵ The Main Death (初出Black Mask 1927-6)「メインの死」K46 #24
これはハヤカワ文庫『コンチネンタル・オプの事件簿』の書評参照。

No.2 8点 2019/06/16 18:13
収録5編中、同じ早川書房のミステリ文庫から出ている『コンチネンタル・オプの事件簿』とは『メインの死』だけが重なっています。チャンドラーだと早川も創元も、大系的に(ほぼ)すべての中短編を網羅する形にまとめているのに、ハメットの方は計画性がないのは、少々不満なところではあります。
しかしその意味で編集的には不満があっても、個々の作品は充分楽しめます。最初の『シナ人の死』は最も長く、最も複雑。それにしても1975年時点の再販で、タイトル等の表記手直しを全くしていないんですね、翻訳者砧一郎の没年は不明だそうですが。『金の馬蹄』は、トリックは早い段階で可能性には気づいていたのですが、上手く決着をつけてくれています。『だれがボブ・ティールを殺したか』には、実際の事件とは関係者の名前が違う云々などと書かれているのが、珍しいところ。『フウジス小僧』のクライマックス・シーンは迫力満点でした。

No.1 7点 おっさん 2013/03/11 10:32
収録作品は――
 ①「シナ人の死」(1925)
 ②「メインの死」(1927)
 ③「金の馬蹄」(1924)
 ④「だれがボブ・ティールを殺したか」(1924)
 ⑤「フウジズ小僧(キッド)」(1925)
昭和32年(1957)に六興キャンドル・ミステリの一冊として刊行され、のちハヤカワ・ミステリに編入された(今回、筆者が読んだのは、重版された早川版)、日本初のハメット短編集です。

訳者は、初期ハメット翻訳の第一人者、砧一郎。編者は――誰かなw
早川の、編集部S名義の「解説」には、アメリカ本国で1945年に出版された、エラリイ・クイーン編の The Continental Op が「本書」とありますが、これはマチガイ。完全なオリジナル編集です。
レヴュー済みの、小鷹信光・編訳『コンチネンタル・オプの事件簿』と重複するのは、“強盗殺人事件”の真相にたどり着いたオプが、依頼者にはあえて別な解答を提示する、余情豊かな佳品②のみですが・・・これというガイドも無かったはずの時代に、なかなか面白いところを集めています。
前記、六興キャンドル・ミステリのブレーンの一人だった、海外ミステリ通・田中潤司氏のセレクトかもしれません。

中国系女流作家の邸で起きた、殺人の調査が発端となる、巻頭作①は、ストーリーを込み入らせすぎて散漫になってしまいましたが、裏社会の大物である怪しい中国人チャンの、一見ユーモラスなキャラクターと、悪党を罠にはめ、結果、死に追いやるオプならではの“解決”ぶりが、忘れ難い印象を残します。

失踪者の探索の途中、他殺体が転がる――という、のちに定石化する、ハードボイルド・ミステリの見本のような展開の③は、チャンドラーやロス・マクドナルドへの直接の影響という点でも重要。オプが出張する、メキシコの地方色もよく出ており(タイトルのもとになっている、酒場「金馬蹄軒」のエピソードがグッド)、ストーリーを通して築きあげられた人間関係と、その非情な決着の対比が鮮やかです。

④は、オプが目をかけていた後輩が殺される――という発端の設定が、なんらストーリーに深みをもたらさない点(他の探偵が被害者でも、大筋にまったく影響なし)、ハードボイルド・ミステリとしては失敗作でしょう。ただ、「だれが~を殺したか」というストレートなタイトルが示す謎解きは、自然で無理のないものです。のちの名作『マルタの鷹』の、フーダニット部分の原型といえます。

悼尾を飾る⑤は、要注意人物としてフウジズ小僧(キッド)を印象づける導入部がうまく、そこから空間限定(アパートの一室)の巻き込まれ型サスペンスに移行する――以前レヴューした秀作「ターク通りの家」(『コンチネンタル・オプの事件簿』所収)のヴァージョン・アップ版です。
クライマックスの、暗闇の中での待ち伏せのくだりには、少年のころ、ドイルの「まだらの紐」や「赤毛組合」を読んでワクワクした、あの気分がひさびさに甦りました。ちゃんとアタマを使ったアクション・シーンになっているのも、ミステリとして好感度大。
③と並んで、本書のベストであるばかりでなく、ハメット短編全体のなかでも上位の出来でしょう。

小鷹信光訳での、オプの一人称――仕事の鬼の中年キャラとしてピタリとはまった「おれ」を読んでしまったあとでは、砧訳の「ぼく」で語られるオプにはどうしても違和感がありますし、また訳文が経年劣化しているのも、否定できない事実ですが(たとえば・・・夫から若い妻への呼びかけ「お前さん」が気になって、たまたま手元にあったペイパーバックで原文にあたってみたら、該当箇所は my darling だったw)、それを認めたうえでも、一読をお勧めしたい一冊です。


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ダシール・ハメット
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チューリップ : ダシール・ハメット中短篇集
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