皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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[ ハードボイルド ] 影なき男 |
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ダシール・ハメット | 出版月: 1950年01月 | 平均: 5.00点 | 書評数: 4件 |
雄鶏社 1950年01月 |
早川書房 1955年05月 |
早川書房 1984年10月 |
早川書房 1991年09月 |
No.4 | 7点 | 空 | 2022/03/20 11:13 |
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小鷹信光訳で読みましたが、率直な感想はこれもやっぱりハメットだなあということ。
ニックは「タフガイさん」と言われているところもあり(p.56)、実際アクションも少しは披露してくれます。でもだいたいはグラスを片手にごろごろしていますが、一日中酒を飲み続けていながら、頭脳はなかなか明晰です。奥さんのノラとの掛け合いも楽しめました。もともとハードボイルドの探偵って、堅苦しくなく、気のきいたセリフを言う人が多いわけですから、そのユーモラスな方向を推し進めただけに思えます。『赤い収穫』と『マルタの鷹』とからだって、受ける印象はかなり違いますしね。いろんなタイプの長編作品を書きながら、どれもハメットらしいという気がします。謎解き的にも、よくできています。 ハードボイルドには珍しく常に礼儀正しい(特に小鷹氏の訳では)ギルド警部補も気に入りました。 |
No.3 | 5点 | クリスティ再読 | 2019/05/13 22:37 |
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ハメットという作家は全5作の長編小説が、2大レジェンド「血の収穫」「マルタの鷹」、地味だが最高傑作に挙げられることの多い「ガラスの鍵」...と超打率の作家なのだけども、実は本作もサブカル影響力のかなり強い「小レジェンド」と言っていい作品である。本作を映画化した1938年のウィリアム・パウエル&マーナ・ロイ主演作品が、それこそ「署長マクミラン」とか「ブルームーン探偵社」みたいな「夫婦探偵物コメディ・スリラー」のプロトタイプみたいな役割を果していることが、日本のミステリファンの間では無視されがちなのだ。残念。映画はねえ、実に小洒落たユーモアのある素敵な作品だよ...
まあ小説の側だって、ハメットらしく会話と行動オンリーで描いて、そもそもちゃんとハードボイルド文なのである。しかし、主人公のニック・チャールズは「金持ちの妻を得て探偵を引退した男」なんだよね。早い話、ナマっている。必要に応じてタフに振る舞うこともあるが、内心そういうタフさはもう「ガラじゃない」と思っている...「謎々やウソや...そういうのを楽しむには、少しばかり年齢をとりすぎているし、くたびれている」と述懐する。これは映画が当たってカネに不自由しなくなり、リリアン・ヘルマンという伴侶を得たハメットの偽らざる実感が投影されているわけだ。 だから、本作は「早すぎたネオ・ハードボイルド」くらいに読んでもいいのかもしれない。「冒険の時代」は終わってしまい、「家庭と日常」に力を持て余さざるを得なくなった「元タフガイ」の物語として読まざるをないわけだ....妙な「男の美学」を求めたがる日本のハードボイルド・ファンにはちょいと鬼門な作品と言っていいのかもね。人気ないのはそういうことだろう。 だからハメットは酒に溺れる。映画だとパウエルが本当にマティーニを飲み続けなのがご愛嬌。目的をなくしてセンスを無駄遣いしているようなもので、そういうあたりを醒めた目で描くには映画の方がおすすめ。 彼女にふりまわされてへとへとにならないようにすることだ。ウソを指摘すると、彼女はそれを認め、そのかわりに新しいウソをつく。そのウソをまた指摘すると、それを認めてからまた新たなウソをつく。これが無限に続くんだ。 と評されるミミ(とか「マルタ」のブリジッド)の造形って、実にハメットらしくても、チャンドラーもロスマクも真似できなかったキャラだと思うんだが、これも不思議なことだと思う。こういう理屈を超越したキャラが描けるかどうか、で考えたら、ハメットって別な意味でも凄いんだよね。 (あとウィリアム・パウエルは、ファイロ・ヴァンス役者で人気を確立した名探偵役者だが、ヴァンスはあまり好きではなくて、ニックを代表作にした人でもある。ハメットとヴァン・ダインの妙な因縁がここにも、ある) |
No.2 | 3点 | 斎藤警部 | 2015/07/29 12:27 |
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萌えなかった。。のめり込めず。夫妻の会話が愉しいわけでもなく。
彼の作品は短篇がいいな。 でもこれラジオドラマで聴いたら面白いのかも。 |
No.1 | 5点 | Tetchy | 2009/04/03 22:29 |
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本書はハメットには珍しくフーダニットをメインとした謎解きのミステリであり、探偵もニックのノラの明るい夫婦が務める軽妙な仕上りになっている。所謂ハメットらしさが一番希薄なのだが、あのハメットがこんなのも書いていたのを知るには絶好の一作ではなかろうか。 |